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一章 リアーデ編
29 余談
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カズがリアーデの街を出た三日後、冒険者ギルドでは、今日も木材屋のリンドウが依頼を出しに来ている。
リンドウは、カズさんが街を出でから、依頼を頼みに来るたびに、カズと親しかった受付のクリスパに相談していた。
「こんにちは木材屋の方ですね。今日も依頼の発注ですか?」
「ええ、また依頼を頼みにたいのだか」
「いつもと同じて宜しいですね」
「そのことなんだが」
「どうかされましたか?」
「依頼を受ける人を、ギルドの方で確認してくれないか」
「どういうことでしょうか?」
「カズさんに依頼をやってもらっていた時、お客さんに対して丁寧に対応してくれて、こちらとしてもとても助かったのです。そこで相談なんですが、これから依頼を受ける人達が、以前の時みたいに、ギルドカード更新の為だけの人は、できるだけ回して欲しくないんだ。また雑に仕事をしかねないから」
「なるほど。確かにそうですね。そのことでギルドの方でも、これからは対処していこうと思ってます」
「そうなのか! それは良かった」
「カズさんとまではいかなくても、丁寧に依頼をするように注意していくつもりです。その為に依頼を出しに来る方にも、仕事に納得がいかなければ、依頼書に完了のサインをしなくていいと、話すようにしています」
「そうですか。だかそれで暴れられたら、こちらが危険で被害だって出るかも」
「その場合は、ギルドの者が直ぐに状況確認などをして、対処したいと思います」
「それは助かる。では依頼を頼みます」
「かしこまりました。では依頼を受理いたしましたので、さっそく依頼を貼り出します。依頼料は、後日まとめてのお支払で宜しいですか」
「ええ、いつもと同じて頼む」
「はい確かに。それでは、またよろしくお願いします」
それからは、リアーデの冒険者ギルドでは、どんな小さな依頼でも誠意もってやるようにと、ランクに関係なく、依頼を受ける人達に、言われるようになった。
その頃、宿屋ココット亭の看板娘キッシュは、上の空で、仕事の手が止まっていた。
日付は変わり、カズが出ていった当日の夜は、クリスパがキッシュのことを思いココット亭に泊まりに来たが、キッシュ本人はカズの居た部屋で、一人その夜を過ごしていた。
この日ばかりは女将のココットも大目に見て、客室で寝るのを許したと。
翌日朝食を食べながら、クリスパがキッシュに、カズのことを聞いていた。
「ねぇキッシュ、カズさんのこと、どう思ってるの?」
「! クリ姉、急に何?」
「カズさんが出で行く時、無理してたのかなーって? それに昨夜は、カズさんが泊まってた部屋で寝てたみたいだし」
キッシュの顔が耳まで真っ赤になって、頭から湯気でも出てきそうだ。
「べ、別に良いでしょ……」
「別に良いけど。それで、結局キッシュはカズさんのことどう思ってるの?」
「し、しつこいなぁクリ姉は」
「いーじゃない本人も居ないんだから」
「私はカズ兄のこと……お兄ちゃんのようでもあるけど、お父さんみたいな感じもして、優しくて一緒に居ると安心するから好き!」
「一緒にいて安心ね。お父さん見たいって、何でも買ってくれるからじゃないの」
「もぉー。クリ姉は、カズ兄のことどう思ってるのさ!」
「あ! もうギルドに行く時間だ! いってきまーす」
「クリ姉ズルいよ! 私ばっかりに言わせて!」
「キッシュ、食器の後片付けやんな」
「でもお母さん、クリ姉ばっかり何にも話さないで……」
「クリスパも照れてるんだろ。さぁ仕事しなよ」
「は~い(私がカズ兄のことを好きって、クリ姉相手に何話してるんだろう)」
顔を赤くしながら、次こそは、クリスパにカズのことをどう思ってるか聞き出してやると、意気込むキッシュだった。
キッシュの話を誤魔化しココット亭を後にしたクリスパは、ギルドで依頼を受ける人達に、雑な仕事をしないように、依頼者に対しても、誠意を持って欲しいと、教え広める為に動き始めていた。
最初から上手く行くとは思ってないが、少しずつでも広まれば、ギルド評判もあがり、依頼を出す方も受ける方も、互いに利益になると言い、ギルドの職員に協力してもらい動き始める。
その為にココット亭へは、あまり行けなくなっていたが、カズのことを聞かれたくなかったのか、キッシュの居ない時に、こっそりと食事を食べに行っていた。
そうクリスパが張り切っている最中、こそこそとギルドを抜け出そうとしている人物がいた。
「ギルドを良くする為にやってくれるのは良いんだが、張り切り過ぎてオレの仕事を、これ以上増やさないでほしいな」
それに気付かないわけもなく、クリスパにガッシリと腕を捕まれギルドの奥へと連れてかれた。
「何を、こそこそと出で行こうとしてるんですか!」
「いやー、そのー。ちょっと街の見回り……」
「師匠、私をザブマスにしたのは、誰でしたか!」
「そ、それはオレだけど……」
「仕事を全て押し付けるためにですか!」
「そうじゃないが……たまには息抜きを……」
「そうですか、最近よく息抜きに行かれましたから、もう十分でしょう。とっとと部屋に戻って、溜まってる書類のをかたずけてください」
「あれを今日中にはちょっと……」
「言いたいことはそれだけですか? ……自分がサボってたから溜まったんでしょうが! 師匠なら弟子に迷惑をかけるな!」
「は、はい。分かった、やるからそんなに怒らなくても……(カズ君なんで行ってしまったんだ。戻って来て、クリスパを何とかしてくれ)」
「何を考えてるんですか! 余計なこと考えてないで、手を動かす! 今日は置いてある書類を、全部片付けるまで部屋から出てはいけませんから」
「さすがにそれは、厳しい過ぎるんじゃ……」
「仕事をサボってたんですから、自業自得です。ほら、手が止まってる!」
「カズ君が居なくて、寂しいからって、オレにあたらなくても……」
「ギルドマスターなんですから、この程度書類の量は余裕ですか。直ぐに追加をお持ちしますね!」
「い、いやこれ以上……」
「ギルドマスターなんですから、ギルドの為に、職員の手本にように、や・り・ま・しょ・う・ね!!」
この後ギルドマスターのブレンデットは、二日間ギルドで、溜まりに溜まった書類を、片付けさせられていた。
カズ達が、リアーデを出発して三日後の夕方、遠くに目的地の『大都市アヴァランチェ』が見えてきていた。
リンドウは、カズさんが街を出でから、依頼を頼みに来るたびに、カズと親しかった受付のクリスパに相談していた。
「こんにちは木材屋の方ですね。今日も依頼の発注ですか?」
「ええ、また依頼を頼みにたいのだか」
「いつもと同じて宜しいですね」
「そのことなんだが」
「どうかされましたか?」
「依頼を受ける人を、ギルドの方で確認してくれないか」
「どういうことでしょうか?」
「カズさんに依頼をやってもらっていた時、お客さんに対して丁寧に対応してくれて、こちらとしてもとても助かったのです。そこで相談なんですが、これから依頼を受ける人達が、以前の時みたいに、ギルドカード更新の為だけの人は、できるだけ回して欲しくないんだ。また雑に仕事をしかねないから」
「なるほど。確かにそうですね。そのことでギルドの方でも、これからは対処していこうと思ってます」
「そうなのか! それは良かった」
「カズさんとまではいかなくても、丁寧に依頼をするように注意していくつもりです。その為に依頼を出しに来る方にも、仕事に納得がいかなければ、依頼書に完了のサインをしなくていいと、話すようにしています」
「そうですか。だかそれで暴れられたら、こちらが危険で被害だって出るかも」
「その場合は、ギルドの者が直ぐに状況確認などをして、対処したいと思います」
「それは助かる。では依頼を頼みます」
「かしこまりました。では依頼を受理いたしましたので、さっそく依頼を貼り出します。依頼料は、後日まとめてのお支払で宜しいですか」
「ええ、いつもと同じて頼む」
「はい確かに。それでは、またよろしくお願いします」
それからは、リアーデの冒険者ギルドでは、どんな小さな依頼でも誠意もってやるようにと、ランクに関係なく、依頼を受ける人達に、言われるようになった。
その頃、宿屋ココット亭の看板娘キッシュは、上の空で、仕事の手が止まっていた。
日付は変わり、カズが出ていった当日の夜は、クリスパがキッシュのことを思いココット亭に泊まりに来たが、キッシュ本人はカズの居た部屋で、一人その夜を過ごしていた。
この日ばかりは女将のココットも大目に見て、客室で寝るのを許したと。
翌日朝食を食べながら、クリスパがキッシュに、カズのことを聞いていた。
「ねぇキッシュ、カズさんのこと、どう思ってるの?」
「! クリ姉、急に何?」
「カズさんが出で行く時、無理してたのかなーって? それに昨夜は、カズさんが泊まってた部屋で寝てたみたいだし」
キッシュの顔が耳まで真っ赤になって、頭から湯気でも出てきそうだ。
「べ、別に良いでしょ……」
「別に良いけど。それで、結局キッシュはカズさんのことどう思ってるの?」
「し、しつこいなぁクリ姉は」
「いーじゃない本人も居ないんだから」
「私はカズ兄のこと……お兄ちゃんのようでもあるけど、お父さんみたいな感じもして、優しくて一緒に居ると安心するから好き!」
「一緒にいて安心ね。お父さん見たいって、何でも買ってくれるからじゃないの」
「もぉー。クリ姉は、カズ兄のことどう思ってるのさ!」
「あ! もうギルドに行く時間だ! いってきまーす」
「クリ姉ズルいよ! 私ばっかりに言わせて!」
「キッシュ、食器の後片付けやんな」
「でもお母さん、クリ姉ばっかり何にも話さないで……」
「クリスパも照れてるんだろ。さぁ仕事しなよ」
「は~い(私がカズ兄のことを好きって、クリ姉相手に何話してるんだろう)」
顔を赤くしながら、次こそは、クリスパにカズのことをどう思ってるか聞き出してやると、意気込むキッシュだった。
キッシュの話を誤魔化しココット亭を後にしたクリスパは、ギルドで依頼を受ける人達に、雑な仕事をしないように、依頼者に対しても、誠意を持って欲しいと、教え広める為に動き始めていた。
最初から上手く行くとは思ってないが、少しずつでも広まれば、ギルド評判もあがり、依頼を出す方も受ける方も、互いに利益になると言い、ギルドの職員に協力してもらい動き始める。
その為にココット亭へは、あまり行けなくなっていたが、カズのことを聞かれたくなかったのか、キッシュの居ない時に、こっそりと食事を食べに行っていた。
そうクリスパが張り切っている最中、こそこそとギルドを抜け出そうとしている人物がいた。
「ギルドを良くする為にやってくれるのは良いんだが、張り切り過ぎてオレの仕事を、これ以上増やさないでほしいな」
それに気付かないわけもなく、クリスパにガッシリと腕を捕まれギルドの奥へと連れてかれた。
「何を、こそこそと出で行こうとしてるんですか!」
「いやー、そのー。ちょっと街の見回り……」
「師匠、私をザブマスにしたのは、誰でしたか!」
「そ、それはオレだけど……」
「仕事を全て押し付けるためにですか!」
「そうじゃないが……たまには息抜きを……」
「そうですか、最近よく息抜きに行かれましたから、もう十分でしょう。とっとと部屋に戻って、溜まってる書類のをかたずけてください」
「あれを今日中にはちょっと……」
「言いたいことはそれだけですか? ……自分がサボってたから溜まったんでしょうが! 師匠なら弟子に迷惑をかけるな!」
「は、はい。分かった、やるからそんなに怒らなくても……(カズ君なんで行ってしまったんだ。戻って来て、クリスパを何とかしてくれ)」
「何を考えてるんですか! 余計なこと考えてないで、手を動かす! 今日は置いてある書類を、全部片付けるまで部屋から出てはいけませんから」
「さすがにそれは、厳しい過ぎるんじゃ……」
「仕事をサボってたんですから、自業自得です。ほら、手が止まってる!」
「カズ君が居なくて、寂しいからって、オレにあたらなくても……」
「ギルドマスターなんですから、この程度書類の量は余裕ですか。直ぐに追加をお持ちしますね!」
「い、いやこれ以上……」
「ギルドマスターなんですから、ギルドの為に、職員の手本にように、や・り・ま・しょ・う・ね!!」
この後ギルドマスターのブレンデットは、二日間ギルドで、溜まりに溜まった書類を、片付けさせられていた。
カズ達が、リアーデを出発して三日後の夕方、遠くに目的地の『大都市アヴァランチェ』が見えてきていた。
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