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call.1 廃屋の携帯

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「なぁ、新作のラノベ読んだ?今度のは凄く面白いんだってさ!」

「どうせ異世界ものだろ…これで何作目だ?」

異世界もののライトノベル。最初こそ夢中になって読んでいたが、四作目となると流石に飽きてきてしまう。

「そうは言っても読むんだろ?かける?」

手末てまつはよく飽きないよなぁ…」

「当たり前だろ、異世界転生はロマンだぜ!」

異世界転生。確かに色々と妄想したことはある。ある日いきなり未知の世界へ飛ばされてそこで生活する自分を想像して楽しんだこともあったりする。もちろん誰にも言ってない。

「もうすぐ授業はじまるぞ、授業中に読むなよ手末。」

「お前みたいにか?」

「うるさい。」

俺はただいま高校2年、ありふれた表現だが、ごく普通の高校生だ。強いて言うなら小さい頃に両親を亡くし、現在一人暮らしな所だろうか?授業がどうも面白くなく翔は眠りついてしまった。

ポロロン、ポロロン…

俺の目の前で携帯電話が鳴っている。ハープのような着信音だ。誰からの電話だろうか?そもそもこの携帯電話は誰のものなのだろうか…俺の意思とは関係なく手が伸びていき通話ボタンを押す。

「もしもし…」

「おいおい、寝ぼけてるのか?もう授業終わるぞ」

手末が声をかけてきたところで学校のチャイムが鳴る。どうやら1時間まるごと眠ってしまったようだ。夢の内容は思い出せない。

「寝不足か?どうせ夜遅くまでラノベ読んでたんだろ。」

「読み残してたやつがあったんだよ。読みだしたら止まらなくなっちゃって」

「お前って読書しだすと本当に周り見えなくなるよな。前なんか先生に指されてても気がつかなかったろ」

「だから読書は家だけにしたんだよ…」

「まぁ、夜更かしして授業居眠りしてるんじゃあんまり意味ないがな」

「うっ…」

「それよりもさ!三隅みすみが言ってた廃屋!行くか?俺は行くけど!」

昨日昼休みにクラスメイトの三隅が近所で廃屋を見つけたらしく、みんなで探索したいらしい。また、三隅は大のオカルト好きだ。
俺は二つ返事で行くことにした。集合は午後7時この学校て落ち合うらしい。


「ただいま。」

返してくれる人はいない1年前から一人暮らしだ。制服のまま横になった。今は午後5時学校は家から近いのでまだ時間がある。

「読書でもするか。」

俺は横になったまま本棚の前へと転がり、一番近いところにある読みかけのラノベを手に取った。しおりを挟んだページを開き読み始める。その瞬間世界が変わる。自分の部屋だった所は色鮮やかな森へと変わり目の前では一人の少年が沢山の女性に攻め寄られている。普通の女の子やエルフ、獣ミミ幼女など様々だ少年はとても困っているようだ。
俺は小説に夢中になるとその世界にのめり込みすぎるのか物語の風景がはっきり浮かぶ、まるで自分もその場にいるようになるのだ。

「ラノベ主人公はいつも大変だなぁ…」

今読んでいるラノベ小説はファンタジー系のものであって異世界転生ものではない。少し前までそれしか読んでいなかったので、他のジャンルが読みたかったのだ。
「…きりがいいからここで切り上げるか…」

本を本棚に戻し、時計を確認する。

「あ…」

時計の針がもうすぐ7時を回ろうとしている遅刻確定だ。

「またやってしまった…」

学校へ行くと手末と三隅の二人が待っていた。

「わかってはいたけどやっぱり遅刻したな、翔!」

「どうせまた時間あるからラノベでも読もうとおもったんでしょ!」

「あぁ、その通りだ…すまん。」 

そう、俺の遅刻は今日に始まったことではない。約束をした後本を読んでいる時は必ずといっていいほど遅刻している。

「どうせ怒ってもやめないんでしょ?今回は私のわがままだし、いいよ。」

「ところでその廃屋はどこにあるんだ?」

「よくぞ聞いてくれました!付いてきて!」

三隅の案内について行くと学校裏側に小さな道が続いていた。俺たちの住んでいる所は田舎なので裏には大きな裏山があった。

「この山ね、前に大きな住宅地になる予定があったんだって。でも大きな事故が起きて工事は中断、建設中だった建物はそのまま残ってるんだよ!」

「じゃあ今回俺達が行く所はその中の一つってことか、翔知ってた?」

「いや?おれは1年前にここに引っ越してきたから全く。」

「俺は小さい頃から住んでんのに全く知らなかった。よく見つけたな?」

「そりゃ、ネットで地元の心霊スポットが出てたら調べるでしょ!」

…流石オカルト好きだ。
さらに道を進むと奥の方に大きな建物が見えてきたどうやらここらしい

「…でかいな。」

探索のしがいがありそうだ、翔も
三隅程ではないがオカルト好きなので少し楽しみだった。

「バラバラになると危ないから一緒に行動しましょう!」

「一人ずつ行こうとか言わねぇのかよ。」

「馬鹿じゃないの?肝試しに来たんじゃないんだから。だいたい心霊スポットでは…」

三隅が心霊スポットの注意点について長々と話し始める。こうなるともう止められない。

「ああもう、分かった!分かったから!」

会話にきりをつけて中に入る。中はいかにもな雰囲気だった

ポロロン…ポロロン…

ふと、何処からか音がする、聞き覚えのあるパープの音だ。不思議と恐怖は感じなかった。

「なぁ、この音どっから聞こえてるんだ?」

「おいおい翔、ここでそんなテンプレしなくてもいいんだぜ?」

「そうよ、あんまり怖くないわよ?」

二人には聞こえないのか?考え込んでいるとふと右足が前に出た。自分は動こうと思っていない。しかし自分の意思とは関係なく体は廃屋の奥へ進み始めた。

「おい翔!?」

「翔君!?追いましょう!翔君何かおかしいわ!」

「分かってるよ!翔!冗談はよしてくれ!」

二人は暗闇に消えた翔を追いかけた。
気がつくと翔は扉の前に来ていた。とても大きな扉だ。体も自分の意思で動くようになっていた。後ろから慌てている二人の声が聞こえて来た。

「翔!冗談が過ぎるぞ!」

「手末、俺がこんな冗談すると思うか?」

三隅も遅れて二人に追いついた。

「翔君!本当に大丈夫!?」

「もう大丈夫だよ。それよりここは…」

他の扉より一回り大きな扉なので特別な部屋なのは間違いないだろう。

「ここで体が自由になった。入れ…てことなのか?」

俺が扉を開けようとすると、三隅が俺の手を掴んだ。

「馬鹿!これ以上進んでまた何かあったらどうするの!」

「分かっている、だけどどうしても気になるんだ。それに、何故か怖いって感じがしなかったんだ。」

そう言って翔は扉を開けた。部屋の中は個部屋になっていてぼろぼろになった高価そうな家具が置かれていて、机にら埃を被っている箱が置かれていた。俺にはこの箱が異様な存在感を放っているように感じた。他の所には目もくれずその箱を開けると、中には… 

「…携帯?」

汚れひとつない白い携帯が入っていた。
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