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◆episode2
~真実は闇の中~
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早朝に電車に乗り込んだアオ達が目的地である霊山の麓にある駅に到着した時には、まだ明るくはあったが、日は傾き始めていた。
「ここは巨人さん達あんまりいないね」
アオが持つバックの中から外の様子を伺っていたピリカが呟く。
「ここも黄昏の国では辺境にあたるからの――住んでいる者も少なく、この地に用があって降りる者も少ないのであろう」
「へぇ…巨人達が少ない方が気兼ねなく話せるから、俺はありがたいけどな」
アオの説明にエルはそう言って笑う。
「…ねぇアオ、なんか温泉みたいな気配を感じない?」
何かを感じたのかピリカが小首を傾げる様にアオに訊く。
「温泉とな? この地は温泉地ではないのじゃが…」
「あっちの方に、気配は弱いけど精霊さんがいるみたい」
そんなピリカの言葉にアオは興味を持ったのか、ピリカが指し示す方へ歩き出した。
「足湯?」
駅前ロータリーのすぐそばに屋根付きベンチスペースがあり、そこには湯気を立てている緩やかな流れがある浅い浴槽のようなものが一緒に設置されていた。
「まだ新しい…巨人達によって設置されたようじゃが、この微弱な気配によく気が付いたな」
驚いた様子のアオにピリカが笑顔を浮かべる。
「精霊さんが呼んでる気がしたの…」とピリカはそう言うと、周囲に巨人の姿が無いのを確認してアオのバックから出てベンチに飛び降りた。
「——天と地の結び…火と水の契約の友よ…姿を現し給え…」
ピリカは大きく息を吐き呼吸を整えると、優しく語り掛ける様に言葉を紡ぐ。するとそれに反応するかのように、風もないのに湯気がゆっくりと渦を巻き始めた。
「…龍?」
湯気の渦は回転速度を上げその形はまるで龍の姿の様に見える――ただそのサイズは小さく、せいぜい30㎝くらいの長さしかないように思われた。
「私を呼んだのはあなた?」
小龍といった表現がぴったりくるようなそれにピリカが問いかける。
――是。
音無き言葉がピリカやエル、アオの頭の中に直接響いてきた。
「初めまして。私はピリカ。北の地のコロボックルよ――あなたは?」
――吾はここにあるもの…名は…。
そんな言葉が響いた後、戸惑った様な思念と共に沈黙に変わる。
「…この子、アオのお仲間?」
「大きな意味では仲間ではあるが、この者はまだ生まれて間もない赤子の様なものであるので、厳密には違うとも言えるな」
ピリカに問われたアオは苦笑いを浮かべながら小龍を見て答える。
「気配の大きさもアオとは比べ物にならない程、こいつ弱くて小さいもんな…そんなのが俺たちに何の用があるんだ?」
興味津々といったエルの言葉を聞きながらピリカは小龍に語り掛ける。
「生まれたてなら名前がなくても仕方がないわ…ご用はなあに?」
――吾をここに導いた者を知らぬか?
「あなたを導いた…?」
何を言っているのかわからないといった様子でピリカは首を傾げる。
――その者は、吾を導き、ここを守れと吾に命じた。
それを聞いたピリカとエルは顔を見合わせる。
「…ええっ…と」
返答に困るピリカに小龍は言葉を続ける。
――その者は吾に命じると姿を消した。吾は何者? 吾は何故、ここを守らなければならぬ?
わからない事だらけで、戸惑い混乱している思念の様なものが小龍から流れ込んできた。
「何も知らぬ赤子にその様な事を命じるとは酷な事じゃ…」
同情するような目でアオは小龍を見詰めながら呟く。
「アオ…心当たりないの?」
「赤子の様なものとはいえ、エネルギー体である龍体に召喚し命じる事が出来る存在であるのだからただ者ではあるまいが、目的が判らぬ故、さっぱり見当がつかぬな」
「う~ん…」
アオの返答にエルは困った様な表情を浮かべた。
「知りませんって言ってこのまま放りだすってのも可哀想な気がするし、それじゃ後味が悪いよな…」
「こうして出会ったのも何かの縁だもの、ほっとけないよ」
ピリカはそう言うと、小龍に向き直り「その人ってどんな人?」と問いかけると、イメージの様なものが思考に流れ込んでくる。
それは巨人族の様な姿をしており、黒いツバ付の帽子と黒いスーツ姿の初老の細身の男性の様であった。
「…この葬儀屋の様な者…どこかで見た様な気もするが…?」
頭を捻るアオの言葉を聞いてピリカの目が期待に変わる。
「知ってるの? 思い出してあげて」
「思い出せと言われても…はっきりと思い出せない事を考えると、かなり昔の話であるぞ」
「アオの言う昔って、十年二十年前って話でもなさそうだよな」
そんなエルの呟きにピリカが「数百年前の話とか、数千年前の記憶だったりして」と笑う。
「アオならあり得るから、それ笑えねぇって…」
エルが苦笑いを浮かべていると、考え込んでいたアオは小さく首を振り、「今は思い出せぬな――済まぬ」と小龍に伝えた。
「ごめんね――私達行かなきゃいけない所があるから、もう行くけど…黒服のおじいちゃんに遭う事があったらあなたの事伝えておくから」
ピリカの言葉を聞いた小龍は無念といった思考を残し、湯気の中に消えていった。
「なんか可哀想な子だったね…」
「まるで迷子の子供の様じゃったな――自我がまだはっきり固まっておらぬので、不安で仕方がないんじゃろう」
「そうなんだ…自我ってどうやったら固まるの?」
そんなピリカの素朴な疑問にアオは「手っ取り早いのは「名」を付ける事であるな」と言う。
「名?」
「そう、名前じゃ――名付ける事によって個を定め、他者との区別する事が出来るようになるのでな」
「名前かぁ…」
ピリカはそう呟くと、小龍がいた辺りに向かって声を上げる。
「小龍さん…あなたに名前をあげる――あなたの名前はワッカ」
ピリカの声は誰もいない足湯に響き渡る。その次の瞬間、その空間がざわめくのをエルは感じ取り驚きの声を上げた。
「わわっ…、何かがざわめいた!」
「きっと小龍ちゃんが名前を受け取ってくれたんだよ」
嬉しそうなピリカに、アオは何故その名を選んだのかと尋ねる。
「ワッカは、私たちの言葉での意味は、良い水…清浄な水って意味なの――ここを守護者なら、そういう意味の名前の方がいいかなぁ…って」
無邪気な笑顔を浮かべてピリカはそう解説する。
「なるほどな…その名の通り、この地が良い水で清められる事を期待しようではないか」
アオはそう言うと、湯気が立ち上る足湯の方を見て微笑みを浮かべた。
ワッカとの出会いの後、アオは目的地である霊山の麓に向かった。
ハイキングコースとなっている道を進んでいくと、ハイキングを終え日が暮れる前に帰ろうとする何人もの巨人達とすれ違う。アオが向かっている先はハイキングコースと樹海、そして霊山への登山口しかない為、着物姿のアオを巨人達は不思議そうな顔をしながら見ていた。
「…巨人たち、みんなアオの事、二度見してるね?」
巨人達の様子をこっそり観察していたエルがそう言って笑う。
「そうであろうな――このような場違いな格好でどこに行こうとしているのか不思議なんじゃろ」
巨人達の反応が面白いのかアオは楽しそうにそう言いながら歩み続ける。
「アオって巨人族の格好をしている時は、いつもそのひらひらした服を着ているけど、巨人さんたちってそういうのを着ていないね?」
「この国の巨人族の古くからの衣装であるが、今となっては趣味人か大切な行事の時にしか着ないのでな」
そう言ってアオは笑う。
「我の場合はこれが好きなのであえてこの姿でおるのじゃが、今の巨人達の目には珍しく映るようじゃ」
「目立たない色で自然に紛れて敵に狙われないようにするっていう俺たちとは真逆だよな」
「我を獲って食おうとするモノ好きはおらぬのでな」
エルの呆れた様な呟きにアオそう言って、にやりと笑う。
「そりゃそうだろうけど、アオの場合は目立つ格好で自分は危険ですよ~って主張しているって感じだと思うけどな」
「警告色の事か――我はそれほど毒々しい色はしておらぬぞ」と言ってアオが笑う。
「警告色って?」
エルとアオの会話の意味が理解できなかったのかピリカが首を傾げた。
「毒があるキノコだとか虫の色って真っ赤や紫だったり、黄色と黒模様だったりするだろ――派手な色とか柄で「自分を食べたら嫌な事が起きますよ」って主張する事によって、食べられないようにしてるらしいぜ」とエルに言われて、ようやくピリカは何の話をしているのか理解したのか、あぁ…といった表情になる。
「赤くないキノコにも毒キノコはあるけど、赤いのは確かに食べないようにしてるね」
「食いしん坊のピリカがそう思うんだから警告色の効果絶大だなぁ」
そういって笑うエルにピリカは「でも赤いいちごは大好きだよ」と笑う。
「そういや野菜や果物は赤くても毒は無いし美味しいよな」
ピリカの言葉に疑問を感じたのかエルが首を傾げる。そんなエルにアオは「それは野菜や果物は動物の食べ物として作られた植物であるからじゃ」と笑う。
「じゃあキノコは?」
「キノコは宇宙由来の原始生物がこの星で定着したものなので、そもそも動物の食料としては想定して作られたものでない」
この星には元々この星発祥の生命体もあれば、様々な星からやって来て定着した生命体も数多くある。そんな中の一つである菌類は、動物には毒となる物質を含む種類も多くあったが、有用な成分を含む種類もあったのは瓢箪から駒みたいなものだったという。
「植物は動物に食べられる為に作られたって言うけど、植物にも毒があるよ?」
「植物には薬としての役割があるのでな――毒でもあり薬でもあるので、量と使い方、バランスが肝心」
「薬…確かに葉っぱとか根っこ、木の実なんかを乾燥させたのでお薬を作ったりするね」
コロボックルたちには代々薬の作り方が受け継がれていて、ピリカもまた小さい事から祖父母や親からそれを教えられて育っていた。
「旬を迎える植物に、その季節に応じて動物たちの体に必要な成分が含まれる様に設計してあるので、難しい事を考えずとも、さまざまな旬のものを食べておれば自然に体と心の状態が整うようになっておるんじゃが…」
春の旬の野菜には苦みがあるが、その苦みには冬に体の中に蓄積した老廃物を排出する効果がある。夏の旬のものには水分が多く暑さで出てしまう体内の水分を補い、身体を冷やす効果があるという。秋の旬のものには冬に向けて身体を整え、栄養を蓄えて備える効果があり、冬の旬のものは乾燥気味の体を潤し、温める効果があるのだという。それと長期ほどんが可能な穀物や芋類、通年収穫できるものを組み合わせて口にしておけば健康に生きていけるようになっていたのだという。
「巨人族にそれを教えておったのじゃが、それもサタンにより巨人族に植え付けられた「あやま知」によって有耶無耶とされてしまったがの」
アオはぼやくようにそんな話をしながら歩いていたが、目的地である洞窟の前に着くと足を止めた。
「今のところ変わりがないようじゃな…」
火が陰り始めた洞窟周辺の様子を見回したアオは呟くようにそう言うと、「ここから先あちらへの道——いつ次元移行が起きるかわからぬので、安全の保証は出来ぬが覚悟は良いか?」とピリカ達に確認をした。
「大丈夫、行こ」
ピリカは迷うことなく笑顔でアオに答えると、その横でエルも深く頷く。
「——承知。では参ろう」
アオはそう言うと、冷気が漂う洞窟の奥に向かって歩き出した。
あの世へ入り口である洞窟の入り口付近では外からの光が若干入っていたが、奥に進むにつれポツンポツンと設置されている古い蛍光灯も徐々にその数を減らして、やがて洞窟の奥は完全な闇の空間となっていた。
ゴツゴツした天然の岩肌がむき出しの洞窟の中、アオは闇の中である事など気にする様子もなくどんどん奥へ進んでいく。
「あ~、前に来た時にはこの辺は真っ暗で何にも見えなかったけど、今日はちゃんと見える~、面白い~」
物珍しそうに周囲を見回してピリカがはしゃぎ声を上げた。
「俺も。すごく明るいって訳じゃないけど、曇りの日の感じで見えるや…どういう事?」
不思議そうなエルにアオが「この辺りはまだ狭間ではあるが、前にも来ておるし半霊半物質の体が適応して物理的な目で周囲の様子を認識していたのを、心眼に切り替えたんじゃろう」と説明をする。
「この世とあの世の狭間か…まさかまた来るとは思わなかったよな」
そんなエルの呟きにピリカが「私はまた来たいと思ってたよ」と笑った。
「まさか俺達の足元にあの世があるなんて…」
死ねば空にきらめく星になるとばかり思っていたとエルが言う。
「それは全くの見当違いという訳ではないぞ」
「どういう事?」
「エンマの所で見たであろう――死者がそれぞれの魂の波長に応じた世界に送られているのを」
「あ!」
アオの言葉にエルは何かひらめいた様子で、声を上げる。
「確か、それぞれの波長に応じた世界に送っているって言ってたよな――それってもしかして同じ周波数を持つ星って事⁈」
「ご名答」
アオの説明によると、この宇宙には星も物質を伴うものから、霊的な星まで様々な状態の星が存在する。
物質で構成されている世界は三次元の存在で、四次元は物質空間に時間という要素が加わった世界。五次元は無数の四次元…かつてあった過去であり、今であり、未来であるパラレルワールドと呼ばれる存在。パラレルワールドは様々な波動の周波数を持つ宇宙が存在するのだという。
アオによるとエンマがいるあの世は四次元に存在し、あの世でジャッジされた精神エネルギー体は、それぞれの波長に応じた五次元の世界へ送られるという仕組みになっているのだという。
「そして六次元は時間にも空間にも縛られない、霊的な世界でサタンや銀河連合の上層部などが存在する世界となっておる」
そんなアオの説明にピリカとエルは理解できない様子で顔を見合わせる。そんなピリカ達にアオは「わかりやすく言えば、六次元は「想念——想いの力」で出来ている世界じゃ」と笑う。
「今回の次元転移は前例が無い故、巨人達が住む星が丸ごと多次元に移行するのか、次元構造そのものが変わるのか全く見当がつかぬ…その鍵となるのは一体…」
アオはブツブツと独り言を呟いていたが、急に足を止めてピリカの顔をしげしげと見詰める。
「…何?」
自分の顔を見詰めるアオを不思議そうに見つめ返して、ピリカは小首を傾げる。
「…いや、何でもない」
アオはそう言って軽く首を振ると自嘲気味な笑みを浮かべる。
――この小さな妖精が鍵なる者ではある訳はないか…。
予感なのか、単なる妄想なのかよくわからない自分の考えを打ち消すアオであった。
「ほんとここ変な所だよな…」
天然の洞窟の中を進んでいたはずが、いつのまにやら人工的な通路の緩やかな下り坂を移動していたことに気が付いて、エルはキョロキョロと周囲の様子を見回しながらそんな呟きを漏らす。
「あの世とこの世の間を繋ぐのに通路があるだなんて…」
「ここは黄泉比良坂と呼ぶ者もおるがの」
「黄泉比良坂?」
聞きなれない単語にエルは首を傾げた。
「あの世とこの世を繋ぐ坂道の事じゃ――黄昏の国ではそう呼ばれておるが、この星には違う名前であっても同じ坂が神話や伝説として語り継がれておる」
「へぇ…」
「まあ、言い伝えられているうちに様々な脚色が加えられているので、印象は全く違う話と場所の様に思えるが」
そう言ってアオは小さく笑う。
「言い伝えは伝言ゲームの様なものであるから、言い伝えられているうちに元の話とは全く違うものに変貌するので、話を正しく伝えられるようにと書き残す者もおったのじゃが、巨人族の長たちによって書き換えられ、元あったものは破壊されたり焼かれたりして闇に葬らえてきたので、今となっては何が無いやら訳が分からぬものばかりとなっておる」
「どうしてそんな事を?」
「その方が自分たちに都合が良いのでな――「あやま知」を正しい事と刷り込むにはそれが手っ取り早い」
アオはそう言うと、坂の途中で足を止めた。
「黄昏の国の神話では、国作りをした夫婦神が大喧嘩をして、この坂に千曳岩(動かすのに千人必要な岩)を置いて離縁したという話で終わっておるが、本当はここで話し合いをしてお互いの誤解を解いて仲直りしておるのだよ」
「仲直りしたのに、どうして喧嘩したままに?」
「神様でさえ、お互いを理解する努力などしていないのであるから、自分たちだって仲違いをした者と仲良くする必要はないと信じさせれば、争いは無くなる事はないからな――不和が続けば、苦しみや悲しみの波動が常にこの世界に存在する事となるので、サタンの思惑通りであろう」
「そういう事か…見事過ぎてなんか腹立つな~」
エルはそう言うと深くため息を吐く。
「真実は闇の中じゃ」
アオはそう言うと再び歩き出す。
「ねぇ、巨人さん達ってどうしてずっと嘘を信じているの? もうサタンちゃん、悪い事教えるの止めて何処かに行ったって言ってたよね?」
話を聞いていたピリカが納得できないといった表情で抗議の声を上げる。
「ありとあらゆるものが嘘であったと信じたくないのであろう――結局は己自身で悟らねば、いくら他から言われたとしても本当に変わる事は出来ぬ」
「そんな…」
ピリカはそう呟くと悲しそうに俯く。
「薄々、自分たちの世界がおかしいんじゃないかと感じ取っている巨人達もいるが、その者たちは、いつか救世主が現れて闇に包まれた世界を光輝く世界に変えてくれると思っておる」
「思ってるだけじゃ何も変わらないよ」
素直なピリカの言葉にアオは頷く。
「己の運命は自分で切り開くしかない…救世主などいつまで待っても現れぬのだから」
自分自身の救世主は自分なんだと、悟って欲しいと願うアオであった。
「ここは巨人さん達あんまりいないね」
アオが持つバックの中から外の様子を伺っていたピリカが呟く。
「ここも黄昏の国では辺境にあたるからの――住んでいる者も少なく、この地に用があって降りる者も少ないのであろう」
「へぇ…巨人達が少ない方が気兼ねなく話せるから、俺はありがたいけどな」
アオの説明にエルはそう言って笑う。
「…ねぇアオ、なんか温泉みたいな気配を感じない?」
何かを感じたのかピリカが小首を傾げる様にアオに訊く。
「温泉とな? この地は温泉地ではないのじゃが…」
「あっちの方に、気配は弱いけど精霊さんがいるみたい」
そんなピリカの言葉にアオは興味を持ったのか、ピリカが指し示す方へ歩き出した。
「足湯?」
駅前ロータリーのすぐそばに屋根付きベンチスペースがあり、そこには湯気を立てている緩やかな流れがある浅い浴槽のようなものが一緒に設置されていた。
「まだ新しい…巨人達によって設置されたようじゃが、この微弱な気配によく気が付いたな」
驚いた様子のアオにピリカが笑顔を浮かべる。
「精霊さんが呼んでる気がしたの…」とピリカはそう言うと、周囲に巨人の姿が無いのを確認してアオのバックから出てベンチに飛び降りた。
「——天と地の結び…火と水の契約の友よ…姿を現し給え…」
ピリカは大きく息を吐き呼吸を整えると、優しく語り掛ける様に言葉を紡ぐ。するとそれに反応するかのように、風もないのに湯気がゆっくりと渦を巻き始めた。
「…龍?」
湯気の渦は回転速度を上げその形はまるで龍の姿の様に見える――ただそのサイズは小さく、せいぜい30㎝くらいの長さしかないように思われた。
「私を呼んだのはあなた?」
小龍といった表現がぴったりくるようなそれにピリカが問いかける。
――是。
音無き言葉がピリカやエル、アオの頭の中に直接響いてきた。
「初めまして。私はピリカ。北の地のコロボックルよ――あなたは?」
――吾はここにあるもの…名は…。
そんな言葉が響いた後、戸惑った様な思念と共に沈黙に変わる。
「…この子、アオのお仲間?」
「大きな意味では仲間ではあるが、この者はまだ生まれて間もない赤子の様なものであるので、厳密には違うとも言えるな」
ピリカに問われたアオは苦笑いを浮かべながら小龍を見て答える。
「気配の大きさもアオとは比べ物にならない程、こいつ弱くて小さいもんな…そんなのが俺たちに何の用があるんだ?」
興味津々といったエルの言葉を聞きながらピリカは小龍に語り掛ける。
「生まれたてなら名前がなくても仕方がないわ…ご用はなあに?」
――吾をここに導いた者を知らぬか?
「あなたを導いた…?」
何を言っているのかわからないといった様子でピリカは首を傾げる。
――その者は、吾を導き、ここを守れと吾に命じた。
それを聞いたピリカとエルは顔を見合わせる。
「…ええっ…と」
返答に困るピリカに小龍は言葉を続ける。
――その者は吾に命じると姿を消した。吾は何者? 吾は何故、ここを守らなければならぬ?
わからない事だらけで、戸惑い混乱している思念の様なものが小龍から流れ込んできた。
「何も知らぬ赤子にその様な事を命じるとは酷な事じゃ…」
同情するような目でアオは小龍を見詰めながら呟く。
「アオ…心当たりないの?」
「赤子の様なものとはいえ、エネルギー体である龍体に召喚し命じる事が出来る存在であるのだからただ者ではあるまいが、目的が判らぬ故、さっぱり見当がつかぬな」
「う~ん…」
アオの返答にエルは困った様な表情を浮かべた。
「知りませんって言ってこのまま放りだすってのも可哀想な気がするし、それじゃ後味が悪いよな…」
「こうして出会ったのも何かの縁だもの、ほっとけないよ」
ピリカはそう言うと、小龍に向き直り「その人ってどんな人?」と問いかけると、イメージの様なものが思考に流れ込んでくる。
それは巨人族の様な姿をしており、黒いツバ付の帽子と黒いスーツ姿の初老の細身の男性の様であった。
「…この葬儀屋の様な者…どこかで見た様な気もするが…?」
頭を捻るアオの言葉を聞いてピリカの目が期待に変わる。
「知ってるの? 思い出してあげて」
「思い出せと言われても…はっきりと思い出せない事を考えると、かなり昔の話であるぞ」
「アオの言う昔って、十年二十年前って話でもなさそうだよな」
そんなエルの呟きにピリカが「数百年前の話とか、数千年前の記憶だったりして」と笑う。
「アオならあり得るから、それ笑えねぇって…」
エルが苦笑いを浮かべていると、考え込んでいたアオは小さく首を振り、「今は思い出せぬな――済まぬ」と小龍に伝えた。
「ごめんね――私達行かなきゃいけない所があるから、もう行くけど…黒服のおじいちゃんに遭う事があったらあなたの事伝えておくから」
ピリカの言葉を聞いた小龍は無念といった思考を残し、湯気の中に消えていった。
「なんか可哀想な子だったね…」
「まるで迷子の子供の様じゃったな――自我がまだはっきり固まっておらぬので、不安で仕方がないんじゃろう」
「そうなんだ…自我ってどうやったら固まるの?」
そんなピリカの素朴な疑問にアオは「手っ取り早いのは「名」を付ける事であるな」と言う。
「名?」
「そう、名前じゃ――名付ける事によって個を定め、他者との区別する事が出来るようになるのでな」
「名前かぁ…」
ピリカはそう呟くと、小龍がいた辺りに向かって声を上げる。
「小龍さん…あなたに名前をあげる――あなたの名前はワッカ」
ピリカの声は誰もいない足湯に響き渡る。その次の瞬間、その空間がざわめくのをエルは感じ取り驚きの声を上げた。
「わわっ…、何かがざわめいた!」
「きっと小龍ちゃんが名前を受け取ってくれたんだよ」
嬉しそうなピリカに、アオは何故その名を選んだのかと尋ねる。
「ワッカは、私たちの言葉での意味は、良い水…清浄な水って意味なの――ここを守護者なら、そういう意味の名前の方がいいかなぁ…って」
無邪気な笑顔を浮かべてピリカはそう解説する。
「なるほどな…その名の通り、この地が良い水で清められる事を期待しようではないか」
アオはそう言うと、湯気が立ち上る足湯の方を見て微笑みを浮かべた。
ワッカとの出会いの後、アオは目的地である霊山の麓に向かった。
ハイキングコースとなっている道を進んでいくと、ハイキングを終え日が暮れる前に帰ろうとする何人もの巨人達とすれ違う。アオが向かっている先はハイキングコースと樹海、そして霊山への登山口しかない為、着物姿のアオを巨人達は不思議そうな顔をしながら見ていた。
「…巨人たち、みんなアオの事、二度見してるね?」
巨人達の様子をこっそり観察していたエルがそう言って笑う。
「そうであろうな――このような場違いな格好でどこに行こうとしているのか不思議なんじゃろ」
巨人達の反応が面白いのかアオは楽しそうにそう言いながら歩み続ける。
「アオって巨人族の格好をしている時は、いつもそのひらひらした服を着ているけど、巨人さんたちってそういうのを着ていないね?」
「この国の巨人族の古くからの衣装であるが、今となっては趣味人か大切な行事の時にしか着ないのでな」
そう言ってアオは笑う。
「我の場合はこれが好きなのであえてこの姿でおるのじゃが、今の巨人達の目には珍しく映るようじゃ」
「目立たない色で自然に紛れて敵に狙われないようにするっていう俺たちとは真逆だよな」
「我を獲って食おうとするモノ好きはおらぬのでな」
エルの呆れた様な呟きにアオそう言って、にやりと笑う。
「そりゃそうだろうけど、アオの場合は目立つ格好で自分は危険ですよ~って主張しているって感じだと思うけどな」
「警告色の事か――我はそれほど毒々しい色はしておらぬぞ」と言ってアオが笑う。
「警告色って?」
エルとアオの会話の意味が理解できなかったのかピリカが首を傾げた。
「毒があるキノコだとか虫の色って真っ赤や紫だったり、黄色と黒模様だったりするだろ――派手な色とか柄で「自分を食べたら嫌な事が起きますよ」って主張する事によって、食べられないようにしてるらしいぜ」とエルに言われて、ようやくピリカは何の話をしているのか理解したのか、あぁ…といった表情になる。
「赤くないキノコにも毒キノコはあるけど、赤いのは確かに食べないようにしてるね」
「食いしん坊のピリカがそう思うんだから警告色の効果絶大だなぁ」
そういって笑うエルにピリカは「でも赤いいちごは大好きだよ」と笑う。
「そういや野菜や果物は赤くても毒は無いし美味しいよな」
ピリカの言葉に疑問を感じたのかエルが首を傾げる。そんなエルにアオは「それは野菜や果物は動物の食べ物として作られた植物であるからじゃ」と笑う。
「じゃあキノコは?」
「キノコは宇宙由来の原始生物がこの星で定着したものなので、そもそも動物の食料としては想定して作られたものでない」
この星には元々この星発祥の生命体もあれば、様々な星からやって来て定着した生命体も数多くある。そんな中の一つである菌類は、動物には毒となる物質を含む種類も多くあったが、有用な成分を含む種類もあったのは瓢箪から駒みたいなものだったという。
「植物は動物に食べられる為に作られたって言うけど、植物にも毒があるよ?」
「植物には薬としての役割があるのでな――毒でもあり薬でもあるので、量と使い方、バランスが肝心」
「薬…確かに葉っぱとか根っこ、木の実なんかを乾燥させたのでお薬を作ったりするね」
コロボックルたちには代々薬の作り方が受け継がれていて、ピリカもまた小さい事から祖父母や親からそれを教えられて育っていた。
「旬を迎える植物に、その季節に応じて動物たちの体に必要な成分が含まれる様に設計してあるので、難しい事を考えずとも、さまざまな旬のものを食べておれば自然に体と心の状態が整うようになっておるんじゃが…」
春の旬の野菜には苦みがあるが、その苦みには冬に体の中に蓄積した老廃物を排出する効果がある。夏の旬のものには水分が多く暑さで出てしまう体内の水分を補い、身体を冷やす効果があるという。秋の旬のものには冬に向けて身体を整え、栄養を蓄えて備える効果があり、冬の旬のものは乾燥気味の体を潤し、温める効果があるのだという。それと長期ほどんが可能な穀物や芋類、通年収穫できるものを組み合わせて口にしておけば健康に生きていけるようになっていたのだという。
「巨人族にそれを教えておったのじゃが、それもサタンにより巨人族に植え付けられた「あやま知」によって有耶無耶とされてしまったがの」
アオはぼやくようにそんな話をしながら歩いていたが、目的地である洞窟の前に着くと足を止めた。
「今のところ変わりがないようじゃな…」
火が陰り始めた洞窟周辺の様子を見回したアオは呟くようにそう言うと、「ここから先あちらへの道——いつ次元移行が起きるかわからぬので、安全の保証は出来ぬが覚悟は良いか?」とピリカ達に確認をした。
「大丈夫、行こ」
ピリカは迷うことなく笑顔でアオに答えると、その横でエルも深く頷く。
「——承知。では参ろう」
アオはそう言うと、冷気が漂う洞窟の奥に向かって歩き出した。
あの世へ入り口である洞窟の入り口付近では外からの光が若干入っていたが、奥に進むにつれポツンポツンと設置されている古い蛍光灯も徐々にその数を減らして、やがて洞窟の奥は完全な闇の空間となっていた。
ゴツゴツした天然の岩肌がむき出しの洞窟の中、アオは闇の中である事など気にする様子もなくどんどん奥へ進んでいく。
「あ~、前に来た時にはこの辺は真っ暗で何にも見えなかったけど、今日はちゃんと見える~、面白い~」
物珍しそうに周囲を見回してピリカがはしゃぎ声を上げた。
「俺も。すごく明るいって訳じゃないけど、曇りの日の感じで見えるや…どういう事?」
不思議そうなエルにアオが「この辺りはまだ狭間ではあるが、前にも来ておるし半霊半物質の体が適応して物理的な目で周囲の様子を認識していたのを、心眼に切り替えたんじゃろう」と説明をする。
「この世とあの世の狭間か…まさかまた来るとは思わなかったよな」
そんなエルの呟きにピリカが「私はまた来たいと思ってたよ」と笑った。
「まさか俺達の足元にあの世があるなんて…」
死ねば空にきらめく星になるとばかり思っていたとエルが言う。
「それは全くの見当違いという訳ではないぞ」
「どういう事?」
「エンマの所で見たであろう――死者がそれぞれの魂の波長に応じた世界に送られているのを」
「あ!」
アオの言葉にエルは何かひらめいた様子で、声を上げる。
「確か、それぞれの波長に応じた世界に送っているって言ってたよな――それってもしかして同じ周波数を持つ星って事⁈」
「ご名答」
アオの説明によると、この宇宙には星も物質を伴うものから、霊的な星まで様々な状態の星が存在する。
物質で構成されている世界は三次元の存在で、四次元は物質空間に時間という要素が加わった世界。五次元は無数の四次元…かつてあった過去であり、今であり、未来であるパラレルワールドと呼ばれる存在。パラレルワールドは様々な波動の周波数を持つ宇宙が存在するのだという。
アオによるとエンマがいるあの世は四次元に存在し、あの世でジャッジされた精神エネルギー体は、それぞれの波長に応じた五次元の世界へ送られるという仕組みになっているのだという。
「そして六次元は時間にも空間にも縛られない、霊的な世界でサタンや銀河連合の上層部などが存在する世界となっておる」
そんなアオの説明にピリカとエルは理解できない様子で顔を見合わせる。そんなピリカ達にアオは「わかりやすく言えば、六次元は「想念——想いの力」で出来ている世界じゃ」と笑う。
「今回の次元転移は前例が無い故、巨人達が住む星が丸ごと多次元に移行するのか、次元構造そのものが変わるのか全く見当がつかぬ…その鍵となるのは一体…」
アオはブツブツと独り言を呟いていたが、急に足を止めてピリカの顔をしげしげと見詰める。
「…何?」
自分の顔を見詰めるアオを不思議そうに見つめ返して、ピリカは小首を傾げる。
「…いや、何でもない」
アオはそう言って軽く首を振ると自嘲気味な笑みを浮かべる。
――この小さな妖精が鍵なる者ではある訳はないか…。
予感なのか、単なる妄想なのかよくわからない自分の考えを打ち消すアオであった。
「ほんとここ変な所だよな…」
天然の洞窟の中を進んでいたはずが、いつのまにやら人工的な通路の緩やかな下り坂を移動していたことに気が付いて、エルはキョロキョロと周囲の様子を見回しながらそんな呟きを漏らす。
「あの世とこの世の間を繋ぐのに通路があるだなんて…」
「ここは黄泉比良坂と呼ぶ者もおるがの」
「黄泉比良坂?」
聞きなれない単語にエルは首を傾げた。
「あの世とこの世を繋ぐ坂道の事じゃ――黄昏の国ではそう呼ばれておるが、この星には違う名前であっても同じ坂が神話や伝説として語り継がれておる」
「へぇ…」
「まあ、言い伝えられているうちに様々な脚色が加えられているので、印象は全く違う話と場所の様に思えるが」
そう言ってアオは小さく笑う。
「言い伝えは伝言ゲームの様なものであるから、言い伝えられているうちに元の話とは全く違うものに変貌するので、話を正しく伝えられるようにと書き残す者もおったのじゃが、巨人族の長たちによって書き換えられ、元あったものは破壊されたり焼かれたりして闇に葬らえてきたので、今となっては何が無いやら訳が分からぬものばかりとなっておる」
「どうしてそんな事を?」
「その方が自分たちに都合が良いのでな――「あやま知」を正しい事と刷り込むにはそれが手っ取り早い」
アオはそう言うと、坂の途中で足を止めた。
「黄昏の国の神話では、国作りをした夫婦神が大喧嘩をして、この坂に千曳岩(動かすのに千人必要な岩)を置いて離縁したという話で終わっておるが、本当はここで話し合いをしてお互いの誤解を解いて仲直りしておるのだよ」
「仲直りしたのに、どうして喧嘩したままに?」
「神様でさえ、お互いを理解する努力などしていないのであるから、自分たちだって仲違いをした者と仲良くする必要はないと信じさせれば、争いは無くなる事はないからな――不和が続けば、苦しみや悲しみの波動が常にこの世界に存在する事となるので、サタンの思惑通りであろう」
「そういう事か…見事過ぎてなんか腹立つな~」
エルはそう言うと深くため息を吐く。
「真実は闇の中じゃ」
アオはそう言うと再び歩き出す。
「ねぇ、巨人さん達ってどうしてずっと嘘を信じているの? もうサタンちゃん、悪い事教えるの止めて何処かに行ったって言ってたよね?」
話を聞いていたピリカが納得できないといった表情で抗議の声を上げる。
「ありとあらゆるものが嘘であったと信じたくないのであろう――結局は己自身で悟らねば、いくら他から言われたとしても本当に変わる事は出来ぬ」
「そんな…」
ピリカはそう呟くと悲しそうに俯く。
「薄々、自分たちの世界がおかしいんじゃないかと感じ取っている巨人達もいるが、その者たちは、いつか救世主が現れて闇に包まれた世界を光輝く世界に変えてくれると思っておる」
「思ってるだけじゃ何も変わらないよ」
素直なピリカの言葉にアオは頷く。
「己の運命は自分で切り開くしかない…救世主などいつまで待っても現れぬのだから」
自分自身の救世主は自分なんだと、悟って欲しいと願うアオであった。
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