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1話ー終わらない地獄
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みんな死んだ。
生きているのは僕だけ。
みんなみんなみんな…しんだ。
生きているのは僕だけ?いや…とっくに死んだ。
身体は朽ちずとも、心はとっくに廃れた。そんな僕でも1つ願いがある。誰か僕のことを助けてくれる、ここから出してくれる英雄を、求めていたーーーー。
ここはどこだが僕にもわからない。わかるのはここは人体実験を行う研究施設であるということだけ。数々の実験で僕以外のみんなは次々といなくなっていった。あいつもあいつもあいつもあの子も…
広い広い鉄の部屋。冷たい地べたに素足をつけ、ひたすら次の恐怖に怯えて過ごす。そんな毎日が今日も、明日も、昨日も一昨日も、ずっと続いている。
ガタンッ、鉄の扉が開く音。また今日も始まる。実験対象は僕。僕という人を使った、実験が。
あれ?いつもは声をかけられるのに、今日は無言で扉が閉まった。こんなこと初めてだ。何かあったのだろうか。
その時、研究所内に警報が鳴り響いた。機械のような無機質な声で、
『侵入者!侵入者!研究所内に侵入者が1人!繰り返す。侵入者!侵入者!研究所内に侵入者が1人!繰り返す…』
侵入者?
今までで一度もこんなことーーーー
再び鉄の扉の方から音がした。扉を開けるような音ではなく、無理やり破壊したような、爆発音だ。
閉じた目を開けると、扉はなく、そこには代わりに1人のこんなが立っていた。
その女は背が高く、黒いロングを揺らしてこう言った。
「助けに来たよ」
僕がずっと望み続けた言葉を、言ってくれた。
「さぁ、いこう。時間がない、他の子はいないみたいだし、君だけでも連れてここから逃げるよ」
僕は疲弊しきっていて、立つことすらできないくらい弱っていたから、女がおんぶして担いでくれた。
そのまま研究所内を駆けていく。
「君の名前はなんていうんだい?」
名前?
「83番」
「ちがうよ、きみの、本当の名前だ」
「本当の…名前?」
本当の名前なんて、僕は物心ついた時から83番としてこの施設で育ったのだから、名前なんてそれしかない。
「そうか…ここを脱出したら、まずは君に名前をつけなくてはね…ふふっ、母親のようだな」
そう言って女は少しはにかんで、目前に迫った出口を見据えた。
「さぁ出口だ。一気に行くよっ」
その掛け声を出した刹那ーー
銃声が1発。聞こえた時にはもう遅い。その銃弾は確実に女のふくらはぎを捉えた。
「ぐあっ」
思わず転んでしまい、僕も地面に投げ出された。
「あ、あぁ」
僕は必死に女にすがった。女は涙目の僕を見て、
「逃げて…」
しかしそれを言い切る前に女は先ほどの銃弾の数倍の数の銃弾で身体中を蜂の巣にされた。
「あぁ…あぁぁ」
僕は声にならない声で、その場に崩れ落ち震えた。
黒マスクをつけた数人がこちらに近づいてきた。女を踏みつけ、ゴミを見るかのような視線で僕に向かって言った。
「お前のせいでこの女は死んだ」
その瞬間、僕の視界は真っ暗になって、意識がブツリと音を立てて、シャットダウンしたかのように、闇へ落ちた。
広い広い鉄の部屋。冷たい地べたに素足をつけ、ひたすら次の恐怖に怯えて過ごす。そんな毎日が今日も、明日も、明後日も、ずっとずっと続く。
唐突に研究所内にサイレンが鳴り響いた。
『侵入者!侵入者!研究所内に侵入者が1人!繰り返す。侵入者!侵入者!研究所内に侵入者が1人!繰り返す…』
すると鉄の扉が爆発して弾け飛んだ。煙に巻かれて立っている1人の女。
その女はこう言った。
「助けに来たよ」
僕がずっと渇望していた、その言葉を。
女は僕に近づこうと、一歩足を踏み込んで、
「さぁ、いこーーーー」
女が次の言葉を完結させる前に、女の首が宙を舞った。まるで羽虫でも飛び立ったかのように、あっさりと。
「うぅ…うぅあぁぁ」
僕はうめき声をあげた、頭が割れるように痛い。さっきもおんなじことが…さっき、さっきってなんだ。頭が痛い。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
女の首をはねた黒マスクが僕に近づいてこう言った。
「お前のせいで、あの女は死んだんだ」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、うぅぅ…ぁあぁぁあ…うぅぁあぁああ!!」
ブツッ
僕の思考はまるでコンピューターがエラーを起こした時のように、真っ暗になって、深い深い暗闇に飲み込まれていった。
広い広い鉄の部屋。冷たい地べたに素足をつけ、ひたすら次の恐怖に怯えて過ごす。そんな毎日が一生続く。
僕はそんな中でも願い続けた。
「誰か、僕を助けてよ」
って。
生きているのは僕だけ。
みんなみんなみんな…しんだ。
生きているのは僕だけ?いや…とっくに死んだ。
身体は朽ちずとも、心はとっくに廃れた。そんな僕でも1つ願いがある。誰か僕のことを助けてくれる、ここから出してくれる英雄を、求めていたーーーー。
ここはどこだが僕にもわからない。わかるのはここは人体実験を行う研究施設であるということだけ。数々の実験で僕以外のみんなは次々といなくなっていった。あいつもあいつもあいつもあの子も…
広い広い鉄の部屋。冷たい地べたに素足をつけ、ひたすら次の恐怖に怯えて過ごす。そんな毎日が今日も、明日も、昨日も一昨日も、ずっと続いている。
ガタンッ、鉄の扉が開く音。また今日も始まる。実験対象は僕。僕という人を使った、実験が。
あれ?いつもは声をかけられるのに、今日は無言で扉が閉まった。こんなこと初めてだ。何かあったのだろうか。
その時、研究所内に警報が鳴り響いた。機械のような無機質な声で、
『侵入者!侵入者!研究所内に侵入者が1人!繰り返す。侵入者!侵入者!研究所内に侵入者が1人!繰り返す…』
侵入者?
今までで一度もこんなことーーーー
再び鉄の扉の方から音がした。扉を開けるような音ではなく、無理やり破壊したような、爆発音だ。
閉じた目を開けると、扉はなく、そこには代わりに1人のこんなが立っていた。
その女は背が高く、黒いロングを揺らしてこう言った。
「助けに来たよ」
僕がずっと望み続けた言葉を、言ってくれた。
「さぁ、いこう。時間がない、他の子はいないみたいだし、君だけでも連れてここから逃げるよ」
僕は疲弊しきっていて、立つことすらできないくらい弱っていたから、女がおんぶして担いでくれた。
そのまま研究所内を駆けていく。
「君の名前はなんていうんだい?」
名前?
「83番」
「ちがうよ、きみの、本当の名前だ」
「本当の…名前?」
本当の名前なんて、僕は物心ついた時から83番としてこの施設で育ったのだから、名前なんてそれしかない。
「そうか…ここを脱出したら、まずは君に名前をつけなくてはね…ふふっ、母親のようだな」
そう言って女は少しはにかんで、目前に迫った出口を見据えた。
「さぁ出口だ。一気に行くよっ」
その掛け声を出した刹那ーー
銃声が1発。聞こえた時にはもう遅い。その銃弾は確実に女のふくらはぎを捉えた。
「ぐあっ」
思わず転んでしまい、僕も地面に投げ出された。
「あ、あぁ」
僕は必死に女にすがった。女は涙目の僕を見て、
「逃げて…」
しかしそれを言い切る前に女は先ほどの銃弾の数倍の数の銃弾で身体中を蜂の巣にされた。
「あぁ…あぁぁ」
僕は声にならない声で、その場に崩れ落ち震えた。
黒マスクをつけた数人がこちらに近づいてきた。女を踏みつけ、ゴミを見るかのような視線で僕に向かって言った。
「お前のせいでこの女は死んだ」
その瞬間、僕の視界は真っ暗になって、意識がブツリと音を立てて、シャットダウンしたかのように、闇へ落ちた。
広い広い鉄の部屋。冷たい地べたに素足をつけ、ひたすら次の恐怖に怯えて過ごす。そんな毎日が今日も、明日も、明後日も、ずっとずっと続く。
唐突に研究所内にサイレンが鳴り響いた。
『侵入者!侵入者!研究所内に侵入者が1人!繰り返す。侵入者!侵入者!研究所内に侵入者が1人!繰り返す…』
すると鉄の扉が爆発して弾け飛んだ。煙に巻かれて立っている1人の女。
その女はこう言った。
「助けに来たよ」
僕がずっと渇望していた、その言葉を。
女は僕に近づこうと、一歩足を踏み込んで、
「さぁ、いこーーーー」
女が次の言葉を完結させる前に、女の首が宙を舞った。まるで羽虫でも飛び立ったかのように、あっさりと。
「うぅ…うぅあぁぁ」
僕はうめき声をあげた、頭が割れるように痛い。さっきもおんなじことが…さっき、さっきってなんだ。頭が痛い。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
女の首をはねた黒マスクが僕に近づいてこう言った。
「お前のせいで、あの女は死んだんだ」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、うぅぅ…ぁあぁぁあ…うぅぁあぁああ!!」
ブツッ
僕の思考はまるでコンピューターがエラーを起こした時のように、真っ暗になって、深い深い暗闇に飲み込まれていった。
広い広い鉄の部屋。冷たい地べたに素足をつけ、ひたすら次の恐怖に怯えて過ごす。そんな毎日が一生続く。
僕はそんな中でも願い続けた。
「誰か、僕を助けてよ」
って。
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