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探偵の秋休暇
その夜
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夕食の時間になって、私たちは津村さん一行と食堂で一緒に食事することになった。その場にいる全員が食事の前に風呂に入り、さっぱりしている。
根津さんは一番に菜々美さんの正面に座った。話し込むつもりらしい。
私は根津さんの隣、津村さんの正面である。
「へえ、映画撮影の下見ですか」
「ええ。でも自主的なものですよ。俺と菜々美さんに至っては普段頑張ってくれてるマネージャーを労う旅行も兼ねていますし」
たしかにマネージャーさんの格好はスーツではないカジュアルな服である。
「普段もこうやって下見するんですか?」
「いいえ。集合時間より数時間早く来て下見することはありますけど、泊まりがけではやりませんね」
「じゃあどうして?」
すると津村さんは箸を止めて、
「この映画は僕にとって特別な作品なんです」
「特別切な作品?」
「みなさん、お食事はいかがですか?」
厨房からこのペンションの主人である絋一郎さんが出てきた。絋一郎さんも加奈子さん同様思った以上に若い。
「とても美味しいよ」
そう津村さんが振り返った。
「おう、そうか。航介の口に合ってよかったよ」
紘一郎さんは津村さんの横に立った。
「お前が作ってるのか?」
「まさか。料理は家内の担当だ」
「やっぱりな。お前は砂糖と塩の違いもわからないから」
「おいおい、そんな恥ずかしい話するなよ。そもそもそんなのは昔の話だ」
「あの、お二人はお知り合いなんですか?」
私は訊いた。
「ええ、大学時代に同じ映画研究会に入っていたんですよ」
津村さんが言った。
「そうだったんですか」
「絋一郎は映画俳優になる、なんて言ってたから、ペンションを経営してるなんて驚いた」
「俺の新しい夢ってところだな」
絋一郎さんは笑った。
「そうだ、航介。カラオケルームの予約は食事のあとすぐだったよな」
「ああ。頼むよ」
「カラオケですか」
私はまた尋ねた。
「ええ。航介さんのリクエストで矢木さんご夫妻もお誘いしているのよ」
ふと斜め前を見ると、お酒の入った菜々美さんがそうなのよー、と言った。お酒が入っても美人は美人である。
「そうよ! ここで会ったのも何かの縁よ。お二人もカラオケ大会に誘うのはどう?」
菜々美さんが提案してきた。
「いいですね、それ。たしか人は何人増えてもいいって、予約の電話をしたとき言ってたよな?」
津村さんが言った。
「ああ。でも、マイクは増やせないぞ」
絋一郎さんが言った。
だいぶ盛り上がっているが、困ったわ。私、歌は下手くそなのよ……。
「でも、今回はご遠慮……」
「行きます!」
根津さんが立ち上がって私を遮った。
「じゃあ決定ね」
「もちろん!」
根津さんはノリノリである。今の根津さんは菜々美さんに百万円を私の銀行口座に振り込んで、って言われても同じ返事をしそうだわ。
「ごちそうさまでした」
私はまだ三分の一も残っているというのに、正面の津村さんは手を合わせている。
「僕はこれから部屋にこもりますが、カラオケ大会は先に始めていてください」
「いいんですか?」
「ええ、僕のために待ってもらうなんて申し訳ないですから。――では、のちほど」
すると、津村さんは食堂を出ていった。
「もう、まったく。せっかく楽しいお食事なんだから、仕事のことなんて忘れればいいのに」
菜々美さんが言った。
「これからお仕事されるんですか?」
「ええ、セリフを覚えに部屋にこもったのよ。夕食後からきっかり一時間。いつもそう」
「でも、今日は下見ですよね?」
「多分、今やってるテレビドラマの台本よ。私と違って航介は一気に何本も抱えてるから」
「すごいですね」
「私も何年か前までやってたけど、プライベートも大事にしたいから今はやらないわ」
すると根津さんが、
「菜々美さんはプライベートも充実ですか。さすがです!」
と拍手をした。このモードの根津さんは、もういい加減うるさい。
食事が終わると、私たちは楽しい話をしながらカラオケルームに向かった。室内は壁沿いにソファーが並び、中央にはテーブルがあった。
「さて、何を歌おうかしら」
ほろ酔いの菜々美さんがデンモクを取った。きっと女優さんだから歌は上手いんだろうな。
「……あれ?」
菜々美さんがデンモクに付いているタッチペンを画面にタッチし続けている。
「どうしたの、菜々美ちゃん」
監督の吉澤さんである。
「タッチパネルが反応しないんですよ」
「どれどれ」
吉澤さんは菜々美さんの手からデンモクを取り上げて、こぶしで軽くたたいている。
「だめだね、これは。――村松、直せるか?」
「カメラじゃないんですから、無理ですよ。フロントのお姉さんを呼びましょう」
カメラマンの村松さんは壁に備え付けてある電話を取って、加奈子さんを呼んだ。
加奈子さんはカラオケ機器の前にしゃがむと、ガチャガチャといじりだした。きれいな指はあっという間にほこりだらけである。
「本当にすみません。この間学生さんのグループがご利用されたときはちゃんと動いたのに……」
加奈子さんはだいぶ苦戦しているようだ。
すると、絋一郎さんがカラオケルームに入ってきた。
「すみません、どなたかお手伝いいただけませんか? 倉庫に取扱説明書があるはずなんですが、一人じゃ探せないのです。――そうですね、飯山(いいやま)さん、お手伝いいただけますでしょうか」
「はい」
菜々美さんのマネージャーの飯山さんは外に出て、絋一郎さんはドアを閉めた。
加奈子さんは引き続きカラオケ機器を直すべくいじったが、一向に動く様子はなかった。私たちを含めたその他の人たちも誰もカラオケルームを出ることなくいろいろ原因を探ってみたが、動き出す様子はなかった。
「そういえば航介さん来ないわね。もうそろそろ来てもいい時間なのに」
菜々美さんがカラオケルームの時計を見て言った。
「申し訳ございませんが、まだ動きません……」
「航介を呼びに行った方がいいですか?」
津村さんのマネージャーの栗本さんが言った。
「そうねえ……。頼むわ」
菜々美さんにそう言われると、彼はカラオケルームを出た。
すると、そのすぐあとで絋一郎さんと飯山さんがカラオケルームのドアを開けた。
「取扱説明書、見つかったぞ!」
そういうと、絋一郎さんは加奈子さんと場所を代わってカラオケ機器の前にしゃがむと、すらすらと機械をいじり始めた。
これでカラオケ大会が始められる、と誰もが安堵したそのとき。
「うわああああああ!」
どこからか、叫び声が聞こえた。明らかに非常事態の声である。この室内にいないとなると栗本さんの声だ。全員の顔が硬直した。
根津さんを見ると、浮かれていた顔がきりっと変わっていた。さすが刑事。
「絋一郎さん、津村さんって一階の部屋にいるんですよね?」
「ええ、一〇一号室ですけど……」
私と根津さんはカラオケルームを飛び出した。
私たちは階段を駆け下り、津村さんの部屋の前に着いた。すると、栗本さんが腰を抜かしていた。
「どうしたんですか?」
訊くと、栗本さんは震えた手でゆっくりと正面を指さした。
その方を見ると、そこには津村さんが倒れていた。腰には何か刺さっていて血が流れているようだ。
「……根津さん、頼むわ」
「ああ」
根津さんが素早く部屋に入り、津村さんの手首に指を当てる。
「……だめだ。亡くなってる・・・」
根津さんは首を落とした。
「みなさん、今からこの部屋を立ち入り禁止にします! 加奈子さん、警察に連絡をしてください」
私は言った。
「はい!」
加奈子さんはこの部屋の斜めにあるフロントの電話を取った。
「紘一郎さんはみなさんと食堂で待っていて下さい」
「わかりました。――みなさん、行きましょう」
紘一郎さんは栗本さんを立たせると、菜々美さんたちを連れて食堂に入った。
根津さんは一番に菜々美さんの正面に座った。話し込むつもりらしい。
私は根津さんの隣、津村さんの正面である。
「へえ、映画撮影の下見ですか」
「ええ。でも自主的なものですよ。俺と菜々美さんに至っては普段頑張ってくれてるマネージャーを労う旅行も兼ねていますし」
たしかにマネージャーさんの格好はスーツではないカジュアルな服である。
「普段もこうやって下見するんですか?」
「いいえ。集合時間より数時間早く来て下見することはありますけど、泊まりがけではやりませんね」
「じゃあどうして?」
すると津村さんは箸を止めて、
「この映画は僕にとって特別な作品なんです」
「特別切な作品?」
「みなさん、お食事はいかがですか?」
厨房からこのペンションの主人である絋一郎さんが出てきた。絋一郎さんも加奈子さん同様思った以上に若い。
「とても美味しいよ」
そう津村さんが振り返った。
「おう、そうか。航介の口に合ってよかったよ」
紘一郎さんは津村さんの横に立った。
「お前が作ってるのか?」
「まさか。料理は家内の担当だ」
「やっぱりな。お前は砂糖と塩の違いもわからないから」
「おいおい、そんな恥ずかしい話するなよ。そもそもそんなのは昔の話だ」
「あの、お二人はお知り合いなんですか?」
私は訊いた。
「ええ、大学時代に同じ映画研究会に入っていたんですよ」
津村さんが言った。
「そうだったんですか」
「絋一郎は映画俳優になる、なんて言ってたから、ペンションを経営してるなんて驚いた」
「俺の新しい夢ってところだな」
絋一郎さんは笑った。
「そうだ、航介。カラオケルームの予約は食事のあとすぐだったよな」
「ああ。頼むよ」
「カラオケですか」
私はまた尋ねた。
「ええ。航介さんのリクエストで矢木さんご夫妻もお誘いしているのよ」
ふと斜め前を見ると、お酒の入った菜々美さんがそうなのよー、と言った。お酒が入っても美人は美人である。
「そうよ! ここで会ったのも何かの縁よ。お二人もカラオケ大会に誘うのはどう?」
菜々美さんが提案してきた。
「いいですね、それ。たしか人は何人増えてもいいって、予約の電話をしたとき言ってたよな?」
津村さんが言った。
「ああ。でも、マイクは増やせないぞ」
絋一郎さんが言った。
だいぶ盛り上がっているが、困ったわ。私、歌は下手くそなのよ……。
「でも、今回はご遠慮……」
「行きます!」
根津さんが立ち上がって私を遮った。
「じゃあ決定ね」
「もちろん!」
根津さんはノリノリである。今の根津さんは菜々美さんに百万円を私の銀行口座に振り込んで、って言われても同じ返事をしそうだわ。
「ごちそうさまでした」
私はまだ三分の一も残っているというのに、正面の津村さんは手を合わせている。
「僕はこれから部屋にこもりますが、カラオケ大会は先に始めていてください」
「いいんですか?」
「ええ、僕のために待ってもらうなんて申し訳ないですから。――では、のちほど」
すると、津村さんは食堂を出ていった。
「もう、まったく。せっかく楽しいお食事なんだから、仕事のことなんて忘れればいいのに」
菜々美さんが言った。
「これからお仕事されるんですか?」
「ええ、セリフを覚えに部屋にこもったのよ。夕食後からきっかり一時間。いつもそう」
「でも、今日は下見ですよね?」
「多分、今やってるテレビドラマの台本よ。私と違って航介は一気に何本も抱えてるから」
「すごいですね」
「私も何年か前までやってたけど、プライベートも大事にしたいから今はやらないわ」
すると根津さんが、
「菜々美さんはプライベートも充実ですか。さすがです!」
と拍手をした。このモードの根津さんは、もういい加減うるさい。
食事が終わると、私たちは楽しい話をしながらカラオケルームに向かった。室内は壁沿いにソファーが並び、中央にはテーブルがあった。
「さて、何を歌おうかしら」
ほろ酔いの菜々美さんがデンモクを取った。きっと女優さんだから歌は上手いんだろうな。
「……あれ?」
菜々美さんがデンモクに付いているタッチペンを画面にタッチし続けている。
「どうしたの、菜々美ちゃん」
監督の吉澤さんである。
「タッチパネルが反応しないんですよ」
「どれどれ」
吉澤さんは菜々美さんの手からデンモクを取り上げて、こぶしで軽くたたいている。
「だめだね、これは。――村松、直せるか?」
「カメラじゃないんですから、無理ですよ。フロントのお姉さんを呼びましょう」
カメラマンの村松さんは壁に備え付けてある電話を取って、加奈子さんを呼んだ。
加奈子さんはカラオケ機器の前にしゃがむと、ガチャガチャといじりだした。きれいな指はあっという間にほこりだらけである。
「本当にすみません。この間学生さんのグループがご利用されたときはちゃんと動いたのに……」
加奈子さんはだいぶ苦戦しているようだ。
すると、絋一郎さんがカラオケルームに入ってきた。
「すみません、どなたかお手伝いいただけませんか? 倉庫に取扱説明書があるはずなんですが、一人じゃ探せないのです。――そうですね、飯山(いいやま)さん、お手伝いいただけますでしょうか」
「はい」
菜々美さんのマネージャーの飯山さんは外に出て、絋一郎さんはドアを閉めた。
加奈子さんは引き続きカラオケ機器を直すべくいじったが、一向に動く様子はなかった。私たちを含めたその他の人たちも誰もカラオケルームを出ることなくいろいろ原因を探ってみたが、動き出す様子はなかった。
「そういえば航介さん来ないわね。もうそろそろ来てもいい時間なのに」
菜々美さんがカラオケルームの時計を見て言った。
「申し訳ございませんが、まだ動きません……」
「航介を呼びに行った方がいいですか?」
津村さんのマネージャーの栗本さんが言った。
「そうねえ……。頼むわ」
菜々美さんにそう言われると、彼はカラオケルームを出た。
すると、そのすぐあとで絋一郎さんと飯山さんがカラオケルームのドアを開けた。
「取扱説明書、見つかったぞ!」
そういうと、絋一郎さんは加奈子さんと場所を代わってカラオケ機器の前にしゃがむと、すらすらと機械をいじり始めた。
これでカラオケ大会が始められる、と誰もが安堵したそのとき。
「うわああああああ!」
どこからか、叫び声が聞こえた。明らかに非常事態の声である。この室内にいないとなると栗本さんの声だ。全員の顔が硬直した。
根津さんを見ると、浮かれていた顔がきりっと変わっていた。さすが刑事。
「絋一郎さん、津村さんって一階の部屋にいるんですよね?」
「ええ、一〇一号室ですけど……」
私と根津さんはカラオケルームを飛び出した。
私たちは階段を駆け下り、津村さんの部屋の前に着いた。すると、栗本さんが腰を抜かしていた。
「どうしたんですか?」
訊くと、栗本さんは震えた手でゆっくりと正面を指さした。
その方を見ると、そこには津村さんが倒れていた。腰には何か刺さっていて血が流れているようだ。
「……根津さん、頼むわ」
「ああ」
根津さんが素早く部屋に入り、津村さんの手首に指を当てる。
「……だめだ。亡くなってる・・・」
根津さんは首を落とした。
「みなさん、今からこの部屋を立ち入り禁止にします! 加奈子さん、警察に連絡をしてください」
私は言った。
「はい!」
加奈子さんはこの部屋の斜めにあるフロントの電話を取った。
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