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一章 リアーデ編
19 依頼をこなしてランクを上げよう 5 名指しの依頼
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◇◆◇◆◇
異世界に来て、もう一週間が過ぎたか。
帰る為の手がかりと言えば、かつての勇者召喚の事か、遺跡で見つかった遺物(アーティファクト)を調べることくらいだけど、どちらも難しいな。
他の有力情報を得るためには、ギルドランクを上げないとダメか。
さて朝食を食べたらギルドに行って、依頼をこなさないと、クリスパさんにどやされちゃうな。
「おはようカズさん。昨日はクリ姉の機嫌直って良かったね」
「まったくだ。ギルドの受付では、いつもニコニコしてるのに、他に人が居ないとあんなに怒るなんて、クリスパさんこわ……キッシュなんでもないから」
「そういうことにしておきますね」
「な、なんのことかな……」
「ほらほら、朝食を食べたらギルドに行くんでしょ」
「そうだね。早く依頼をこなして、ランクを上げないと」
俺は朝食を済ませて、足早にギルドに向かった。
俺は今日か明日にはギルマスと会うのか……胃が痛くなる。
この世界に来て、こうもストレスを感じるなんて、ステータスだけが高ければ良いってもんでもないのか……経験不足だな。
この力が使えるようにならなければ、意味がないな。
そのために、ギルマスに会うと思えば……引きこもりたくなる。
ギルドに着き中へと入り、受付に居るクリスパの所へ行く。
「おはようございます。カズさん」
「お、おはようございます」
相変わらずの、素晴らしい営業スマイルだ。
「今日はカズさんに、名指しの依頼がきています」
「へ? Fランクなのに、名指しの依頼なんてあるんですか?」
「通常では、Cランク以上の人が名指しを受けることがありますが、今回の依頼は、アイテムボックスを持っているカズさんということもあり、なおかつ『ギルドの為』ということで、Fランクでも特別に許可しました」
「どこの誰が俺なんかを? しかもギルドの為?」
「木材屋の方です。なんでも仕事も早くて、相手の方に丁寧に接してくれるので、ありがたいとのことです」
「あの木材屋さんか」
「なんでも、以前に依頼を受けた人達は、ギルドカード更新の為にやるので雑だと、ギルドの方にも苦情がきてまして、なので今回は異例ですが、Fランクでも名指しの依頼を受けたんです。運搬の依頼ですが、冒険者ギルドの名誉回復の為に、しっかりやってください」
「雑な作業? そう言えば、そんなこと言ってたな」
「なので今日は、そちらに行って下さい」
「分かりました。早速行ってきます」
まさか名指しの依頼を受けるなんて、名乗っておいて良かった。
これでギルドへの貸しになればな…なんて、そんなわけないか。
数少ない受けた依頼の中で、もう三度目になる木材屋の依頼だ。
今日は何をするんだろう?
「こんちは。依頼を受けたカズです」
「おお来たか。昨日の夕方に『商業ギルド』から急に連絡がきて、今日大量の資材を運ばないといけなくってさ、それでアイテムボックス持ってるカズさんに、来てもらったんだ」
「そうだっんですか。全然構いませんよ。まだまだ新人の冒険者ですから」
「そういえば自己紹介してなかったな、俺はここの店主で『リンドウ』だ。よろしく頼む」
「よろしくお願いします」
「急ぎですまないな。昨日ギルドに申し込みに行ったのも時間ギリギリで、ダメかと思ったけど、クリスパって受付の女性に頼んだら、受諾してくれて助かったよ」
昨日クリスパさん何にも言ってなかったけど、名指しとか調子に乗ると思って、黙ってたのかな?
「まず運ぶ量が少ない所から頼む。三件で場所はこれに書いてある。配達したらこの紙に、受け取りのサインをもらってきてくれ」
簡単に書かれた地図と、品物が書いてある紙を渡された。
全て近所のようだ。
「商業ギルドに頼まれてる資材は、今準備しているから、先にその三件を終わらせてくれ」
「分かりました。じゃあ行ってきます」
三件分の荷物を【アイテムボックス】に入れて、すぐ配達に行く。
えーと、まずは昨日行った建築中の所へ追加資材と、あとは荷車を作ってる店に、露店を修理するための木材を広場へ配達と、ではとっとと済ませますか!
カズは建築中の所に資材を届けたあと、荷車を作ってる店に行った。
すると昨日木材屋が慌てていて『他に馬車を作ってる店へも木材を運んでくれ』と言ったのに、伝わっていなかったらしい。
だから木材屋に話を通して、配達にしてくれないかと頼まれた。
仕方がないので、広場への配達を済ませた後で良ければと言って、配達場所を聞き木材屋に戻ることにした。
「ハァー、二度手間だ」
配達を終えて、木材屋に戻り、馬車を作ってる店にも資材の運搬があると伝えると、申し訳なさそうに持っていく資材を用意してきたので【アイテムボックス】に入れて、急いで運んで行く。
追加の配達を終わらせて戻って来たら、商業ギルドに頼まれた資材の仕度ができたので、配達場所を聞いたら北の村だと言われた。
「この量を、北の村まで運ぶんですか!」
「さっきのことといい、いろいろと話が伝わってなくてすまない。かなり量があるが大丈夫か?」
ざっと見積もっても400㎏はあり、長い木材だと5mほどある。
「このくらいなら、ギリギリ大丈夫だと思います」
限界が、この量だと言っておいた方が良いだろう。
さすがに容量無限は言えないからな。
俺は次々と資材を【アイテムボックス】に入れていく。
「スゴいな全部入ったのか!」
「限界ギリギリですが、入って良かったです。早速北の村まで配達に行きます」
「毎回も急がしてすまないな。よろしく頼むよ。ギルドには追加の分も報告しとくから」
「了解しました。行ってきます」
北の村へは一度依頼で行っているから、場所は分かるので、すぐに北門から出て、走って向かうことにした。
急いでいるからといって、あんまり早く走ると、またクリスパさんに何か言われかねないので、適度のスピードで走って行くことにした。
街を出てから一時間ぐらい走ったら、村に近付いたので、あとは歩いて向かうことにした。
前回来たときは三十分ほどしか、かからなかったな。
「あ、しまった。村のどこへ運ぶか聞いてないや。困ったな……よし、あそこに行くか」
前来たときに、倒したイノボアを持って行った所に聞きに行く。
するとそのとき依頼を出しに行った『トニー』が居たので聞いてみた。
「こんにちは。トニーさんですよね?」
「はい。トニーですが何か。あれ、この前イノボアの討伐に来てくれた、カズさんじゃないですか! どうしたんですか?」
「実は木材屋さんの依頼で資材をもって来たのですが、村のどこへ運ぶか聞いて来なかったので、こちらで聞いてみようかと。元は商業ギルドから、頼まれた資材だと」
「商業ギルド……あ! 分かりますよ」
「そうですか良かった」
「それでしたら、この先二本目の角を左に行った所です。作りかけの建物がある場所に、人集まってるから分かりると思いますよ」
「ありがとうございます」
言われた場所に行くと、数人の男性達が何やら、あれが無いだ、これが足りないだとか口論していた。
見ていても仕方ないので、カズは恐る恐る尋ねてみる。
「あのーすいません。木材屋さんから頼まれた資材を運んで来たんですが、こちらでよろしいですか?」
すると、一人の男性が苛立っているようで、睨みながら答えてきた。
「なんだって、資材を持って来ただぁ? なんも持って無いじゃないか! こっちは忙しいんだから、邪魔をするな!」
凄い剣幕で怒鳴られたよ。
忙しいも何も、資材が無いから作業ができないんだろ。
こっちだって、目立たないように急ぎで来たのに、酷い言われようだな。
まあ実際に、見た目は手ぶらだから、仕方ないけどさ。
「ここで合っているようですし、今出します!」
「何! どこから出すって?」
カズは【アイテムボックス】に入れてきた大量の資材を、どんどん出していった。
「うわ! なんだこれは? アイテムボックスなのか?」
どうやらアイテムボックスを見たことがないのか、先程の怒鳴ってきた男性が驚いていた。
「これで全部ですが、確認して宜しければ、こちらの紙にサインしてください」
作りかけの建物から男性が一人出てきて、資材を確認して、サインをした紙を渡してきて謝ってきた。
どうやらここの責任者らしい。
「いやー、先程は内の者がすまないね。急に資材が足りなくなり、みんな仕事ができなくて苛立っていたんだ。昨日追加の資材を頼んだばかりで、こんなに早く来るとは思わなかった」
「まあ、そちらにも事情があるでしょうし、これで仕事ができるのであれば良かったです」
「急いで運んでくれて助かったよ。ありがとう」
今回は多少腹が立ったので、荷渡しが終わった後に、すぐに村を出て、気晴らしするのに、来るときの倍以上のスピードで走り、街へ戻った。
異世界に来て、もう一週間が過ぎたか。
帰る為の手がかりと言えば、かつての勇者召喚の事か、遺跡で見つかった遺物(アーティファクト)を調べることくらいだけど、どちらも難しいな。
他の有力情報を得るためには、ギルドランクを上げないとダメか。
さて朝食を食べたらギルドに行って、依頼をこなさないと、クリスパさんにどやされちゃうな。
「おはようカズさん。昨日はクリ姉の機嫌直って良かったね」
「まったくだ。ギルドの受付では、いつもニコニコしてるのに、他に人が居ないとあんなに怒るなんて、クリスパさんこわ……キッシュなんでもないから」
「そういうことにしておきますね」
「な、なんのことかな……」
「ほらほら、朝食を食べたらギルドに行くんでしょ」
「そうだね。早く依頼をこなして、ランクを上げないと」
俺は朝食を済ませて、足早にギルドに向かった。
俺は今日か明日にはギルマスと会うのか……胃が痛くなる。
この世界に来て、こうもストレスを感じるなんて、ステータスだけが高ければ良いってもんでもないのか……経験不足だな。
この力が使えるようにならなければ、意味がないな。
そのために、ギルマスに会うと思えば……引きこもりたくなる。
ギルドに着き中へと入り、受付に居るクリスパの所へ行く。
「おはようございます。カズさん」
「お、おはようございます」
相変わらずの、素晴らしい営業スマイルだ。
「今日はカズさんに、名指しの依頼がきています」
「へ? Fランクなのに、名指しの依頼なんてあるんですか?」
「通常では、Cランク以上の人が名指しを受けることがありますが、今回の依頼は、アイテムボックスを持っているカズさんということもあり、なおかつ『ギルドの為』ということで、Fランクでも特別に許可しました」
「どこの誰が俺なんかを? しかもギルドの為?」
「木材屋の方です。なんでも仕事も早くて、相手の方に丁寧に接してくれるので、ありがたいとのことです」
「あの木材屋さんか」
「なんでも、以前に依頼を受けた人達は、ギルドカード更新の為にやるので雑だと、ギルドの方にも苦情がきてまして、なので今回は異例ですが、Fランクでも名指しの依頼を受けたんです。運搬の依頼ですが、冒険者ギルドの名誉回復の為に、しっかりやってください」
「雑な作業? そう言えば、そんなこと言ってたな」
「なので今日は、そちらに行って下さい」
「分かりました。早速行ってきます」
まさか名指しの依頼を受けるなんて、名乗っておいて良かった。
これでギルドへの貸しになればな…なんて、そんなわけないか。
数少ない受けた依頼の中で、もう三度目になる木材屋の依頼だ。
今日は何をするんだろう?
「こんちは。依頼を受けたカズです」
「おお来たか。昨日の夕方に『商業ギルド』から急に連絡がきて、今日大量の資材を運ばないといけなくってさ、それでアイテムボックス持ってるカズさんに、来てもらったんだ」
「そうだっんですか。全然構いませんよ。まだまだ新人の冒険者ですから」
「そういえば自己紹介してなかったな、俺はここの店主で『リンドウ』だ。よろしく頼む」
「よろしくお願いします」
「急ぎですまないな。昨日ギルドに申し込みに行ったのも時間ギリギリで、ダメかと思ったけど、クリスパって受付の女性に頼んだら、受諾してくれて助かったよ」
昨日クリスパさん何にも言ってなかったけど、名指しとか調子に乗ると思って、黙ってたのかな?
「まず運ぶ量が少ない所から頼む。三件で場所はこれに書いてある。配達したらこの紙に、受け取りのサインをもらってきてくれ」
簡単に書かれた地図と、品物が書いてある紙を渡された。
全て近所のようだ。
「商業ギルドに頼まれてる資材は、今準備しているから、先にその三件を終わらせてくれ」
「分かりました。じゃあ行ってきます」
三件分の荷物を【アイテムボックス】に入れて、すぐ配達に行く。
えーと、まずは昨日行った建築中の所へ追加資材と、あとは荷車を作ってる店に、露店を修理するための木材を広場へ配達と、ではとっとと済ませますか!
カズは建築中の所に資材を届けたあと、荷車を作ってる店に行った。
すると昨日木材屋が慌てていて『他に馬車を作ってる店へも木材を運んでくれ』と言ったのに、伝わっていなかったらしい。
だから木材屋に話を通して、配達にしてくれないかと頼まれた。
仕方がないので、広場への配達を済ませた後で良ければと言って、配達場所を聞き木材屋に戻ることにした。
「ハァー、二度手間だ」
配達を終えて、木材屋に戻り、馬車を作ってる店にも資材の運搬があると伝えると、申し訳なさそうに持っていく資材を用意してきたので【アイテムボックス】に入れて、急いで運んで行く。
追加の配達を終わらせて戻って来たら、商業ギルドに頼まれた資材の仕度ができたので、配達場所を聞いたら北の村だと言われた。
「この量を、北の村まで運ぶんですか!」
「さっきのことといい、いろいろと話が伝わってなくてすまない。かなり量があるが大丈夫か?」
ざっと見積もっても400㎏はあり、長い木材だと5mほどある。
「このくらいなら、ギリギリ大丈夫だと思います」
限界が、この量だと言っておいた方が良いだろう。
さすがに容量無限は言えないからな。
俺は次々と資材を【アイテムボックス】に入れていく。
「スゴいな全部入ったのか!」
「限界ギリギリですが、入って良かったです。早速北の村まで配達に行きます」
「毎回も急がしてすまないな。よろしく頼むよ。ギルドには追加の分も報告しとくから」
「了解しました。行ってきます」
北の村へは一度依頼で行っているから、場所は分かるので、すぐに北門から出て、走って向かうことにした。
急いでいるからといって、あんまり早く走ると、またクリスパさんに何か言われかねないので、適度のスピードで走って行くことにした。
街を出てから一時間ぐらい走ったら、村に近付いたので、あとは歩いて向かうことにした。
前回来たときは三十分ほどしか、かからなかったな。
「あ、しまった。村のどこへ運ぶか聞いてないや。困ったな……よし、あそこに行くか」
前来たときに、倒したイノボアを持って行った所に聞きに行く。
するとそのとき依頼を出しに行った『トニー』が居たので聞いてみた。
「こんにちは。トニーさんですよね?」
「はい。トニーですが何か。あれ、この前イノボアの討伐に来てくれた、カズさんじゃないですか! どうしたんですか?」
「実は木材屋さんの依頼で資材をもって来たのですが、村のどこへ運ぶか聞いて来なかったので、こちらで聞いてみようかと。元は商業ギルドから、頼まれた資材だと」
「商業ギルド……あ! 分かりますよ」
「そうですか良かった」
「それでしたら、この先二本目の角を左に行った所です。作りかけの建物がある場所に、人集まってるから分かりると思いますよ」
「ありがとうございます」
言われた場所に行くと、数人の男性達が何やら、あれが無いだ、これが足りないだとか口論していた。
見ていても仕方ないので、カズは恐る恐る尋ねてみる。
「あのーすいません。木材屋さんから頼まれた資材を運んで来たんですが、こちらでよろしいですか?」
すると、一人の男性が苛立っているようで、睨みながら答えてきた。
「なんだって、資材を持って来ただぁ? なんも持って無いじゃないか! こっちは忙しいんだから、邪魔をするな!」
凄い剣幕で怒鳴られたよ。
忙しいも何も、資材が無いから作業ができないんだろ。
こっちだって、目立たないように急ぎで来たのに、酷い言われようだな。
まあ実際に、見た目は手ぶらだから、仕方ないけどさ。
「ここで合っているようですし、今出します!」
「何! どこから出すって?」
カズは【アイテムボックス】に入れてきた大量の資材を、どんどん出していった。
「うわ! なんだこれは? アイテムボックスなのか?」
どうやらアイテムボックスを見たことがないのか、先程の怒鳴ってきた男性が驚いていた。
「これで全部ですが、確認して宜しければ、こちらの紙にサインしてください」
作りかけの建物から男性が一人出てきて、資材を確認して、サインをした紙を渡してきて謝ってきた。
どうやらここの責任者らしい。
「いやー、先程は内の者がすまないね。急に資材が足りなくなり、みんな仕事ができなくて苛立っていたんだ。昨日追加の資材を頼んだばかりで、こんなに早く来るとは思わなかった」
「まあ、そちらにも事情があるでしょうし、これで仕事ができるのであれば良かったです」
「急いで運んでくれて助かったよ。ありがとう」
今回は多少腹が立ったので、荷渡しが終わった後に、すぐに村を出て、気晴らしするのに、来るときの倍以上のスピードで走り、街へ戻った。
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