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二章 アヴァランチェ編

36 大きな女主人の宿屋 と 二度目の呼び出し

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 スカレッタとギルドを出て、広場まで行き、西の大通りを三十分程歩いて行った頃、左側の路地へと入いって行く。
 すると薄暗い明かりが灯る、一軒の建物があった。

「カズさん。あの建物です」

「ここは多種族区ですよね」

「えぇ、そうなんですが、やはり住宅区の方が……」

「いえそうではなくて、昨日この近くの大通りを歩いていたので、こちらの区画にも宿屋があると知ってれば、探してみたんですけど。まさか大通りから、こんなに近くにあったなんて」

「そうなんですよ。場所がら多種族の方が、よく利用する宿なんですけど、経営の人は元冒険者で、一時期ギルドでも働いていた方なんです」

「へぇ~。元冒険者で、ギルトの職員だった方なら、安心できる宿屋ですね」

「そう言ってもらえると、紹介する私も嬉しいです」

 スカレッタと共に、宿屋に入って行く。

「いらっしゃい。何人で泊ま……あれ? スカレッタじゃないか、どうしたんだ? しかも男連れで。はは~ん! なんだそう言うことか!」

「な、何言ってるんですか! この方は、アヴァランチェに来たばかりの冒険者さんで、泊まる所が決まってないと言うので、連れて来たんです!」

 スカレッタが頬を赤くしながら、宿屋の女性に向かって、以上なまでの早口で喋る。

「アハハハッ冗談だよ。お客を連れて来てくれたんだね。ありがとよ」

「まったくもう。そういう冗談を言うのは、相変わらずですね先輩」

「おいおい、先輩はよしてくれ。もうギルドで働いてる訳じゃないんだからな」

 随分と体と声の大きな女性だな、身長2mはあるんじゃないか。

「あ、カズさん紹介します。こちらこの宿を経営している、元冒険者で女主人の『ノシャック』さんです」

「よろしく。うちの宿は部屋が狭い分、代金もこの辺りの宿に比べたら安いから、金の無い新人には、丁度良いだろ」

「ちょっとノシャックさん、失礼ですよ」

「良いですよ。そのとおりですし、気にしませんから。それでおいくらですか?」

「一泊6,000 GLで、晩飯付けると6,800 GLだ。晩飯以外はすまないが、どっか他で食ってくれ。で、どうする」

 せっかくスカレッタさんが紹介してくれたんだし、顔を立てないとな。

「それじゃあ、食事付きでお願いします」

「あいよ! それで、何日にするよ。バーンと二十日ぐらい泊まってくか!」

 近いし、なんか威圧されてるみたいだな……

「ちょっと先輩じゃなかった、ノシャックさん、そんな強引に止めてください。すいませんカズさん、こう言う人なんですよ」

「アハハハッ! 悪いな。つい昔の癖が出ちまった。とりあえず一泊な。飯は今から食えるがどうする?」

「えぇ。いただきます」

「あいよっ! そっちの部屋で待っててくれ。スカレッタも食べてきなよ。安くしといてやるから」

「いや私はちょっと……」

「なんだ金欠か? しょうがない奴だな」

「良かったらスカレッタさんも、食べて行ってください。食事代は俺が出しますから」

「おおっ、よく言ったお客さん。スカレッタよ、せっかくああ言ってくれてるんだ、もちろん食べてくだろ」

「でもカズさんに、申し訳ないですよ」

「いえそんな、宿屋を教えてもらったお礼だと、思ってくれれば」

「でもそれは、今朝私を庇ってもらったお礼で」

「ええい焦れったいね。いいからスカレッタも食べていくこと。先輩の言うことだからな!」

「あ~もう、こんな時だけ先輩って言うのズルいですよ。分かりました、ご馳走になります」

 話は決まったらしく、スカレッタと一緒に食事を食べた。
 食事の後に俺は、二階の部屋へと案内され、スカレッタはノシャックと、少し話をしてから帰ると言っていた。

 中に入ると、言っていたとおり、ベットがあるだけの狭い部屋だった。
 しかし隅までキレイに掃除されていて、泊まるだけなら十分なので、ベッドに横になり、今日の出来事などを思い返す。

 最近やっと初見の女性とも、難なく話が出来るようになってきたし、ただどうも思ったことを、ポロっと言ってしまうことがあるのを、気を付けなければと思った。
 結局この都市の冒険者ギルドでも、ギルマスとサブマスに目を付けられたし。
 それに、次アレナリアと会う時、どんな顔したら……なんであんなこと言っちゃったのかなぁ。
 まぁ、ちっこくて、可愛かったのは、本当だけど……。

 などと昼間のアレナリアとの会話を思いだしたら、恥ずかしくなり、ベットでジタバタとしてしまう。
 ひとしきりジタバタした後で、恥ずかしさを忘れるのに、他のことを考えることにした。

 う~ん、こっちの世界に来てから、お風呂に入ってないんだよな。
 ココット亭にいた頃は、お金に余裕もないので、濡らした布で、体を拭くことだけだったしな。

 リアーデから旅立ってから道中は、訓練がてら魔力変換で『水と火を組み合わせ』て、お湯を出せるか試していたっけ。
 そして何度かやるうちに、出来るようになっし、あとは湯船を作って、置ける場所だけなんだけど、と考えてた。

 恥ずかしさも忘れ、眠くなってきたので、お風呂のことは、また今度考えることにして寝た。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「ちょっとカズさん!」

「えっ? クリスパさんどうして」

「どうしてじゃありません。キッシュに『カズ兄』なんて呼ばせておいて」

「いや、呼ばせてる訳じゃなくて、キッシュが、そう呼びたいって言うから……」

「え~カズ兄、私が悪いの?」

「キッシュ! どこから」

「そうです、キッシュが悪いんですか?」

「そうでは、なくてですね……」

「それに、今度は小さなエルフっ娘ですか! 甘えてくる妹系キャラがお好みですか!」

「カズ兄、私じゃダメなの? カズ兄はロリっ娘が良いの?」

「そう言う訳じゃ……んっ? 妹系キャラ? ロリっ娘? クリスパさんにキッシュもそんなこと言うか? あんたらいったい誰だ?」

「何を言ってるんですか! 早く帰らないと、深夜アニメの時間に、間に合いませんよ!」

「カズ兄、今日はオールナイトで見まくるよ!」

「ちょっ何を……」


ーーーーーーーーーーーーーーー


 ◇◆◇◆◇


「……夢……か」

 訳わからん夢だったな。
 はっ! もしや、これは二次元不足による禁断症状? それとも、萌え不足なのか!
 それに妹系キャラに、エルフっ娘に、ロリっ娘……これが自分自信の願望なのか!?

 変な夢を見たことを、頭の片隅に追いやって、昨日買ってあったパンを食べて、部屋を出る。
 一階に下りて行くと、ノシャックが朝っぱらから、大声で話し掛けてくる。

「起きてきたかい。昨日はよく眠れたか?」

「とても良く」

「そいつぁ良かった。ここで良けりゃあ、また来てくれや」

「はい」

「おぉ言ったな、待ってるぞ」

「うっ」

「こんなこと言ったら、またスカレッタに何か言われそうだな。アハハハハッ」

 朝から豪快な笑い方をしているノシャックと別れ、ギルドへと向かう。
 今日は、道を覚えるのと『マッピング』をする為に、宿屋から方角を確認しながら、裏路地をギルド方向に歩いて向かう。
 多種族区だけあり、すれ違う種族は『ドワーフ』に、色々な『獣人』それに『エルフ』もたまにいる。

 歩き始めて一時間、ようやくギルド近くの大通りに出た。
 あっちこっちに行ってしまい、結局遠回りになってしまったが【マップ】を見ると、宿屋周辺から、ギルドまでの道が少し分かるようになった。

 ギルドに着き、中に入ると混んでいて、依頼書が貼ってある所に行くが、冒険者が多くて、よく見えないでいると。  

「カズさん」

 振り替えるとスカレッタがいた。

「おはようスカレッタさん」

「おはようございます。カズさん」

「昨日は、宿屋を紹介してくれて、ありがとうございました」

「そんなこちらこそ、ご馳走になってしまって」

「気にしないでください」

「それでなんですけど、カズさんが来たら、連れて来てくれと言われてまして」

「連れて来てくれ? 誰ですか? そんなに知り合いは……」

「ちょっと耳を」

 スカレッタが耳元で、他の人に聞こえないように、小声話してきた。(息がかかって、こそばゆい)

「マスターがお呼びなんです」

「!」

「昨日行かれた、二階の部屋に居ますので」

「……」

 またしてもギルマスからの呼び出しって、昨日に続き今日も、いったい今度は何をされるんだろ……。

「ハァー(呼び出しに良い記憶ないなー。行きたくねぇー)」

「カズさん? カズさん!」

「あ、はい」

「どうしました、ため息なんかついて、大丈夫ですか?」

「えぇ大丈夫です。昨日行った部屋ですよね、分かりました」

 スカレッタに言われて、昨日ギルマス達と、話をしていた部屋に行く。
 部屋の前に付き、扉をノックをして名乗り、返事を待ってから中に入る。

「やぁカズ君。朝から来てもらってすまないなぁ」

 部屋の中には、ギルマスのロウカスクだけではなく、いつものフードを被った、サブマスのアレナリアも居た。

「おはようございます。それで今回は、なんで呼び出されたんでしょうか?」

「呼び出しとか、そんな大層なことじゃないが、ただアレナリアが、君に色々と、聞きたいことがあるみたいでな」

「アレナリアさんがですか?」

「ああ。オレは仕事があるからもう行く。あとは本人に聞いてくれ。いいなアレナリア」

「あ……う」

 ロウカスクは出て行って、部屋にはアレナリアと二人っきりになった。
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