11 / 770
一章 リアーデ編
9 女の勘 と 討伐依頼
しおりを挟む
「……ん!!」
名前 : クリスパ
称号 : リアーデ冒険者ギルド サブ・ギルドマスター
種族 : 人
年齢 : 24
性別 : 女
職業 : 魔法剣士
ランク: B
レベル: 62
力 : 868
魔力 : 744
敏捷 : 578
運 : 36
強よ! この若さで『レベル62』しかも『サブ・ギルドマスター』って、ここのギルド『No.2』じゃないか! ……しまった、凝視しすぎたか。
席を立ったクリスパが、カズに寄っていく。
「あ、あのう、何か(ち、近い)」
クリスパが周りには聞こえないように、小声で話す。
「カ・ズ・さ・ん! 何かスキルを使って、私のこと調べましたか?」
いっ……! なんで分かったんだ?
「なんのことでしょ…」
「私こっそり覗かれるの嫌いでして、正直に話せば許してあげますよ」
顔が笑ってるが怖い。
「ご、ごめんなさい。先程の話で、職員が取り押さえると言っていたので、どれほど強いのかと、ステータスを……『サブマス』だとは」
「あら! 本当に正直に話ましたね。大抵の人は、しらを切ろうとしますが」
「うっ…… でもどうして、分かったんですか?」
「それは、女の秘密! なんてことはないんですけど、こういったお仕事してますと、色んな方を見ますから、なんとなく『女の勘』です。ブラフですね」
「参りました。あのう、もししらを切っていたら」
「さぁ、どうなっていたでしょうかね。フフフっ」
こ、怖い、女の人がもう怖い。
「じゃあ、これからカズさんにはギルドのために、どんどん依頼をこなしてもらわないといけませんね!」
「は、はいです」
「私がサブマスだってことも、分かったんですよね。気付いている人は少ないので、ナイショですよ」(小声)
クリスパはカズの顔に、自分の顔を近付けて話した。
「分かりました(か、顔が近い)」
「それでは、私は仕事に戻りますので、カズさんも依頼書を見に行って下さい」
「ちなみに、もう一人居た受付の娘(こ)は、一般人と変わりませんから、覗き見したらダメですよ」
そう言ってクリスパは、受付の奥へと戻って行った。
見透かされてる、本当に女の勘か? 何か感知スキルでも使ってたのかな?
……いやあれは『女の勘』という特殊スキルだ!
依頼書が貼ってある場所が空いたので、カズは残った依頼を見に行く。
できるだけ数をこなすか、高収入の物があればそれやるか。
もう暫くこの街に居るなら、宿屋じゃなくて、住むとこを探した方がいいか。
依頼書を見たが、Fランクだと殆どが街の雑用で、銀貨一枚程度の物ばかりだった。
そこでカズは一つ上の、Eランクの依頼をやってみることにする!
ーーーーーーーーーー
・薬草採集 十本一束で銀貨一枚 期限日なし
・近くに出没する『ジャンピングラビット』五匹討伐。銀貨五枚 素材買い取り可 期限 二日
・北の村に大量発生しているイノボアの討伐(狩)、期限日『本日から二日、急ぎ』銀貨二枚。イノボアは村が引き取る、一匹につき銀貨一枚~二枚『討伐数制限有り』
ーーーーーーーーーー
薬草は期限日がないから、受けておいて良さそうだな。
あとは、北の村に出るイノボアの依頼内容を、受付で聞いて決めるか。
うまくすれば、まとまった金額が入りそうだ。
受付に行くと、初めて見る人がいた。(クリスパは居ない)
「あのうすいません、北の村に出るイノボアの、依頼内容を聞きたいのですが」
「はい。これは今日来た急ぎの依頼ですね。北の村でイノボアを『討伐(狩)』して、倒したイノボアは村で引き取るとのことです。早くても二日は掛かると思われるので、泊まる場所は村が提供するそうです。今回はイノボアの引き取り額が上乗せなので、討伐(狩)報酬が低く設定されています」
「イノボアの買い取り額って、どの程度になるかわかりますか?」
「そうですね、北の村だと相場は中型で銀貨二枚(2,000GL)でしょうか。状態にもよりますが」
「そんなもんなんですか? 以前に西の村(最初に訪れた村)で、このくらいのイノボアを、金貨三枚(30,000GL)で買い取ってくれましたが?」
カズは両手を広げて、イノボアの大きさを教えた。
「そのイノボアは大型のようですね、西の村ですと、この時期イノボアは貴重な食材ですし、その大きさなら毛皮も良さそうなので、高く買い取ってくれたと思いますよ。状態も良かったのでは?」
そう言えば、買い取ってくれるとき、食材が少なくなってきたとか言ってたような……あの村ではイノボアって貴重なのかなぁ。
「あとは、西の村ですと人の行き来が少ないので、街に比べると色々な物が、少々高いですね。それに、以前にイノボアが大量発生した事がありまして、その討伐いらい、あの近くにある森のイノボアが、大幅に減少したと聞きます」
だから買い取り額が高いのか!
そうすると、あの時の宿代安かったんじゃ?
ココット亭に比べたら高いから、プチぼったくりだと思ったけど、そうじゃなかったみたいだ。(ごめん宿屋のポトフさん)
そんなことを思い返し、カズは心の中で謝罪をすませ、気をとりなおして、依頼を受けることにした。
「この薬草採集と、北の村でのイノボア討伐の依頼を受けます」
「受けたまりました。カズ様は冒険者の登録したばかりですので、討伐依頼は無理なさらずにしてくだい。あとこの討伐依頼は、明日まで貼り出されますので、後から他の冒険者さんが行くかも知れないので、そこのところは、よろしくお願いします」
「分かりました。村までの道をおしえてもらえますか?」
「街の北にある門を抜けたら道の先に山が見えますので、その麓(ふもと)にあるのが北の村です。今から行けば、お昼頃には着くと思います」
「分かりました。ありがとうございます」
早く行けば、それだけ多く倒せるかもしれないな。
人数が増える前に急いで村に行くか。
冒険者ギルドを出て、その足で街の北門から出て、先に見える山の麓の村に向かって行く。
同じ方向に行く人はいないみたいだから、軽く走って行こう。
今からなら、お昼頃には着くって言ってたから、道中誰もいなければ三十分もかからんだろ!
カズが走り出して暫くすると、同じく村に向かって歩いてる人が見えたので、速度を落として声をかけてみることにした。
どうやって声かけよう……(素通りしようと思ったけど同じ方向に行くしな)
「あのう、あなたも北の村に行かれるんですか? (って当たり前か村しかないし)」
「え! そうですが、あなたは?」
「俺は冒険者ギルドで、依頼を受けて北の村に行くところです」
「朝一に依頼を出しに行ったのに、もう来たんですか!?」
「依頼を出しに行った? 村の方ですか?」
「そうです。村長の息子で、村の代表として依頼を出しに行った『トニー』と言います」
「依頼を受けたカズです。よろしく」
カズはそのまま、トニーと一緒に歩いて村に向かい、話を聞くことにした。
「それで依頼の内容ですが、イノボアの討伐(狩)で、倒したイノボアは、村が引き取るとのことでよろしいので?」
「はいそうです。村の先にある山から、大量にイノボアが発生しまして、倒したイノボアは状態にもよりますが、一匹につき銀貨一枚から二枚で引き取ります。状態より金額が変わりますが」
「できるだけ無傷の方がいいと?」
「そうですね、毛皮も使いますので傷が少ない方がいいです。あと、数はいますが殆んどが小型のイノボアですので、今回は『五十匹から六十匹』位までと数は決まってます」
「数を制限してるんですか?」
「はい。こういった大量発生は数年に一度はあるのですが、討伐(狩)をするのに、発生した数の半分程までにしないと、西の村でのように、殆んどいなくなってしまいますから。なのである程度の数を把握してから、依頼を出しに行くのです」
「なるほど。狩るにしても、増えすぎず、減らしすぎず、調節しているわけですか」
「ええ。なので今回は、多くても六十匹ほどに」
依頼の話をしていたら村に着いたので、討伐(狩)をする場所と、イノボアを持ち込む所を聞いて、直ぐ向かうことにした。
「場所は、山から村の裏にある畑周辺です。今は畑に何も植わってないので、中に入っても大丈夫です。倒したイノボアは、そこの角にある建物に、日暮れまでに持って来てください。今晩はそこの二階を、使ってください」
「分かりました。では、早速行ってきます」
「あとイノボアを運ぶのに、村の出口にある『荷車』使ってください」
「遠慮なく使わせてもらいます」
そのまま言われた畑に向かって行った。
暫く行き村を出ると畑が広がっている。
山の麓(ふもと)に黒い生き物が走り回ってるのが見えた。
もちろんイノボアだ!
以前倒したのと比べると、半分以下のサイズだった。
カズは落ちている手頃な石を拾い集めながら、荷車を引いて近づいて行く。
カズはこの程度かなと腕を振り下ろし、石をイノボア目掛けて投げた。
「ブヒィー」
命中! イノボアが吹き飛んで動かなくなった。
それを見ていた他のイノボアが、山に向かって、逃げて行こうとしていたので、急いで走り追い付き、一匹イノボアを蹴り飛ばした。
蹴り飛ばしたイノボアが他のイノボアに当たりさらに他のイノボアにと、一度に三匹倒した。
「少し強く蹴りすぎか」
蹴ったイノボアの骨が折れて、腹の辺りが陥没していた。
これではダメなので、カズは石で攻撃していった。
当たったり外れたりで計十五匹のイノボアを倒した。
それをすべて【アイテムボックス】に入れて、場所を畑から山にうつした。
荷車は麓(ふもと)に置いておいた。
山まで来たが、イノボアが見あたらないので、カズは少し離れた木の陰に隠れて様子を伺うことにした。
なんかあっちの方に、居るような気がするんだけどな?
そのとき視界の隅にある【マップ】に『灰色(グレー)の丸い点』が幾つか映って動いてる?
中央の白い点が自分だから、もしかしたらと、カズは隠れながら近づいてい行く。
灰色の点が近づいて来る……やっぱりイノボアだ!
って事は、マップを見ればイノボアの場所がわかるぞ!
でもなんで急に、マップに映りだしたんだ……? まぁいいや。そのことは後回しにするか、今はイノボアだ。
それから、木々に隠れながら、石を拾い投げ、狙い投げ、逃げられても、マップで位置が分かるため、隠れながら近づいて石での攻撃を繰り返し、回収しながら数時間、随分と倒したのでカズは終わりにした。
「ここは、どの辺りだ? 日暮れまでにイノボアを持っていかないとな」
マップをの範囲を広げてみる。イノボアは離れた所に、数十匹ほど映ってはいるが、アイテムボックスには、四十五匹も入っているので、修了することにした。
村から結構離れた所に居たので、荷車を回収して急いで戻る。
村の手前で誰にも見られないように【アイテムボックス】からイノボアを取り出し、荷車に山盛りに乗せて、言われた建物に向かって行った。
一日でこの数は、討伐しすぎたかな。すれ違う人達が、荷車を見て驚いていた。
そのまま言われた建物に着き、イノボアを運んで来たと言って荷車ごと中に入った。
一階は倉庫のようだった。
中に居た人達も驚き、その中からトニーさんが出てた。
「今日一日で、こんなに狩ってきたんですか? 凄いですね!」
「たまたま群れで居たのを見つけたので。運が良かったですよ(やっぱり多すぎたか、今日と明日の二日に分けて持ってくれば良かったかな?)」
「では、状態などを見させてもらいますので、代金は明日渡しますがいいですか?」
「明日ですね。分かりました。それで、他に依頼を受けて来た人はいましたか?」
「三人パーティーの冒険者の方が少し前に来て、今日は村に泊まり、明日イノボアを討伐(狩)すると言ってました」
「そうですか。それじゃ残りのイノボアは、その冒険者に任せて、俺は明日代金をもらったらリアーデの街に戻ります(この数を一人で終らせたら悪目立ちしそうだからな)
「分かりました。明日の昼前には代金を用意しておきます」
「よろしくお願いします。じゃあ、今晩は二階の部屋お借りします」
「はい。どうぞ遠慮なく使って下さい。食事は、この建物の向かいに、食堂がありますから良ければそこでどうぞ。話は通してあるので、食事代も村から出ますので」
そう言われたので建物を出て、向かいの食堂へ行き、村の名物料理を頼んだ。
出てきたのは、なんと『イノボアのしょうが焼き』に似た料理と『豚汁』のようなスープが出てきた。
食事を済ませて、言われた部屋に戻って休むことにした。
カズは白飯がほしくなっていた。
これで資金はできそうだから、ソーサリーカードを買って使ってみよう。
あ、魔力を流すとか言ってけど、どうすればいいんだ? 俺、魔法も使えるらしいけど、どうやったら使えるんだ?
……ちょっと怖いが、明日街に戻ったらクリスパさんに頼んでみるかな。
他に魔法使える知り合いはいないしな。
名前 : クリスパ
称号 : リアーデ冒険者ギルド サブ・ギルドマスター
種族 : 人
年齢 : 24
性別 : 女
職業 : 魔法剣士
ランク: B
レベル: 62
力 : 868
魔力 : 744
敏捷 : 578
運 : 36
強よ! この若さで『レベル62』しかも『サブ・ギルドマスター』って、ここのギルド『No.2』じゃないか! ……しまった、凝視しすぎたか。
席を立ったクリスパが、カズに寄っていく。
「あ、あのう、何か(ち、近い)」
クリスパが周りには聞こえないように、小声で話す。
「カ・ズ・さ・ん! 何かスキルを使って、私のこと調べましたか?」
いっ……! なんで分かったんだ?
「なんのことでしょ…」
「私こっそり覗かれるの嫌いでして、正直に話せば許してあげますよ」
顔が笑ってるが怖い。
「ご、ごめんなさい。先程の話で、職員が取り押さえると言っていたので、どれほど強いのかと、ステータスを……『サブマス』だとは」
「あら! 本当に正直に話ましたね。大抵の人は、しらを切ろうとしますが」
「うっ…… でもどうして、分かったんですか?」
「それは、女の秘密! なんてことはないんですけど、こういったお仕事してますと、色んな方を見ますから、なんとなく『女の勘』です。ブラフですね」
「参りました。あのう、もししらを切っていたら」
「さぁ、どうなっていたでしょうかね。フフフっ」
こ、怖い、女の人がもう怖い。
「じゃあ、これからカズさんにはギルドのために、どんどん依頼をこなしてもらわないといけませんね!」
「は、はいです」
「私がサブマスだってことも、分かったんですよね。気付いている人は少ないので、ナイショですよ」(小声)
クリスパはカズの顔に、自分の顔を近付けて話した。
「分かりました(か、顔が近い)」
「それでは、私は仕事に戻りますので、カズさんも依頼書を見に行って下さい」
「ちなみに、もう一人居た受付の娘(こ)は、一般人と変わりませんから、覗き見したらダメですよ」
そう言ってクリスパは、受付の奥へと戻って行った。
見透かされてる、本当に女の勘か? 何か感知スキルでも使ってたのかな?
……いやあれは『女の勘』という特殊スキルだ!
依頼書が貼ってある場所が空いたので、カズは残った依頼を見に行く。
できるだけ数をこなすか、高収入の物があればそれやるか。
もう暫くこの街に居るなら、宿屋じゃなくて、住むとこを探した方がいいか。
依頼書を見たが、Fランクだと殆どが街の雑用で、銀貨一枚程度の物ばかりだった。
そこでカズは一つ上の、Eランクの依頼をやってみることにする!
ーーーーーーーーーー
・薬草採集 十本一束で銀貨一枚 期限日なし
・近くに出没する『ジャンピングラビット』五匹討伐。銀貨五枚 素材買い取り可 期限 二日
・北の村に大量発生しているイノボアの討伐(狩)、期限日『本日から二日、急ぎ』銀貨二枚。イノボアは村が引き取る、一匹につき銀貨一枚~二枚『討伐数制限有り』
ーーーーーーーーーー
薬草は期限日がないから、受けておいて良さそうだな。
あとは、北の村に出るイノボアの依頼内容を、受付で聞いて決めるか。
うまくすれば、まとまった金額が入りそうだ。
受付に行くと、初めて見る人がいた。(クリスパは居ない)
「あのうすいません、北の村に出るイノボアの、依頼内容を聞きたいのですが」
「はい。これは今日来た急ぎの依頼ですね。北の村でイノボアを『討伐(狩)』して、倒したイノボアは村で引き取るとのことです。早くても二日は掛かると思われるので、泊まる場所は村が提供するそうです。今回はイノボアの引き取り額が上乗せなので、討伐(狩)報酬が低く設定されています」
「イノボアの買い取り額って、どの程度になるかわかりますか?」
「そうですね、北の村だと相場は中型で銀貨二枚(2,000GL)でしょうか。状態にもよりますが」
「そんなもんなんですか? 以前に西の村(最初に訪れた村)で、このくらいのイノボアを、金貨三枚(30,000GL)で買い取ってくれましたが?」
カズは両手を広げて、イノボアの大きさを教えた。
「そのイノボアは大型のようですね、西の村ですと、この時期イノボアは貴重な食材ですし、その大きさなら毛皮も良さそうなので、高く買い取ってくれたと思いますよ。状態も良かったのでは?」
そう言えば、買い取ってくれるとき、食材が少なくなってきたとか言ってたような……あの村ではイノボアって貴重なのかなぁ。
「あとは、西の村ですと人の行き来が少ないので、街に比べると色々な物が、少々高いですね。それに、以前にイノボアが大量発生した事がありまして、その討伐いらい、あの近くにある森のイノボアが、大幅に減少したと聞きます」
だから買い取り額が高いのか!
そうすると、あの時の宿代安かったんじゃ?
ココット亭に比べたら高いから、プチぼったくりだと思ったけど、そうじゃなかったみたいだ。(ごめん宿屋のポトフさん)
そんなことを思い返し、カズは心の中で謝罪をすませ、気をとりなおして、依頼を受けることにした。
「この薬草採集と、北の村でのイノボア討伐の依頼を受けます」
「受けたまりました。カズ様は冒険者の登録したばかりですので、討伐依頼は無理なさらずにしてくだい。あとこの討伐依頼は、明日まで貼り出されますので、後から他の冒険者さんが行くかも知れないので、そこのところは、よろしくお願いします」
「分かりました。村までの道をおしえてもらえますか?」
「街の北にある門を抜けたら道の先に山が見えますので、その麓(ふもと)にあるのが北の村です。今から行けば、お昼頃には着くと思います」
「分かりました。ありがとうございます」
早く行けば、それだけ多く倒せるかもしれないな。
人数が増える前に急いで村に行くか。
冒険者ギルドを出て、その足で街の北門から出て、先に見える山の麓の村に向かって行く。
同じ方向に行く人はいないみたいだから、軽く走って行こう。
今からなら、お昼頃には着くって言ってたから、道中誰もいなければ三十分もかからんだろ!
カズが走り出して暫くすると、同じく村に向かって歩いてる人が見えたので、速度を落として声をかけてみることにした。
どうやって声かけよう……(素通りしようと思ったけど同じ方向に行くしな)
「あのう、あなたも北の村に行かれるんですか? (って当たり前か村しかないし)」
「え! そうですが、あなたは?」
「俺は冒険者ギルドで、依頼を受けて北の村に行くところです」
「朝一に依頼を出しに行ったのに、もう来たんですか!?」
「依頼を出しに行った? 村の方ですか?」
「そうです。村長の息子で、村の代表として依頼を出しに行った『トニー』と言います」
「依頼を受けたカズです。よろしく」
カズはそのまま、トニーと一緒に歩いて村に向かい、話を聞くことにした。
「それで依頼の内容ですが、イノボアの討伐(狩)で、倒したイノボアは、村が引き取るとのことでよろしいので?」
「はいそうです。村の先にある山から、大量にイノボアが発生しまして、倒したイノボアは状態にもよりますが、一匹につき銀貨一枚から二枚で引き取ります。状態より金額が変わりますが」
「できるだけ無傷の方がいいと?」
「そうですね、毛皮も使いますので傷が少ない方がいいです。あと、数はいますが殆んどが小型のイノボアですので、今回は『五十匹から六十匹』位までと数は決まってます」
「数を制限してるんですか?」
「はい。こういった大量発生は数年に一度はあるのですが、討伐(狩)をするのに、発生した数の半分程までにしないと、西の村でのように、殆んどいなくなってしまいますから。なのである程度の数を把握してから、依頼を出しに行くのです」
「なるほど。狩るにしても、増えすぎず、減らしすぎず、調節しているわけですか」
「ええ。なので今回は、多くても六十匹ほどに」
依頼の話をしていたら村に着いたので、討伐(狩)をする場所と、イノボアを持ち込む所を聞いて、直ぐ向かうことにした。
「場所は、山から村の裏にある畑周辺です。今は畑に何も植わってないので、中に入っても大丈夫です。倒したイノボアは、そこの角にある建物に、日暮れまでに持って来てください。今晩はそこの二階を、使ってください」
「分かりました。では、早速行ってきます」
「あとイノボアを運ぶのに、村の出口にある『荷車』使ってください」
「遠慮なく使わせてもらいます」
そのまま言われた畑に向かって行った。
暫く行き村を出ると畑が広がっている。
山の麓(ふもと)に黒い生き物が走り回ってるのが見えた。
もちろんイノボアだ!
以前倒したのと比べると、半分以下のサイズだった。
カズは落ちている手頃な石を拾い集めながら、荷車を引いて近づいて行く。
カズはこの程度かなと腕を振り下ろし、石をイノボア目掛けて投げた。
「ブヒィー」
命中! イノボアが吹き飛んで動かなくなった。
それを見ていた他のイノボアが、山に向かって、逃げて行こうとしていたので、急いで走り追い付き、一匹イノボアを蹴り飛ばした。
蹴り飛ばしたイノボアが他のイノボアに当たりさらに他のイノボアにと、一度に三匹倒した。
「少し強く蹴りすぎか」
蹴ったイノボアの骨が折れて、腹の辺りが陥没していた。
これではダメなので、カズは石で攻撃していった。
当たったり外れたりで計十五匹のイノボアを倒した。
それをすべて【アイテムボックス】に入れて、場所を畑から山にうつした。
荷車は麓(ふもと)に置いておいた。
山まで来たが、イノボアが見あたらないので、カズは少し離れた木の陰に隠れて様子を伺うことにした。
なんかあっちの方に、居るような気がするんだけどな?
そのとき視界の隅にある【マップ】に『灰色(グレー)の丸い点』が幾つか映って動いてる?
中央の白い点が自分だから、もしかしたらと、カズは隠れながら近づいてい行く。
灰色の点が近づいて来る……やっぱりイノボアだ!
って事は、マップを見ればイノボアの場所がわかるぞ!
でもなんで急に、マップに映りだしたんだ……? まぁいいや。そのことは後回しにするか、今はイノボアだ。
それから、木々に隠れながら、石を拾い投げ、狙い投げ、逃げられても、マップで位置が分かるため、隠れながら近づいて石での攻撃を繰り返し、回収しながら数時間、随分と倒したのでカズは終わりにした。
「ここは、どの辺りだ? 日暮れまでにイノボアを持っていかないとな」
マップをの範囲を広げてみる。イノボアは離れた所に、数十匹ほど映ってはいるが、アイテムボックスには、四十五匹も入っているので、修了することにした。
村から結構離れた所に居たので、荷車を回収して急いで戻る。
村の手前で誰にも見られないように【アイテムボックス】からイノボアを取り出し、荷車に山盛りに乗せて、言われた建物に向かって行った。
一日でこの数は、討伐しすぎたかな。すれ違う人達が、荷車を見て驚いていた。
そのまま言われた建物に着き、イノボアを運んで来たと言って荷車ごと中に入った。
一階は倉庫のようだった。
中に居た人達も驚き、その中からトニーさんが出てた。
「今日一日で、こんなに狩ってきたんですか? 凄いですね!」
「たまたま群れで居たのを見つけたので。運が良かったですよ(やっぱり多すぎたか、今日と明日の二日に分けて持ってくれば良かったかな?)」
「では、状態などを見させてもらいますので、代金は明日渡しますがいいですか?」
「明日ですね。分かりました。それで、他に依頼を受けて来た人はいましたか?」
「三人パーティーの冒険者の方が少し前に来て、今日は村に泊まり、明日イノボアを討伐(狩)すると言ってました」
「そうですか。それじゃ残りのイノボアは、その冒険者に任せて、俺は明日代金をもらったらリアーデの街に戻ります(この数を一人で終らせたら悪目立ちしそうだからな)
「分かりました。明日の昼前には代金を用意しておきます」
「よろしくお願いします。じゃあ、今晩は二階の部屋お借りします」
「はい。どうぞ遠慮なく使って下さい。食事は、この建物の向かいに、食堂がありますから良ければそこでどうぞ。話は通してあるので、食事代も村から出ますので」
そう言われたので建物を出て、向かいの食堂へ行き、村の名物料理を頼んだ。
出てきたのは、なんと『イノボアのしょうが焼き』に似た料理と『豚汁』のようなスープが出てきた。
食事を済ませて、言われた部屋に戻って休むことにした。
カズは白飯がほしくなっていた。
これで資金はできそうだから、ソーサリーカードを買って使ってみよう。
あ、魔力を流すとか言ってけど、どうすればいいんだ? 俺、魔法も使えるらしいけど、どうやったら使えるんだ?
……ちょっと怖いが、明日街に戻ったらクリスパさんに頼んでみるかな。
他に魔法使える知り合いはいないしな。
46
お気に入りに追加
539
あなたにおすすめの小説
ゴミスキル『空気清浄』で異世界浄化の旅~捨てられたけど、とてもおいしいです(意味深)~
夢・風魔
ファンタジー
高校二年生最後の日。由樹空(ゆうきそら)は同じクラスの男子生徒と共に異世界へと召喚された。
全員の適正職業とスキルが鑑定され、空は「空気師」という職業と「空気清浄」というスキルがあると判明。
花粉症だった空は歓喜。
しかし召喚主やクラスメイトから笑いものにされ、彼はひとり森の中へ置いてけぼりに。
(アレルギー成分から)生き残るため、スキルを唱え続ける空。
モンスターに襲われ樹の上に逃げた彼を、美しい二人のエルフが救う。
命を救って貰ったお礼にと、森に漂う瘴気を浄化することになった空。
スキルを使い続けるうちにレベルはカンストし、そして新たに「空気操作」のスキルを得る。
*作者は賢くありません。作者は賢くありません。だいじなことなのでもう一度。作者は賢くありません。バカです。
*小説家になろう・カクヨムでも公開しております。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?
夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。
気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。
落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。
彼らはこの世界の神。
キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。
ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。
「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」
俺の召喚獣だけレベルアップする
摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話
主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った
しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった
それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する
そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった
この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉
神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく……
※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!!
内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません?
https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる