上 下
17 / 714
一章 リアーデ編

15 依頼をこなしてランクを上げよう 1 目標ランク

しおりを挟む
「ほら、これでも飲んで目を覚ましな。ハーブティーだよ」

「ありがとうございます」

 女将のココットが出してくれたハーブティーは、ほんのりミントに似た香りがした。

「スッとして目が覚める」

 カズがハーブティーを飲んでいると、食堂の入口から、クリスパと起こしに行ったキッシュが入ってきた。

「カズさんおはよう。昨日は話の途中で寝ちゃってごめんなさい。ベットまで使わせてもらって」

「そうだよクリ姉ぇ。カズさんここで寝てたんだから」

「いいよ別に(クリスパさん昨夜の話、夢だと思ってくれればいいんだけど)」

「さあ座わりな朝食だよ! なんの変哲もないけど」

「久しぶりに食べる義母さんの朝食だもん、私には特別よ」

「あはははっ。何を言ってるんだい。こんなだったら毎日来れば良いさ。いくらだって食べせてやるよ」

「フフッ、それもそうね。これからいつでも来れるからね。さてと、朝食を食べたらギルドに行かないと。カズさん一緒に行くでしょ」

「そうですね、俺も依頼を受けたいですし」

 朝食を済ませたカズとクリスパは、ココット亭を出でギルドに向かった。

「カズさん、昨夜の話なんだけど、ギルマスには話しておきたいわ」

「そうですか。やっぱりそうなりますか(覚えてたか)」

「でもね、ギルドに登録したばかりの新人のことを話しても、信じてもらえないと思うの、だから『Dランク』まで上がってから話そうと思うわ。それまでは、何となくで話をしておくから」

「Dランク……俺まだFランクですよ」

「大丈夫。Eランクにはあと七件から八件依頼をこなせばすぐに上がれますし、その後は私が良さそうな依頼を回すから安心して。だからガンガン依頼をこなしていって!」

「ガンガン…ですか……(スパルタですか。そのガンガンが、何だかよく分からない依頼を回されそうで、怖いんですけどって言いたい)」

「さあ着いたわ。暫くの間ギルド内では、ただの顔見知りってことで。お互いね」

「分かりました(ハァー……とりあえず混む前に、依頼書見に行くか)」


ーーーーーーーーーー


・薬草採集 十本一束 銀貨一枚 期限なし

・毒消草採取 十本一束 銀貨一枚 期限なし

・ジャンピングラビットの毛皮五匹分『ただし状態良好のみ』銀貨七枚

・木材配達 街中の指定した場所への配達『急ぎ』 銀貨五枚

・北の村から荷物の運搬 イノボアの毛皮を街の服屋工場へ配達 銀貨八枚

・北の村から荷物の運搬 イノボアの肉を街の肉屋へ配達 銀貨八枚 


ーーーーーーーーーー


 う~ん、低ランクの依頼はこんなもんか。
 北の村からの荷物は、先日の依頼で倒したイノボアだろうし、入れ違いになった冒険者と鉢合わせになって『一日でどうやって大量のイノボアを倒した?』とか聞かれたら面倒だし、それ以外の依頼を受けるか。
 ジャンピングラビットって生き物も気になるし、魔法の練習もしたいからこの依頼と、木材配達は最初にやった所だから行きやすいからこれにするかな。
 街の道を覚えるにはちょうどしな。
 薬草採取は依頼継続中だから『ジャンピングラビットの毛皮』『木材配達』『毒消草採取』の依頼書を持って、受付のクリスパさんの所に行くか。

「こんにちは。今日もいろいろな依頼を受けますね。頑張ってください」

 クリスパはにっこりと微笑んだ。

「はい。ありがとうございます(営業スマイル! プロだな)」

「あ、ちょっと」

 クリスパが手招きして、カズに小声で話す。

「街の外で魔法の練習するのは良いですが、くれぐれも魔力を加減して、気を付けてよ!」(小声)

「分かってますって。騒ぎになるような事は、したくないですから」

「訓練のときみたいに魔法はイメージが大事だから、威力を押さえるイメージで、魔力も押さえて使いなさいよ」

「分かってます。分かりましたから(なんか子供にしつけしてるみたいだな)」

 急ぎと書いてあったので、カズはギルドを出て木材屋に向かった。

「こんにちは。配達の依頼を受けて来ました」

「あれ!? この前来てくれた人か」

「はい。先日はどうも」

「いやぁ、あのときは助かったよ。またあんたが来てくれたなら、こっちも有難い。街の中だけでやる依頼だと、ギルドカード更新のために、雑にやる奴も多いからさ。特に俺の所みたいに力仕事だと、なおさらなんだ。それでさっそくだが、配達頼む」

「分かりました。今日はどこへ運びましょうか?」

「建築中の所にこっちの木材を、修理中の家にはこの木材で、この前行った家具屋には木材とこの金具を持って行ってくれ。建築中の所は、量が多いが大丈夫か?」

 けっこう数が多いな……アイテムボックスに入れてくか。
 場所場所で容量が少ないって言って使えば、最初だけでその内目立たなくなるだろう。
 以前商人とかは、持ってる人も居るって言ってたからな。
 それにいつかミスって、ココット亭のときみたいに、バレるかもしれないし。

「大丈夫です。容量少ないですが、アイテムボックス使えますから。これくらいならギリギリ入ります」

「アイテムボックス! 良いもん持ってるんだな」

「容量少ないですがね」

 カズは置いてあった各種木材を【アイテムボックス】に入れた。


 ステータス画面みたいに、中に入ってる物のリスト出るかな?
 う~ん……アイテムボックス確認…かな?


 カズが思うと半透明のアクリル板のようなものが出て、アイテムボック内のリストが表示された。


 お、出た! やってみるもんだな。
 『家具屋と修理用に建築資材』届ける場所別に分けられてるな。
 これは便利だ! さてと順番的には建築資材に修理用で、家具屋が最後だな。
 よし、早く済ませるか。

「こんにちは。建築の木材運んできました。ここに置けば良いですか?」

 カズは一件目の配達を済ませて次へ行く。

「こんにちは。修理用の材料運んできました」

 それをも済ませて、最後の家具屋へ配達に行く。

「この前どうも。木材と金具を運んできました」

 カズは二時間もかからず配達を終わらせた。
 木材屋に戻ったカズは、依頼書にサインをしてもらう。

「配達終りましたので、依頼書にサインお願いします」

「アイテムボックス使えるにしても早いな! まあこっちは助かるからいいが。また頼むよ」

「はい。あ、俺ガズって言います。よろしくお願いします」

 カズは一度ギルドへ報告に戻った。

「あらカズさん。依頼はどうしたんですか?」

「木材屋の依頼が終わったので報告と、ジャンピングラビットが出現する場所を聞こうかと」

「……ちょっとこっちへ」

 クリスパに手招きされて、カズは受付を覗き込むようにした。

「あのう、何か?」

「何かじゃないでしょ。終わるの早過ぎるのよ。目立つわよ」

「木材屋で、アイテムボックスを使えること言いましたから。凡ミスして、アイテムボックス持ちだと目立つより、先に容量が少ないって言って使ってった方が、後々面倒にならないかと」

「う~ん……そうかも知れないけど、先に言ってよ。それこそ面倒になったら……もういいわ。今度から気を付けてよ!」

「は、はい。なんかすいません。クリスパさんに全部話してから、あんまり隠して過ごしていてもしんどいですし、それに他に使える人も居るって聞いてたもんですから、別に良いかと」

「ハァー。ジャンピングラビットだったわね。西門を出たら少し南の方に見える長い草があるから、その草原辺りにいますから。くれぐれも魔法は、気を付けて使ってくださいね。はいこれ、木材配達の報酬」

「わ、分かってますって。そんなキツく言わなくても……行ってきます」

 クリスパの素性知ってから、急にあたりが厳しくなったとカズは思った。
 女性の接し方が、余計に分からないと思ったカズだった。
 昼飯用に広場の露店で、何か買ってから、カズは西門から出て、言われた長い草のある草原に移動した。


 さてと、どこにいるかな? マップで探せるか、どれどれ……。


 【マップ】には、黒い点が幾つか動いてるのが分かる。

 黒い点……なんだ? 獣なら灰色のはずじゃあ。
 ジャンピングラビットじゃないのかなぁ?
 草が長過ぎで、ぜんぜん見えないや。
 どうするか……魔法の練習がてら、草を刈ればいいか。
 ファイヤーボールだと焼け野原になってしまうし、ジャンピングラビットだったら、丸焼きになっちゃうから駄目だ。

 そう言えばこの世界で使える、他の魔法名知らないや。 
 う~ん……アニメやゲームに出てきた魔法をイメージしながら使ってみるかな。
 魔法はイメージが大事って、言ってたからな。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

異世界バーテンダー。冒険者が副業で、バーテンダーが本業ですので、お間違いなく。

Gai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,364pt お気に入り:664

ナイナイ尽くしの異世界転生◆翌日から始めるDIY生活◆

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:120pt お気に入り:142

婚約者の義妹に結婚を大反対されています

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:43,964pt お気に入り:5,001

異世界に飛ばされたおっさんは何処へ行く?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:9,549pt お気に入り:17,949

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:6,987pt お気に入り:133

【R18】俺様CEOの子どもを出産したのは極秘です

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:12,484pt お気に入り:686

処理中です...