上 下
5 / 5

僕の幼馴染みはおにぎりののりも巻けない。

しおりを挟む
「あぁあー、今日は真のお弁当じゃないのかあ。テンション下がるわー・・・。」
「はぁ?君どの口でそれ言ってるの?」

昨日図書室で翔太が起きるのを待っていたところから記憶がない僕は、朝起きて時計を見ると午前七時半だった。
つまるところ、お風呂にも入ってなければお弁当の準備も終わってないのに七時半。
しかも制服は着っぱなしだし、僕のベッドにはなぜか翔太も寝転がっていたのだ。

「~っ!?しょ、翔太!?何やってんの??!!!いや、もう本当に起きて・・・。」

朝一で絶望することになった。
翔太のせいで、翔太のせいで!!

「起こさなかったのはごめんってば!!でも昨日寝てた真をちゃんとおうちまで届けてあげたでしょ?」
「そのあとなんで君まで僕のベッドで寝てるの?可笑しいでしょ?」

「ほらほら、痴話喧嘩はそこまでにしなよ。俺らからしたらゲロ甘だよ?」
「・・・痴話喧嘩なんてしてないし。こいつが僕を起こさなかったのが悪いんだよ。」

山本がお弁当を持って僕の隣に座る。
誰が痴話喧嘩なんかしてるんだよ。

「まずさ、起こす起こさないの前に一緒に寝てることが重大だよな。」
「・・・?いや、そこはみんなやってるだろう?僕たちも幼稚園の時からだし、今に始まった話じゃないというか。」
「いや・・・だからね?」
「おーい、森口!!お前担任に呼ばれてるぞ~」
「あ、うん。今行く!!・・・っと、その前に、翔太。おにぎり貸して。」

貸してと言いつつも翔太から半ば奪い取る感じでおにぎりを受け取る。
完璧翔太君は前にも言ったとおり生活能力が皆無なのでコンビニのおにぎりでさえも上手に開けられない。
開ける順番が書かれているのも関わらず、なぜかいつもぼろぼろで、のりなんて半分も残っていない状態になる。
だから翔太がおにぎりを食べるときは僕がおにぎりののりを巻いてから手渡すのだ。


「はい。こぼさず食べろよ。僕は職員室行ってくるから。」
「うん、ありがとう真。いってらっしゃい。」
「ごめん、山本。残りの翔太のおにぎり巻いてあげて。こいつにやらしたら海苔さんに失礼だからな。」

山本に残りを託し僕は職員室へと向かった。












「・・・え、お前ら本当にどうなってんの?もう入籍してたりする?」
「まだしてないけど、同窓会までにはするつもり。真には秘密ね。」

山本が驚愕したと言わんばかりに目を見開いて俺を二度見する。
まぁ友人の同性同士の結婚を宣言されれば誰でもこうなるだろう。

「あーっと、うん。了解・・・。」
「うん。あとさ、真に余計な知識与えようとするの辞めて貰えるかな。」
「よけいなちしき・・・。」
「そう、さっきのような勝手な常識を植え付けようとすることとかね。」

こいつは今まで俺が作り上げてきた俺たちの常識を覆そうとしたのだ。
せっかくここまで来たっていうのにそんな勝手なことさせるわけないだろう。
山本はまだ言われていることが理解出来てないのかさっきから一回も瞬きせずに俺を見ている。
幼馴染みが一緒に寝るのは当たり前。
俺たちの中ではそれが当たり前なのだ、俺がそう教えたから。

「・・・肝に免じておくよ。森口には何も口を出さない、でいいんだろ?」
「あぁ、手も出すなよ?」
「っ・・・!出さねぇし!!それよりほら!残りのおにぎり巻いてやるからだせよ。」


山本は一つ大きなため息をつくとこちらに手を出してきた。
が、その必要はない。

「大丈夫だよ、俺おにぎりくらい自分で巻けるから。」
「は・・・・?だって森口がさっき・・・」
「そんなの真に巻いて貰うための口実に決まってるだろ。おにぎりの海苔が巻けない高校生なんているはずがない。」



「えぇ・・・?じゃあ、お前森口の気を引くためだけにそんなことしてるのか??」
「あぁ、勿論。このことも真には言うなよ。」

「えぇ・・・。てかお前いつもとキャラ違くないか?」

そんなの、


「「真/森口の気を引くためだよ。/なのか。」」



ちょっとひいたような顔をした山本は残りの弁当をかきこむと急いで席を立ち、「俺もう行くな!だ、誰にも言わないから安心しろよ!!」と言い残すとさっさと逃げていった。


「あれ?翔太。山本に巻いて貰わなかったのか?」
「あぁ、おかえり真。なんか用事思い出したってさ。」
「ふうん・・・。はい、どうぞ。もー、君おにぎりも巻けなくてどうするんだよ。」

からかったように笑う真は昔も今も変わらず天使だ。

「真が居てくれるから大丈夫だよ、おにぎりありがとう。」

あー、真が巻いてくれたおにぎりってなんでこんなにも美味しいんだろう。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

あずさ
2020.02.24 あずさ

あぁ……。好きです(*´ω`*)
急にすいません!あっ初コメ失礼致します。
もう主人公の過去の事件だけでも好きなのに攻めのヤンデレ感がぁぁ!!!
性癖に刺さって抜けません。( ╹▽╹ )
これからも頑張って下さい!!!

解除

あなたにおすすめの小説

婚約者は俺にだけ冷たい

円みやび
BL
藍沢奏多は王子様と噂されるほどのイケメン。 そんなイケメンの婚約者である古川優一は日々の奏多の行動に傷つきながらも文句を言えずにいた。 それでも過去の思い出から奏多との別れを決意できない優一。 しかし、奏多とΩの絡みを見てしまい全てを終わらせることを決める。 ザマァ系を期待している方にはご期待に沿えないかもしれません。 前半は受け君がだいぶ不憫です。 他との絡みが少しだけあります。 あまりキツイ言葉でコメントするのはやめて欲しいです。 ただの素人の小説です。 ご容赦ください。

潜入捜査でマフィアのドンの愛人になったのに、正体バレて溺愛監禁された話

あかさたな!
BL
潜入捜査官のユウジは マフィアのボスの愛人まで潜入していた。 だがある日、それがボスにバレて、 執着監禁されちゃって、 幸せになっちゃう話 少し歪んだ愛だが、ルカという歳下に メロメロに溺愛されちゃう。 そんなハッピー寄りなティーストです! ▶︎潜入捜査とかスパイとか設定がかなりゆるふわですが、 雰囲気だけ楽しんでいただけると幸いです! _____ ▶︎タイトルそのうち変えます 2022/05/16変更! 拘束(仮題名)→ 潜入捜査でマフィアのドンの愛人になったのに、正体バレて溺愛監禁された話 ▶︎毎日18時更新頑張ります!一万字前後のお話に収める予定です 2022/05/24の更新は1日お休みします。すみません。   ▶︎▶︎r18表現が含まれます※ ◀︎◀︎ _____

俺のスパダリはギャップがすごい 〜いつも爽やかスパダリが豹変すると… 〜

葉月
BL
彼女に振られた夜、何もかも平凡な『佐々木真司』は、何もかも完璧な『立花蓮』に、泥酔していたところを介抱してもらったと言う、最悪な状態で出会った。 真司は蓮に何かお礼がしたいと申し出ると、蓮は「私の手料理を一緒に食べていただけませんか?』と言われ… 平凡なサラリーマンもエリートサラリーマン。住む世界が違う二人が出会い。 二人の関係はどう変わっていくのか… 平凡サラリーマン×スパダリサラリーマンの、濃厚イチャラブストーリー♡ 本編(攻め、真司)終了後、受け蓮sideがスタートします。 エロ濃厚な部分は<エロス>と、記載しています。 本編は完結作品です٩(๑´꒳ `๑٩) 他にも何点か投稿しているので、もし宜しければ覗いてやってください(❃´◡`❃)

【本編完結】オメガだからって甘く見てるから溺愛する羽目になるんだよっ!

天田れおぽん
BL
♡ 番わせました ♡ ❁「第11回BL小説大賞」参加します ❁ 本編の改稿、入れ替えは終了しました。 第11回BL小説大賞」参加しておりますのでよろしくお願い致します。 『オメガだからって溺愛したわけじゃないんだよっ』の第二話が変な位置にありましたので修正しました。       m(_ _)m ☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆  結婚って、こんなもんだっけ?  ご機嫌で風呂から上がってきたオレはドアを開けて驚いた。  素っ裸の知らない男がベッドの上にいたからだ。 「やあ。はじめまして。わたしが今日からキミの夫になるルノワールだ」 「あっ、ああ。オレはミカエルだ」 「さぁミカエル。初夜を始めようか」 「……はぁ? 白い結婚じゃなかったのかよ」 「何を言ってるんだキミは。オメガにヤる以外の価値などない」 「そんなわけあるかぁっ!」  裸の股間を蹴り飛ばして始まる、ふたりの物語 ――――。 ♪ ―――――――――――――― ♪        登場人物 ミカエル・ランバート伯爵家子息(18歳) オメガ男子 魔道具作りの天才 魔力も高い 薄茶の髪と瞳 色気のある小悪魔系 オメガとしては大きい身長178センチ ルノワール・シェリング侯爵(22歳) アルファ男子 剣術が得意 銀髪青い目 女性っぽい美形 アルファとしては小ぶりで細身な身長182センチ 能力は高いが、女っぽい見た目で損している ※ ゆるゆる設定です ・なんちゃってオメガバース ・異世界なんで魔法使える ・オメガが無双する ・アルファは残念カワイイ(予定) ・保険的ゆるゆるR18

ざまぁされた小悪党の俺が、主人公様と過ごす溺愛スローライフ!?

嶋紀之/サークル「黒薔薇。」
BL
わんこ系執着攻めヒーロー×卑屈な小悪党転生者、凸凹溺愛スローライフ!? やり込んでいたゲームそっくりの世界に異世界転生して、自分こそがチート主人公だとイキリまくっていた男、セイン……こと本名・佐出征時。 しかし彼は、この世界の『真の主人公』である青年ヒイロと出会い、彼に嫉妬するあまり殺害計画を企て、犯罪者として追放されてしまう。 自分がいわゆる『ざまぁされる悪役』ポジションだと気付いたセインは絶望し、孤独に野垂れ死ぬ……はずが!! 『真の主人公』であるヒイロは彼を助けて、おまけに、「僕は君に惚れている」と告げてきて!? 山奥の小屋で二人きり、始まるのは奇妙な溺愛スローライフ。 しかしどうやら、ヒイロの溺愛にはワケがありそうで……? 凸凹コンビな二人の繰り広げるラブコメディです。R18要素はラストにちょこっとだけ予定。 完結まで執筆済み、毎日投稿予定。

チョコをあげなかったら彼氏の無表情が崩れた

ぽぽ
BL
 冴えない風紀委員の琴森は生徒会書記の超絶美形な葉桐と付き合って一年が経つ。  喧嘩もせず良い関係を築いていると思っていたが、ふと葉桐が他の男が好きかもしれないという情報が琴森の耳に入った。更に「今年はチョコはいらない」と話しているところを聞いてしまい、琴森はバレンタインにチョコを渡すことをやめた。  しかしバレンタイン当日、普段無表情で動じない葉桐の様子は何かおかしい。   ━━━━━━━ 寡黙美形書記×平凡鈍感年上 王道学園を意識してます。普通にバレンタイン遅れちゃいました。 表紙はくま様からお借りしました。 https://www.pixiv.net/artworks/84075145 R18には☆を付けてます。

虎獣人から番になってと迫られて、怖がりの僕は今にも失神しそうです(した)

兎騎かなで
BL
文学部の大学生、紺野静樹は突然異世界に飛ばされ、虎顔の獣人と出会った。怖がりの静樹は内心大パニック。 「と、虎⁉︎ 牙が怖すぎるっ、食べられる……! あ、意識が……」 「わーい! やっと起きたね人間さん! ……あれ、また寝ちゃったの?」 どうやら見た目は恐ろしいが親切な白虎の獣人、タオに保護されたらしい。 幼い頃に猫に噛まれたせいで獣の牙が大の苦手である静樹は、彼の一挙一動にびくびくと怯えてしまう。 そんな中、タオは静樹を番にしたいと迫ってきて……? 「シズキってかわいくっていい匂いだね、大好きだよ! 番になってほしいなあ」 「嫌です無理です、死んじゃいます……っ!」 無邪気な虎獣人と、臆病な異世界人のドタバタラブストーリー。 流血表現あります。

βの僕、激強αのせいでΩにされた話

ずー子
BL
オメガバース。BL。主人公君はβ→Ω。 αに言い寄られるがβなので相手にせず、Ωの優等生に片想いをしている。それがαにバレて色々あってΩになっちゃう話です。 β(Ω)視点→α視点。アレな感じですが、ちゃんとラブラブエッチです。 他の小説サイトにも登録してます。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。