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浴室
しおりを挟む人気がなくなった部屋でヨルと2人きりになった。私はグッタリとベッドに横たわるヨルの元へ歩み寄り、汚れたベッドの上に座った。
ヨルの顔や身体は近くで見ると更に酷くて衝撃を受けた。
殴られた跡で顔が歪むほど酷く腫れ上がり、鼻血や口から血が出て無数の涙と混ざってぐちゃぐちゃになっている。
虚ろな目ですっかり憔悴しきっていて、身体中精液に塗れ、白い肌にキスマークが無数にあり、吸われすぎたのか殴られたものなのか、赤黒い痣になっているものも幾つかあった。
手首には縛られた跡があり、暴れたのかその場所に血が滲んでいる。そしてお腹はまるで妊娠中期の妊婦のようにパンパンに膨らんでいてとても苦しそうだった。
どれだけ無理をさせたんだろう…。
どれだけ苦痛を与えたんだろう…。
先程までの鬱屈とした気分は吹き飛び、ヨルに対するオリバー様の仕打ちを考えるだけで寒気がして胸が強く痛んだ。
あの方は『愛』を知っても愛し方を知らない。人を傷付ける事でしか自分の存在を、その想いを証明する事が出来ないのだとこの時、改めて知った。
でもまさか…、暴走してここまでするなんて思ってもみなかった。安易に焚き付けるものではなかったと猛省した。
これは私のせいだ……。
ヨル…、本当にごめんなさい…。
「…ヨル……?私だよ、わかる…?」
嫌悪感を抱いてしまわぬよう様子を見ながら囁くように声をかけてヨルの手にそっと触れてみると、ヨルは赤ちゃんみたいに私の指をぎゅっと握り返してきた。どうやら反応は出来るみたいだ。良かった。
「大丈夫……?」
私が聞くと弱々しく首を横に振った。
「そう…だよね…。ごめんなさい。…できればヨルの身体を綺麗にしたいんだけど…、抱っこしてもいいかな……?」
ヨルは少し考えてコクッと小さく頷いた。
一気に回復させると身体の組織の急激な活性化で痛みを伴う為、まず応急処置として軽く回復薬を与えた後、ヨルを横抱きに抱えて浴室に連れて行き、洗い場の椅子に座らせて様子を伺いながらノアにシャワーを当てて、その間に浴槽にお湯を張った。
ヨルの膣口から絶え間なく大量の精液が流れ出てくる。
「……ふぇ………っ、ゔゔ…っ」
シャワーのお湯と共に流れる大量の精液を見てヨルの顔が歪んで、腫れた目から涙がぽろぽろ溢れてきた。
「やだ…。おれ…、おれ……っ、あかちゃん、いらない…、欲しくない…っ、欲しくないよぉ…、ひ…っく、いらない……っ、ふぇぇぇっ、んっ」
きっとショックのあまり赤ちゃん返りでもしてるのかな……?
心が壊れてしまったのかもしれない。
私は膝立ちのまま取り乱すヨルを優しく、強く抱き締めた。ヨルは私にしがみつくように抱き締めかえして泣いた。
「ふぇぇ……っ、ひっく、ううっ」
今のヨルは会談の前に見た大人びた雰囲気とはかけ離れ、その姿はとても小さい……幼子そのものだった。
「…ヨル、聞いて?今からヨルの膣内に指を入れて綺麗にするから少しでも痛かったらすぐに言うんだよ?いいね?」
私が強めに言うとヨルは頷きながらもずっと嗚咽を漏らして泣いていた。
ヨルを一度立たせて私の肩に寄り掛からせながら、ヨルの膣内を傷付けないように細心の注意を払い優しく指とシャワーの水圧で出来る限り綺麗にした後、湯船に入らせようとするとヨルはまた私に強く抱きついて離れようとしなかった。
「ヨル…?」
呼びかけて湯船に入るように促してもヨルは黙って私にしがみついたまま動こうとしない。
「………んー…じゃあ、私も一緒に入っていいかな?」
ヨルに聞くと、うんうんと頷いて少しだけ笑ってくれた。精液を掻き出して少し気を取り直したのかもしれない。
完全に壊れたわけじゃないのが分かって少しホッとした。
でも涙でぱんぱんに腫れた目でふわっと弱々しく笑うその姿はとても痛々しかった。
「じゃあ服を脱ぐから先に入ってて。」
私がそう言うとヨルは素直に湯船に浸かった。
「…………きれい…。」
濡れた服を脱ぎ捨てると、先に湯船に入っていたヨルが私の身体をじっと見つめて金色の瞳をキラキラと輝かせながら呟いた。
なんだかとてもむず痒いような…嬉しいけど、恥ずかしい。
私は綺麗なんかじゃない…。
沢山の男に輪姦され、陵辱されて悦び、先程まで兄を殺した隊長にさえ犯されて感じてしまっていたのだから…。
「ヨルの方がとても綺麗だよ。私は…とても…、汚れてる。」
言葉を選びながら肩をすくめて自嘲するとヨルは何度も首を横に強く振って否定してくれた。
私が長い髪を一つにまとめ上げて湯船に浸かると、先程まで私を凝視していたヨルが背中を向けてすすっと近付いてきて私の脚の間に入り込み、胸にすっぽりと収まった。その様子が小動物みたいでとても可愛いくて思わずきゅんとして笑みが溢れてしまう。
「ねぇ…おれ…、グレタ好き。大好き。グレタといるとリュカを感じる。リュカ…、グレタ大好き。すごく気持ちいい…。」
私の腕を自分の身体に回して泣き過ぎて涸れたか細い声で嬉しそうにヨルがポツリと呟いた。
きっとヨルにとって兄さんの存在だけが心の支えだ。今のヨルには兄さんが死んだ事は言えない…。受け止めきれずに本当に壊れてしまいそうな気がして、私は罪悪感を感じつつも嘘をつく事にした。
「兄さん…全然顔見せないけど、今どこで何してるのかな……。こんなに間が空くなんて初めてで…。怪我とかしてないと良いんだけど。」
ふぅ、と私が一つ溜め息をついた後、浴室がしん、と静まり返る。
シュンとしながら考え込むヨルの小さな背中に向かって心の中で何度も「ごめん」と謝った。
沈黙が続く中、湯船の水音が響いて浴室を照らす蝋燭の火が静かに揺らめいていた。
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