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鏡の中の僕
しおりを挟む僕達がお風呂に入った後、やはり部屋はいつの間にか綺麗に整えられていた。
再びスライムとアナルプラグを挿入されて、ゆるい快感に襲われる。
ーーーでも。
身体を動かすたびに無意識のうちに締め付けてしまうアナルプラグの刺激に堪えながらバスローブを床に脱ぎ捨てて僕はまた浴室に戻り、鏡と向き合った。
改めて自分の身体を観察する。
そっとペニスを持ち上げるとほんの少しだけ、女性器の割れ目が顔を覗かせる。
指で恐る恐るそこに触れると、くちゅ、と音がして指先を見ると濡れていた。
「あ…….、やだ、なにこれ…」
触れば触るほど、蕩けるような快感が走って奥から湧水のように愛液が溢れてきた。
くちゅ、くちゅ、くちゅ、くちゅ
浴室に水音が響いてお腹の奥が切なく震える。無意識に締め付けてしまうアナルプラグが僕のお尻の入り口でヒクヒクと動いてるのが感覚でわかる。指で割れ目をなぞりながらいつの間にか硬く上を向いてしまったペニスをもう片方の手でそっと包み込んで擦った。
「あ……っ、はぁ、あっ、…はぁっ♡」
鈴口からも先走りの液がどんどん溢れて、口から漏れてしまう自分のため息混じりのいやらしい声と、先走りの音や愛液の音とが混ざり合い、エッチな水音が浴室に響いた。
ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ
行為の最中にうわ言のように僕の耳元で囁いていた「孕め、孕め」というご主人様の声を思い出す。
「……あっ、…ふぅ、…んっ」
優しくくすぐるように触れられたあの感覚を思い出しながら、同じように触った。快感に身を捩らせる鏡の中の自分の姿が目に入って、恥ずかしくなって身体がより一層熱くなる。
「…やっ、アッ、…こんっ、なの……っ、はぁ、だ、め…なのにぃ……っ!あっ♡…んっ…はぁっ、はっ」
だめだ、だめだ!!
そう思うのに、頭では分かっているのに気持ち良くて指が止まらない。
「………っ、あぁっ!!」
快感に昇りつめて、僕はイッてしまった。ペニスから吐き出した透明な液が手から溢れてぽたぽたと床を濡らした。
「はぁ、はぁ…」
脱力して倒れそうになり鏡に手をついた。ふと顔を上げると、鏡の中の僕が口角をグッと上に引き上げて不気味な笑顔を浮かばせた。
『気持ちよかった?』
突然話しかけてきた。
「……っ!!!?ひぃッッッ!!!!」
突然の出来事に驚いて思わず叫んで、口を両手で塞いで飛び退いた。なのに鏡の中の僕は手をついたまま動かずにニッコリと微笑みながら話しかけてきた。
『気持ちよかった…?』
口は動いているのに、発せられたはずの声が頭の中に直接響いてくる。
先程の快感も全て吹き飛んだ。心臓がバクバクして息が上がる。ゴクリ、と唾を呑んだ。唾液は出てるはずなのに口の中がパサパサに渇いている感覚がする。逃げ出したいのに恐怖で体が震えて足が動かない。
『驚かせてごめんね。』
鏡に手をついたままの僕がバツの悪そうな、少し悲しそうな顔をした。
「な…っ!!??えっ??!えっ?!なっ、な、に?!!だ、だれっ!?」
恐怖で声が裏返ってしまった。膝が震えて目に涙が溜まる。
『ふふ。大丈夫、泣かないで。お願い。俺は君を傷付けない。驚かせて本当にごめんなさい。怖がらなくても大丈夫だよ。頭の中で少しお話ししよう。』
まるで幼い子供をあやすかのように柔らかい口調で話しかけてきた。
話し方は僕よりも随分と落ち着いていて大人びている。
頭の中がグルグルして思考回路がパンクしそうになる。深呼吸をして何とか冷静になる努力をしてゆっくりと頭の中で話しかけてみる。
(誰なの…?)
『君ととても近い存在…。……思い出して。記憶を辿れ、自分を忘れるな。きっともう、時は近い』
(記憶…?!僕の過去を知ってるの?!)
『………ま、……な、なま、…え……』
え……??
急に声が小さく掠れて聞こえなくなる。
がちゃん、と部屋の方で音がして思わず振り返ったが何もなく再び鏡に向き直すと青ざめて狼狽える僕の姿が映し出されていて、もう1人の⦅僕⦆は消えていた。
ぶるっと身震いをする。
なに、今の…。怖い……。
でも……。
僕のことを、僕の忘れている過去を知っているの?
僕と近い存在…?時が近い??名前??
ダメだ、ヒントが少なすぎるよ。
僕は悶々としながらも早々に濡れた身体をタオルで拭いて部屋に戻った。
物音がしたはずなのに…部屋にはやはり何もなく、しん、と鎮まり返っていた。
深呼吸をして気持ちを落ち着かせ、強張った身体をほぐした。
疲れて幻覚でも見たのかもしれない。
何だか頭が痛い…、眩暈がする。
テーブルに用意されていた飲料水を飲んで、僕はベッドに頭まで潜り込み、忘れてしまおう、と無理矢理眠った。
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