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しおりを挟む目を覚ますと見知らぬベッドにいた。
僕の身体…元に戻ってる……?
なんだかとても長い…不思議な夢を見ていた気がするけど。
この状況、もう何回目かな。
ベッドからはご主人様の匂いがして少し安心した。
辺りは暗くて、壁に付いている蝋燭立ての蝋燭の灯が小さく揺れている。
上半身を起こそうとした時、ベッドサイドのテーブルに置いてあるハンドベルがリィン!リィン!と急に音を鳴らし始めた。
ひぇっ!!
僕はギョッとして再び布団に潜り込んでみのむしになる。
足音が部屋に駆け込んできた。
「ルーシェ!?」
「ご主人様……?」
みのむしからちょこっと目を出して布団から覗いてみると寝衣にガウンを羽織ったご主人様が、はぁあぁぁぁぁ!!と盛大に溜め息をついて、ぐしゃぐしゃな顔で涙を浮かべながら僕を布団ごと抱き締めてきた。
「る……っ!!しぇ…ッッッ!!おっ、お………っ!!!!おまえ、大丈夫かっ!!?ずっと寝てたんだぞ!?…た、ぉ、倒れてから一ヶ月も!!!」
………え?……な、なんのこと……?
僕は驚くけど、ご主人様の方がもっと驚いて動揺している。
震える手でご主人様が僕に触れようとした時。
「ゔ……っ、ぎぼぢわ…るぃ…っ」
急な胸焼けと吐き気に襲われる。
僕はみのむしから急いで顔を出して口を抑えた。
その瞬間、何故かベッドの下にビニール袋をつけたバケツが用意してあり、ご主人様がそれをサッと取り出して僕のゲ○を受け止めてくれた。ゲ○といっても、唾液と胃液しか出てこなかったけど。
でもご主人様の動きが素早過ぎてコントみたいで少し笑えた。
そういえば、僕…ものすごく気持ち悪くなって……そこから覚えていない。
そのままずっと不思議な夢を見続けていたような……。
でも、そんなに眠っていたなんて。
ひとしきり吐き終えてご主人様から手渡された水を飲んで少し落ち着くと、ご主人様が僕の手を握って真剣な表情で僕を見つめた。
僕の手を包むご主人様の大きな手はビックリするくらい冷たくて震えている。
僕も思わず真顔になる。
「ルーシェ…。お前は妊娠した…。」
震える声で、小さく、はっきりと告げた。
「…………え…?」
その信じられない言葉に僕は固まった。
「………………………。」
ご主人様は無言のまま相変わらず深刻な表情で僕を見つめ続けている。とても冗談を言っているような顔には思えない。
「………う、…そ……………?」
ゴクリと息を呑んで、なんとか頭を整理しようとするけど頭の中がぐるぐる回って、真っ白で言葉が全く出てこない。
恐る恐るそっと自分のお腹を撫でてみる。
ほんの少しだけふっくらしているようたな…??
長い沈黙の中、徐々に理解しはじめる。
まさか…僕が……?
……でも。
あれだけ中出ししていれば…するよね。
ふと思い出したのは走馬灯の中のお母さんの温もり。
そうだ…、僕…、記憶を……。
お母さんもこんな気持ちだったのかな。
少しずつ現実を受け入れていく。
僕はふっ、と笑みが溢れた。
「ついに出来たんだね。」
自分のお腹を撫でながら、口を開いた。
ご主人様はなんとも言えない顔で黙ったままずっと僕を見つめている。
額に汗が浮かんでいるのがわかった。
「僕たちの赤ちゃん。」
「…………………。」
「褒めてくれないの?」
「…………っっっ!!!!!」
僕が言った途端、ご主人様の目から沢山の涙が溢れて僕に抱きついての腹に顔を埋めた。大きな身体を揺さぶりながら泣いていた。
初めて見るご主人様の姿。
子供みたいで尊くて可愛かった。
ご主人様の髪を撫でるとグッショリ濡れていて、見た目よりずっと汗をかいていたのがわかった。
ご主人様の涙が止まるまで僕はずっと髪を撫で続けていた。
いつか僕にそうしてくれたように。
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