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レヴェレナット ―起ノ壱―
旅立ち
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私は、博士に作られた人造人間だ。
名前はレヴェレナット。
表では藤島幹という名前で活動している。
私は、はっきり言って欠陥品だ。
力や速さ、単純なものなら人間を上回る。
だけど、私は知力が低い。
人工知能のような、そんな知力はない。
普通の人間と同じなのだ。
それだけじゃない。
私には、感情がある。
いや、正確には、多分、感情に似た何かだ。
プログラムされただけの、仮初の心だ。
私は、機械としては出来が悪かった。
博士の役に立ったことなんて、一度もない。
優くんの役にも、愛理ちゃんの役にも。
誰の役にも立たない我楽多、それが私。
それが、レヴェレナット。
そんな私でも、大切にしてくれる人。
博士、優くん、愛理ちゃん。
私を大切に思ってくれる人。
私が大切に思っている人。
そんな人なんだ。
博士は、私の大切な人なんだ。
だから、助けなきゃって思った。
でも、止められるだろうなと思った。
それは案の定だった。
愛理ちゃんが待ったをかけて来た。
じっと見つめて来た。
睨んできた。
そうだ、私があの火の中に飛び込むことを拒んでいるんだ。
優しいんだな、愛理ちゃんは。
そう思った。
でも、優くんは止めてこなかった。
何もしなかった。
何も言わなかった。
そんな優くんも、私は優しいと思う。
止めるのも優しいよ。
私を止めないのも優しいよ。
何をしても、二人は優しくて、温かくて、素敵な人。
それを再認識して、私は駆け出した。
燃え盛る炎の家に。
私の家に。
―――
火の中、とてつもない熱さを感じた。
皮膚が焼けただれていくのを感じた。
痛かった、機械なのに。
でも、痛くても機械なんだ。
きっと、博士が求める人造人間は、炎なんて厭わずに突き進み、博士を軽々と運んで助けてくれるような、そんな人造人間だ。
だから私は、それに応える。
何としても、絶対に。
大切にしてくれる人を、助けるんだ。
そう決心したのに。
博士は見当たらなかった。
気づけば家は倒壊していた。
下敷きになった。
痛かった。
でも、機械なんだ、これくらい耐えないと。
ああ、どうしよう。
博士が死んでたらどうしよう。
身体が震える。
でも、今はとにかく、この家から出ないと。
多分だけど、ポンコツな私の目で見ただけの情報だけど、博士はの家にいない。
なら、早く外を探さなきゃ。
早く見つけなきゃ。
私の、大切な人を。
―――
外に出た。
瓦礫を押し退け、炎をくぐりながら。
外には大量の野次馬がいた。
消防車も来ていた。
必死に消火活動をしている。
愛理ちゃんは、ああ、吐いちゃってるな、あれは。
そっか、今の私、人間じゃないんだった。
皮はもう、剝げ落ちたんだった。
こんな姿、醜いもんね。
そういえば、優くんはどこだろう。
あ、あれかな。
・・・あはは、優くん、すごいや。
あんな顔して、私を見てる。
優しいなあ、優くんは。
博士も、優しかったなあ。
探さないと、絶対。
「わたしは・・・」
あれ、なんでだろう、声が出づらいな。
何か,のどにこべりついてるみたいだ。
どろどろとして、それでいて眩しくて、所々ひびの入った何かが。
でも、大丈夫。
言おう、言っちゃおう。
博士の為にも、私の為にも。
言うんだ、私。
私は、機械で作られた人間だと。
私は、人間じゃないと。
私は、藤島幹ではないと。
私は、博士に作られた人造人間、レヴェレナットだと。
「わたしは、わたしは機械人間、レヴェレナット!! 私の大切な人、藤島樹里を、誰か知りませんか!!!」
言った。
言ってやった。
言ってしまった。
言っちゃったんだ。
そう感じた時、のどにこべりついていた何かは、すっきりとなくなっていた。
ああ、いい気分だな。
そう感じた。
しかし、野次馬たちからの反応はゼロか。
これじゃあ駄目だなあ。
やっぱり、私が探さないと。
大事な大事な、博士の事を。
そうして、私は重たい脚を動かした。
黒鉄色の脚を。
「待って!!」
私は足を止めた。
愛理ちゃんの声だ。
サッと振り向くと、気持ち悪そうな顔をしながら、私を指さしている。
私と愛理ちゃんの目が合った。
その時、愛理ちゃんが吐き気をこらえるような素振りをした。
その次の時だ。
「私も連れて行ってっ!!!!!!」
野次馬は皆愛理ちゃんの方を向いている。
そうだよね、こんな私に話しかけたら、そりゃそうだよ。
それに、連れて行ってだなんて。
ダメって言っても、どうせついてくるのに。
でも、そんな考えもきっと伝わってるよね、愛理ちゃんには。
伝わってるはず。
そう信じるよ。
信じて、私は旅立つよ。
―――
幹は歩いて行った。
烏丸も、幹について行った。
俺は、まだ立ったままだ。
まだ、幹たちの背は見える。
でも、足が動かない。
『・・・あなたの好きな人は、博士を探しに行くみたいよ。あなたはあなたの意思で動くべきだと思うけれど、もし本当に幹が好きなら、よく考えたうえで勝手にしなさい』
なんて捨て台詞を吐かれた手前、俺は考えた。
幹をどう思っているか、どう見ているか、どう感じているか。
幹の事は好きだ。
例えどんな姿でも、好きだ。
この感情は間違っちゃいない。
だから、俺は追いつきたい。
幹に、早く。
なのに身体が動かない。
動けない。
金縛りとは違うんだろう。
足がすくんでいるんだろう。
いや、果たして本当にそうか?
俺はまだ怖いのか?
いや、怖くない
なら、なぜ、どうして俺は、動けないんだ――
そんな時だった。
『彼女を人間だと思ってるからさ』
声が聞こえたのは。
低い、冷たい、誰かもわからぬ男の声だ。
『彼女は人間じゃない。彼女は機械だ、少し特殊だけどね。君もそう思ってるんだろう?』
思っていない。
幹は、人だ。
俺と同じにんげ――
『嘘だね、それは嘘だよ。君は心の底で、彼女が、レヴェレナットが機械であると認めている。いや、むしろ、機械としてしか見ていない』
ちがう!!
なんなんだオマエ、誰なんだよオマエ!!
俺は、幹を機械だなんて思ってない!
あいつは人間だ、幹は人間だ。
それが、人間であることが、幹は何よりも幸せなんだ・・・
『くっ、くくくくくく・・・』
何が可笑しいんだよ。
『いや、だって、もう答えは出ているじゃないか』
答え?
『そう。だって君、彼女の幸せのために、彼女を人間にしてるだけなんだろ? それ、根本は機械として見ているんじゃない?』
それは、そんなこと・・・!
『そんなことあるだろう? 嘘はだめだよ。君は、彼女を機械として見てる。今までだって、所々にそれは垣間見えていたろ。自分騙しはやめだよ』
なんなんだ、なんなんだよオマエ・・・
誰なんだよ、オマエ・・・
『僕? 僕はね・・・うーん、時期に分かるよ。とにかく今は、彼女を追ってあげなよ。レヴェレナットを――』
それは、それは!
俺は、足が動かないから!!
・・・あれ? 動く?
動いてる・・・
「あー、あー、」
声も出る。
手も握れる。
今のは、一体何だったんだ・・・
違う、今はそんなことよりもレヴェだ!
早くレヴェのところに――
今、俺、レヴェって?
違う、幹だ。
そう、幹、藤島幹、人間の幹。
レヴェレナットじゃない、レヴェレナットじゃない・・・
よし、大丈夫。
行こう、早く幹のところへ。
博士を探すために。
名前はレヴェレナット。
表では藤島幹という名前で活動している。
私は、はっきり言って欠陥品だ。
力や速さ、単純なものなら人間を上回る。
だけど、私は知力が低い。
人工知能のような、そんな知力はない。
普通の人間と同じなのだ。
それだけじゃない。
私には、感情がある。
いや、正確には、多分、感情に似た何かだ。
プログラムされただけの、仮初の心だ。
私は、機械としては出来が悪かった。
博士の役に立ったことなんて、一度もない。
優くんの役にも、愛理ちゃんの役にも。
誰の役にも立たない我楽多、それが私。
それが、レヴェレナット。
そんな私でも、大切にしてくれる人。
博士、優くん、愛理ちゃん。
私を大切に思ってくれる人。
私が大切に思っている人。
そんな人なんだ。
博士は、私の大切な人なんだ。
だから、助けなきゃって思った。
でも、止められるだろうなと思った。
それは案の定だった。
愛理ちゃんが待ったをかけて来た。
じっと見つめて来た。
睨んできた。
そうだ、私があの火の中に飛び込むことを拒んでいるんだ。
優しいんだな、愛理ちゃんは。
そう思った。
でも、優くんは止めてこなかった。
何もしなかった。
何も言わなかった。
そんな優くんも、私は優しいと思う。
止めるのも優しいよ。
私を止めないのも優しいよ。
何をしても、二人は優しくて、温かくて、素敵な人。
それを再認識して、私は駆け出した。
燃え盛る炎の家に。
私の家に。
―――
火の中、とてつもない熱さを感じた。
皮膚が焼けただれていくのを感じた。
痛かった、機械なのに。
でも、痛くても機械なんだ。
きっと、博士が求める人造人間は、炎なんて厭わずに突き進み、博士を軽々と運んで助けてくれるような、そんな人造人間だ。
だから私は、それに応える。
何としても、絶対に。
大切にしてくれる人を、助けるんだ。
そう決心したのに。
博士は見当たらなかった。
気づけば家は倒壊していた。
下敷きになった。
痛かった。
でも、機械なんだ、これくらい耐えないと。
ああ、どうしよう。
博士が死んでたらどうしよう。
身体が震える。
でも、今はとにかく、この家から出ないと。
多分だけど、ポンコツな私の目で見ただけの情報だけど、博士はの家にいない。
なら、早く外を探さなきゃ。
早く見つけなきゃ。
私の、大切な人を。
―――
外に出た。
瓦礫を押し退け、炎をくぐりながら。
外には大量の野次馬がいた。
消防車も来ていた。
必死に消火活動をしている。
愛理ちゃんは、ああ、吐いちゃってるな、あれは。
そっか、今の私、人間じゃないんだった。
皮はもう、剝げ落ちたんだった。
こんな姿、醜いもんね。
そういえば、優くんはどこだろう。
あ、あれかな。
・・・あはは、優くん、すごいや。
あんな顔して、私を見てる。
優しいなあ、優くんは。
博士も、優しかったなあ。
探さないと、絶対。
「わたしは・・・」
あれ、なんでだろう、声が出づらいな。
何か,のどにこべりついてるみたいだ。
どろどろとして、それでいて眩しくて、所々ひびの入った何かが。
でも、大丈夫。
言おう、言っちゃおう。
博士の為にも、私の為にも。
言うんだ、私。
私は、機械で作られた人間だと。
私は、人間じゃないと。
私は、藤島幹ではないと。
私は、博士に作られた人造人間、レヴェレナットだと。
「わたしは、わたしは機械人間、レヴェレナット!! 私の大切な人、藤島樹里を、誰か知りませんか!!!」
言った。
言ってやった。
言ってしまった。
言っちゃったんだ。
そう感じた時、のどにこべりついていた何かは、すっきりとなくなっていた。
ああ、いい気分だな。
そう感じた。
しかし、野次馬たちからの反応はゼロか。
これじゃあ駄目だなあ。
やっぱり、私が探さないと。
大事な大事な、博士の事を。
そうして、私は重たい脚を動かした。
黒鉄色の脚を。
「待って!!」
私は足を止めた。
愛理ちゃんの声だ。
サッと振り向くと、気持ち悪そうな顔をしながら、私を指さしている。
私と愛理ちゃんの目が合った。
その時、愛理ちゃんが吐き気をこらえるような素振りをした。
その次の時だ。
「私も連れて行ってっ!!!!!!」
野次馬は皆愛理ちゃんの方を向いている。
そうだよね、こんな私に話しかけたら、そりゃそうだよ。
それに、連れて行ってだなんて。
ダメって言っても、どうせついてくるのに。
でも、そんな考えもきっと伝わってるよね、愛理ちゃんには。
伝わってるはず。
そう信じるよ。
信じて、私は旅立つよ。
―――
幹は歩いて行った。
烏丸も、幹について行った。
俺は、まだ立ったままだ。
まだ、幹たちの背は見える。
でも、足が動かない。
『・・・あなたの好きな人は、博士を探しに行くみたいよ。あなたはあなたの意思で動くべきだと思うけれど、もし本当に幹が好きなら、よく考えたうえで勝手にしなさい』
なんて捨て台詞を吐かれた手前、俺は考えた。
幹をどう思っているか、どう見ているか、どう感じているか。
幹の事は好きだ。
例えどんな姿でも、好きだ。
この感情は間違っちゃいない。
だから、俺は追いつきたい。
幹に、早く。
なのに身体が動かない。
動けない。
金縛りとは違うんだろう。
足がすくんでいるんだろう。
いや、果たして本当にそうか?
俺はまだ怖いのか?
いや、怖くない
なら、なぜ、どうして俺は、動けないんだ――
そんな時だった。
『彼女を人間だと思ってるからさ』
声が聞こえたのは。
低い、冷たい、誰かもわからぬ男の声だ。
『彼女は人間じゃない。彼女は機械だ、少し特殊だけどね。君もそう思ってるんだろう?』
思っていない。
幹は、人だ。
俺と同じにんげ――
『嘘だね、それは嘘だよ。君は心の底で、彼女が、レヴェレナットが機械であると認めている。いや、むしろ、機械としてしか見ていない』
ちがう!!
なんなんだオマエ、誰なんだよオマエ!!
俺は、幹を機械だなんて思ってない!
あいつは人間だ、幹は人間だ。
それが、人間であることが、幹は何よりも幸せなんだ・・・
『くっ、くくくくくく・・・』
何が可笑しいんだよ。
『いや、だって、もう答えは出ているじゃないか』
答え?
『そう。だって君、彼女の幸せのために、彼女を人間にしてるだけなんだろ? それ、根本は機械として見ているんじゃない?』
それは、そんなこと・・・!
『そんなことあるだろう? 嘘はだめだよ。君は、彼女を機械として見てる。今までだって、所々にそれは垣間見えていたろ。自分騙しはやめだよ』
なんなんだ、なんなんだよオマエ・・・
誰なんだよ、オマエ・・・
『僕? 僕はね・・・うーん、時期に分かるよ。とにかく今は、彼女を追ってあげなよ。レヴェレナットを――』
それは、それは!
俺は、足が動かないから!!
・・・あれ? 動く?
動いてる・・・
「あー、あー、」
声も出る。
手も握れる。
今のは、一体何だったんだ・・・
違う、今はそんなことよりもレヴェだ!
早くレヴェのところに――
今、俺、レヴェって?
違う、幹だ。
そう、幹、藤島幹、人間の幹。
レヴェレナットじゃない、レヴェレナットじゃない・・・
よし、大丈夫。
行こう、早く幹のところへ。
博士を探すために。
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