人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

文字の大きさ
上 下
34 / 807
二章 アヴァランチェ編

30 大都市アヴァランチェ と シャルヴィネ商会の片鱗

しおりを挟む
 カズ達が、リアーデを出でから四日後の昼頃、旅の道中に見えていた山脈の近くに『大都市アヴァランチェ』がある。
 大都市の北側には、そびえる高い山々があり、山頂の方には雪が見えている。
 北西の山から南東方向へ、深さ幅とも5m以上はあると思われる川がある。
 水の深さは、1mもない程だが、流れているのは雪解け水と思われ、かなり冷たそうだ。
 その川沿いに、高さ10mはある外壁が、作られている。
 カズ達は、南西側にある門から、大都市へと入ることになる。
 中へは、下ろされた跳ね橋で、川を渡り入って行く。

 大都市だけあって、出入口に居る門番は、全て衛兵だ。
 カズはギルドガードを、シャルヴィネは『商業ギルドの証』を提示して、問題なくシャルヴィネの荷馬車は中に入って行く。

 結構な時間、荷馬車の荷台に乗って行くと、色々な店が建ち並ぶ場所に差し掛かり、辺りを見回していると、その一角に『服屋シャルヴィネ本店』と書かれた店があった。
 荷馬車は、店の脇にある細い道に入って行く。
 リアーデにあるシャルヴィネの服屋とは、比べ物にならない程の大きい店だ。
 呆気に取られていると、シャルヴィネが話しかけてきた。

「カズさん着きました。ここがアヴァランチェにある、私の店です」

「都市の大きさと、人の多さにも驚きましたが、シャルヴィネさんのお店も、とても大きくて驚きました」

 見た目は、四階建ての、マンションみたいだ。
 シャルヴィネが言うには、一階二階が店舗になり、三階が品物を置く倉庫で、四階が事務所で使うように造ってあると。

「私が主に居るのが、この本店の四階にある事務所です」

「本店ですか、さすがに大きいですね!」

「本店と言いましても、私がアヴァランチェ内や、周辺の街で幾つか扱っている店を、まとめる為に使ってるのが、この店舗です」

「この都市で、お店を何件も、お持ちなんですか? そう言えば以前に、他にもお店を持っているとか、言ってましたね」

「店の大きさは様々ですが、他に宝石などの装飾品を扱っているお店に、家具屋、宿屋、雑貨屋に薬屋も経営してます。冒険者相手に、武器や装備を売っているお店もあります」

 シャルヴィネが、こんなにも色々な店を経営しているのに驚いていたら、運んできた荷物を出す場所に、案内すると言われて我に帰る。

 建物の裏口から中に入り、従業員用の階段を上がり、三階の倉庫へ向かう。
 すれ違う人達は皆『お帰りなさいませシャルヴィネ様』『代表、お疲れ様でした』等と挨拶している。

「……シャルヴィネさんは、貴族なんですか? それとも、もっと上の方ですか?」

「カズさん、よして下さいよ。そんな大層な身分ではありませんよ。ただ色んな店の代表をしていると、どうしても権威がある様に、見せないといけないこともありまして、仕事上人前では、あのように呼ばれてるだけですよ」

「はぁ、そうなんですか……(とんでもない人と知り合ってしまったのか……)」

「カズさん、着きました。ここが荷物や品物を、保管庫する場所になります。運んでいただいた物は、あちらに出してもらえれば」

 言われた先には、連絡がしてあったのか、すでに各種荷物を置く場所が作られていた。

「あの書いてある所に、出せば良いですか?」

「ええ、お願いします。あとで職員が整理しますので、出してもらえるだけでも構いません」

 早速言われた所に、【アイテムボックス】から、荷物を書いてある場所に出していった。
 アイテムボックス内は、リストで何があるか分かる為に、書いてある場所に、その荷物を出していった。

「カズさんお疲れ様でした。では依頼書にサインをしますので、少々お待ちください」

 少し待ち、シャルヴィネから依頼書を受け取り、冒険者ギルドへの道を教えてもらい、店を出る。
 わざわざ店の外まで、見送りに来てくれた。

「この数日ありがとうございました。大したこともなく着けて良かったです。それに、道中アヴァランチェの話を聞かせてもらい、嬉しかったです」

「大したことですか……。いえ、こちらこそ、ありがとうございました。カズさんがアイテムボックスを持っていたことで、予定よりも速く着くことが出来て、助かりました」

 挨拶もそこそこに、冒険者ギルドへ行くことにした。
 道もしっかり整備されて、大通りに出ると、リアーデとは比べ物にならない人の多さだ。
 シャルヴィネのお店を出からて一時間程で、冒険者ギルドに着いた。
 リアーデの冒険者ギルドの建物と比べると、倍以上の大きさはある。
 早速中に入いり、周囲の様子を見ながら受付に行く。

「こんにちは。今日は、どのようなご用で?」

 受付には男性と女性の二人が居て、話し掛けてきたのは、若い女性の方だ。 

「リアーデから来たんですが、依頼の報告と、手紙の配達に」

 受付の女性に、終えた依頼書と、クリスパさんから言われて、預かった手紙と紹介状を一緒に渡した。

「完了した依頼書と、リアーデの冒険者ギルドからの手紙ですね。確かに受け取りました。確認しますので、ギルドカードの提示もお願いします」

 ギルドカードを受付の女性に渡した。

「確認後に報酬を出しますので、少々お待ちください」

 受付の女性が提示したギルドカードと、渡した手紙と依頼書をもって奥へと入っていき、ものの五分程で戻ってきた。

「お待たせ致しました。確認できましたので、ギルドカードをお返しします。それとこちらが報酬になります」

 シャルヴィネが出した依頼報酬の金貨六枚と、ギルドへの手紙を配達した報酬分、金貨一枚を貰う。

 手紙の配達だけで、金貨一枚も貰るのか!
 なんでこんなにするのか、聞いてみるかな。
 ついでに、宿屋もどこか良いとこあるか、聞こうかな。

「あの、ちょっとお聞きしても良いですか」

「なんでしょう?」

「手紙の配達だけで、報酬が金貨一枚というのは多くないですか?」

「変わったことを聞かれますね? リアーデからでしたら、そんなものですよ。ただ驚きなのが、持ってきたのが、Eランクの方だということですね」

「何か不味いんですか?」

「ギルド宛てですから、大事な書類もありますし、荷物の内容にもよりますが、大抵は、Cランクの依頼ですから、Dランク以上の冒険者がやる依頼になってますので」

 おいおいクリスパさん、いきなり変に思われてるよ。
 う~ん……まだランクが低いから、今のところは、アイテムボックス持ちだとは、言わない方がいいな。

「まぁでも、最近は街道も安全ですし、それでリアーデのギルドでも、許可したんでしょう」

「そうですね。そうだと思います。あと、どこか、お手頃の宿屋ありませんか? アヴァランチェに来たの初めてでして」

「お手頃の宿屋ですか……この辺りは常連の方で一杯になっている所が多いですから、住宅区の方にある小さな宿屋なら、空いてると思います。でもあまり、おすすめは出来ませんよ」

「何か問題でも?」

「料金は安いかも知れませんが、部屋の状態が悪かったり、問題の多い所もありますから、行くなら気を付けた方がいいですよ。やはり高くてもしっかりした宿屋に泊まった方が、良いと思いますが」

「ご忠告ありがとうございます。とりあえず住宅区の方に行ってみます。……え~と、すいません、どっちの方向ですか?」

「住宅区は、都市の北東側と北西側にあります。わからないければ、大道りを都市の中心部に向かえば、中央広場に着きますから、そこから行けば、分かりやすいかと思います」

 中央広場か、リアーデと同じ様な作りなのかな?
 歩き回って、マップを埋めていくか。

「分かりました。ありがとうございます」

 受付の女性にお礼を言って、アヴァランチェに入ってきた時に通った大道りから、中央広場へ向かって歩きだす(傾斜があり若干登っている)
 【マップ】を見た感じだと、入ってきた門が南西側にあって、それに続く大通りを通って来たから……。
 【マップ】の範囲を最大にしても、門と広場が同時に映らないほど広い。

 冒険者ギルドを出てから三十分以上、大通りを歩いた頃、ようやく広場に着いた。
 気付けば、さっきまで居たシャルヴィネの店があった。
 どうやらお店の正面は、広場に面しているみたいだ。

 広場の中央には、大きな噴水があり、五本の大通りが、広場から都市を囲む外壁の方へと続いている。
 東と西に一本づつ、南西と東南に一本づつ、それに北へと続く大通りが一本、計五本の大通りがある。
 取りあえず、北西側の住宅区で、宿を探す為に、西側へと続く大通りを、歩いて行く。

 暫く歩くが宿らしい建物は見あたらなく、試しに路地へと入って行き、辺りを歩き回ってみるが、宿は無い。
 一度広場へと戻り、誰か聞くことにした。
 
 日が暮れてきた頃、商店が建ち並ぶ路地裏から、広場へと出てようとした時に、何か揉める声が聞こえてきた。
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

器用貧乏の底辺冒険者~俺だけ使える『ステータスボード』で最強になる!~

夢・風魔
ファンタジー
*タイトル少し変更しました。 全ての能力が平均的で、これと言って突出したところもない主人公。 適正職も見つからず、未だに見習いから職業を決められずにいる。 パーティーでは荷物持ち兼、交代要員。 全ての見習い職業の「初期スキル」を使えるがそれだけ。 ある日、新しく発見されたダンジョンにパーティーメンバーと潜るとモンスターハウスに遭遇してパーティー決壊の危機に。 パーティーリーダーの裏切りによって囮にされたロイドは、仲間たちにも見捨てられひとりダンジョン内を必死に逃げ惑う。 突然地面が陥没し、そこでロイドは『ステータスボード』を手に入れた。 ロイドのステータスはオール25。 彼にはユニークスキルが備わっていた。 ステータスが強制的に平均化される、ユニークスキルが……。 ステータスボードを手に入れてからロイドの人生は一変する。 LVUPで付与されるポイントを使ってステータスUP、スキル獲得。 不器用大富豪と蔑まれてきたロイドは、ひとりで前衛後衛支援の全てをこなす 最強の冒険者として称えられるようになる・・・かも? 【過度なざまぁはありませんが、結果的にはそうなる・・みたいな?】

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
空想の中で自由を謳歌していた少年、晴人は、ある日突然現実と夢の境界を越えたような事態に巻き込まれる。 目覚めると彼は真っ白な空間にいた。 動揺するクラスメイト達、状況を掴めない彼の前に現れたのは「神」を名乗る怪しげな存在。彼はいままさにこのクラス全員が異世界へと送り込まれていると告げる。 神は異世界で生き抜く力を身に付けるため、自分に合った能力を自らの手で選び取れと告げる。クラスメイトが興奮と恐怖の狭間で動き出す中、自分の能力欄に違和感を覚えた晴人は手が進むままに動かすと他の者にはない力が自分の能力獲得欄にある事に気がついた。 龍神、邪神、魔神、妖精神、鍛治神、盗神。 六つの神の称号を手に入れ有頂天になる晴人だったが、クラスメイト達が続々と異世界に向かう中ただ一人取り残される。 神と二人っきりでなんとも言えない感覚を味わっていると、突如として鳴り響いた警告音と共に異世界に転生するという不穏な言葉を耳にする。 気が付けばクラスメイト達が転移してくる10年前の世界に転生した彼は、名前をエルピスに変え異世界で生きていくことになる──これは、夢見る少年が家族と運命の為に戦う物語。

処理中です...