上 下
8 / 30

三色おにぎり

しおりを挟む
一つ目のおにぎりは今日活躍した、たけのこご飯を使おうと思う。
本当は私の夜ご飯だったんだけど仕方ない。
たけのこがいっぱい入るように少しだけ、たけのこをおひつからひろい集め三角に握って完成。

二つ目のおにぎりも今日活躍した、ふきの辛味噌を使う。
手のひらにご飯をのせ真中にふきの辛味噌をのっけて、三角に握って完成。

三つ目は少し味を変えていこうと思う。
二つとも味噌味だと飽きもくるので、さっぱりしたおにぎりを作りたい。
そういえば、下のツボの中に梅干しがあったのを思い出す。
よしさんには昨日好きに使っていいと言われているし、これを使おう。

ただの梅干しお握りだとつまらないので朝少し採れたみょうがとうわばみそうを使うことにした。
梅干しの種をとり、果肉だけにする。

次にみょうがを細切りにする、みょうがの匂いが鼻をくすぐるいい匂いだ。
みょうがの誘惑に負け、一つだけつまみ食い。
そのままみょうがに味噌をつけてかじると口と鼻の中にみょうがの風味が広がっていく。

もう一つ食べたいのを我慢し、次の作業に取りかかる。
うわばみそうはとても食べやすい味らしい、これをみょうが同様に細切りにする。
少し大きな器にさっき切った具材を入れて混ぜる。

このままでも美味しそうだけど、最後にご飯と少し塩をいれてしゃもじで混ぜていく。
ある程度混ざったら、手のひらに混ぜたご飯をのせて三角に握っていき、これで三色おにぎりりの完成。

すごく美味しそう、特に梅のおにぎり。
早くあの人に渡して、自分のも握ろう。
少し多めに作ったから梅おにぎりは作れるはず。

笹におにぎり三つをくるんで急いで井戸に向かう。

「お待たせしました。おにぎりです、どうぞ。」

その人は井戸に腰掛けていた体をおこした。

「あぁ、ありがと。」

私からおにぎりを受け取って、その人はクスクス笑う。
何がそんなに面白いのだろうとむっとしてその人を睨んだ。

「料理に夢中になるのはいいけど、ここ見えてるよ。」

その人が自分の胸をトントンとたたいていた。
私は自分の胸を見た、えりを緩めていた事を思い出す。
しまったと、急いでえりを正した。
胸全てが見えてはないだろうが、間違いなく胸の谷間ぐらいは見えたであろう。

顔が赤くなるのが自分でもよく分かった。
恥ずかしすぎる、そのことに気付かない自分も自分だ。
というかこの人最初からわかっていたなら言えばいいのに!

その人はそんな私を面白そうに見て、私の作ったおにぎりを持って去っていった。

おにぎりを食べて驚く姿をこの目でみたかったが仕方ないな。
早く居なくなってくれて良かったかも、ちょっと怖かったし。
井戸の周りを見渡すと死んだ狼の死体は既になくなっていた。
一体、誰が片付けたか気になるけど、きっとさっきの人が片付けたのかもしれないと思いそれ以上考えなかった。

さっきあんなことがあり怖かったが、体を拭くのが途中だったのでビクビクしながら体を拭いた。
その後はお待ちかねのおにぎりタイムだ。
梅おにぎりを二つ作ることができた。
一つはよしさんにあげて、美味しさを分け合うつもりだ。
あの人に作ったのと同じ三色おにぎりをよしさんに渡す。
私のたけのこおにぎりはあげてしまい、二つになってしまったがまぁいいとしよう。
よしさんには不審がられたが、今日はお腹があまり空いていないからと誤魔化した。

最初は、ふき辛味噌おにぎりからたべる。
ふきにしっかり辛味噌味が染みている、ピリッと辛いのがまた食欲をかきたてられる。
本当にご飯との相性が抜群だ。
ぺろりと平らげてしまった。

最後にお待ちかねの梅ごはんだ。
梅とみょうがの相性はいかほどに…。
一口かぶりつく。
これは、うますぎでは…。
みょうが好きの私には幸せすぎる味だ。
梅のすっぱさとみょうがのあの独特な味がマッチしている。
これは梅好きとみょうが好きが好きなおにぎりだ。
うわばみそうは味に癖がないので梅とみょうがの邪魔をしていない。
全体的にさっぱりしていて夏にはもってこいの一品。
またしてもぺろりと食べ終わってしまった。

ちょうどよしさんも梅おにぎりを食べていた。
よく味わいながら食べている感じだ。
よしさんの感想が気になりそわそわする。

「二つ目おにぎりでお腹いっぱいだったんだけど、このおにぎりさっぱりしてるから全部食べちゃったわ。」

よしさんはいいわね、このおにぎりと言って気に入ってくれたみたいだ。
あの人も今頃このおにぎりを食べているだろうか。
夕方会った美少年を思い出す。
驚いた顔を見て見たかったと思う反面、もう会いたくはないかもとも思うのだった。



この時作った梅おにぎりのせいで私は名も知らない彼に振り回されることになる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

あなたが望んだ、ただそれだけ

cyaru
恋愛
いつものように王城に妃教育に行ったカーメリアは王太子が侯爵令嬢と茶会をしているのを目にする。日に日に大きくなる次の教育が始まらない事に対する焦り。 国王夫妻に呼ばれ両親と共に登城すると婚約の解消を言い渡される。 カーメリアの両親はそれまでの所業が腹に据えかねていた事もあり、領地も売り払い夫人の実家のある隣国へ移住を決めた。 王太子イデオットの悪意なき本音はカーメリアの心を粉々に打ち砕いてしまった。 失意から寝込みがちになったカーメリアに追い打ちをかけるように見舞いに来た王太子イデオットとエンヴィー侯爵令嬢は更に悪意のない本音をカーメリアに浴びせた。 公爵はイデオットの態度に激昂し、処刑を覚悟で2人を叩きだしてしまった。 逃げるように移り住んだリアーノ国で静かに静養をしていたが、そこに1人の男性が現れた。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※胸糞展開ありますが、クールダウンお願いします。  心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。イラっとしたら現実に戻ってください。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。

しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。 私たち夫婦には娘が1人。 愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。 だけど娘が選んだのは夫の方だった。 失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。 事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。 再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。

女官になるはずだった妃

夜空 筒
恋愛
女官になる。 そう聞いていたはずなのに。 あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。 しかし、皇帝のお迎えもなく 「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」 そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。 秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。 朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。 そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。 皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。 縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。 誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。 更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。 多分…

王太子の子を孕まされてました

杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。 ※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

処理中です...