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一章 リアーデ編
9 女の勘 と 討伐依頼
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「……ん!!」
名前 : クリスパ
称号 : リアーデ冒険者ギルド サブ・ギルドマスター
種族 : 人
年齢 : 24
性別 : 女
職業 : 魔法剣士
ランク: B
レベル: 62
力 : 868
魔力 : 744
敏捷 : 578
運 : 36
強よ! この若さで『レベル62』しかも『サブ・ギルドマスター』って、ここのギルド『No.2』じゃないか! ……しまった、凝視しすぎたか。
席を立ったクリスパが、カズに寄っていく。
「あ、あのう、何か(ち、近い)」
クリスパが周りには聞こえないように、小声で話す。
「カ・ズ・さ・ん! 何かスキルを使って、私のこと調べましたか?」
いっ……! なんで分かったんだ?
「なんのことでしょ…」
「私こっそり覗かれるの嫌いでして、正直に話せば許してあげますよ」
顔が笑ってるが怖い。
「ご、ごめんなさい。先程の話で、職員が取り押さえると言っていたので、どれほど強いのかと、ステータスを……『サブマス』だとは」
「あら! 本当に正直に話ましたね。大抵の人は、しらを切ろうとしますが」
「うっ…… でもどうして、分かったんですか?」
「それは、女の秘密! なんてことはないんですけど、こういったお仕事してますと、色んな方を見ますから、なんとなく『女の勘』です。ブラフですね」
「参りました。あのう、もししらを切っていたら」
「さぁ、どうなっていたでしょうかね。フフフっ」
こ、怖い、女の人がもう怖い。
「じゃあ、これからカズさんにはギルドのために、どんどん依頼をこなしてもらわないといけませんね!」
「は、はいです」
「私がサブマスだってことも、分かったんですよね。気付いている人は少ないので、ナイショですよ」(小声)
クリスパはカズの顔に、自分の顔を近付けて話した。
「分かりました(か、顔が近い)」
「それでは、私は仕事に戻りますので、カズさんも依頼書を見に行って下さい」
「ちなみに、もう一人居た受付の娘(こ)は、一般人と変わりませんから、覗き見したらダメですよ」
そう言ってクリスパは、受付の奥へと戻って行った。
見透かされてる、本当に女の勘か? 何か感知スキルでも使ってたのかな?
……いやあれは『女の勘』という特殊スキルだ!
依頼書が貼ってある場所が空いたので、カズは残った依頼を見に行く。
できるだけ数をこなすか、高収入の物があればそれやるか。
もう暫くこの街に居るなら、宿屋じゃなくて、住むとこを探した方がいいか。
依頼書を見たが、Fランクだと殆どが街の雑用で、銀貨一枚程度の物ばかりだった。
そこでカズは一つ上の、Eランクの依頼をやってみることにする!
ーーーーーーーーーー
・薬草採集 十本一束で銀貨一枚 期限日なし
・近くに出没する『ジャンピングラビット』五匹討伐。銀貨五枚 素材買い取り可 期限 二日
・北の村に大量発生しているイノボアの討伐(狩)、期限日『本日から二日、急ぎ』銀貨二枚。イノボアは村が引き取る、一匹につき銀貨一枚~二枚『討伐数制限有り』
ーーーーーーーーーー
薬草は期限日がないから、受けておいて良さそうだな。
あとは、北の村に出るイノボアの依頼内容を、受付で聞いて決めるか。
うまくすれば、まとまった金額が入りそうだ。
受付に行くと、初めて見る人がいた。(クリスパは居ない)
「あのうすいません、北の村に出るイノボアの、依頼内容を聞きたいのですが」
「はい。これは今日来た急ぎの依頼ですね。北の村でイノボアを『討伐(狩)』して、倒したイノボアは村で引き取るとのことです。早くても二日は掛かると思われるので、泊まる場所は村が提供するそうです。今回はイノボアの引き取り額が上乗せなので、討伐(狩)報酬が低く設定されています」
「イノボアの買い取り額って、どの程度になるかわかりますか?」
「そうですね、北の村だと相場は中型で銀貨二枚(2,000GL)でしょうか。状態にもよりますが」
「そんなもんなんですか? 以前に西の村(最初に訪れた村)で、このくらいのイノボアを、金貨三枚(30,000GL)で買い取ってくれましたが?」
カズは両手を広げて、イノボアの大きさを教えた。
「そのイノボアは大型のようですね、西の村ですと、この時期イノボアは貴重な食材ですし、その大きさなら毛皮も良さそうなので、高く買い取ってくれたと思いますよ。状態も良かったのでは?」
そう言えば、買い取ってくれるとき、食材が少なくなってきたとか言ってたような……あの村ではイノボアって貴重なのかなぁ。
「あとは、西の村ですと人の行き来が少ないので、街に比べると色々な物が、少々高いですね。それに、以前にイノボアが大量発生した事がありまして、その討伐いらい、あの近くにある森のイノボアが、大幅に減少したと聞きます」
だから買い取り額が高いのか!
そうすると、あの時の宿代安かったんじゃ?
ココット亭に比べたら高いから、プチぼったくりだと思ったけど、そうじゃなかったみたいだ。(ごめん宿屋のポトフさん)
そんなことを思い返し、カズは心の中で謝罪をすませ、気をとりなおして、依頼を受けることにした。
「この薬草採集と、北の村でのイノボア討伐の依頼を受けます」
「受けたまりました。カズ様は冒険者の登録したばかりですので、討伐依頼は無理なさらずにしてくだい。あとこの討伐依頼は、明日まで貼り出されますので、後から他の冒険者さんが行くかも知れないので、そこのところは、よろしくお願いします」
「分かりました。村までの道をおしえてもらえますか?」
「街の北にある門を抜けたら道の先に山が見えますので、その麓(ふもと)にあるのが北の村です。今から行けば、お昼頃には着くと思います」
「分かりました。ありがとうございます」
早く行けば、それだけ多く倒せるかもしれないな。
人数が増える前に急いで村に行くか。
冒険者ギルドを出て、その足で街の北門から出て、先に見える山の麓の村に向かって行く。
同じ方向に行く人はいないみたいだから、軽く走って行こう。
今からなら、お昼頃には着くって言ってたから、道中誰もいなければ三十分もかからんだろ!
カズが走り出して暫くすると、同じく村に向かって歩いてる人が見えたので、速度を落として声をかけてみることにした。
どうやって声かけよう……(素通りしようと思ったけど同じ方向に行くしな)
「あのう、あなたも北の村に行かれるんですか? (って当たり前か村しかないし)」
「え! そうですが、あなたは?」
「俺は冒険者ギルドで、依頼を受けて北の村に行くところです」
「朝一に依頼を出しに行ったのに、もう来たんですか!?」
「依頼を出しに行った? 村の方ですか?」
「そうです。村長の息子で、村の代表として依頼を出しに行った『トニー』と言います」
「依頼を受けたカズです。よろしく」
カズはそのまま、トニーと一緒に歩いて村に向かい、話を聞くことにした。
「それで依頼の内容ですが、イノボアの討伐(狩)で、倒したイノボアは、村が引き取るとのことでよろしいので?」
「はいそうです。村の先にある山から、大量にイノボアが発生しまして、倒したイノボアは状態にもよりますが、一匹につき銀貨一枚から二枚で引き取ります。状態より金額が変わりますが」
「できるだけ無傷の方がいいと?」
「そうですね、毛皮も使いますので傷が少ない方がいいです。あと、数はいますが殆んどが小型のイノボアですので、今回は『五十匹から六十匹』位までと数は決まってます」
「数を制限してるんですか?」
「はい。こういった大量発生は数年に一度はあるのですが、討伐(狩)をするのに、発生した数の半分程までにしないと、西の村でのように、殆んどいなくなってしまいますから。なのである程度の数を把握してから、依頼を出しに行くのです」
「なるほど。狩るにしても、増えすぎず、減らしすぎず、調節しているわけですか」
「ええ。なので今回は、多くても六十匹ほどに」
依頼の話をしていたら村に着いたので、討伐(狩)をする場所と、イノボアを持ち込む所を聞いて、直ぐ向かうことにした。
「場所は、山から村の裏にある畑周辺です。今は畑に何も植わってないので、中に入っても大丈夫です。倒したイノボアは、そこの角にある建物に、日暮れまでに持って来てください。今晩はそこの二階を、使ってください」
「分かりました。では、早速行ってきます」
「あとイノボアを運ぶのに、村の出口にある『荷車』使ってください」
「遠慮なく使わせてもらいます」
そのまま言われた畑に向かって行った。
暫く行き村を出ると畑が広がっている。
山の麓(ふもと)に黒い生き物が走り回ってるのが見えた。
もちろんイノボアだ!
以前倒したのと比べると、半分以下のサイズだった。
カズは落ちている手頃な石を拾い集めながら、荷車を引いて近づいて行く。
カズはこの程度かなと腕を振り下ろし、石をイノボア目掛けて投げた。
「ブヒィー」
命中! イノボアが吹き飛んで動かなくなった。
それを見ていた他のイノボアが、山に向かって、逃げて行こうとしていたので、急いで走り追い付き、一匹イノボアを蹴り飛ばした。
蹴り飛ばしたイノボアが他のイノボアに当たりさらに他のイノボアにと、一度に三匹倒した。
「少し強く蹴りすぎか」
蹴ったイノボアの骨が折れて、腹の辺りが陥没していた。
これではダメなので、カズは石で攻撃していった。
当たったり外れたりで計十五匹のイノボアを倒した。
それをすべて【アイテムボックス】に入れて、場所を畑から山にうつした。
荷車は麓(ふもと)に置いておいた。
山まで来たが、イノボアが見あたらないので、カズは少し離れた木の陰に隠れて様子を伺うことにした。
なんかあっちの方に、居るような気がするんだけどな?
そのとき視界の隅にある【マップ】に『灰色(グレー)の丸い点』が幾つか映って動いてる?
中央の白い点が自分だから、もしかしたらと、カズは隠れながら近づいてい行く。
灰色の点が近づいて来る……やっぱりイノボアだ!
って事は、マップを見ればイノボアの場所がわかるぞ!
でもなんで急に、マップに映りだしたんだ……? まぁいいや。そのことは後回しにするか、今はイノボアだ。
それから、木々に隠れながら、石を拾い投げ、狙い投げ、逃げられても、マップで位置が分かるため、隠れながら近づいて石での攻撃を繰り返し、回収しながら数時間、随分と倒したのでカズは終わりにした。
「ここは、どの辺りだ? 日暮れまでにイノボアを持っていかないとな」
マップをの範囲を広げてみる。イノボアは離れた所に、数十匹ほど映ってはいるが、アイテムボックスには、四十五匹も入っているので、修了することにした。
村から結構離れた所に居たので、荷車を回収して急いで戻る。
村の手前で誰にも見られないように【アイテムボックス】からイノボアを取り出し、荷車に山盛りに乗せて、言われた建物に向かって行った。
一日でこの数は、討伐しすぎたかな。すれ違う人達が、荷車を見て驚いていた。
そのまま言われた建物に着き、イノボアを運んで来たと言って荷車ごと中に入った。
一階は倉庫のようだった。
中に居た人達も驚き、その中からトニーさんが出てた。
「今日一日で、こんなに狩ってきたんですか? 凄いですね!」
「たまたま群れで居たのを見つけたので。運が良かったですよ(やっぱり多すぎたか、今日と明日の二日に分けて持ってくれば良かったかな?)」
「では、状態などを見させてもらいますので、代金は明日渡しますがいいですか?」
「明日ですね。分かりました。それで、他に依頼を受けて来た人はいましたか?」
「三人パーティーの冒険者の方が少し前に来て、今日は村に泊まり、明日イノボアを討伐(狩)すると言ってました」
「そうですか。それじゃ残りのイノボアは、その冒険者に任せて、俺は明日代金をもらったらリアーデの街に戻ります(この数を一人で終らせたら悪目立ちしそうだからな)
「分かりました。明日の昼前には代金を用意しておきます」
「よろしくお願いします。じゃあ、今晩は二階の部屋お借りします」
「はい。どうぞ遠慮なく使って下さい。食事は、この建物の向かいに、食堂がありますから良ければそこでどうぞ。話は通してあるので、食事代も村から出ますので」
そう言われたので建物を出て、向かいの食堂へ行き、村の名物料理を頼んだ。
出てきたのは、なんと『イノボアのしょうが焼き』に似た料理と『豚汁』のようなスープが出てきた。
食事を済ませて、言われた部屋に戻って休むことにした。
カズは白飯がほしくなっていた。
これで資金はできそうだから、ソーサリーカードを買って使ってみよう。
あ、魔力を流すとか言ってけど、どうすればいいんだ? 俺、魔法も使えるらしいけど、どうやったら使えるんだ?
……ちょっと怖いが、明日街に戻ったらクリスパさんに頼んでみるかな。
他に魔法使える知り合いはいないしな。
名前 : クリスパ
称号 : リアーデ冒険者ギルド サブ・ギルドマスター
種族 : 人
年齢 : 24
性別 : 女
職業 : 魔法剣士
ランク: B
レベル: 62
力 : 868
魔力 : 744
敏捷 : 578
運 : 36
強よ! この若さで『レベル62』しかも『サブ・ギルドマスター』って、ここのギルド『No.2』じゃないか! ……しまった、凝視しすぎたか。
席を立ったクリスパが、カズに寄っていく。
「あ、あのう、何か(ち、近い)」
クリスパが周りには聞こえないように、小声で話す。
「カ・ズ・さ・ん! 何かスキルを使って、私のこと調べましたか?」
いっ……! なんで分かったんだ?
「なんのことでしょ…」
「私こっそり覗かれるの嫌いでして、正直に話せば許してあげますよ」
顔が笑ってるが怖い。
「ご、ごめんなさい。先程の話で、職員が取り押さえると言っていたので、どれほど強いのかと、ステータスを……『サブマス』だとは」
「あら! 本当に正直に話ましたね。大抵の人は、しらを切ろうとしますが」
「うっ…… でもどうして、分かったんですか?」
「それは、女の秘密! なんてことはないんですけど、こういったお仕事してますと、色んな方を見ますから、なんとなく『女の勘』です。ブラフですね」
「参りました。あのう、もししらを切っていたら」
「さぁ、どうなっていたでしょうかね。フフフっ」
こ、怖い、女の人がもう怖い。
「じゃあ、これからカズさんにはギルドのために、どんどん依頼をこなしてもらわないといけませんね!」
「は、はいです」
「私がサブマスだってことも、分かったんですよね。気付いている人は少ないので、ナイショですよ」(小声)
クリスパはカズの顔に、自分の顔を近付けて話した。
「分かりました(か、顔が近い)」
「それでは、私は仕事に戻りますので、カズさんも依頼書を見に行って下さい」
「ちなみに、もう一人居た受付の娘(こ)は、一般人と変わりませんから、覗き見したらダメですよ」
そう言ってクリスパは、受付の奥へと戻って行った。
見透かされてる、本当に女の勘か? 何か感知スキルでも使ってたのかな?
……いやあれは『女の勘』という特殊スキルだ!
依頼書が貼ってある場所が空いたので、カズは残った依頼を見に行く。
できるだけ数をこなすか、高収入の物があればそれやるか。
もう暫くこの街に居るなら、宿屋じゃなくて、住むとこを探した方がいいか。
依頼書を見たが、Fランクだと殆どが街の雑用で、銀貨一枚程度の物ばかりだった。
そこでカズは一つ上の、Eランクの依頼をやってみることにする!
ーーーーーーーーーー
・薬草採集 十本一束で銀貨一枚 期限日なし
・近くに出没する『ジャンピングラビット』五匹討伐。銀貨五枚 素材買い取り可 期限 二日
・北の村に大量発生しているイノボアの討伐(狩)、期限日『本日から二日、急ぎ』銀貨二枚。イノボアは村が引き取る、一匹につき銀貨一枚~二枚『討伐数制限有り』
ーーーーーーーーーー
薬草は期限日がないから、受けておいて良さそうだな。
あとは、北の村に出るイノボアの依頼内容を、受付で聞いて決めるか。
うまくすれば、まとまった金額が入りそうだ。
受付に行くと、初めて見る人がいた。(クリスパは居ない)
「あのうすいません、北の村に出るイノボアの、依頼内容を聞きたいのですが」
「はい。これは今日来た急ぎの依頼ですね。北の村でイノボアを『討伐(狩)』して、倒したイノボアは村で引き取るとのことです。早くても二日は掛かると思われるので、泊まる場所は村が提供するそうです。今回はイノボアの引き取り額が上乗せなので、討伐(狩)報酬が低く設定されています」
「イノボアの買い取り額って、どの程度になるかわかりますか?」
「そうですね、北の村だと相場は中型で銀貨二枚(2,000GL)でしょうか。状態にもよりますが」
「そんなもんなんですか? 以前に西の村(最初に訪れた村)で、このくらいのイノボアを、金貨三枚(30,000GL)で買い取ってくれましたが?」
カズは両手を広げて、イノボアの大きさを教えた。
「そのイノボアは大型のようですね、西の村ですと、この時期イノボアは貴重な食材ですし、その大きさなら毛皮も良さそうなので、高く買い取ってくれたと思いますよ。状態も良かったのでは?」
そう言えば、買い取ってくれるとき、食材が少なくなってきたとか言ってたような……あの村ではイノボアって貴重なのかなぁ。
「あとは、西の村ですと人の行き来が少ないので、街に比べると色々な物が、少々高いですね。それに、以前にイノボアが大量発生した事がありまして、その討伐いらい、あの近くにある森のイノボアが、大幅に減少したと聞きます」
だから買い取り額が高いのか!
そうすると、あの時の宿代安かったんじゃ?
ココット亭に比べたら高いから、プチぼったくりだと思ったけど、そうじゃなかったみたいだ。(ごめん宿屋のポトフさん)
そんなことを思い返し、カズは心の中で謝罪をすませ、気をとりなおして、依頼を受けることにした。
「この薬草採集と、北の村でのイノボア討伐の依頼を受けます」
「受けたまりました。カズ様は冒険者の登録したばかりですので、討伐依頼は無理なさらずにしてくだい。あとこの討伐依頼は、明日まで貼り出されますので、後から他の冒険者さんが行くかも知れないので、そこのところは、よろしくお願いします」
「分かりました。村までの道をおしえてもらえますか?」
「街の北にある門を抜けたら道の先に山が見えますので、その麓(ふもと)にあるのが北の村です。今から行けば、お昼頃には着くと思います」
「分かりました。ありがとうございます」
早く行けば、それだけ多く倒せるかもしれないな。
人数が増える前に急いで村に行くか。
冒険者ギルドを出て、その足で街の北門から出て、先に見える山の麓の村に向かって行く。
同じ方向に行く人はいないみたいだから、軽く走って行こう。
今からなら、お昼頃には着くって言ってたから、道中誰もいなければ三十分もかからんだろ!
カズが走り出して暫くすると、同じく村に向かって歩いてる人が見えたので、速度を落として声をかけてみることにした。
どうやって声かけよう……(素通りしようと思ったけど同じ方向に行くしな)
「あのう、あなたも北の村に行かれるんですか? (って当たり前か村しかないし)」
「え! そうですが、あなたは?」
「俺は冒険者ギルドで、依頼を受けて北の村に行くところです」
「朝一に依頼を出しに行ったのに、もう来たんですか!?」
「依頼を出しに行った? 村の方ですか?」
「そうです。村長の息子で、村の代表として依頼を出しに行った『トニー』と言います」
「依頼を受けたカズです。よろしく」
カズはそのまま、トニーと一緒に歩いて村に向かい、話を聞くことにした。
「それで依頼の内容ですが、イノボアの討伐(狩)で、倒したイノボアは、村が引き取るとのことでよろしいので?」
「はいそうです。村の先にある山から、大量にイノボアが発生しまして、倒したイノボアは状態にもよりますが、一匹につき銀貨一枚から二枚で引き取ります。状態より金額が変わりますが」
「できるだけ無傷の方がいいと?」
「そうですね、毛皮も使いますので傷が少ない方がいいです。あと、数はいますが殆んどが小型のイノボアですので、今回は『五十匹から六十匹』位までと数は決まってます」
「数を制限してるんですか?」
「はい。こういった大量発生は数年に一度はあるのですが、討伐(狩)をするのに、発生した数の半分程までにしないと、西の村でのように、殆んどいなくなってしまいますから。なのである程度の数を把握してから、依頼を出しに行くのです」
「なるほど。狩るにしても、増えすぎず、減らしすぎず、調節しているわけですか」
「ええ。なので今回は、多くても六十匹ほどに」
依頼の話をしていたら村に着いたので、討伐(狩)をする場所と、イノボアを持ち込む所を聞いて、直ぐ向かうことにした。
「場所は、山から村の裏にある畑周辺です。今は畑に何も植わってないので、中に入っても大丈夫です。倒したイノボアは、そこの角にある建物に、日暮れまでに持って来てください。今晩はそこの二階を、使ってください」
「分かりました。では、早速行ってきます」
「あとイノボアを運ぶのに、村の出口にある『荷車』使ってください」
「遠慮なく使わせてもらいます」
そのまま言われた畑に向かって行った。
暫く行き村を出ると畑が広がっている。
山の麓(ふもと)に黒い生き物が走り回ってるのが見えた。
もちろんイノボアだ!
以前倒したのと比べると、半分以下のサイズだった。
カズは落ちている手頃な石を拾い集めながら、荷車を引いて近づいて行く。
カズはこの程度かなと腕を振り下ろし、石をイノボア目掛けて投げた。
「ブヒィー」
命中! イノボアが吹き飛んで動かなくなった。
それを見ていた他のイノボアが、山に向かって、逃げて行こうとしていたので、急いで走り追い付き、一匹イノボアを蹴り飛ばした。
蹴り飛ばしたイノボアが他のイノボアに当たりさらに他のイノボアにと、一度に三匹倒した。
「少し強く蹴りすぎか」
蹴ったイノボアの骨が折れて、腹の辺りが陥没していた。
これではダメなので、カズは石で攻撃していった。
当たったり外れたりで計十五匹のイノボアを倒した。
それをすべて【アイテムボックス】に入れて、場所を畑から山にうつした。
荷車は麓(ふもと)に置いておいた。
山まで来たが、イノボアが見あたらないので、カズは少し離れた木の陰に隠れて様子を伺うことにした。
なんかあっちの方に、居るような気がするんだけどな?
そのとき視界の隅にある【マップ】に『灰色(グレー)の丸い点』が幾つか映って動いてる?
中央の白い点が自分だから、もしかしたらと、カズは隠れながら近づいてい行く。
灰色の点が近づいて来る……やっぱりイノボアだ!
って事は、マップを見ればイノボアの場所がわかるぞ!
でもなんで急に、マップに映りだしたんだ……? まぁいいや。そのことは後回しにするか、今はイノボアだ。
それから、木々に隠れながら、石を拾い投げ、狙い投げ、逃げられても、マップで位置が分かるため、隠れながら近づいて石での攻撃を繰り返し、回収しながら数時間、随分と倒したのでカズは終わりにした。
「ここは、どの辺りだ? 日暮れまでにイノボアを持っていかないとな」
マップをの範囲を広げてみる。イノボアは離れた所に、数十匹ほど映ってはいるが、アイテムボックスには、四十五匹も入っているので、修了することにした。
村から結構離れた所に居たので、荷車を回収して急いで戻る。
村の手前で誰にも見られないように【アイテムボックス】からイノボアを取り出し、荷車に山盛りに乗せて、言われた建物に向かって行った。
一日でこの数は、討伐しすぎたかな。すれ違う人達が、荷車を見て驚いていた。
そのまま言われた建物に着き、イノボアを運んで来たと言って荷車ごと中に入った。
一階は倉庫のようだった。
中に居た人達も驚き、その中からトニーさんが出てた。
「今日一日で、こんなに狩ってきたんですか? 凄いですね!」
「たまたま群れで居たのを見つけたので。運が良かったですよ(やっぱり多すぎたか、今日と明日の二日に分けて持ってくれば良かったかな?)」
「では、状態などを見させてもらいますので、代金は明日渡しますがいいですか?」
「明日ですね。分かりました。それで、他に依頼を受けて来た人はいましたか?」
「三人パーティーの冒険者の方が少し前に来て、今日は村に泊まり、明日イノボアを討伐(狩)すると言ってました」
「そうですか。それじゃ残りのイノボアは、その冒険者に任せて、俺は明日代金をもらったらリアーデの街に戻ります(この数を一人で終らせたら悪目立ちしそうだからな)
「分かりました。明日の昼前には代金を用意しておきます」
「よろしくお願いします。じゃあ、今晩は二階の部屋お借りします」
「はい。どうぞ遠慮なく使って下さい。食事は、この建物の向かいに、食堂がありますから良ければそこでどうぞ。話は通してあるので、食事代も村から出ますので」
そう言われたので建物を出て、向かいの食堂へ行き、村の名物料理を頼んだ。
出てきたのは、なんと『イノボアのしょうが焼き』に似た料理と『豚汁』のようなスープが出てきた。
食事を済ませて、言われた部屋に戻って休むことにした。
カズは白飯がほしくなっていた。
これで資金はできそうだから、ソーサリーカードを買って使ってみよう。
あ、魔力を流すとか言ってけど、どうすればいいんだ? 俺、魔法も使えるらしいけど、どうやったら使えるんだ?
……ちょっと怖いが、明日街に戻ったらクリスパさんに頼んでみるかな。
他に魔法使える知り合いはいないしな。
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複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
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