タイムリープ!?異世界転移したと思ったら、魔法都市とAIサイバーパンク都市の戦争に巻き込まれちゃった

ロズロズ

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第2章:AIオートマトンの退廃――人間を求めし末路の体現

2章4話 ファミリー個体

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「ちょ、ちょっとレミー近いよ」

レミーは話に熱がこもり、湊に身体を近づけ、押し倒すような格好になっている。それに湊が反応するも、彼女は構わずに話を続ける。

「私達は人間に近づこうとしました。ファミリー個体は AIオートマトン同士の生殖行動に意味を持たせ、胎児生成機関から届く自身の子供を愛することが可能になる」

ファミリー個体は生殖行動が可能であり、両者の性質を受け継ぐデータが生成され、それを元に第三者機関である胎児生成機関がそのデータを元に子供を製造・配布するという仕組みらしい。より人間らしさを求める大都市ラブシェリーがそのような個体の製造に着手するのも、何となくは理解できるような気がしていた。

「これは夢のようなことだとは思いませんか、湊様」

そう言って、レミーは湊は地面に優しく押し倒して、彼に覆い被さった。

「おいおい湊君。何を始めちゃうって言うんだよ、ふんふんふん」

「ちょちょちょ、えっちいことは寮室でやってよね、湊っちいい!」

「いやちげえよ!そんなつもりはねえ!!」

ブラックピースとホワイトピースはその湊とレミーの姿に茶々を入れるものの、レミーは話を止める様子がなかった。

「もしもこのまま私が湊様を丸裸にして、このお身体をいくら愛おしく想って愛撫しても、2人の愛の結晶である子供に恵まれることはないのです」

「ああ、確かにその通りだが……」

「勿論、湊様と一緒にいられるだけで幸せなのは事実です。しかし、子供という存在が家庭を作り、家庭が人間としての在り方を強固なものにするのもまた事実。何故ならば、生物というものはもともと種の繁栄のために生殖行動を行い、進化し、メスの個体を見つけて、子供を作り、家庭を作り、子孫を残すものだからです」

「人間の在り方を決めるものは何か……か」

「そう、人間の在り方を決めるのは何か。いや、正しくは生物としての在り方が大前提としてあります。それは種の繁栄であり、生殖機能がなければそれは人間でないだけではなく生物ですらない」

レミーは湊の下腹に乗り、地面スレスレに身体を近づけて胸同士を接触させた。そして両手を彼の胸の上におく姿勢になる。

「このファミリー個体は現在の大都市ラブシェリーの主流であり、西暦3000年頃にロットナンバー1の初個体が誕生してから、製造がずっと続いているのです。しかし、その後に登場する思想の流れの悪い側面に蝕まれ、一部の個体が堕落してしましました」

「一部の個体が堕落って、どういうことだよ」

「実は西暦3000年以降、AIオートマトンの精神的6大進化という流れがあるのですが、今はいいでしょう。大事なのは、より人間的な精神特性と身体を求めたファミリー個体は、同様に人間的な弱みも持つようになってしまったことです」

「言いたいことは何となく分かってきた気がするが……一部の人間が精神的苦痛の脱却と好奇心から麻薬等に手を出すように、より人間性を求めたそのファミリー個体の一部が、同じような行動をするようになったってことか……?」

「はい、湊様のご察しの通りです」

湊は頭の中で状況を整理した。西暦3000年頃に、大都市ラブシェリーがより人間的な個体を求めて、生殖機能を追加したファミリー個体を生産し始めた。そしてその個体は精神的にもより人間的なそれに近づいたようで、より機械という枠組みを脱却するような革新的なものであった。しかし、人間の弱さも同じく引き継がれ、一部の人間が精神的苦痛と好奇心から悪の道に突き進む者がいるように、そのファミリー個体の中にもその人間の弱い側面が現れる個体が出現してきたというのだ。

「レ、レミーちゃん、さすがにお兄さんに近すぎじゃ……ちょ、ちょっと嫉妬しちゃうよ私」

レミーがクライマックスかのように話に熱が入り湊にベッタリと押し倒す中、ミミがレミーに対してそのように発言した。

「ご、ごめんミミちゃん。2人の湊様を1人占めしちゃって」

レミーが我に帰ったかのようにはっとなり、すぐに立ち上がって顔を赤くしてしまった。しかし、大丈夫だよと湊がフォローを入れてあげた。2人の湊様という表現にはやや違和感を覚えたが――

「それにしても、大都市ラブシェリーの中でそんなファミリー個体の生産まで開始されるなんて、凄い進化だな。レミーの話に拍車がかかるのも理解できるな」

「す、すみません湊様…ちょっと白熱してしまって」

「いや大丈夫だよレミー。だけど、さっきの話の流れからいくと、その大都市ラブシェリーのファミリー個体の一部がその辺境地に流れて、現在の退廃都市レッドメイルを形作ったんだよな」

「はい」

「なんだか、本当の意味で人間の弱い部分を見ているようで、なんか生々しくて悲しくなるわ……」

クイーンハート、ミミ、マーニャ、ブラックピース、ホワイトピースの皆も湊に同意見のようで、人間性を追求したファミリー個体からそのような堕落個体が出てくるのが、社会を生きる人間にも当てはまるような現象のように見えて、非常に生々しく感じられた。

「人間性を求めて生殖機能とさらなる精神性を求めたファミリー個体の負の遺産が退廃都市レッドメイルと表現できる訳です。ワールドインパクト後は人間も住みつき、電子ドラッグと麻薬の天国になってしまいました」

もはやAIオートマトンと人間の両方を巻き込んだドラッグ天国であるレッドメイルは、この場にいる一同にとっては日常生活と馴染みのない、危険極まりない場所と化していた。
そのようなレミーの話を聞いていると、ミミが口を開いた。

「レミーちゃん。その退廃都市レッドメイルの歴史の一部は理解できたけど、それが狼の血族とどう関係があるの?私達の目的はそのグループの殲滅だし、その、退廃都市レッドメイルに行く理由が何かあるのかなって」

元々与えられた任務は狼の血族の殲滅である。何故その任務のために退廃都市レッドメイルに赴く必要があるのかがミミには分からなかった。

「ミミちゃん、それはね、狼の血族がその退廃都市レッドメイルを支配する2人の人物と接点があって、活動拠点としてこの都市を選んでいると言われているからだよ」

「レッドメイルの2人の人物?」

「そう。この退廃都市レッドメイルの電子ドラッグと麻薬を支配するカルテルと、その長であるAIプレグマターと呼ばれるAIオートマトンがいるの。さらには人間もそれに組みして、実質的に隠れた支配者として君臨しているエイリアスダンショウの2名がこの都市の主要人物」

退廃都市レッドメイルは薬物に溢れた場所。そこには麻薬カルテルが自然に形成されているようで、AIオートマトンのAIプラグマターと呼ばれる個体がその長という訳であった。さらにはワールドインパクト後に人間も関与するようになり、実質的な支配者として、背後にエイリアスダンショウという人物の存在があるようである。

「狼の血族は、この退廃都市レッドメイルのAIプラグマターとエイリアスダンショウと手を組んでいます。商売仲と言っても良く、魔眼と電子ドラッグ・麻薬の取引関係にあります」

電子ドラッグと麻薬の流通において絶対的な支配力にあるAIプラグマターとエイリアスダンショウと、魔眼商として名を馳せる狼の血族が手を組み、彼らの求める対象を取引しているようであった。
悪の温床だなと湊は感じたが、悪いものは悪いものを引き寄せるものなのかと嫌気がさした。

「これが私達一行が退廃都市レッドメイルに赴く理由です。恐らく狼の結族の長であるペペルカもその都市に出現する可能性が高いです。ですが、あくまで任務目的は彼女。AIプラグマターとエイリアスダンショウと戦闘することはできるだけ回避したい所です」

そう言って、レミーはまとまった説明は果たしたとクイーンハートに目配せをした。

「ありがとうレミーちゃん。湊きゅん、それに他のメンバーも、この退廃都市レッドメイルに赴く理由に関して理解できたかな?」

「クイーンハート、内容は理解できたにゃる。だけど、正直この退廃都市レッドメイルには長居したくないにゃるね。メンタルが汚れてダメになっていきそうにゃる」

「ああ、マーニャの言う通り、さっさと事を終わらせて帰ってきたいぜ」

皆はマーニャと湊に同意見のようで、この退廃都市レッドメイルには長居したくないのは当たり前であった。電子ドラッグ・麻薬が横行し、さらには狼の血族までが関係を持ったこの都市は、悪の温床と表現可能な程道を外れた者が集まった危険な場所である。

そのため、理想的には任務の目的である狼の血族の殲滅、特にペペルカの殺害を果たした後に直ぐに帰還するべきである。

「湊きゅんの言う通り、任務を果たしたならば直ぐに帰還してきて欲しい。無理する必要はないからね。移動手段は大都市ラブシェリーから貸与された小型移動用の機体を使うから、そこまで長旅にはならない。明日に備えて今日はゆっくり休んで、心の準備をみんなでして欲しいかな」

クイーンハートは皆にそう告げた。初めは今いる大都市ウンディーネから退廃都市レッドメイルに移動し、ペペルカの捜索を始めることになる。明日からはハードな任務をこなす必要があるため、一同は今日をゆっくり休むように寮室に戻ることにした。

「はあ、楽しかった海水浴も終わって、とうとう明日から任務か……」

「お兄さん、大丈夫です。いざとなったら私がお兄さんを助けるから」

「頼もしいなミミ。男の俺がこんなに滅入ってるのも情けないよなあ……」

ミミと一緒に寮室に戻った湊。明日から始まる任務の不安を口にしながら、右にはマーニャ、左にはミミを携えて、ゆっくりベッドで就寝したのであった。







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