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僕の幼馴染みは待てが出来ない。

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「じゃあ僕はこの後委員会があるから、先帰って?」
「えっ、俺待ってるから、」
「いいよ、待っていなくて。遅くなっちゃうかもしれないし、また明日ね。」



放課後、いつも通り僕と帰ろうとした翔太を軽くあしらって教室を出る。
後ろの方で翔太が何か言っているが聞こえなかったことにする。
あいつってば僕が放課後に何か用事を作ると、いつも着いてこようとするのだ。
たまには一人にしてほしい、これは小学校の時からそうなのだ。
僕が別の子と遊ぼうとすると決まって「俺もいれて!」と言って着いてくる。
なのに一緒に遊んでいると決まって「俺、真と二人で遊びたい」などとほざき他の子を追い出してしまうのだ。
そのせいで僕は翔太以外の子とあまり遊んだ記憶がない。


「あ、森口君、じゃあ最初に新聞の整理しちゃおっか。職員室持って行ってー」
「先輩こんにちは。分かりました。ではカウンター先お願いします。」

家にこの学校の図書室にあるのと同じくらいの本があるため、小さい頃から本を読むことが好きだった。
だから委員会は図書委員会に立候補した。
翔太は委員会に反対していたけど。

「失礼します、図書委員です。新聞の処分に来ました。新聞あります?」
「あぁ、森口くん、いつもご苦労様。チョコいる?」

この人は尾崎先生といってこの学校の副校長先生だ。
いつも新聞を取りに行ったり、職員室に用事があったりすると僕に話しかけてくれるとても良い先生だ。

「チョコじゃなくて新聞くださいよ、ふふ。今は委員会中なのでまた今度ゆっくりお話しさせてください。」
「はは、降られてしまったよ。じゃあ今度改めて逢い引きのお誘いでも申し込むとするかな、はい、新聞。委員会頑張ってね。」

お礼を言って職員室をでる。
本当に良い先生だ、前に勉強を教えて貰った事もあり僕がとても信頼している先生でもある。


廊下に新聞をまとめて置き図書室に戻ると、さっき教室で分かれたはずの翔太がいた。

「おい、なんでここにいるんだよ。先帰ってていいってさっき言っただろ。」
「俺その後、図書室行くねっていったじゃん。話聞いてなかったのは真の方でしょ。」

なんだと?本当にこいつはいつになったら僕離れするんだ。
「はぁ、わかった。待っててもいいから仕事の邪魔はしないでね?」










「お疲れー、私これから塾なんだ、鍵返しておいて貰える?」
「あ、分かりました。ではお疲れ様です。」


一時間後くらいに仕事が終わった。
普段に比べたら三十分くらい早く片づいたことになる。

「翔太~?帰るぞー?」

邪魔をするなと言ってから全く姿を見ていない幼馴染みを探す。
きっとこの図書室内に居るだろうがぱっと見たところ見当たらない。

「翔太ー・・って、居た。もー。寝てるのか?」

ふらふらと探し回ると本棚に寄りかかって寝こけている翔太を見つけた。
夕日が翔太の顔を照らしていて、閉じたまつげに陰がかかっている。
いつもの煩い翔太の面影はどこにもなくて、いつの間に僕たちはこんなに大きくなったんだなとふと思う。

「起きて、翔太。帰ろう?」

声をかけて身体を揺する。
しかし深く寝に着いているのかちょっとの振動じゃあ全く起きない。
しょうがないので翔太の前にしゃがみ込み翔太が起きるのを待つことにする。

「・・・綺麗だなぁ。」

じっと翔太の顔を改めて観察する。
明るい茶色の髪が夕日と合わさってキラキラと輝く。
整った顔も手伝ってとても綺麗だった。

なんでこいつは僕なんかと一緒にいるんだろうか。
思えば出会った当初はこんなじゃなかった気がする。
少なくともこんな、ベタベタといつも一緒にいるような感じでは。


























「ん・・・、しん・・・?」

俺はいつの間にか寝てしまっていたらしい。
頭を軽く振り、意識を覚醒させて目をあける。

「っ・・!真!!!!」

目を開けると俺の前には横たわった真がいた。
てっきり倒れているのかと思い真を抱き起こすも寝ているだけだった。

「っ・・はっ、なんだ、・・・はぁ。」

ここ最近何もないからきっと油断していたのだろう。
最近はずっと俺がそばにいるおかげで真はなんの被害に遭わずにすんでいる。

「もう、真をあんな目には二度と遭わせないから。俺が・・っ、絶対っ。」



胸に抱いている真をぎゅっと寄せるとそっと額にキスをした。


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