タイムリープ!?異世界転移したと思ったら、魔法都市とAIサイバーパンク都市の戦争に巻き込まれちゃった

ロズロズ

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第1章:全てを司りし時計の行く末

1章6話 にゃるにゃるマーニャにゃる

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「お前は、俺の夢に出てきた……ロリっ子!」

「マーニャ様!」

「……」

マーニャと名乗った人物、いや、そもそも人間には存在しないはずの猫耳をぶら下げたそれは、突然として湊達の目の前に現れた。クイーンハートは感極まったように名を叫び、ミミは何故か無言のまま。

「いやあ、流石に疲れたにゃる。そんな僕にはこの魔法女学院は住み心地がいいね」

マーニャはかなり疲労困憊なのか分からないが、ぐったりと耳を垂れながら、この魔法女学院が心地良いと言った具合にくつろぐ。

「さて、クイーンハート。会うのは何年振りかな」

「30年ぶり、ぐらいでしょうか」

クイーンハートは先程湊と話していた時の口調とは打って変わって、何か神妙な、しかし愛に満ちた表情を浮かべている。当の湊、ミミには何が起きているか分からず、突然現れたそのマーニャと名乗る人物に困惑するばかり。

「おいお前……なんで俺の夢の中にいたロリがこんな所にいやがる。クイーンハートとも知り合いなのか?しかも30年ぶりって……」

「全く、お兄さんは本当、世話が焼けるよね。早速死ぬなんてさ。僕の疲労のことも考えて欲しいよね」

「へ?」

不思議な違和感、それはマーニャと名乗る人物が湊の死を知っていることであった。

「お前、一体何者なんだ」

「僕かい?僕はマーニャにゃる」

「そんなのは何度も聞いた。なんで俺の死について触れて……」

「それはお前をタイムリープさせたのは僕だからにゃる!えっへん!」

「へ?」

湊は自身の頭の中を整理する。この湊の前に現れた人物がタイムリープをさせたと自分で豪語する。頭を捻り、異世界転移する前に読み漁ったライトノベルの展開も参考にしながら、その意味するものを理解しようと努める。

「お前、いや、マーニャと言ったか」

「そうにゃる」

「左目の魔眼と関係が?」

「ビンゴ!」

マーニャは急にビンゴと叫び、湊に正解の合図を出す。

「僕は時空の魔神、マーニャにゃるにゃる」

「だからどういう意味で……」

「マーニャ様は時空を司る魔神。湊きゅんの魔眼に宿る精神の具現化なんだよ」

湊の疑問にクイーンハートが答える。時空の魔神、その名前に興奮するように湊がマーニャを見つめ返す。

「もしかして何か。俺の魔眼にはやはりタイムリープとか時間を操る的な能力があって、マーニャがその魔眼に宿る精霊的な何かと」

「まあ、ざっくりとはそんな感じいかな、お兄さん。褒めてやるにゃる。まあ、そんな都合のよいものではないけども」

湊が体験したタイムリープという現象。そして、その現象を起こした原因が魔眼であり、それに宿る精霊的な何かがマーニャということになる。湊は異世界転移してきて、初めてその自分の立ち位置に興奮しつつ、しかし何かを見落としているように辺りに視線を移す。

「ミミ、お前具合悪いのか?すごい顔色悪いぞ……」

「えほっ、えほっ」

先程ハーギルと湊、ミミの3人でこの魔法女学院に向かっていた道中、彼女は非常に元気で顔色も普通であった。しかし、マーニャが現れてからというもの、何かミミの様子がおかしい。

「これは、魔力酔いかな。合ってる、マーニャさん?」

「ミミと呼ばれていたかにゃる?僕の魔力に酔ったみたい、かな?」

「おい、大丈夫かよミミ」

「大丈夫にゃる、お兄さん。これが普通の人間の反応にゃる」

マーニャはそっとミミの身体に近寄り、そっとその手を握りしめた。

「僕がミミの魔力を整える。どうだ、落ち着いてきたにゃる?

「あれ、さっきまでの気持ち悪さが落ち着いてきた、かも」

マーニャがミミに何をしたかまでは湊には分からなかった。

「さてさて、それにしてもクイーンハート。会うのは30年程度ぶり、といってもお前から見てだが、顔はぴちぴちのロリじゃな、変わらず」

「え、そういえばクイーンハート校長って、何歳で?」

マーニャの会話を聞いていると、何やら2人は会うのが30年ぶりらしかった。湊は、この会話より少なくともクイーンハートが30歳以上であることが分かった。しかし、本人の見た目は明らかに10代であり、その事実さえも疑ってしかたなかった。

「湊きゅん、レディーに歳を聞くなんて失礼ね、もう」

「いや、でも見た目と推定年齢が乖離してて……」

「そんなに気になるなら、しょうがないわねえ。55歳よ」

「嘘だろ、おい!」

湊は驚愕の真実を知ってしまった。クイーンハートが55歳。ありえないと湊はもう一度校長を観察する。金髪の長髪、美しい手脚、どこからどう見てもおばさんには見えなかったのだ。

「つまりロリばばあって訳か」

「きいい、レディーに失礼な。後で1人で校長室に来なさい!お説教してあげるんだから」

クイーンハートは湊の発言にご立腹のようで、歯ぎしりをしながら彼を睨みつける。

「いやいや待て待て。マーニャが時空の魔神で、タイムリープさせた張本人で、クイーンハートとは30年ぶりの再会で……どういうこと?てか、なんでそんな強そうな魔眼が俺の左目にある訳?」

湊の疑問は非常に単純。時空の魔神と名乗るマーニャが、クイーンハートとどういう関係であり、なぜその魔眼が自身の目の中にあるかである。

「湊きゅん。たぶん、何がなんだか分からなくなっている頃だろうね」

「ああ、何がなんだか。情報が多すぎて全く整理できないぜ」

「でも、ここできっちり湊きゅんに説明する義務がある。この魔法女学院の地下深く。この校長室、いや、大神殿の祭壇、そこに隠された階段を降りて、真実を確かめにいこうか」

クイーンハートはこの大神殿と表現した校長室の最奥、祭壇の近くを指示した。そこに校長が足を進め、湊とミミ、マーニャが近づく。ガタンと大きな音がすると共に、一部部屋の構造が変形し、隠し階段が現れた。

「うわ、隠し階段とかあんのかよこの部屋」

「え、クイーンハート校長の部屋に、隠し階段なんてあったの……えへ“、なんかかっこいい」

「愛しいのお。自分の本来いる場所に戻るのは。感動にゃるね」

隠し階段はかなり暗く、ほとんど辺りが見えない。クイーンハートがこっちだよと手を握って皆を誘導し、最奥、秘められた地下空間へと出る。
そこにあったのは……

「なんだこと時計の数は……」

湊達一行が辿り付いた魔法女学院の最奥。その空間は明らかに異様な構造をしており、尋常じゃない数の時計が辺り一面を覆い尽くしていた。それぞれの時計の進み方は異なり、同期はしていないように見えた。

「さて問題。この部屋の中でへんてこな時計が1つだけあります。それはどれでしょうかあ」

クイーンハートが湊、ミミの方に振り向き、悪戯に2人の口に人差し指ゆびを添えながら呟く。

「へんてこも何も、この空間自体が俺には奇妙なんだがなあ」

「お兄さんと同意見。なんか、この空間すごい不思議な感じがするの」

湊とミミの意見はもっともであり、そもそもへんてこな時計と言われても、この空間を埋め尽くす時計全てが奇妙であった。

「例えば、あの奥に見える時計。すごいでかいけど、これが答えか?」

「ぶぶー。湊きゅんのハズレえ。それは普通の時計ですうー」

「いや分かんねえよ。俺と校長じゃ価値観が違いすぎる」

湊はこの時計に満たされた神秘的な空間のなか、変な時計を見つけようと目を凝らし、奥に見える巨大な時計を指差した。しかしどうやらそれはハズレであったようで、湊は分かるはずもないその問いに戸惑う。
しかし、ミミが何かに気づいたのか湊の手を引っ張り、呟く。

「お兄さん、あの時計……」

「どうした、ミミ?」

ミミが湊にある方向を見るように指差しする。それに釣られるように湊がその方向を見ると、そこには短針と長針が存在しない時計があった。

「短針と長針がねえ」

「あれ湊きゅん、ミミに先をこされちゃったねえ。ミミの大正解。これがその、へんてこな時計さ」

クイーンハートはその短針と長針の失われた時計に近づき、かと思えばくるりと振り返り、湊の魔眼を指差す。

「さて湊きゅん。今度はミミに負けないように頑張りなさいな。第二問!この針の長針はどこにいってしまったでしょうか!?」

クイーンハートは第二問を湊とミミに出題する。彼女の出した問いはシンプルである。この時計に満たされた空間において、何故か短針と長針のない時計が存在しており、その欠けたパーツの行方を問題にしていた。

「分かるわけないだろ、クイーンハート校長!」

「いや、湊きゅんなら分かる」

「いや、分からないだろ。どこに行ったかなんて」

「湊きゅん、ほれ、鏡だよ。自分の顔をよく見るんだ」

クイーンハートは湊に鏡を渡してやる。湊は何を意味しているのか分からないまま、その鏡に映る自分の顔を観察する。湊の顔の不可解な特徴は2つ存在する。1つ目は異世界転移前よりも明らかに若返っているその顔と、2つ目は時計紋様の浮かび上がったその左目の魔眼である。

「いや、待てよ。そう言えば俺の魔眼、この時計紋様だが、短針が無くて長針だけ存在してるよな」

「いいよいいよ湊きゅん、そしてえ」

「いや、本当にそうなのか。でも……」

「言うんだ湊きゅん。恐らく合っている。この問いの答えは!?」

「その短針と長針のない時計。長針の方は、もしかして俺の左目の魔眼にあったりする?」

「大正解!湊きゅん、ビンゴだよお!」

クイーンハートは感極まった様子でビンゴと叫ぶ。当の湊は口をぽかんと開けてぱくぱくさせていた。

「どういうことすか、校長?」

湊は何が何だか分からず、しかしクイーンハートとマーニャだけは真実を知っているようで、その2人だけ意地悪そうにニヤニヤとしている。

「お兄さん、いや、湊」

マーニャは何故か急にかしこまった口調になり、急に真顔になったかと思えば、何かを懇願するかのように湊を見つめる。そして……

「僕はこの魔法の世界を任され、時空の長針を担うことになった魔神マーニャ。そして現在、時空間の安定に必要な短針が奪われている状況なんだ。僕は全力で君を支援する。だからお願いだ。世界を助けてあげて!」

「へっ?急に何を言って……」

湊は状況を理解できず、しかしマーニャがこんなにも真剣にお願いごとをしている姿に驚いた。

「はあ、また面倒な展開になったな……」

異世界転移した湊。急に魔法女学院に来させられたと思えば、世界を助けてと言われ、気持ちの整理が追いつかなかったのだった。



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