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一章 リアーデ編

5 村から街へ

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 カズが夕食を食べていたときに、ダルが来たので、カズはお礼をするために、女将のポトフに代金を支払って、ダルにお酒とおつまみを出してもらった。

「お、兄さん律儀だな。本当に酒をおごってくれるなんてな。さらにつまみまで! 遠慮なく貰うよ」

「どうぞ。こちらも助かりましたから。あと聞きたいんですが、この辺りで、人が多そうな街ってありますか?」

 近くでカズの話を聞いていたポトフが、話し掛けて教えてくれた。

「この辺りだと、歩きで二日行った所に『リアーデ』って街があるよ。うちも宿や食堂で使う物を仕入れに行ったりするしね。ギルドに依頼を頼みに行く人もたまにいるよ」

「ギルドですか?! 依頼を頼むって、どんなことですか?」

「以前近くにある森から、イノボアが大量発生する事があってね、その討伐のために、村が依頼を出して冒険者に来てもらったんだよ」

「十匹程度なら、ここいらの猟師達でも何とかなるが、五十匹以上ともなると、さすがに人手が足りないからね」

 近くの森? 俺が最初に、この世界に来た所じゃないかの!
 あのチャラ神とんでもない所に、転移させてくれたもんだ。

「それじゃあ、明日さっそくリアーデの街に、行ってみたいと思います」

 ダルさんと女将さんにそう言って、俺は部屋に戻り寝ることにした。


 ◇◆◇◆◇


 翌朝目が覚めて見たのは宿屋の天井……夢じゃなかったとカズは思った。
 カズは起き出し、昨日夕食のときに渡されたお釣りを見て悩む。


 イノボアの買い取り額が30,000GLで、お酒とおつまみの代金で1,500GL引いたと言われ、渡されたのが『金貨と銀貨と銅貨』……価値が分からん?

 そうだ! スキルの【万物ノ眼】を使えば解るか!
 さっそくスキルを発動させてみよう。


 するとカズが見ていたお金に、説明が出てきた。(漫画の吹き出しのように)

『現在の金額19,500GL』

 いやいや合計じゃなくて、各硬貨の単価とか、そういうことを知りたいんだけど。


 銅貨 : 100GL
 銀貨 : 1,000GL
 金貨 : 10,000GL

『GL(ガル)=円』

 銅貨が100GL=百円だとすると、宿代は二食付きで9,000GL安いのか? あと『GL(ガル)』って呼び名は、どういう意味あるのかな? 

 カズが考え思うと、さらに説明が表示された。

 かつて栄えたと思われる遺跡から発見された硬貨を元に、作りあげたのが、今この世界で流通している貨幣の始まりと言われている。

 遺跡都市の名は『GOTHIC(ゴシック)』世界の道『ROAD(ロード)』を通って流通したので『GRL=ゴロ(ゴシックロード)』と言われていたが、いつからか『ガル』と言われるようになった。

 万物ノ眼で、そんなことまで解るのか!
 でも呼び方が変わったことは、説明ないんだ。
 それになんでこの世界で、元の世界の言語で説明が出てくるんだろう? スキルのせいかな?
 そうだ! あれ(チャラ神)にステータスを修正されてから、見てなかったっけ。
 宿を出る前に確認しておくか。

「ステータス確認」



【名前】: ヤマギク カズ
【年齢】: 24
【性別】: 男
【種族】: 人族
【職業】: 旅人

【レベル】: 160 《MAX 999》
【力】  : 7400 《MAX 9999》
【魔力】 : 4500 《MAX 9999》
【敏捷】 : 4250 《MAX 9999》
【運】  : 46

 スキル

【異世界言語】
 ・異世界の言葉、文字を理解し会話でき読み書き出来る(全ては本人の元居た世界の言語に変換され説明される)

【全魔法&スキル会得】
 ・全ての魔法とスキルが会得可能

【アイテムボックス容量無限】《停止中》
 ・生物以外の物を収納出来る(内部時間の経過は、停止または外部と同じと設定可能)

【万物ノ眼】《OFF》
 ・任意で鑑定、分析、調査が出来る(常時発動可)

【ステータス画面の表示簡略化】《OFF》
 ・必要な項目のみ表示可能になる。(スキルのみや魔法のみなど。またスキルや魔法の効果を非表示にできる)


 あちこち変わってるなぁ。
 アイテムボックスは、内部が時間が設定できるんだ!
 万物ノ眼はバッシブスキル(常時発動)にできるのか。
 でも今は《OFF》のままでいいや。
 異世界言語は『こ都合主義』的なとこが、あれ(チャラ神)がくれたスキルって感じだな。
 でもこれは、分かりやすくてありがたい。
 ステータス画面の表示簡略化? こんなスキルもあるのか!
 これからのこと考えると、結構使えそうだな! 一応《ON》にしておこう。

 あとは、制限をかけるって言ってたけど、この数値はどうなんだろう?
 十分に強いって言ってたから、でも世間で強いの基準が、どの程度なのか分からないからな?
 女将さんが冒険者がいると言っていたから、街に行ってこれも確認しないと。

 一通り確認したカズは【アイテムボックス】から持っていた服を出し、着替えてから一階の食堂に向かった。

「おはよう。昨夜はよく眠れたかい」

 カズが来たことに気付くと、ポトフが挨拶(あいさつ)してきた。

「はい。疲れていたので、ぐっすり眠れました」

「朝食は食べるかい?」

「いただきます」

「リアーデへは、いつ頃向かうのかい?」

「これを食べたら、すぐに立つつもりです。行き方を教えてもらえますか?」

「リアーデへの行き方なら、店を出て真っ直ぐ行ったら村から出られるから、あとは道なりに行けば、二日ぐらいで着くよ。一本道だから迷うこともないしさ」

「分かりました。ありがとうございます」

 食事を済ませたカズは、軽く挨拶をして店を後にし、そのまま村を出て、リアーデへと向かった。

 周囲に人が見あたらなくなってきたので、自分の身体能力を確認するために、カズはリアーデへと走って向かうことにした。

 二十分ほど走っても、体の疲れをそんなに感じず、さらに早く走ってみたら、まわりの景色がすごい勢いで通り過ぎていく。
 カズは速過ぎて少し怖くなっていた。(これ止まれるのか?)

 それからは誰ともすれ違うことなく、走り続けて数時間が経った。
 街らしき建物が見え、人もちらほら離れた所に見えてきたので、スピードを落とし歩いて向かうことにした。


 歩きで二日で着くと言っていた街が、もうすぐそこにだなぁ。
 さすがに疲れてきたけど、動けないほどじゃないな。
 レベルが上がると、こうも違うのか!


 街のすぐそばまで行くと、行商人だろうか、荷物を置いて座りこんでいる人がいた。(中年ぐらいの男性)

 いつもの俺なら、声をかけるのを躊躇するんだけど、この世界での情報も必要だし、村でダルさんに話しかけてもらって、助かったからなぁ。
 これからは、自分から話しかけるようにしていこう!(ちょっと緊張するなぁ)

「あの、どうかしましたか?」

 話し掛けると、男性はカズに顔を向け話してきた。

「いえ、もうすぐ街だというのに、足を捻ってしまい、休んでいたところなんですよ。歩けないほどではないのですが。荷物を持ってでは……」

「俺も街に行くところですし、宜しければ荷物を代わりに運びましょうか?」

「そんな悪いですよ。見ず知らずの方に」

「いえいえ、困ったときは、お互い様ですよ。俺も先日旅先で、初めて会った人に助けてもらったもので、街もすぐそこですし」

「そうですか。じゃあお願いします。わたしは『ミル』と申します」

 俺は行商人さんの荷物を背負い、一緒に街へと向かった。(10㎏はあると思われる)

「俺はカズです。街へは商品の仕入れですか? それとも売りに?」

「知り合いがリアーデの街で店を持っていますので、そこに品物を卸しに行くのと、仕入れにも行くんです。カズさんは?」

「俺は旅をしている者です」

「ほう、旅人ですか。街に入るに、何か身分証のようなものはお持ちですか?」

「いえ。特には何も持ってないですが、身分証がないと、街に入れないのでしょうか?」

「そんなことはないのですが、大きな街だと、入町税を取られることがあるんですよ。リアーデも多くはないですが、税を納めないと、街に入るにことができないんです」

「そうなんですか! 小さな村を転々と旅ばかりしていたもので、知りませんでした(街に入るに、お金のかかるのか! 足りるかなぁ?)」

「旅人の方なら『冒険者ギルド』に登録してるものだと思いました」

「旅人が冒険者ギルドですか?」

「ええ。身分証にもなりますし、ほとんどの街に入るにも、税を取られることはないので、旅人でも登録している人は多いんですよ。色々と決まりごともありますが」

「私は商業ギルドに登録しているので、街に入る税はかからないんです。身分証がないのであれば、冒険者ギルドで登録したらどうですか? 登録は難しいことじゃないと思いますが」

「そうですね。では街に入ったら、冒険者ギルドに行ってみたいと思います」

 ミルとそんな話をしているうちに、街の入口に到着した。
 言われていたように、門の所で入町税500GL払い、カズは無事リアーデの街に入った。
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