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◆episode8
~それぞれの思惑~
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アオ達は再び霊峰富士の地下——あの世であり、精神界でもある地の磐戸の間に戻っていた。
「さて、ここを清めねばならぬのじゃが、こうしてみると長年かなりの数の贄が捧げられておったようじゃな…」
地の磐戸の間をチェックすると、贄が捧げられたと思われる場所に穢れを好む邪鬼の類の気配とそれらが放つ霊的悪臭がかすかに残っている事に気が付き、アオは深いため息をつく。
「贄として自ら望んでその身を差し出したからか、祈りの波動が強く、恨みや悲しみといった低波動の周波数を持つ残留思念が弱かったので、気が付かなかったのは全く持って不覚じゃ――これは清めてから結界を張りなおせねばならぬな」
アオは磐戸の間の穢れの状態を確認して回っていると、磐戸の間の大空間を歩き回っていたピリカが天井付近を見上げて突然足を止めた。
「…どうした?」
立ち止まって首を傾げているピリカに気が付いたエルが声をかける。
「あれなんだろう?」
「ん?」
ピリカが指さした方向をエルが見ると、磐戸の対面の天井付近に岩肌をくりぬいた様な横長の穴が口を開けていた。
「なんであんなところに穴があるのかな?」
「大空間の天井近くの壁に横穴ってのも妙だよな」
そんな会話をピリカとエルがしていると、確認作業を終えたアオがどうしたのかと訊いてくる。
「あそこにね、おっきな穴があるの。あれなあに?」
ピリカの指先にある穴を目にしたアオは怪訝そうに首を傾げる。
「なんじゃあれは?」
「…へ? アオも知らないのかよ」
アオの意外な言葉を聞いエルは驚く。
「磐戸ばかりに気をとられていて、あのようなものがあったとは気が付かなんだ」
「どうなっているか気になる~…あそこに行けないかな?」
アオも知らない場所であったのを知り、好奇心が刺激されたのかピリカがそんな事を言い出す。
「結構高い場所だけど、あそこからここがどう見えるのか気になるよな――どこかから行けるかもしれないから、道を探そうぜ!」
エルとピリカは見つけた穴への進入ルートを探し始めた。
「…無邪気なものじゃのぅ」
アオは横穴の正体が気になるものの、進入路の捜索に加わる事なくピリカとエルの様子を笑いながら見守っていると、しばらくして横穴からアオを呼ぶエルの声が聞こえてきた。
「アオ~、ここに何かある!」
「…?」
何がある? とアオが訊き返そうとしていると、磐戸の間の外へ続く通路の方から今度はピリカがアオを呼んだ。
「アオ~、こっちこっち。こっちから上に上がれるよぉ」
「上がれると言っても、そんな所に通路は無かったハズじゃが…」
そう言いながらも気になるのかアオが呼ばれるまま向かうと、ピリカはむき出しの岩肌の上の方…アオの背丈より少し高い場所に開いた穴を差し示す。
「あそこから入れるよ――中に高次元世界で見かけたような箱があるんだけど、私達じゃわかんない」
「何⁈」
予想もしなかった事を聞いてアオは表情を変える。
「とにかく見て」
ピリカはそう言うと岩肌をよじ登り、上に開いた穴をくぐった。
「見てみるしかないな…」
アオはそう呟くと、穴の淵に手をかけて中へ滑り込む。
「これこれ」
アオが立ち上がると、ピリカとエルが穴の中の真ん中に鎮座していた人工的な加工が施された大きな箱を見るように促した。
「これは…」
アオは大きな箱を見て驚きの表情を浮かべる。
「これ、何かわかる?」
ピリカの問いかけにアオは少し待つように言うと大きな箱に触れて、その表面に手を滑らせた。それに反応するかの様に箱の上に文字の様なものが宙に浮かび上がる。
「神代文字…と似ておるが…」
「読めるか?」
エルの問いかけにアオは珍しく曖昧な表情を浮かべた。
「我が知る神代文字に非常に似ておるが、読めない文字がかなり混じっておる…もしかすると古き者たちが使っておった文字やもしれん」
「…って事は、スサたちの文字?」
「おそらく。磐戸の真正面にこのようなものがあるという事は、磐戸の封印に関係があると考えるのが自然じゃが、下手に触るのは危険そうであるな」
「危険⁈」
驚いたようにピリカとエルは顔を見合わせる。
「表示の文字が読めぬので、どれをどうすればよいのか見当がつかぬ」
いくら高度な文明レベルの道具であっても、使い方がわからねばただの箱でしかないとアオは言う。
「そうなんだ…残念~」
ピリカはそう言うと穴の中から真正面に見える地の磐戸に視線を向けた。
「ここから見ると磐戸の上の方にあった文字みたいな模様って、○の中にゝが入っている模様だったんだ…」
磐戸を真下から見ると、小さな文字の様なものがたくさん刻まれていたのはピリカも知っていたが、磐戸の正面であるこの場所から見ると、その文字が「○」を形作っていた事を知り驚く。
「あの模様に何か意味あるのか?」
「あれはスサ様を表す文様じゃ…○は太陽、ゝは月を表し、また、○は水、ゝは火を表す。○は天を表し、ゝは地を表す――それすなわち調和」
アオの解説を聞いたピリカが声を上げる。
「ちょっと待って待って…それって対になる存在だよね。その対の存在が一つの図で表現されて調和って意味になるって事は…」
何かが引っ掛かかるものがあったのか、ピリカはそのまま磐戸を見詰めて考え込んだ。
「そういや、俺も最近そんな話を聞いたような気がするけど、どこでだっけ…?」
エルも記憶の何処かに引っ掛かるものがあったのか、記憶の糸を手繰り始めた。
「対になるもの――天と地、太陽と月、陰と陽、火と水…男と女…」
ピリカは対の存在を上げて指折り数えていた手を止める。
「物質界と精神界、過去と未来…ねぇ、対になるものがこの図みたいに一つになったらどうなるのかな?」
「え?」
思いもよらないピリカの言葉にアオは一瞬きょとんとした表情を浮かべる。
「んとね、磐戸って千曳岩でもあるって言ってたよね? 伊弉諾と伊弉冉って男と女の神様なんだから、一つになったら新しい命が生まれるじゃない? だったらこの図みたいに、対になるこの世(物質界)とあの世(精神界)が一つになったら新しい何かが生まれるんじゃないの?」
「突拍子もない事を考え付くのぉ」
ピリカの言葉にアオは複雑な表情を浮かべる。
「そんな事になったら世界の構造が全て変わってしまうではないか」
「うんとね、…対になる存在が一つになるって事はお互いを打ち消し合うんじゃなく、仲良く出来なきゃ無理だよね? もしかするとなんだけど、スサをここに閉じ込めた本当の理由は、スサの成功を妬んだんじゃなくて、仲良くさせる――調和をさせるのをお仕事にしていたスサの邪魔をして、対になるものが一つになって新しいものを生みだすのを邪魔したいのが本当の目的だったんじゃないかなぁ…って」
「対立させたままにするのが目的?」
ピリカの思わぬ考えにアオはギョッとした顔になる。
「うん。新しいものが生まれたら自分たちにとって都合が悪いからとか、仲良くない方が自分たちにとって都合がいいとか」
「都合…」
それがいったいどのようなものなのかと、アオは考え込む。
「仲良く出来ないのが原因で滅びちゃったお星さまとかがいっぱいあって、宇宙全体も同じようになりそうだからって、みんなを仲良くさせるお仕事をスサが引き受けたんでしょ? そのスサの邪魔をしたら宇宙も滅びちゃうのに邪魔するって事は、この宇宙が滅びちゃってもいいって思ってるって事も考えられるよね?」
「そのような事を思う古き者など…」いないと言いかけてアオはそのまま黙り込む。それをエルは見逃さなかった。
「いるんだな?」
「いると言うか、この宇宙を不安定にしているのは不完全な存在のせいであるのだから、双方のバランスを取り調和をする必要はない。不完全な要素は消し去ってしまえば済む事と主張する者はおる」
「すげぇ傲慢な考え方だな…」
アオの話を聞いてエルは呆れる。
「…で、その傲慢な古き者は、今どうしてるんだ?」
「銀河連合の最高決定機関である枢機院におる」
「げ…」
スサが幽閉された後、それまで雛型計画に反対していた古き者が、一定の精神と文明レベルに達していた星々を集めて銀河連合を組織したのだという。
「その者の主張は、それまで宇宙の世話役は古き者達が分担しておったが、雛型計画の失敗は不安定性要素の排除を怠った古き者——スサ様の傲慢であり、宇宙の平和と安定を阻害した一番の要因であるので、古き者だけで世界を管理するのは間違いであったと主張し、星々の代表たちにもこの宇宙を管理する権利を与えるべきであるというものであったので、それが数多くの星々の代表に支持されるようになった」
「スサの邪魔をしておいて、ぬけぬけとそんな事言えるよな。しかも自分はちゃっかり銀河連合の最終決定をする地位に就いているんだろ? 自分の意見は通せるようにして、反対意見を持っていた者の権利を奪って悪者にする…って、さすが巨人族のルーツである存在だけあって、自分の事しか考えていないんだな」
「強く巨人族たちを責めれぬのは、そういう理由もあるからじゃ――古き者ですらこのような我良しの者が存在しておるからの」
困り顔でアオはそう言うと肩を竦める。
「アオもサクヤちゃんも、本当の事知っているのにどうして黙っているの? スサを悪者にした古き者が作った銀河連合のお手伝いをアオがしてるのはどうして?」
アオやサクヤが事情を知っているのに何もしていない事が信じられないようであった。
「我もサクヤも銀河連合に所属しておる訳ではないが、宇宙管理における運営方針や指導などに関しては我々と考え方が一致している事も多いからの――それにスサ様が磐戸からお出ましになった時、今や銀河連合の協力なしでは雛型計画のやり直しがきかぬようになるので、協力関係を結びながら雛型計画の要となる巨人達を守っておるのじゃ」
協力関係である事によって、銀河連合内の内部情報をいろいろ得る事ができるのも大きいとアオは言う。
「あ、アオは銀河連合の事をいろいろ知っているのに、銀河連合が管理する高次元界や銀河連合の仕事の一つを担当していたサタンの事を詳しく知らなかったってのは、そういう理由だったのか」
「そういう事じゃ。組織全体の把握は大事であるが、詳細については必要でなければ知る必要はないのでな」
ようやくアオの事情が分かってきたのかエルは納得顔になる。
「…スサが磐戸の中から出られたら、またお仕事のやり直しをして、みんな仲良く暮らせるようになるのかな?」
「それを信じておるから、サクヤは雛型計画の一端を担う王仁の子孫であるオニたちを保護し続けておる」
「そっかぁ…アオ達にはアオ達の理由があったんだね」
ピリカはそう言うと、再び磐戸の方へ視線を向ける。
「調和の象徴——対になる存在が一つになると新しい何かが生まれる…」
それが何かは解らなかったが、直感的にそれが正解であるという裏付けのない確信の様なものをピリカは感じていた。
地の磐戸の正面の小さな穴の中にあった謎の装置の存在は確認したものの、操作方法がわからなかった為、結局何もすることなくピリカ達は磐戸の間に戻っていた。
「あの箱の正体が気になるけど、アオが判らないんじゃ仕方が無いよな~」
天井近くの小部屋になっていた穴を見上げてエルが少し残念そうに呟く。
「スサ様ならあれを使う事ができるかもしれぬが、肝心のスサ様が磐戸の中では、あれを見てもらう事はできぬし、操作を誤って不測の事態が起きた場合、我で対処できそうにないので致し方なかろう」
苦笑いを浮かべるアオにピリカがこの後の方針を訊ねる。
「まずは穢れを清める」
その為にここへ戻って来たのだからとアオは言う。
「清めのお水が必要だって言ってたもんね」
ピリカの言葉を聞いたエルが疑問を口にする。
「あそこからここまでどうやって持ってくるんだ?」
ワッカが守っていた小さな泉はアオが呼び寄せた龍脈と水脈の力によって水量が増え、そこに龍脈の力と知識を継承したワッカの力によって強力な清めの力を持つ霊泉となった。しかしその霊泉がある場所は物質界であり、物理的な距離だけではなく次元の壁を越える必要がある。
「物質界と精神界を繋ぐ坂——黄泉比良坂を使えば良いだけの話」
「?」
首を傾げるピリカとエルにアオは説明を続ける。
「この世とあの世に出入りする際には必ず坂を通るであろう?」
「あ~、あのつるつるでピカピカの道ね」
妙につるつるした素材で出来た人工的な通路を思い出してピリカが声を上げる。
「黄泉比良坂というのは個別の坂道の名ではなく、物質と半霊半物質を相互変換して異なる次元に適応させる為の装置の事で、この星の様々な場所に設置されておる」
オニたちが火櫓の木材などの儀式に必要な資材や、贄の心臓を持ち込んだのも隠れ里と精神界を結ぶ場所に設置された黄泉比良坂を利用したのであろうとアオは言う。
「妙につるつるしている通路があちこちにあったのはそういう事だったのか…」
物質界からこの世界にかけての空間に存在する構造物の多くが、天然物と人工的なものが複雑に組み合わさっていたのが不思議だったのだが、その理由を知りエルは驚き交じりの納得の声を上げる。
「黄泉比良坂の装置も銀河連合の時空管理部が所有している資材で、銀河連合が管轄している星によく使われているものであるのであるから、珍しくもなんでもないが…」と言ってアオは笑う。
「私たちが不思議って思っている事も、アオ達にとっては何でもない事なんだね」
そんなピリカの呟きにアオは微笑む。
「お前たちにとって摩訶不思議な事であっても、我々が使っておる技術は宇宙科学に基いたものが多い――科学とっても真科学と魔科学があって、サタンが巨人族の富裕層に与えたのは魔科学の方であったがな」
魔科学と呼ばれる知識や技術であっても、巨人族にとっては大きな力を持つ神の知識であるので、歓迎されるのは仕方がないとアオは言う。
「魔科学は使用を開始してから早くて数十年、遅ければ数百数千年後に問題が明らかになり、気が付いた時には多くの代償を支払う事になり、最悪、滅びの道を歩むしかない超遅効性の毒の様なものなので、銀河連合などでは既に使用を禁止されているものであるが、巨人族は短命であるゆえ、その因果関係や危険性に気が付く事はまずない」
「難しい事はよくわかんないけど、それだけの知識と技術があっても、きれいにするのはお水を使うのが一番ってのが面白いよね」
「科学というのは宇宙の法則や五大元素の仕組みを理解して応用しただけのものじゃから、基本となる五大元素そのものの力を越える事は出来ぬ」
アオはピリカにそう言って苦笑いを浮かべた。
「…その水だけど、黄泉比良坂を通ってここに持ち込むにしろ、穢れを清めるのにどれだけの水が必要なんだ?」
エルの疑問に、長年にわたって贄を捧げて穢され続けたのだから、そう簡単に清められないだろうと言うのがアオの答えであった。
「じゃあどうするんだ? ワッカの泉とここを何度も往復する訳にもいかないだろ?」
「ワッカの霊泉と黄泉比良坂の空間を繋げて、清めの水をこちらに引くというというのが妥当であろうな」
仙境にも清めの水を引くという話であったが水量は十分あるので、こちらで使うのは一時的なものであるし問題はないだろうとアオは考えているようだった。
「あとは、どのルートの黄泉比良坂を使うかなんじゃが、オニの隠れ里に繋がっておるやつを使うのが妥当であろうな」
樹海の洞窟にある黄泉比良坂ルートだと、この磐戸の間の手前に魂を宿した石がある鍾乳洞があり、そこには濃厚な気が満ちる場所があるので水を引くのは難しいが、隠れ里に繋がる黄泉比良坂なら障害となるものは無い。
「清めの水を引いている間は、オニたちは隠れ里からここへ入る事は出来なくなるが、オニたちがここを穢さねば清めの水を引く必要もなかった事を思えば納得してもらうしかあるまい」
「それは自業自得なんだから仕方がないよな」
エルはアオの話に頷く。
「では方針が決まった事であるし早速、空間を繋げる作業を始めるかの」
アオはそう言うと、地の磐戸の間からオニの隠れ里に繋がる黄泉比良坂の方へ向かい、人工的な通路の坂道の中腹付近でアオは足を止めた。
「あれ? 上の方まで行かないの?」
てっきり坂の上まで行くと思っていたピリカが疑問を口にする。
「これは装置であると説明したであろう? 中間地点に空間の接続設定をする為のコントロールパネルがあるのでな…」
説明をしながらアオは壁を探り、何かを見つけたのか手の平をその場所に押し当てた。それに反応するように壁に光る図形と文字のようなものが浮かび上がる。
「これ…アオのお家にあった壁みたいだな」
「どちらも銀河連合の技術であるからな」
アオは笑ってそう言うと、慣れた様子で図形や文字を指先で触ってその表示を変えてゆく。
「今回は物質界の接続ポイントの変更だけで良いし、座標も近隣であるから簡単なものじゃ」
そう言っている間に設定変更が終わったのか、浮かび上がっていた光の表示が消える。
「では戻るとするか」
「まだお水来てないよ?」
再び坂を下り始めたアオにピリカが訊く。
「今頃、半物質状態に変換されながら坂を下って来ておる所じゃろう」
接読空間口の面積設定は巨人達が誤って迷い込まないように少量の水が通る程度の極小設定にしてあるので、地の磐戸で待っていれば清めの水が流れて来るはずだとアオは言う。
「それに清めの水はただ大量にあればいいというものでもなく、大切なのは清らかな流水である事じゃからな」
「そうなの?」
「澱み水は腐り水といって、浄化の力は失われておるのでな…お、来たようじゃ」
ピリカ達に説明をしているうちに地の磐戸の間に黄泉比良坂を下って清め水が少しずつ流れ込み始めた。
「これで穢れを祓い清める事が出来るな。邪鬼たちの気配や臭いもやがて消えるであろう」
安堵の表情を浮かべながらアオは呟きを漏らす。
――祓い清めてこの場の波動の周波数を上げるのは大事。上手くいきますように…。
清めの水の流れに祈りの想いを込めてそっと手を合わせるアオであった。
「さて、ここを清めねばならぬのじゃが、こうしてみると長年かなりの数の贄が捧げられておったようじゃな…」
地の磐戸の間をチェックすると、贄が捧げられたと思われる場所に穢れを好む邪鬼の類の気配とそれらが放つ霊的悪臭がかすかに残っている事に気が付き、アオは深いため息をつく。
「贄として自ら望んでその身を差し出したからか、祈りの波動が強く、恨みや悲しみといった低波動の周波数を持つ残留思念が弱かったので、気が付かなかったのは全く持って不覚じゃ――これは清めてから結界を張りなおせねばならぬな」
アオは磐戸の間の穢れの状態を確認して回っていると、磐戸の間の大空間を歩き回っていたピリカが天井付近を見上げて突然足を止めた。
「…どうした?」
立ち止まって首を傾げているピリカに気が付いたエルが声をかける。
「あれなんだろう?」
「ん?」
ピリカが指さした方向をエルが見ると、磐戸の対面の天井付近に岩肌をくりぬいた様な横長の穴が口を開けていた。
「なんであんなところに穴があるのかな?」
「大空間の天井近くの壁に横穴ってのも妙だよな」
そんな会話をピリカとエルがしていると、確認作業を終えたアオがどうしたのかと訊いてくる。
「あそこにね、おっきな穴があるの。あれなあに?」
ピリカの指先にある穴を目にしたアオは怪訝そうに首を傾げる。
「なんじゃあれは?」
「…へ? アオも知らないのかよ」
アオの意外な言葉を聞いエルは驚く。
「磐戸ばかりに気をとられていて、あのようなものがあったとは気が付かなんだ」
「どうなっているか気になる~…あそこに行けないかな?」
アオも知らない場所であったのを知り、好奇心が刺激されたのかピリカがそんな事を言い出す。
「結構高い場所だけど、あそこからここがどう見えるのか気になるよな――どこかから行けるかもしれないから、道を探そうぜ!」
エルとピリカは見つけた穴への進入ルートを探し始めた。
「…無邪気なものじゃのぅ」
アオは横穴の正体が気になるものの、進入路の捜索に加わる事なくピリカとエルの様子を笑いながら見守っていると、しばらくして横穴からアオを呼ぶエルの声が聞こえてきた。
「アオ~、ここに何かある!」
「…?」
何がある? とアオが訊き返そうとしていると、磐戸の間の外へ続く通路の方から今度はピリカがアオを呼んだ。
「アオ~、こっちこっち。こっちから上に上がれるよぉ」
「上がれると言っても、そんな所に通路は無かったハズじゃが…」
そう言いながらも気になるのかアオが呼ばれるまま向かうと、ピリカはむき出しの岩肌の上の方…アオの背丈より少し高い場所に開いた穴を差し示す。
「あそこから入れるよ――中に高次元世界で見かけたような箱があるんだけど、私達じゃわかんない」
「何⁈」
予想もしなかった事を聞いてアオは表情を変える。
「とにかく見て」
ピリカはそう言うと岩肌をよじ登り、上に開いた穴をくぐった。
「見てみるしかないな…」
アオはそう呟くと、穴の淵に手をかけて中へ滑り込む。
「これこれ」
アオが立ち上がると、ピリカとエルが穴の中の真ん中に鎮座していた人工的な加工が施された大きな箱を見るように促した。
「これは…」
アオは大きな箱を見て驚きの表情を浮かべる。
「これ、何かわかる?」
ピリカの問いかけにアオは少し待つように言うと大きな箱に触れて、その表面に手を滑らせた。それに反応するかの様に箱の上に文字の様なものが宙に浮かび上がる。
「神代文字…と似ておるが…」
「読めるか?」
エルの問いかけにアオは珍しく曖昧な表情を浮かべた。
「我が知る神代文字に非常に似ておるが、読めない文字がかなり混じっておる…もしかすると古き者たちが使っておった文字やもしれん」
「…って事は、スサたちの文字?」
「おそらく。磐戸の真正面にこのようなものがあるという事は、磐戸の封印に関係があると考えるのが自然じゃが、下手に触るのは危険そうであるな」
「危険⁈」
驚いたようにピリカとエルは顔を見合わせる。
「表示の文字が読めぬので、どれをどうすればよいのか見当がつかぬ」
いくら高度な文明レベルの道具であっても、使い方がわからねばただの箱でしかないとアオは言う。
「そうなんだ…残念~」
ピリカはそう言うと穴の中から真正面に見える地の磐戸に視線を向けた。
「ここから見ると磐戸の上の方にあった文字みたいな模様って、○の中にゝが入っている模様だったんだ…」
磐戸を真下から見ると、小さな文字の様なものがたくさん刻まれていたのはピリカも知っていたが、磐戸の正面であるこの場所から見ると、その文字が「○」を形作っていた事を知り驚く。
「あの模様に何か意味あるのか?」
「あれはスサ様を表す文様じゃ…○は太陽、ゝは月を表し、また、○は水、ゝは火を表す。○は天を表し、ゝは地を表す――それすなわち調和」
アオの解説を聞いたピリカが声を上げる。
「ちょっと待って待って…それって対になる存在だよね。その対の存在が一つの図で表現されて調和って意味になるって事は…」
何かが引っ掛かかるものがあったのか、ピリカはそのまま磐戸を見詰めて考え込んだ。
「そういや、俺も最近そんな話を聞いたような気がするけど、どこでだっけ…?」
エルも記憶の何処かに引っ掛かるものがあったのか、記憶の糸を手繰り始めた。
「対になるもの――天と地、太陽と月、陰と陽、火と水…男と女…」
ピリカは対の存在を上げて指折り数えていた手を止める。
「物質界と精神界、過去と未来…ねぇ、対になるものがこの図みたいに一つになったらどうなるのかな?」
「え?」
思いもよらないピリカの言葉にアオは一瞬きょとんとした表情を浮かべる。
「んとね、磐戸って千曳岩でもあるって言ってたよね? 伊弉諾と伊弉冉って男と女の神様なんだから、一つになったら新しい命が生まれるじゃない? だったらこの図みたいに、対になるこの世(物質界)とあの世(精神界)が一つになったら新しい何かが生まれるんじゃないの?」
「突拍子もない事を考え付くのぉ」
ピリカの言葉にアオは複雑な表情を浮かべる。
「そんな事になったら世界の構造が全て変わってしまうではないか」
「うんとね、…対になる存在が一つになるって事はお互いを打ち消し合うんじゃなく、仲良く出来なきゃ無理だよね? もしかするとなんだけど、スサをここに閉じ込めた本当の理由は、スサの成功を妬んだんじゃなくて、仲良くさせる――調和をさせるのをお仕事にしていたスサの邪魔をして、対になるものが一つになって新しいものを生みだすのを邪魔したいのが本当の目的だったんじゃないかなぁ…って」
「対立させたままにするのが目的?」
ピリカの思わぬ考えにアオはギョッとした顔になる。
「うん。新しいものが生まれたら自分たちにとって都合が悪いからとか、仲良くない方が自分たちにとって都合がいいとか」
「都合…」
それがいったいどのようなものなのかと、アオは考え込む。
「仲良く出来ないのが原因で滅びちゃったお星さまとかがいっぱいあって、宇宙全体も同じようになりそうだからって、みんなを仲良くさせるお仕事をスサが引き受けたんでしょ? そのスサの邪魔をしたら宇宙も滅びちゃうのに邪魔するって事は、この宇宙が滅びちゃってもいいって思ってるって事も考えられるよね?」
「そのような事を思う古き者など…」いないと言いかけてアオはそのまま黙り込む。それをエルは見逃さなかった。
「いるんだな?」
「いると言うか、この宇宙を不安定にしているのは不完全な存在のせいであるのだから、双方のバランスを取り調和をする必要はない。不完全な要素は消し去ってしまえば済む事と主張する者はおる」
「すげぇ傲慢な考え方だな…」
アオの話を聞いてエルは呆れる。
「…で、その傲慢な古き者は、今どうしてるんだ?」
「銀河連合の最高決定機関である枢機院におる」
「げ…」
スサが幽閉された後、それまで雛型計画に反対していた古き者が、一定の精神と文明レベルに達していた星々を集めて銀河連合を組織したのだという。
「その者の主張は、それまで宇宙の世話役は古き者達が分担しておったが、雛型計画の失敗は不安定性要素の排除を怠った古き者——スサ様の傲慢であり、宇宙の平和と安定を阻害した一番の要因であるので、古き者だけで世界を管理するのは間違いであったと主張し、星々の代表たちにもこの宇宙を管理する権利を与えるべきであるというものであったので、それが数多くの星々の代表に支持されるようになった」
「スサの邪魔をしておいて、ぬけぬけとそんな事言えるよな。しかも自分はちゃっかり銀河連合の最終決定をする地位に就いているんだろ? 自分の意見は通せるようにして、反対意見を持っていた者の権利を奪って悪者にする…って、さすが巨人族のルーツである存在だけあって、自分の事しか考えていないんだな」
「強く巨人族たちを責めれぬのは、そういう理由もあるからじゃ――古き者ですらこのような我良しの者が存在しておるからの」
困り顔でアオはそう言うと肩を竦める。
「アオもサクヤちゃんも、本当の事知っているのにどうして黙っているの? スサを悪者にした古き者が作った銀河連合のお手伝いをアオがしてるのはどうして?」
アオやサクヤが事情を知っているのに何もしていない事が信じられないようであった。
「我もサクヤも銀河連合に所属しておる訳ではないが、宇宙管理における運営方針や指導などに関しては我々と考え方が一致している事も多いからの――それにスサ様が磐戸からお出ましになった時、今や銀河連合の協力なしでは雛型計画のやり直しがきかぬようになるので、協力関係を結びながら雛型計画の要となる巨人達を守っておるのじゃ」
協力関係である事によって、銀河連合内の内部情報をいろいろ得る事ができるのも大きいとアオは言う。
「あ、アオは銀河連合の事をいろいろ知っているのに、銀河連合が管理する高次元界や銀河連合の仕事の一つを担当していたサタンの事を詳しく知らなかったってのは、そういう理由だったのか」
「そういう事じゃ。組織全体の把握は大事であるが、詳細については必要でなければ知る必要はないのでな」
ようやくアオの事情が分かってきたのかエルは納得顔になる。
「…スサが磐戸の中から出られたら、またお仕事のやり直しをして、みんな仲良く暮らせるようになるのかな?」
「それを信じておるから、サクヤは雛型計画の一端を担う王仁の子孫であるオニたちを保護し続けておる」
「そっかぁ…アオ達にはアオ達の理由があったんだね」
ピリカはそう言うと、再び磐戸の方へ視線を向ける。
「調和の象徴——対になる存在が一つになると新しい何かが生まれる…」
それが何かは解らなかったが、直感的にそれが正解であるという裏付けのない確信の様なものをピリカは感じていた。
地の磐戸の正面の小さな穴の中にあった謎の装置の存在は確認したものの、操作方法がわからなかった為、結局何もすることなくピリカ達は磐戸の間に戻っていた。
「あの箱の正体が気になるけど、アオが判らないんじゃ仕方が無いよな~」
天井近くの小部屋になっていた穴を見上げてエルが少し残念そうに呟く。
「スサ様ならあれを使う事ができるかもしれぬが、肝心のスサ様が磐戸の中では、あれを見てもらう事はできぬし、操作を誤って不測の事態が起きた場合、我で対処できそうにないので致し方なかろう」
苦笑いを浮かべるアオにピリカがこの後の方針を訊ねる。
「まずは穢れを清める」
その為にここへ戻って来たのだからとアオは言う。
「清めのお水が必要だって言ってたもんね」
ピリカの言葉を聞いたエルが疑問を口にする。
「あそこからここまでどうやって持ってくるんだ?」
ワッカが守っていた小さな泉はアオが呼び寄せた龍脈と水脈の力によって水量が増え、そこに龍脈の力と知識を継承したワッカの力によって強力な清めの力を持つ霊泉となった。しかしその霊泉がある場所は物質界であり、物理的な距離だけではなく次元の壁を越える必要がある。
「物質界と精神界を繋ぐ坂——黄泉比良坂を使えば良いだけの話」
「?」
首を傾げるピリカとエルにアオは説明を続ける。
「この世とあの世に出入りする際には必ず坂を通るであろう?」
「あ~、あのつるつるでピカピカの道ね」
妙につるつるした素材で出来た人工的な通路を思い出してピリカが声を上げる。
「黄泉比良坂というのは個別の坂道の名ではなく、物質と半霊半物質を相互変換して異なる次元に適応させる為の装置の事で、この星の様々な場所に設置されておる」
オニたちが火櫓の木材などの儀式に必要な資材や、贄の心臓を持ち込んだのも隠れ里と精神界を結ぶ場所に設置された黄泉比良坂を利用したのであろうとアオは言う。
「妙につるつるしている通路があちこちにあったのはそういう事だったのか…」
物質界からこの世界にかけての空間に存在する構造物の多くが、天然物と人工的なものが複雑に組み合わさっていたのが不思議だったのだが、その理由を知りエルは驚き交じりの納得の声を上げる。
「黄泉比良坂の装置も銀河連合の時空管理部が所有している資材で、銀河連合が管轄している星によく使われているものであるのであるから、珍しくもなんでもないが…」と言ってアオは笑う。
「私たちが不思議って思っている事も、アオ達にとっては何でもない事なんだね」
そんなピリカの呟きにアオは微笑む。
「お前たちにとって摩訶不思議な事であっても、我々が使っておる技術は宇宙科学に基いたものが多い――科学とっても真科学と魔科学があって、サタンが巨人族の富裕層に与えたのは魔科学の方であったがな」
魔科学と呼ばれる知識や技術であっても、巨人族にとっては大きな力を持つ神の知識であるので、歓迎されるのは仕方がないとアオは言う。
「魔科学は使用を開始してから早くて数十年、遅ければ数百数千年後に問題が明らかになり、気が付いた時には多くの代償を支払う事になり、最悪、滅びの道を歩むしかない超遅効性の毒の様なものなので、銀河連合などでは既に使用を禁止されているものであるが、巨人族は短命であるゆえ、その因果関係や危険性に気が付く事はまずない」
「難しい事はよくわかんないけど、それだけの知識と技術があっても、きれいにするのはお水を使うのが一番ってのが面白いよね」
「科学というのは宇宙の法則や五大元素の仕組みを理解して応用しただけのものじゃから、基本となる五大元素そのものの力を越える事は出来ぬ」
アオはピリカにそう言って苦笑いを浮かべた。
「…その水だけど、黄泉比良坂を通ってここに持ち込むにしろ、穢れを清めるのにどれだけの水が必要なんだ?」
エルの疑問に、長年にわたって贄を捧げて穢され続けたのだから、そう簡単に清められないだろうと言うのがアオの答えであった。
「じゃあどうするんだ? ワッカの泉とここを何度も往復する訳にもいかないだろ?」
「ワッカの霊泉と黄泉比良坂の空間を繋げて、清めの水をこちらに引くというというのが妥当であろうな」
仙境にも清めの水を引くという話であったが水量は十分あるので、こちらで使うのは一時的なものであるし問題はないだろうとアオは考えているようだった。
「あとは、どのルートの黄泉比良坂を使うかなんじゃが、オニの隠れ里に繋がっておるやつを使うのが妥当であろうな」
樹海の洞窟にある黄泉比良坂ルートだと、この磐戸の間の手前に魂を宿した石がある鍾乳洞があり、そこには濃厚な気が満ちる場所があるので水を引くのは難しいが、隠れ里に繋がる黄泉比良坂なら障害となるものは無い。
「清めの水を引いている間は、オニたちは隠れ里からここへ入る事は出来なくなるが、オニたちがここを穢さねば清めの水を引く必要もなかった事を思えば納得してもらうしかあるまい」
「それは自業自得なんだから仕方がないよな」
エルはアオの話に頷く。
「では方針が決まった事であるし早速、空間を繋げる作業を始めるかの」
アオはそう言うと、地の磐戸の間からオニの隠れ里に繋がる黄泉比良坂の方へ向かい、人工的な通路の坂道の中腹付近でアオは足を止めた。
「あれ? 上の方まで行かないの?」
てっきり坂の上まで行くと思っていたピリカが疑問を口にする。
「これは装置であると説明したであろう? 中間地点に空間の接続設定をする為のコントロールパネルがあるのでな…」
説明をしながらアオは壁を探り、何かを見つけたのか手の平をその場所に押し当てた。それに反応するように壁に光る図形と文字のようなものが浮かび上がる。
「これ…アオのお家にあった壁みたいだな」
「どちらも銀河連合の技術であるからな」
アオは笑ってそう言うと、慣れた様子で図形や文字を指先で触ってその表示を変えてゆく。
「今回は物質界の接続ポイントの変更だけで良いし、座標も近隣であるから簡単なものじゃ」
そう言っている間に設定変更が終わったのか、浮かび上がっていた光の表示が消える。
「では戻るとするか」
「まだお水来てないよ?」
再び坂を下り始めたアオにピリカが訊く。
「今頃、半物質状態に変換されながら坂を下って来ておる所じゃろう」
接読空間口の面積設定は巨人達が誤って迷い込まないように少量の水が通る程度の極小設定にしてあるので、地の磐戸で待っていれば清めの水が流れて来るはずだとアオは言う。
「それに清めの水はただ大量にあればいいというものでもなく、大切なのは清らかな流水である事じゃからな」
「そうなの?」
「澱み水は腐り水といって、浄化の力は失われておるのでな…お、来たようじゃ」
ピリカ達に説明をしているうちに地の磐戸の間に黄泉比良坂を下って清め水が少しずつ流れ込み始めた。
「これで穢れを祓い清める事が出来るな。邪鬼たちの気配や臭いもやがて消えるであろう」
安堵の表情を浮かべながらアオは呟きを漏らす。
――祓い清めてこの場の波動の周波数を上げるのは大事。上手くいきますように…。
清めの水の流れに祈りの想いを込めてそっと手を合わせるアオであった。
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