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二章 アヴァランチェ編

34 回復薬の作り方 と 三者面談

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 『回復薬の製造方法』は、回復草と毒消草を別々にすり潰し『回復草8枚分、毒消草1枚分、水100㏄』の割合で混ぜて、そこに魔力を加えると出来上がるのが、ここのやり方と教えてくれた。
 水は、北の山脈から流れてくるキレイな雪解け水がある為に、安定した効果が得られる物が出来ると言う。

 ただ魔力を加える加減が大変で、一度失敗すると、それはもう使い物にならないので、手伝いは薬草をすり潰すことと、出来た物を、粗めの布でコシて、容器に入れる作業だ。

 作り方を教えていいのかと聞いたら、そんな簡単には出来ないから、構わないと言っていた。
 もし出来たとしても、効果が同じとは限らなし、この作り方は魔力を使うので、ただの調合ではなく、どちらかと言うと『錬金術』のスキルが無いと、成功率は格段に低いと言っていた。

 作業を二時間ほど続けた頃、回復薬が規定数に達したので、作業が終わり、依頼書に完了のサインを書いてもらい、ギルドに戻ることにする。
 すると依頼者の人が『今度は直接ここに、薬草を持ってきてくれれば、買い取るから』と言ってきた。

 受けた依頼を終わらせ、ギルドへと戻った。
 ギルドに着いたのは、まだ日暮れにはまだ早いので、そんなには混んでいない時間だった。
 依頼専門の受付に行き、女性職員に終わらせた依頼書を渡した。
 少し待ち確認がとれたのか、報酬を持ってきてくれた。
 それを受け取り、そのまま掲示板(壁)に行き、どんな依頼があるか見ていると、受付嬢のスカレッタが、声をかけてきた。

「カズさん。もう依頼は終えられたんですか?」

「こんにちはスカレッタさん。依頼はさっき終えて、ギルドに報告に戻って来たとこです」

「それはお疲れ様でした。慣れない土地で大変でしょう」

「確かに広い都市ですし、勝手が違いますが、新しい物が見れて楽しいです」

「それは良かったですね。昨夜は住宅区で、盗賊の一団が捕まったと連絡が来てましたから、アヴァランチェに来たばかりの人が、被害にあって、嫌な思いをしてなければと、ここに住む者として思いますね。だからと言って、この都市に住む人が、被害にあっていい訳じゃ無いですけど」

 住宅区で盗賊の一団って、昨日あれか……俺は関係ないと思っておこう。(フラグ立ててないぞ!)

「盗賊! 住宅区でそんなことがあったんですか。いや~怖いですね」

「そうなんですよ。そう言えばカズさんも、昨日は住宅区で宿屋を探していたとか、危なかったですね」

「そ、そうですね……(昨夜のことはバレてないな)」

「あっ! そうだ。カズさん、お手頃でおすすめの宿屋ありますよ」

「本当ですか!」

「もちろんです。ただし、宿屋の場所なんですけど」

「もしそこの君、ちょっといいかな?」

「はい?」

「あっ! 『マスター』どうしたんてすか?」

 んっ! マスター?
 まさかと思い、話し掛けてきた人の方を向くと【万物ノ眼】で見えているステータスに『ギルドマスター』と表示されていた。
 な! なんでいきなり、ギルマスが登場するの?

「彼に用事があってな。リアーデから来たカズ君でいいのかな?」

「そうですが、俺に何か?」

「ちょっと、私が呼びに行くから、部屋で待っててって言ったでしょ」

 何だか、フードを被ったちっこいのが、もう一人出て来た……ん! ステータスに『サブ・ギルドマスター』って、続けて何なんだ!
 しかも周囲が、ザワザワしている。
 ギルマス達がいたら、何かあったと思うのは当然か。

「いやぁ~、皆が忙しそうだったから、自分で行こうかと思ってさ」

「何でもないのに、いきなり大勢の前に現れたら、騒ぎになるから、ギルマスは大人しく部屋で待機しててくだちゃい!」

「! (ちゃい?)」

「! (ちゃい!?)」

「! (ちゃい!)」

「! (かんだ?)」

「! (かんだ!?)」

「! (噛んだ!)」

 周囲の人達が、一斉にフードを被ったちっこい人物(サブマス)を見た。

 フードを被ったちっこい人物(サブマス)は、少しぷるぷると震えていて、うっすら見えている口元を尖らせて、恥ずかしがっている様に見える。

「『ちゃい』ってかんだ!」

「うっさい! かんでないわ!」

 あ~あ、分かっていても、みんな黙ってたのに、あそこの人言っちゃったよ。

「ほら『ロウカスク』早く部屋に戻るぞ!」

「プッ。少し噛んだぐらいで、そんに怒ることはないだろ」

「お前だって笑ってるじゃないか! おいそこの奴、一緒に来なさい!」

「俺ですか?」

「そう。ロウカスクがさっき話かけた人でしょ。さっさと一緒に来て」

 一体全体なんなんだ?

「カズさん、取りあえず行って来てください。宿屋の話は、後でも出来ますから」

 スカレッタが気をつかってくれた。

「ごめん。わざわざ探してくれたのに」

「いえいえ、ギルドに勤める者としては、責任者が来たんですから、そっちを優先させますよ」

「ありがとう。ちょっと行ってくる」

 スカレッタの意向もあり、ギルマス達について行き、二階の一室で話すことになった。
 部屋に入ると、長目のテーブルと、その横に長椅子が二脚と、奥に一人用の椅子が一脚あり、テーブルの中央には、何か四角い箱が置いてある。

 上座(奥)と思われる所にある、一人用の椅子にギルマスが座り、その斜め手前にザブマスが長椅子に座った。

「どうぞ座ってくれ。この部屋は、冒険者達に貸し出す為の会議部屋だから、遠慮はいらない。それに、盗聴などを妨害する魔道具もあるから、安心してくれ」

 そう言ってロウカスクは、テーブルの上にある箱に、魔力を流して起動させた。

「はい」

 こういう場所は、座る所が気になるんだと、思いながら返事をして、取りあえずサブマスの斜向かいに座る。

「それで、昨日来たばかりの俺に、用事とはなんですか?」

「まぁそう警戒しないで、少々確かめることがあってな」

「なんでしょう?」

「……ロウカスク」

「おぉそうだな。まずは自己紹介しておこう。オレはアヴァランチェの冒険者ギルドでギルドマスターをしている『ロウカスク』だ。以後よろしく。そして」

「私は、サブ・マスターの『アレナリア』よ。小さいからって子供じゃないからね!」

「どうも、カズと申します」

「あぁ、よろしく。早速だが、君……カズ君のことは、昨日来たて手紙を読んで知ったんだが……まずどこから聞こうか」

 手紙……あぁ、クリスパさんが出した紹介状のことかな!? 

「昨日の手紙? リアーデのクリスパさんからのですか?」

「そうそう。リアーデの冒険者ギルドからの手紙で、ブレンデットとクリスパの署名が入った、紹介状のことだ。世間知らずのカズ君を、宜しくとのことだ」

「それだけを聞かせる為に、俺を呼んだんですか?」

「そんな訳がないでしょ。それだけの為に、ギルドの責任者が、直接出向かないわよ」

 ご機嫌斜めだな。
 さっきの噛んだことを、まだ引きずってるのか。

「まぁまぁアレナリア、噛んで恥ずかしかったからって、カズ君に当たらなくても」

「なっ! うるさいぞロウカスク! 早く用件を話なさいよ!」

「アレナリアがすまないな。では回りくどい言い方は止めて、単刀直入に聞こう。昨日の住宅区で盗賊の一団が捕まったんだが、君が関係してるだろ」

 なんでバレた!

「な、なんの事でしょう」

「別に君を、責めてる訳じゃない」

「変に隠すと、後々面倒になるわよ」

 何か根拠が有りそうだし、仕方ないか。

「……ハァー、どうして分かったんですか?」

「じゃあ、盗賊達を倒したのを、認めるんだな」

「はい。それでどうして?」

「それじゃあ、ちょっと待っていてくれ」

 ギルマスのロウカスクが、部屋を出ていった。

 俺はうつ向いて、やっぱり魔法と違い『俺は関係無い』と思っただけで、フラグ回避は出来ないか、と思っていた。

 何やら視線を感じる方を見ると、サブマスのアレナリアが、フード越しにこっちを見ている、ように思えるので、声を掛けてみた。

「あの、何か……」

「あんた、カズとか言ったわね」

「はい。そうですが」

「……う~ん」

 今度は遠慮せずに、まじまじと見てくる。

「な、何ですか?」

「カズ……あんた、何か情報を妨害するスキルか魔法を使ってるか、そんな効果のある魔道具を持ってるわね」

「なんのことですか?」

「私さっきから、あんたのことを、スキルを使い、ステータスを見ようとしているんだけど『名前、性別、職業、ギルドランク』しか見えないのよ」

 いつの間にって、俺もいつもしていることか。
 でも情報を妨害する魔法にスキル、それに魔道具なんのことだ?

「何にもしてないですし、そんな効果の魔道具も持ってませんが」

 「なんですって、私の能力が、低いとでも言いたいの!」

「そんなことは、言ってません」

 アレナリアが立ち上り、俺の隣に来て被っていたフードを外し、じっと顔を見て小声で何か言っている。

「『アナライズ』……やっぱり、何でこれ以上わからないのよ!」

 『アナライズ』? 分析のことかな?
 するとあることに気付き、自分のスキルを調べて、アレナリアのことも【万物ノ眼】で、分析してみることにした。

 ステータス確認『情報防止系スキル』と、これで持っていれば、表示されると思うけど。


 スキル

 【隠蔽】《ON》『1』


 【隠蔽】とか持ってるし、相変わらずいつの間にかスキル獲得してるよ。
 それで、アレナリアさんのステータスはっと……

「……スノーエルフ?」

「な、なんで!」

「あっ!(つい声に出してしまった)」

 するとアレナリアは、またフードを深くかぶり、元座っていた場所に戻った。
 その時、部屋の扉が開き、ギルマスが誰かを連れて戻ってきた。
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