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一章 リアーデ編
8 ソーサリーカード
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食堂の厨房に入った女将のココットが、竈(かまど)に火を入れようとしていた。
カズはどうやってるのか、少し気になった。
「今日買い出しに行ってくれたおかげで、楽に火をつけられるから良かったよ」
そう言うとココットは、薪と10㎝ほどの四角い木板を竈に入れた。
すると木板から火が出て、薪を燃やしはじめた。
「! 女将さん、その『木板』はなんですか?」
「おや『ソーサリーカード』を知らないのかい? 今どき珍しいね」
「ソーサリーカード? 魔法ですか?」
「これは魔法を木板のようなカードに、記録……いや、封じ込めると言った方がいいかね。それを誰でも使えるようにした物だよ」
「『魔法を封じ込める』ですか?」
「殆どは生活に使う程度の、少ない魔力量の魔法だけどね。私は詳しくは知らないけど、魔法を封じ込めてあるカードに、少量の魔力を流すと、そのカードの効果を発揮するんだよ」
「私達のような者でも、微量ながら魔力はあるからね。ちょっと魔力を流す練習をすれば、誰でも使える便利な物さ」
「初めて知りました。そのソーサリーカードは、何度でも使えるんですか」
「どうだろうね……? 私達の使うようなカードは、一回きりの使い捨てなんだ。でも便利だよ。値段も高くはないし、なんせ忙しいときなんかは、ありがたいよ」
「詳しく知りたいなら、冒険者ギルドで聞くといいさ」
「分かりました。そうしてみます」
そのときバタンと食堂の扉が閉まり、キッシュが来たので、ココットは夕食の準備を進めた。
食堂には焼き魚のいい香りがし、夕食の用意が出来たので、カズも食事をすることにした。
「この魚美味しい! カズさんありがとう」
まだ他のお客さんが来てないので、カズはキッシュとココットの二人と、一緒に食事をした。
キッシュは満面の笑みで喜んでいる。
食事が済ませ、カズが食器を片付けようとしたら、ココットが制止した。
「片付けはいいよ、私らの仕事だから。あとはゆっくり休んどくれ」
「そうですか。ごちそうさまでした」
そう言われたので、カズは部屋に戻ることにした。
魔法を封じ込めたソーサリーカードかぁ、明日ギルドで聞いてみるか、依頼完了の報告もあるしな。
さて今日は寝早くるか。(そう言えば、これといった魔法をまだ見てないなぁ)
◇◆◇◆◇
……翌朝目が覚めると、視界の隅で何かが光っていた。
何だろうと思い、カズは顔を動かしてみたが、まだ見えていた。
そうだ! スキル【万物ノ眼】でわかるかな? 対象を認識してと……。
『スキル【マップ】が《ON》になっています』
マップ!? いつの間にそんなの会得したんだ?
昨日マップ機能があったらいいのに、とか言ったからかな!?
ステータス確認簡略可があるから、試してみるか!
ステータス確認(スキル、マップと思い浮かべた)
うまくいって、見たいとこだけ表示された。
スキル
【マップ】
今まで自分が通ってたきた周辺が記録表示される。
自分の位置は白く表示される。
マップの範囲は任意で変更可能。
どの程度まで、範囲が表示されるか試してみよう。
上空から見たように、街の形が少しわかる(直径2㎞位)が、本当に通ってきた周辺以外は何も映ってない。
自力でマッピングが必要か。
まあ今は自分の位置がわかるだけの、未完成な地図だなこれは。
他の人や生き物なんかは、どうなるのかな? 説明には出てないが、検証が必要か。
【万物ノ眼】も制限かけられてるのかな?
情報が中途半端なことがあるしな。
……仕方ないか、あれ(チャラ神)がくれたスキルだからな。
さてと、食堂に行くか。
マップ範囲を数十mほどにして、カズは一階の食堂に向かった。
いつものように二人に挨拶をして、食事を済ませてから、ギルドに出掛けた。
マップには、周りの人は表示されない。
どうやったら自分以外が、表示されるようになるんだろう?
カズがそんなことを考えていると、ギルドに到着したので中に入る。
すると今日は人が多いので、朝はいつもこうなのかとカズは思った。
受付と依頼書が貼ってある場所が混んでいたので、カズは隅で少し待つことにした。
色々な冒険者が居た。
剣を携え獣の皮でできたような鎧を着た男性に、杖を持ちマントを着た女性。
さらには重そうな鎧を着た人など。
剣士に魔法使いだろうか、ちらほらと同じような人が見える。
あとは、依頼を出しに来たような人が数人いる。
そうだ! 【万物ノ眼】で、今いる冒険者のステータスを見てみよう。
とりあえず、詳しくは必要ないだけど。
カズは【万物ノ眼】を発動させた。
名前 : クラム
種族 : 人
年齢 : 21
性別 : 男
職業 : 剣士
ランク: D
レベル: 18
力 : 270
魔力 : 108
敏捷 : 132
運 : 31
名前 : エル
種族 : 人
年齢 : 19
性別 : 女
職業 : 魔法使い
ランク: D
レベル: 15
力 : 92
魔力 : 210
敏捷 : 100
運 : 32
名前 : トイ
種族 : 人
年齢 : 18
性別 : 男
職業 : 見習い剣士
ランク: E
レベル: 11
力 : 143
魔力 : 66
敏捷 : 80
運 : 31
名前 : ガーパ
種族 : ハーフ・ドワーフ
年齢 : 27
性別 : 男
職業 : 重剣士
ランク: C
レベル: 25
力 : 500
魔力 : 200
敏捷 : 187
運 : 38
なんか凄く低いけど、この街の冒険者はこのくらいなのかな?
自分のステータスが異常なのが、ようやくわかったよ。
人以外もいるんだ!
ドワーフなのに、背が少し低くいだけで、特に人と変わった感じはしないけど、ハーフだからかな?
さてこれは、パーティーは組めないぞ。
力を制御できるようにして、変に目立たないようにしてかないと。
ソロでやっていくか、一人の方が性にあってるしな。
空いたのでカズは受付に行くと、いつもの女性だった。
「おはようございます。カズ様」
「おはようございます。昨日受けた依頼の報告を」
「では依頼書を確認します。はい大丈夫です。これで依頼達成です。それと木材屋さんから、追加の依頼を受けたとのことですので、Fランクの規定依頼数を満たしました」
「あの追加も数に入るんですね。追加依頼とかよくあるんですか?」
「そんなにはないですね。簡単な依頼を出しておいて、追加の依頼を難しくし、追加の仕事をしないと、サインをせずに苦情を出して、料金を誤魔化そうとするやり方をした人がいましたから。そのようなことをした人は、どこのギルドでも依頼を受けないようにしますので」
「そうなんですね。今回は?」
「今回は悪気はないですし、後で追加の料金もしっかり払われたので、問題ないです」
「こちらが今回の報酬になります」
カズは銀貨三枚(3,000GL)を渡され受け取った。
どちらの依頼書にも銀貨一枚って書いてあったから、追加の分も合わせて銀貨三枚か。
もう少し高収入の依頼か、数をこなさないと宿屋が足りなくなるな。
あ! ソーサリーカードのことを、聞こうと思ったんだ。
「あの、えーと……受付さん」
「まだ名乗ってませんでしたね。私は『クリスパ』と申します。これからもよろしくお願いしますね『カズさん』」
「こちらこそよろしくお願いします(様から、さんに変わったよ)」
「それで、こちらで『ソーサリーカード』のことを、教えてもらえると聞いたんですけど」
「ソーサリーカードですか? ご存じないんですか?」
「……はい。無知でスイマセン」
「そうですか……ここでは何ですから、あちらでご説明致します」
カズとクリスパは、ギルド内の隅にある、二人用のテーブル席に移動した。
「壁際に二人用の席なんてあったんだ(でも向かい合って座るのは、かなり緊張するなぁ)」
「こちらへどうぞ。それで、カードのことは、どの程度?」
「昨日宿屋の人が使っているのを、初めて見た程度です」
「殆ど知らないと言うことですね。広場の露店でも売ってるんですが、気が付きませんでしたか」
そう言えば買い出しのとき、キッシュが木板の束を買っていたような……?
「では先ずソーサリーカードとは『紙、木板、石版、鉄板』等に魔法を『封じ記録(入れる、込める)』させて、いつでも取り出せるようにした物だと、言われています。他の地域では『マジックカード』や『魔術札』などと、呼ばれていると聞きます。大きさも形も多種多様あるそうです」
「『ソーサリーカード、マジックカード、魔術札』呼び方は違えど同じ物かですか」
「カードには幾つか種類も有り、街で見かけられるのは、主に生活に使える程度の弱い効果のカードですね。例えば『火を起こす、水を出す、風が吹く、光り輝く』などがあります。効果は蓄積された魔力量できまります。長距離移動する場合にも、かさばることがないので、旅人や行商人の方もよく使われますね」
ああ俺が旅人ってなってたから、知らないのが変だと思われたのか。
「冒険者の方は、主に戦闘に使える『攻撃系、補助系、治療系、探索系』などのカードを持っています。ただこちらは、日常的使う物より魔力量が多いので、金額が高くなりますね。パーティーを組んでいる方々は、自分達に足りないところを補助するために、数枚持ってたりします」
「ごく希に『モンスターを召喚』して、戦わせることのできるカードも、存在すると聞きます」
「それはモンスターを『テイム』してカードに封じてるのとは、違うのですか?」
「どちらかと言うと、テイムは仲間になるようなことでしょうか。ですが、カードで出したモンスターは『使役して戦わせる又は、サポートさせる』ために使う物だと思われます。召喚系のカードは珍しいので、こちらでは詳しくは分かりません」
モンスターの召喚かぁ。
「あとはですね、カードには『等級』があります」
「等級ですか? ギルドランクのような?」
「はい『コモン、ノーマル、レア、ワールド、レジェンド、ミソロジー、エンシェント』記録されている限りでは、このような物があると思われます。まだ未確認の物もあるかも知れませんが」
「かなりあるんですね」
「コモンとノーマルは、ほぼ同じなのですが、一般の街人や商人などが使うカードがコモン。冒険者が使うカードがノーマル。などと言われていて、冒険者が使う方が蓄積魔力量が多かったり、戦闘に使えるカードが多いので、このように言われています。なのでノーマルの方が金額的に高くなり、コモンより上と認識されますね」
「そのカードは、どこで造られてるんですか?」
「ソーサリーカード自体は、特殊な魔法やスキルを持っている方が造っております。そこに『魔法を封じ記録する(入れる、込める)』ことで、ソーサリーカードが出来上がります」
「魔法をカードに入れることが出来る方でしたら『何も魔法が入っていないカード』を買い、自ら魔法を入れて販売したりしてますね。ほとんどがノーマルカード以下のものですが。露店などで売ってる物は、中には粗悪品もあるため要注意です」
「この辺りでは、持っておられる方でも、せいぜいレア以下まででしょう。それより上となると『王都や大都市』に行けば売っているかもしりれません。ごく希に遺跡で発見されることもあります。ざっとこんな感じですが、分かりましたか?」
「だいたいは分かりましたが、遺跡で見つかるんですか?」
「元々は遺跡から発見されて、それを元に
造くられたと言われています」
「では貨幣と同じと言うことですか?」
「発見された場所は違いますが、遺跡からの見つかった物を、元に造られたと言うことでは同じですね」
「ちなみに発見された遺物は『アーティファクト』と呼ばれています」
「アーティファクト?」
「はい。現代では不明な力をもった遺物の総称です。強力な武器や未知の道具などで、発見された物は国の宝として保管されてたりしますので、ほぼ見ることはできませんね」
「一攫千金を夢見て、未発見の遺跡探索や、未開拓のダンジョンに挑む方が多いです。ですがそういった所は、大きな危険をともないますので、レベルの低い冒険者は、行かないことをおすすめします」
「覚えておきます」
そうか、アーティファクト(遺物)に未発見の遺跡にダンジョンか、もしかしたら元の世界に帰る手掛かりがあるかも知れないな!
やはり冒険者ランクを上げて、情報を得ないとならないな。
「以前そういった情報を持っている人を、ギルド内で無理に聞こうとしていた方がいましたが、我々が拘束しましたので、そのような人を見かけたら、職員に報告お願いしますね」
「は、はい分かりました」
クリスパさんにお礼を言ったら、依頼書を見に行く……我々が拘束? 行く前にチラッとクリスパさんのステータス見てみるか。
「クリスパさん、お忙しいところありがとうございました」
「とんでも御座いません。これもお仕事ですから」
【万物ノ眼】ステータス確認『対象クリスパ』目の前に居るけど……!!
カズはどうやってるのか、少し気になった。
「今日買い出しに行ってくれたおかげで、楽に火をつけられるから良かったよ」
そう言うとココットは、薪と10㎝ほどの四角い木板を竈に入れた。
すると木板から火が出て、薪を燃やしはじめた。
「! 女将さん、その『木板』はなんですか?」
「おや『ソーサリーカード』を知らないのかい? 今どき珍しいね」
「ソーサリーカード? 魔法ですか?」
「これは魔法を木板のようなカードに、記録……いや、封じ込めると言った方がいいかね。それを誰でも使えるようにした物だよ」
「『魔法を封じ込める』ですか?」
「殆どは生活に使う程度の、少ない魔力量の魔法だけどね。私は詳しくは知らないけど、魔法を封じ込めてあるカードに、少量の魔力を流すと、そのカードの効果を発揮するんだよ」
「私達のような者でも、微量ながら魔力はあるからね。ちょっと魔力を流す練習をすれば、誰でも使える便利な物さ」
「初めて知りました。そのソーサリーカードは、何度でも使えるんですか」
「どうだろうね……? 私達の使うようなカードは、一回きりの使い捨てなんだ。でも便利だよ。値段も高くはないし、なんせ忙しいときなんかは、ありがたいよ」
「詳しく知りたいなら、冒険者ギルドで聞くといいさ」
「分かりました。そうしてみます」
そのときバタンと食堂の扉が閉まり、キッシュが来たので、ココットは夕食の準備を進めた。
食堂には焼き魚のいい香りがし、夕食の用意が出来たので、カズも食事をすることにした。
「この魚美味しい! カズさんありがとう」
まだ他のお客さんが来てないので、カズはキッシュとココットの二人と、一緒に食事をした。
キッシュは満面の笑みで喜んでいる。
食事が済ませ、カズが食器を片付けようとしたら、ココットが制止した。
「片付けはいいよ、私らの仕事だから。あとはゆっくり休んどくれ」
「そうですか。ごちそうさまでした」
そう言われたので、カズは部屋に戻ることにした。
魔法を封じ込めたソーサリーカードかぁ、明日ギルドで聞いてみるか、依頼完了の報告もあるしな。
さて今日は寝早くるか。(そう言えば、これといった魔法をまだ見てないなぁ)
◇◆◇◆◇
……翌朝目が覚めると、視界の隅で何かが光っていた。
何だろうと思い、カズは顔を動かしてみたが、まだ見えていた。
そうだ! スキル【万物ノ眼】でわかるかな? 対象を認識してと……。
『スキル【マップ】が《ON》になっています』
マップ!? いつの間にそんなの会得したんだ?
昨日マップ機能があったらいいのに、とか言ったからかな!?
ステータス確認簡略可があるから、試してみるか!
ステータス確認(スキル、マップと思い浮かべた)
うまくいって、見たいとこだけ表示された。
スキル
【マップ】
今まで自分が通ってたきた周辺が記録表示される。
自分の位置は白く表示される。
マップの範囲は任意で変更可能。
どの程度まで、範囲が表示されるか試してみよう。
上空から見たように、街の形が少しわかる(直径2㎞位)が、本当に通ってきた周辺以外は何も映ってない。
自力でマッピングが必要か。
まあ今は自分の位置がわかるだけの、未完成な地図だなこれは。
他の人や生き物なんかは、どうなるのかな? 説明には出てないが、検証が必要か。
【万物ノ眼】も制限かけられてるのかな?
情報が中途半端なことがあるしな。
……仕方ないか、あれ(チャラ神)がくれたスキルだからな。
さてと、食堂に行くか。
マップ範囲を数十mほどにして、カズは一階の食堂に向かった。
いつものように二人に挨拶をして、食事を済ませてから、ギルドに出掛けた。
マップには、周りの人は表示されない。
どうやったら自分以外が、表示されるようになるんだろう?
カズがそんなことを考えていると、ギルドに到着したので中に入る。
すると今日は人が多いので、朝はいつもこうなのかとカズは思った。
受付と依頼書が貼ってある場所が混んでいたので、カズは隅で少し待つことにした。
色々な冒険者が居た。
剣を携え獣の皮でできたような鎧を着た男性に、杖を持ちマントを着た女性。
さらには重そうな鎧を着た人など。
剣士に魔法使いだろうか、ちらほらと同じような人が見える。
あとは、依頼を出しに来たような人が数人いる。
そうだ! 【万物ノ眼】で、今いる冒険者のステータスを見てみよう。
とりあえず、詳しくは必要ないだけど。
カズは【万物ノ眼】を発動させた。
名前 : クラム
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力 : 500
魔力 : 200
敏捷 : 187
運 : 38
なんか凄く低いけど、この街の冒険者はこのくらいなのかな?
自分のステータスが異常なのが、ようやくわかったよ。
人以外もいるんだ!
ドワーフなのに、背が少し低くいだけで、特に人と変わった感じはしないけど、ハーフだからかな?
さてこれは、パーティーは組めないぞ。
力を制御できるようにして、変に目立たないようにしてかないと。
ソロでやっていくか、一人の方が性にあってるしな。
空いたのでカズは受付に行くと、いつもの女性だった。
「おはようございます。カズ様」
「おはようございます。昨日受けた依頼の報告を」
「では依頼書を確認します。はい大丈夫です。これで依頼達成です。それと木材屋さんから、追加の依頼を受けたとのことですので、Fランクの規定依頼数を満たしました」
「あの追加も数に入るんですね。追加依頼とかよくあるんですか?」
「そんなにはないですね。簡単な依頼を出しておいて、追加の依頼を難しくし、追加の仕事をしないと、サインをせずに苦情を出して、料金を誤魔化そうとするやり方をした人がいましたから。そのようなことをした人は、どこのギルドでも依頼を受けないようにしますので」
「そうなんですね。今回は?」
「今回は悪気はないですし、後で追加の料金もしっかり払われたので、問題ないです」
「こちらが今回の報酬になります」
カズは銀貨三枚(3,000GL)を渡され受け取った。
どちらの依頼書にも銀貨一枚って書いてあったから、追加の分も合わせて銀貨三枚か。
もう少し高収入の依頼か、数をこなさないと宿屋が足りなくなるな。
あ! ソーサリーカードのことを、聞こうと思ったんだ。
「あの、えーと……受付さん」
「まだ名乗ってませんでしたね。私は『クリスパ』と申します。これからもよろしくお願いしますね『カズさん』」
「こちらこそよろしくお願いします(様から、さんに変わったよ)」
「それで、こちらで『ソーサリーカード』のことを、教えてもらえると聞いたんですけど」
「ソーサリーカードですか? ご存じないんですか?」
「……はい。無知でスイマセン」
「そうですか……ここでは何ですから、あちらでご説明致します」
カズとクリスパは、ギルド内の隅にある、二人用のテーブル席に移動した。
「壁際に二人用の席なんてあったんだ(でも向かい合って座るのは、かなり緊張するなぁ)」
「こちらへどうぞ。それで、カードのことは、どの程度?」
「昨日宿屋の人が使っているのを、初めて見た程度です」
「殆ど知らないと言うことですね。広場の露店でも売ってるんですが、気が付きませんでしたか」
そう言えば買い出しのとき、キッシュが木板の束を買っていたような……?
「では先ずソーサリーカードとは『紙、木板、石版、鉄板』等に魔法を『封じ記録(入れる、込める)』させて、いつでも取り出せるようにした物だと、言われています。他の地域では『マジックカード』や『魔術札』などと、呼ばれていると聞きます。大きさも形も多種多様あるそうです」
「『ソーサリーカード、マジックカード、魔術札』呼び方は違えど同じ物かですか」
「カードには幾つか種類も有り、街で見かけられるのは、主に生活に使える程度の弱い効果のカードですね。例えば『火を起こす、水を出す、風が吹く、光り輝く』などがあります。効果は蓄積された魔力量できまります。長距離移動する場合にも、かさばることがないので、旅人や行商人の方もよく使われますね」
ああ俺が旅人ってなってたから、知らないのが変だと思われたのか。
「冒険者の方は、主に戦闘に使える『攻撃系、補助系、治療系、探索系』などのカードを持っています。ただこちらは、日常的使う物より魔力量が多いので、金額が高くなりますね。パーティーを組んでいる方々は、自分達に足りないところを補助するために、数枚持ってたりします」
「ごく希に『モンスターを召喚』して、戦わせることのできるカードも、存在すると聞きます」
「それはモンスターを『テイム』してカードに封じてるのとは、違うのですか?」
「どちらかと言うと、テイムは仲間になるようなことでしょうか。ですが、カードで出したモンスターは『使役して戦わせる又は、サポートさせる』ために使う物だと思われます。召喚系のカードは珍しいので、こちらでは詳しくは分かりません」
モンスターの召喚かぁ。
「あとはですね、カードには『等級』があります」
「等級ですか? ギルドランクのような?」
「はい『コモン、ノーマル、レア、ワールド、レジェンド、ミソロジー、エンシェント』記録されている限りでは、このような物があると思われます。まだ未確認の物もあるかも知れませんが」
「かなりあるんですね」
「コモンとノーマルは、ほぼ同じなのですが、一般の街人や商人などが使うカードがコモン。冒険者が使うカードがノーマル。などと言われていて、冒険者が使う方が蓄積魔力量が多かったり、戦闘に使えるカードが多いので、このように言われています。なのでノーマルの方が金額的に高くなり、コモンより上と認識されますね」
「そのカードは、どこで造られてるんですか?」
「ソーサリーカード自体は、特殊な魔法やスキルを持っている方が造っております。そこに『魔法を封じ記録する(入れる、込める)』ことで、ソーサリーカードが出来上がります」
「魔法をカードに入れることが出来る方でしたら『何も魔法が入っていないカード』を買い、自ら魔法を入れて販売したりしてますね。ほとんどがノーマルカード以下のものですが。露店などで売ってる物は、中には粗悪品もあるため要注意です」
「この辺りでは、持っておられる方でも、せいぜいレア以下まででしょう。それより上となると『王都や大都市』に行けば売っているかもしりれません。ごく希に遺跡で発見されることもあります。ざっとこんな感じですが、分かりましたか?」
「だいたいは分かりましたが、遺跡で見つかるんですか?」
「元々は遺跡から発見されて、それを元に
造くられたと言われています」
「では貨幣と同じと言うことですか?」
「発見された場所は違いますが、遺跡からの見つかった物を、元に造られたと言うことでは同じですね」
「ちなみに発見された遺物は『アーティファクト』と呼ばれています」
「アーティファクト?」
「はい。現代では不明な力をもった遺物の総称です。強力な武器や未知の道具などで、発見された物は国の宝として保管されてたりしますので、ほぼ見ることはできませんね」
「一攫千金を夢見て、未発見の遺跡探索や、未開拓のダンジョンに挑む方が多いです。ですがそういった所は、大きな危険をともないますので、レベルの低い冒険者は、行かないことをおすすめします」
「覚えておきます」
そうか、アーティファクト(遺物)に未発見の遺跡にダンジョンか、もしかしたら元の世界に帰る手掛かりがあるかも知れないな!
やはり冒険者ランクを上げて、情報を得ないとならないな。
「以前そういった情報を持っている人を、ギルド内で無理に聞こうとしていた方がいましたが、我々が拘束しましたので、そのような人を見かけたら、職員に報告お願いしますね」
「は、はい分かりました」
クリスパさんにお礼を言ったら、依頼書を見に行く……我々が拘束? 行く前にチラッとクリスパさんのステータス見てみるか。
「クリスパさん、お忙しいところありがとうございました」
「とんでも御座いません。これもお仕事ですから」
【万物ノ眼】ステータス確認『対象クリスパ』目の前に居るけど……!!
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【第2巻 令和3年 8月25日】
【書籍化 令和3年 3月25日】
会社を辞めて絶賛無職中のおっさん。気が付いたら知らない空間に。空間の主、女神の説明によると、とある異世界の国の召喚魔法によりおっさんが喚ばれてしまったとの事。お約束通りチートをもらって若返ったおっさんの冒険が今始ま『断るっ!』
※ステータスの毎回表記は序盤のみです。
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