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一章 リアーデ編

21 依頼をこなしてランクを上げよう 7 ギルマスと訓練 1

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「カズさん、今日もクリ姉と話があるんですか?」

「そう聞いてるから、夕食頃に来るはずだけど」

「最近クリ姉とばかり話てますね」

「ごめんね。キッシュだってクリスパさんと話たいよね」

「そういうつもりで言った訳じゃ……バカ」(ボソッ)

「え、なんて言ったの?」

「なんでもないです~」

「お店の入口で、何話してるの?」

「クリ姉ぇ! なんでもないよ。さて、夕食の支度手伝わないと」

「カズさん、キッシュと何の話してたの?」

「いや、たいしたことじゃないですよ」

「何、私には言えないの」

「そうじゃなくて、最近クリスパさんがここに来ても、俺とばかり話してるから、キッシュが寂しいんじゃないかと」

「ああ ! そういうこと。カズさんがダメね」

「え! 俺?」

「そのうち分かるわよ。それより、明日ギルマスと会ってもらうから」

「明日……分かりました。それで、他に話は?」

「それだけ」

「え、これだけ? その為だけに来たんですか?」

「そう。話はそれだけ。夕食を食べに来たついで」

「なんだ、話はついでか。それでしたら夕食まで少し時間があるので、ちょっと見てほしい物があるんですけど」

「何かしら?」

 今日買ったソーサリーカードをクリスパに見せ、店での経緯を話した。

「あそこの店に行ったの。置いてある物は値段に見あってるんだけど、店主に問題があるのよね。このカードも、街での相場はこんなもんよ」

「魔法のカードの使い方を、教えてもらいたんいですけど。見た目が少し違うので」

「これは『ノーマルカード』ね。別に特別なことはないわよ。ただ効果が表れる位置が、魔力を流す所以外と、広くなってるだけね」

「魔力を流すところ以外というと、生活で使うカードに、絵が書かれている所から、効果が発生すると」

「そう。明日ギルマスの前で使ってみると良いわ。向こうもそのつもりでしょうし」 

「いったいギルマスと、何をするんですか?」

「それは明日のお楽しみ」

「お楽しみって(ギルマス相手に、何が楽しみなんだか)」

「カズさんにクリ姉、夕食の仕度できたよ」

「さあさあカズさん、食事にしましょう。細かいことは気にしないで、明日になれば分かりますよ」

「明日って、クリスパさん……(他人事だからって気楽だな)」

 いつもように食事をしていると、クリスパが味を占めたのか、カズを見ながら一言『仕事の後に、一杯飲みたいなぁ』などと言ってくる。


 さすがに毎回お酒を差し入れはできない『サブマスなんだから、自分の方が稼ぎが良いんじゃないの!』なんてことは、言える訳がない。
 さっさと料理を食べ終わり、部屋に戻ることにしよう。
 そうすればキッシュ達と、話す時間が出来るだろう。
 は! まさか! 稼ぎの良い依頼を回してくる代わりに、毎回夕食の時にお酒を、せびってくるのか? 
 明日はギルマスに会うのか、気が重いな。
 いったい何をさせられるのやら……今日はしっかり身体を休めておこう。


 ◇◆◇◆◇


 翌日朝食を食べようと食堂に行くと、クリスパが既に居た。 

「おはよう。カズさん」

「あれ、今日は朝から居るんですね。泊まったんですか?」

「いいえ、今来たところ。今日はカズさんを、ギルマスの所へ案内するから、ついでに朝食も食べに来たのよ」

「ギルドで待っていれば、良かったんじゃないですか?」

「今日はギルドへは行かずに、他で待ち合わせなの。だから私が迎えに来たのよ」

「そうですか。それで、どちらへ行けば?」

「街の東南辺りに、他種族が暮らす区画があるの。そのとある場所で待ち合わせ」

「他種族の区画? 鍛冶屋のドワーフとかも、そこに住んでるんですか?」

「全員じゃないけどね。そこで仕事したりして、暮らしてるのよ。まぁ色々とある訳よ」

 他種族か、この街であまり見かけないけど、居るんだな。
 争いとかないから、穏やかな種族が暮らしてるのかなぁ。

「さあ朝食済ませたら行くわよ」

「はい」

 食事を済ませて、街のとある建物に案内され中に入ると、以前ギルドの素材受取部屋に見た、屈強な男性がそこには居た。

「師匠、カズさん連れてきたわ」

「来たか! 待ってたぞ」

「カズさん、こちらがリアーデ街の冒険者ギルドのギルドマスター『ブレンデッド』よ」

「どうも初めまして、ではないんですよね。カズです。よろしくお願いします」

「おう。ギルマスやってるブレンデッドだ。君のことはクリスパから聞いてるぞ」

「カズさん、別に緊張することないわよ。がさつで、声が大きいだけだから」

「酷いなクリスパ。上司で師匠だぞオレは」

「だったら部下で弟子のこと考えて、ギルドの仕事してください! 師匠が勝手にサブマスにしたんですから」

「相変わらずキツいなー。カズ君も大変な奴に目を付けられたな」

「大変なのは、仕事しない師匠です。私はもうギルドに戻りますから、カズさんのことをよろしくお願いします」

「おう任せとけ! その代わ……」

「ギルマスの仕事は、しっかり残しておきますから!」

「そんな……」

「カズ君、クリスパは厳しいな」

「……ノーコメント。同意しないでおきます」

「その言い方は、既にか」

 お互いに、クリスパに弱味を握られないようにと思う二人だった。

「それじゃカズ君、行こうか」

「どこに行くんですか?」

「これに触れて、魔力を流してくれればいい。クリスパと訓練したときに魔力を使ったろ、その程度だ」

「硝子いや水晶玉かな? なんですかこれ?」

「使ってみれば分かるさ」

 魔法適正を調べるときに、使ったのより数倍大きいな。
 万物ノ眼で、調べようかと思ったけど、クリスパさんのときみたいに察知されるかも知れないので、俺は素直に従った。


 カズは水晶玉に触れて魔力を流す、すると景色が変わり見知らぬ場所に居た。
 その直後に、ギルマスのブレンデッドも現れた。

「ここはギルド専用の訓練場で、実験場でもある。さっきの水晶玉は、転移の魔法が込められてる魔道具で、あれを使わないと、出入りできないんだ」

「実験場ですか。いったいここで何をすれば?」

「クリスパから事情は聞いている。君の力が、どの程度なのか確かめるためここに来てもらった。ここは強固な結界の中にあるから、安心して力を使ってくれ」

「やってみます。と言っても魔法もスキルも、殆んど知らないんですけど」

「そうだな……! ソーサリーカードを買ったと聞いたが、まずはそれを使って見せてくれ」

「持っている魔法のソーサリーカードは、エアースラッシュとファイアーボールで、あとは『火』のソーサリーカードです」

「じゃあその魔法のカードにしよう。順番に二枚とも使ってくれ。魔力は水晶玉に流した程度で、使い方は効果が出るところを、訓練場の中央に向けて使用だ」

「分かりました、やってみます」

 初めて使うのは魔法のソーサリーカード、威力は『弱』だからどのんなもんか。


 カズはエアースラッシュのカードを使用した。
 草原で使ったウィンドカッターと、似たようなものだった。
 続いてファイアーボールのカードを使う。
 サッカーボール程の火の玉が、カードから飛び出した。
 どちらのカードも使用後に、持っていた手から消滅して無くなった。

「ソーサリーカードは問題なく使うことができるか。次は魔法を使ってくれ」

「どの程度の魔力を込めて使えばいいですか?」

「とりあえず、ジャンピングラビットを捕らえに行ったときに、使った程度で良いぞ」

 言われた通りカズは、あのとき使った魔法を使用する。

「〈ウィンドカッター〉(うまくいった)」

「〈ライトニングショット〉(まあ、こんなもんだろ。次が問題だ。最小限をイメージして)」

「〈ライトニングボルト〉」

 前に出した手から、あのときと同じバリバリと音がして、訓練場の中央辺りに、30㎝程度の穴が空いた。(地面に向けて放っていた)

「聞いてはいたが『初級冒険者』としては、大したもんだな。それで魔力量はどの程度で放った」

「最小限にイメージして、使用しました」

「あれでか。今度は加減しないで、ライトニングボルドとらやを使って見てくれ。目標は、空けた穴の横でいいだろう」

「やってみます」

 今度は制限はしないで、思うまま感じで放った。

「〈ライトニングボルド〉」

 ドッガーン!!!!!

 先程とは違いの、けたたましい音をてて、先程空けた穴の横には、数倍以上はある大きさの穴を空けていた。
 カズは初めてファイアーボールを使い、岩を破壊したときのことを思い出した。
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