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一章 リアーデ編

17 依頼をこなしてランクを上げよう 3 素材の買い取り

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 素材受取場と書いてある扉を開けて部屋に入ると、中には直ぐカウンターがあり、その横に大きな台が置かれている。
 カウンターには見るからに屈強な男性が、エプロン姿で立っていた。

「いらっしゃい。本日の用は、買い取りか? それとも獣かモンスターの解体か? でなければ依頼品の引き渡しか?」

「素材採取の依頼を受けたので、その素材を持ってきました」

「おおそうか。ならここで受け取るから、素材と依頼書を出してくれ」

 【アイテムボックス】から、ジャンピングラビット五体を出し、大きな台の上に置き、依頼書をカウンターの上に出した。

「ん? こいつは毛皮だけでいいようだが、解体はこっちでやって良いのか? 解体費がかかるぞ」

「俺解体できないので、その方が助かります。それで解体費は、どの程度しますか?」

「こいつだと、五体で銀貨二枚かな」

 銀貨二枚か……まぁ仕方ないな。

「分かりました。それでお願いします」

「肉はどうする? 持って帰るか? それともこっちで買い取るか?」

「買い取ってもらえるんですか?」

「おう。モンスターの肉でも、こいつは需要があるからな」

「ん!? 『モンスター!』ジャンピングラビットって、獣じゃなくて、モンスターだったんですか!」

「なんだ、知らなかったのか。露店でも揚げた物が売ってるんだがな。これがまた麦の酒に合うんだ!」

「買い取り額って、どのくらいですか?」

「状態も良さそうだから、一体で銅貨五枚かな」

 う~ん。これなら残りのジャンピングラビットも買い取ってもらうか。

「すいませんが、あと四体も買い取って下さい。二体分の肉は持ち帰りで」

 【アイテムボックス】から、残りのジャンピングラビットを出して台の上に置く。

「なんだまだあるのか」

「ちょっと多く倒してしまったもんで」

「どれどれ、一体傷があって安くなるが、構わないな」

「ええ良いです。お願いします」

「依頼の毛皮は別にした額だか、毛皮が三枚分で銀貨二枚と銅貨四枚で、肉が六体分で銀貨三枚で、傷がある一体は丸々で銅貨五枚だ。そこから解体費、銀貨三枚と銅貨六枚を引いた額だが良いか?」

 えーと、合計で銀貨五枚と銅貨九枚(5,900GL)で、解体費を引いた金額が銀貨二枚と銅貨三枚(2,300GL)か、半分以下になっちゃうな。

「それで構いません。お願いします。それで、解体費って物によって変わりますか?」

「うちはよほど特殊な物か、大型じゃなければ基本一体で銅貨四枚だ」

「自分で解体できるようになった方が良いですかね?」

「そうだな。冒険者としてランクを上げてやっていくなら、解体ぐらいはできないと稼ぎも減るぞ!」

「分かりました。ありがとうございます」

 先に二体を解体して、その肉を渡された。

「そんじゃあ、これが持ち帰り用の肉だ。あとは依頼書を受付に出して、金を貰ってくれ」

「はい」

 買い取り金額が書かれた紙と、依頼書を受け取り、肉は【アイテムボックス】に入れた。
 カズは素材受取部屋を出て、クリスパ居る受付に行く。

「あのこれ依頼しょ…」

「素材の受け渡しは終わりましたか。それでは、こちらが買い取り金額と、依頼の報酬です」

「は、はい(クリスパさんさっきも話遮ってきたけど、機嫌が悪いのかな?)」

 カズが買い取りと、依頼の報酬代金を受け取ろうと手を出したら、クリスパにカウンター内へと軽く引っ張られ、小声で話しかけられた。

「カズさん、今夜も話がありますから、仕事が終わったら宿にいきます」

「あのう、俺何かしま…」

「い・き・ま・す・か・ら!」

「は、はい(なんか怒ってるよ。なんでだ? どうてして怒ってるんだ?)」

「それではお疲れ様でした。また明日から頑張ってください」

「は、はい……(女性ってこんなに変わるの? 怖い怖い)」

 足取り重くギルドを出て、ココット亭へと帰る道すがら、自分のことを打ち明ける相手を間違えたかとカズは思った。
 そう考えているうちに、ココット亭に着いた。

「カズさんお帰りなさい」

「ただいま。キッシュ(あぁ、なんか安らぐな」

「あの、実はカズさんに、謝らなければならないことがあって」

「俺に? キッシュに謝られるようなことを、された覚えはないけど」

「今日クリ姉に、お母さんが作ったお弁当を届けに行ったんですけど、そのときにカズさんが昨日言ってた、クリ姉の印象を、つい喋っちゃったんです」

「俺が言ってたクリスパさんの印象……? 『美人だけど怒ると怖い』ってあれ言っちゃったの」

「ごめんなさい。つい口が滑って」

「道理で機嫌が悪いと思った。でも『怒ると怖い』だけなら未だしも『美人』と言ってるから、そこまで怒らなくても。キッシュも一応フォローはしてくれた?」

「フォローってなんですか?」

「俺が悪気があって言った訳じゃないって、クリスパさんに伝わってるかなって」

「う~ん。クリ姉『美人』って言ったときは照れてたけど『怖い』って言ったときは、顔が少し引きつってた。でもカズさんは、初めて会ったときの印象を言っただけだから、悪気はないよってクリ姉には言ったけど……」

「言ったけど、どうしたの?」

「クリ姉が『またか』って小声で言ってた」

「これはやっぱり、お詫びをした方が良いかな。ねぇキッシュ、クリスパさんの好きな物何か分かる? 食べ物でも良いし、服とかでも」

「出て行く前のクリ姉は服とかより、冒険者として使える物が欲しがってたよ。だけど今のクリ姉は……分からないや。久しぶりに会って、まだ二日しかたってないから」

「それもそうか」

「あ! でもお酒好きなんじゃないかな。昨日美味しそうに飲んでたし」

「それじゃあ、お詫びのしるしにお酒を買いに行ってくるか。早くしないとクリスパさんが来ちゃうから。キッシュ何が良いか選んでくれないか」

「えー、私まだお酒飲めないもん。なんとなくでも良いからさ、キッシュが選んでくれたら、クリスパさんも喜ぶでしょ」

「カズさん、私を出しに使ってませんか」

「あ、やっぱり分かる?」

「あからさま過ぎますって。でも元はと言えば、私が口を滑らせたのが原因ですから、協力はしますよ」

「ありがとうキッシュ。早速行ってくれる? 宿の仕事は大丈夫?」

「大丈夫です。お客さんの相手も仕事ですから」

「後で女将さんに、怒られないようにしてよ。クリスパさんどころか、女将さんにも怒られたら、帰って来れないよ」

「カズさんは心配性だな。大丈夫大丈夫」

 ハァー……以前から仕事で失敗して怒られると、その日はずっと引きずるんだよな。
 異世界に来たからって、なおらないよなぁ。
 癒してくれるアニメも漫画もゲームも無い……辛い。

「カズさん、カズさん!」

「あ、うん何どうしたキッシュ?」

「どうしたじゃないですよ、ボケーとして、このお酒で良いですかって、聞いてるんです」

「あぁ、良いね。キッシュが選んでくれたお酒にしよう。カズさんあとこれも」

「この前のジュース?」

「ほらクリ姉も飲むかも知れなから、お酒が嫌でもジュースなら……」

「キッシュが飲みたいだけじゃないの?」

「わ、私は別に、余ったら貰うけど……クリ姉の為にね」

「本当に本当ですか? キッシュさん」

 挙動不審なキッシュ

「はいはい。じゃあジュース一本が、今回のキッシュへの報酬で良いかな」

「カズさんがどうしてもって言うなら、私は構わないけど」

「キッシュ、口角が上がってるよ」

「口角?」

「口の端が上がって、笑顔になってるよ。キッシュは喜んでるのが、すぐに分かるね」

 顔を真っ赤にして、両手で顔を隠すキッシュ。

「そんなにまじまじ見ないでください。恥ずかしい」

「さあ買ったら早く戻ろう。クリスパさんが来ていたら、余計に怒らせちゃうから」

「わ、分かってます。カズさん行きますよ」

 顔を見られたくないのか、キッシュは早足でカズの前を歩き、ココット亭へと戻る。


 酒とジュースで、銀貨四枚の出費は仕方ない、ここはハッキリとお詫びをして、明日から、気持ちよく依頼をこなして行きたいからな。


 ココット亭に戻り、ジュースをキッシュに渡しクリスパが来るのを待つ。
 暫くすると、宿の入口の扉が開きクリスパがやって来た。

「クリ姉お帰り。カズさんが待ってるよ」
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