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求めるもの
しおりを挟むオリバーが部屋を出て1人きりになり、暫くベッドで休んだ後、ふらつきながらも何とか立ち上がってクローゼットを漁り、俺はここに来た時に着ていた襦袢を羽織って部屋のバルコニーに出た。
以前より弱い薬に戻したのか、意識がある時間が増えた。
外はすっかり日が暮れて、山の裾野から下弦の月が顔を出していた。
広いバルコニーにはベッドにも使えそうな程大きな白いソファが備え付けられている。そこに座っていると媚薬で火照った身体を冷たい夜風が冷ましてくれる。
月明かりの中、遠くを眺めてふと考える。
オリバーは執拗に俺を傍に置きたがる。
俺といると落ち着くから、と。
きっとそれはあいつが拒み続けている『死』のオーラを俺の中に感じているからなんじゃないかと思う。
『死』は決して怖くなんかない。
『生』よりも平等に与えられる終焉、そして《再生》への旅立ちだ。
俺の存在はその旅立ちへの道しるべとなる。
あいつの魂は無理矢理引き延ばした寿命のせいでボロボロに傷付いている。
無意識のうちに魂が『死』という安らぎを求めているんだろう。
ソファの上で座り直した時、襦袢が擦れる刺激で身体の中に残ったまだ冷めきれない熱が疼いた。
ソファの背もたれに身体を預けて、濡れた膣口を指先で優しくなぞる。
誘われるように愛液で濡れた指を膣内に差し込んで気持ち良い場所をゆっくりと擦る。
「…は…っ、ふぅ…、ああ…、んっ」
毎日オリバーに弄ばれて俺の身体はすっかり肉欲の快楽を覚えてしまった。
子供が出来るのを恐れているのか指や玩具は入れられるものの、未だにココだけは犯されていない。
犯されそうになっても拒むとオリバーはすぐに止める。オリバー自身も慎重になっているんだろう。子供が出来ればあいつの恐れている『死』が待っているのだから…。
俺の最後の砦だった。
そしてリュカとの大切な場所…。
ココを守るためなら羞恥に耐えながら"おねだり"だってしたし、自分から挿入もした。俺もあいつの子供を妊娠するだなんて絶対に嫌だ。有り得ない。ほんの少しだけでもそのリスクを遠ざけたくて……。
あいつの身体…、肉棒は凶器だ。
殆ど薬のせいとはいえ、どんどん抗えなくなって俺の意思を無視してあいつを求めてしまう自分の身体が怖い。
砦を守る為と覚悟をしたとはいえ、自ら腰を落とし拒み続ける心に逆らって身体が夢中で快楽を貪っていた。そんな自分が嫌になった。
ココを…、この砦さえ失ってしまったら本当に…俺の全てがあいつのものになってしまいそうで……とても怖い。
くちゅくちゅと更に激しく指を動かしながらリュカを想う。
歌声が…、声が聴こえたってことは…。
リュカは確かにここに来ていたってこと…。
逢いたかった。
顔が見たかった。
なりふり構わず走り出して、その名を呼んで、優しくて温かいあの胸に飛び込みたかった。
ああ、リュカ…、リュカ……っ!!
逢いたい……。
早く逢いたいよ、何処にいるの…?
せめて遠目からでも良いから顔を、姿を見せてよ。
お願い、少しでいいから。
俺を安心させてよ。
リュカ…、リュカ…。
俺の初めてを奪ったくせに…。
俺の心を染めたくせに……っ!
逢いたい、逢いたいよぉ…っ!!
俺を……、満たして…!!
「……あ、あっ…好きっ、リュカ、リュカ!!…好き……っ、だい、…すき…、リュカ…っ、あっ♡、…んぅぅ…っ!!」
やりきれない気持ちを振り切るようにリュカの名を何度も呼びながら絶頂に達し、身体がビクビクと跳ねる。ペニスからは何も出ずに膣内でイッた。
あがった息をゆっくりと整えながらずるずると力なく倒れ込み、ソファの広い座面に仰向けに寝転んで再び熱くなってしまった身体を冷ましていると、ふいに月が目に入った。
冷たく澄んだ闇夜に妖しく浮かび上がる下弦の月…。
トマの為に作った月。
トマ……。
トマはあれから何度呼びかけても未だに全く返事が返って来ない。
相変わらず深い闇に沈んで閉じこもったまま。
オリバーはトマを刺殺したあの男にとても似ている。きっとオリバーの姿を見たらトマは更にショックを受けるだろうと考えて、無理に呼び起こすことはしてこなかったけど……。
流石にこんなにも反応がないと不安になってくる。
ねぇ、トマ……。
ブラッドを亡くして傷付いているのはわかってる。せめてその気持ちを俺にぶつけて、吐き出してよ。
俺はいつだって…、どんなトマだって受け止めたいのに。
トマには俺は必要なかったの…?
ずっと求めてたのは俺だけだったの?
一つに戻りたいと思ってたのも…ずっと一緒にいたいと思っていたのも、全部何もかも俺の独りよがりだったの……?
目頭がジワジワと熱くなる。
下弦の月が涙で滲んでゆらゆら揺れる。
あんなに強く誓ったのに……。
心が壊れてしまいそう。
ねぇ、一言だけで良いから…。
トマの声を聞かせてよ。
トマが居るはずの影の中へ何度も呼びかけてもやっぱり返事は返って来なかった。どうしようもない強い孤独と不安に襲われて自分が惨めに思えてくる。
トマ……。リュカ……。
俺のことはもう要らないの?
こんなに汚れてしまったから…?
俺は何のために……。
ねぇ、俺、生まれてこなければよかったのかなぁ…?
お願い…、誰か…、助けて…。
俺のこと……、誰か必要としてよ……。
月の輪郭が涙で滲んで見えなくなってきて、混沌とした闇が俺の心を呑み込んでいく。
寝返りを打って身体を横にして膝をぎゅうっと強く抱えて小さくなる。
このままどんどん小さくなって消えてなくなってしまいたい気持ちと必死に闘いながら声を殺して泣き続けた。
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