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◆episode1

~サタンと欲と巨人族~

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 朝霧が立ち込めるホームに和装美人がたたずんでいた。
 道行と呼ばれる裾に曲水が描かれた黒の和装コートに身を包み、横長の和装バックを手にしたその女性はアオである。
「暦の上ではもうとっくに春じゃが、まだまだ冬の気が強いのぉ」
 そう独り言を呟くとアオはバックの中にいるピリカとエルに話しかけた。
「お前たち、寒くはないか?」
 バッグの中でくつろぐように座っていたピリカがアオを見上げて「大丈夫だよ」と言って笑顔を見せる。
「もうすぐ電車が来るので、静かに頼むぞ」
「わかってるよ――ここからだと外の様子が分からないから、退屈だし俺は寝ると思うけど」
 そう言ってエルが笑う。
 初めてピリカやエルが電車に乗った時は、アオが持つ籠バックの中にいた為、電車に乗る巨人族の様子を籠の隙間から観察する事が出来たので退屈しなかった。しかし今回は芯の入ったバッグの為、中から外の様子を伺う事は不可能である。
「籠のバックでは季節外れでおかしいし、お前たちも寒いであろうからな」
「寒くないのは嬉しいけど、巨人さん達の様子を見たいから、後で上からこっそり見ちゃうかも」
 横長の和装バックは上部が閉じている訳では無いので、外の様子を見ようと思えば上部から顔を出せば見る事は出来そうなので、ピリカは悪戯っ子ぽい表情を浮かべた。
「騒ぎになっては困るので、見つかりそうになったら人形のフリを忘れずにな」
「わかってるって」
 そんな会話をしている間に、電車が到着する事を知らせるメロディーがホームに流れる。
「モニター越しでない生きた巨人族は久しぶりに見るので、我も楽しみじゃ」
 どこかウキウキとした様子のアオは小さくそう言うと、到着した電車に乗り込んだ。
 青龍の能力を使えば空を飛ぶ事も空間を繋げて目的地に瞬時に着く事が出来るにも関わらず、わざわざアオが巨人族の姿になり、巨人族の交通手段を使って目的地に移動するには訳がある。一般的な巨人族たちの日々の様子を観察する為、そして新世界への移行時期であるので、巨人達の変化を実際に感じ取りたいというものであった。
 電車の座席は長距離移動のボックス席になっており、アオは適当な空席に腰を下ろすと窓側にそっとバックを置く。
 早朝だからか乗客はまばらで、電車が走行する規則的な振動音が聞こえて来るだけであった。
「巨人さん達、あんまりいないね」
 かばんの淵から顔を出して周囲の様子を見たピリカはがっかりした様に呟く。
「まだ早い時間であるし、この辺りは黄昏の国でも辺境であるからのう――大きな街近くになれば巨人達も増えてくるであろう」
「そっかぁ…前に見た巨人さん達は手に持った箱みたいのと黙ってにらめっこして変だったよね」
「ああ、あれは巨人達にとっては無くてはならぬもの故、今も同じような光景がみられるであろうな」とアオが苦笑いを浮かべていると、ピリカと並んでかばんの淵から顔を出していたエルは行き先を尋ねた。
「前にも通った霊峰の麓にある森じゃよ――近くの駅に到着するまでに巨人達の都も通るので、巨人たちの様子を観察する事ができると思うが」
「巨人達の都かぁ…あそこ嫌いだなぁ」
 刺激的な光と音が溢れる風景を思い出してエルは不快そうな表情を浮かべる。
「新統治社会では、生物の心身に悪い影響を与えるものは除去する方針であるので、以前の様な心身を耗弱させる様なものは減らしていく方針であるがな」
「巨人族って害毒まみれで生活していたんだから、生きていけなくなってるんじゃ?」
 それを聞いたアオは「いきなりは変えぬよ…泥水の世界を天国と思って生きておった者が、いきなり清らかな水には住めぬでな」と苦笑いを浮かべる。
「なるほど、急激な変化だとショック死しちゃうって事か」
 エルは何ともいえない表情になる。
「この世界を泥海に戻すのは簡単な事じゃが、それでは他の生き物たちも巻き添えになるでな――すべてを救うのが最善であろうという事じゃ」
「難しい事はよくわかんないけど、悲しむ子がいなくなるなら、それがいいね」
 アオとエルの話を聞いていたピリカはそう言うと、流れるように過ぎ去る車窓の景色視線をやり「他の生き物たちと巨人さんたちがまた仲良く出来る日が早く来ればいいなぁ」と呟く。
「そうなる様には祈るだけではなく、皆が行動をしなければならぬがな」
「そうだね、ご馳走を想像してもお腹いっぱいにはならないから、ちゃんと本物の御馳走を食べないと」
 アオの言葉に食いしん坊のピリカらしい解釈を聞いて、エルが噴き出す。
「ピリカみたいなのばっかりなら、世の中平和で幸せだよな」
「ピリカ幸せだよ」
 屈託のない笑顔を浮かべるピリカにアオがクスクスと笑っていると、次の駅に停車するという車内アナウンスが流れた。
「次の駅に着いたら巨人達が乗り込んでくるやもしれぬで、見つからぬようにな」
 そんなアオの言葉を聞いて、ピリカとエルはバックの中に身をひそめる。
 ピリカ達を乗せた電車が駅で停車すると、性別年齢様々な 巨人達が乗り込んできて、空いている座席に腰を下ろす。発車メロディーが流れ、電車は再び動き出した。
 アオが座るボックス席に座る者はいなかったが、前の席には親子連れ、後ろの席には青年が二人が座っていて、前の席の親子の会話が聞こえ始めた。
「ママ、喉かわいた」
「はい、お茶。こぼしちゃダメよ」
「え~お茶やだ。ジュースがいい」
「ジュースはあまり飲んではいけないんですって」
「え~、野菜や果物のジュースなら体にいいから、一杯飲みなさいってママ言ってた~」
「それがねぇ…お野菜や果物を使ったジュースって液体だから、身体の中を移動するのが早すぎて、大切な栄養が吸収される前に通り過ぎて、吸収されやすいお糖だけが吸収されるから砂糖水を飲んでいるのと一緒ってテレビで言っていたのよねぇ」
「え~そんな嘘だぁ、ジュース~」
 そう言ってぐずりだした子供を持て余し、母親の方は困り顔を浮かべていた。そんな会話が聞こえていたのか、後ろの席の青年たちが声をひそめて話し出す。
「…俺、あの子供の気持ちよくわかるなぁ」
「ああ、野菜や果物のジュースが砂糖水と一緒とか有り得ねぇよ」
「そうそう、宇宙人と俺達の代表が合同で立ち上げたとかいう新統治政府とかいうのが、頭がおかしい変な事言ってるよな。今までの食い物とか飲み物のほとんどは危険で身体に悪いものが多いから、安全で体にいいものを選んで摂取しましょうとか…俺は肉が大好物だし、ラーメンとか牛丼、揚げ物とかも大好き――とにかく旨くて茶色い食べ物は正義だと思っていたのに、野菜や魚中心の食生活に切り替えろって言われてもなぁ」
「体にいいって言われても、健康的でマズい飯食うぐらいなら、美味しい毒の方がマシ」
 それまで美味しくて利便性に特化した総菜や冷凍食品、弁当類だけではなくそれに使われている調味料にも有害物質が含まれている事が多く、飲み物や菓子、サプリメントなども有害であるという情報が新統治政府発表として大々的に報道されるようになり、それまでの食の常識の否定は巨人族たちには信じられない事ばかりで、拒絶反応を示す者も少なくはなかった。
「大体さ、野菜なんかだと農薬や化学肥料たっぷり使っているし、魚も養殖ものは育てるのに成長促進剤とか抗生物質、ホルモン剤を使っているものも多いって話だろ? それを言ったら野菜や魚の方がやべぇて話になるよな」
「そうそう、美味い肉喰ってスタミナ付けて、後はビタミンとかのサプリや栄養ドリンクとかを飲んでる方がよっぽど健康的」
「なんか牛や豚なんかの四つ足の肉を食うと共食いになって、獣になるとか訳の分からねぇ事言ってるけどよ、そんなバカな話あるかよ」
「宇宙人ってあいつら基地外だよ。そんな事を言ったら、俺達とっくの昔になってるはずだぜ――俺達が肉を食わないなんてありえねぇよ。そうだ、今日のお昼は焼肉食べに行こうぜ」
 青年たちはそう言うとゲラゲラ笑っているのを聞いていたエルが小さな声で「巨人達は全然変わってないみたいだね」と困惑した様子で呟く。
「安い肉として売られている牛や豚も酷い環境で育てられているので薬漬けなんじゃがのぉ――自分の都合の良い解釈をする、欲に忠実である事自体が、獣の属性である事の証明であるのじゃがな…」
「止めないの?」
 そんなピリカの問いかけにアオは「忠告を信じず行動を改めないというなら致し方あるまい――イトが言っておったじゃろ? 自分が正しいと思っている事を間違っていると疑うのは難しいと」
「そう言えばイトちゃん、そんな事言ってたね~」
 久しぶりに里山で穏やかに暮らす巨人族の老婆の名前を聞いたピリカは、懐かしそうな表情を浮かべた。
「イトは自分たちが信じてきた常識の誤りに気が付いて、仲間達と自然と共存する暮らしをしておったが、今も多くの巨人族は自分たちの過ちを認める事が難しく、過ちに執着しておるようじゃの」
 アオはそう呟くと、やれやれといった表情を浮かべる。
「巨人達が何の疑問も持たずに口にしておった物についての危険性は、あらゆるメディアを通して警告して周知を図って居るので、後になってから聞いておらなんだという言い訳はできぬし、その責任は己が取る事となるのじゃがな…」
 アオはそう言うと、ふぅ~っと大きく息を吐いた。
「近代の巨人族の食文化には、自然と調和し、精神を養う為の食事という考え方が失われてしもうておるからこのような事になったのだが、よくもまあ、ここまで持ち荒らしてくれたものじゃ」
 怒るというよりも呆れるといった様子のアオに、エルが「精神を養う食事?」と首を傾げる。
「半霊半物質のピリカやお前たちも食うておるではないか」
 アオは「言い換えれば魂の栄養——いわゆる生体エネルギーの事じゃ。食事は肉体を養うだけのものではないのじゃよ」と微笑む。
「野菜や果物は刈り取っても、成長し根や芽を出すであろう。植物は魂を種で共有し、個々の葉や果実といったものは魂の分霊箱であり生体エネルギーの塊でもある。植物は動物の対となる様に大神が作りたもうた存在で、対となる動物に食べられる事によって、植物は動物になりそれを喜びとする――動物もまた生体エネルギーの統合を喜びとし、魂を養う」
 高きは低きに流れるのが世の理。それ故、植物を食べれば喜びの波動である高周波のエネルギーが食べた者に流れ込み、その波動が高くなる。
 それに対して動物の魂は肉体に宿り学ぶ事を使命としているので、殺された場合、その学びの機会を奪われ肉体から引きはがされた事を苦痛に感じるのだという――その苦痛は怨みや悲しみといった低い波動を伴う存在となり、それを食べて生体エネルギーの統合を行うと、低い波動にエネルギーを奪われる形で自らの波動を低くするという結果となるという事であった。
「…へぇ、ご飯を食べるって、そういう理由もあったんだね」
 感心した様子のピリカにアオは小さく笑う。
「非常に大事な事なんじゃが、そういう目に見えない仕組みを巨人達は知らないので、それに付け込んだのがサタンの頭の良き所よ」
 皮肉交じりにアオはそう呟くと、巨人達を低周波世界の住人とする為に仕組んだ様々なサタンの手口をピリカやエルに語り始めた。

「昔、巨人族が銀河連合の指導下にあった頃は、肉を食するという行為は穢れる――文字通り精神の波動レベルが落ちるので、「気が枯れる」として忌み嫌っており、原始的な知的生物ではあるものの高い波動レベルの周波数を持っておった。しかし巨人族が住む星を保護観察するという方針決定の変更に従って銀河連合が撤退した後、サタンは己の野望を達成するの為にまず始めたのは「損得」という概念を巨人達に植え付ける事から始めたんじゃ」
「損得?」
 首を傾げるエルにアオは説明を続ける。
「それまでは自然と共存し、生活に必要なものは融通をして助け合いをするという調和の社会であったが、融通する際はなにか交換するものでないと不平等であるという考え方じゃ」
「おかしな考えをわざわざ?」
 生きる為に必要な物は自然から調達し、仲間達とそれぞれ持ち寄って分け合いながら暮らしてきたピリカに問っては理解できない考え方は不思議で仕方がない様子であった。
「同じ価値であれば平等。その価値に見合わないものであれば損であり、自分のものよりも価値があるものが手に入れば得であるという考え方を植え付ければ、生き物の本質は増殖・繁栄であるから、当然「殖やしたい」という欲が芽生えるでな――巨人族を欲の僕にすれば操りやすくなるからという理由であったのじゃろうな」
「元々、全部自然のみんなから分けてもらったものだよ? 巨人さんのものじゃないんだから、損も得もないじゃない」
 納得できない様子のピリカにアオは苦笑いを浮かべる。
「泥棒の論理と同じじゃ――盗んだものであっても、我が手中にあれば自分のものであるというな。自分のものである以上、得をする事は嬉しいが、損をするのは絶対に許せないという身勝手な言い分よ」
 そうしてその考えはやがて、多くのものを手に入れることが出来、それを持つ者ほど豊かとなり、持たざる者は交換するものの代わりに労働という形で対価を払うという形に姿を変えた。
「やがて物々交換から効率をよくする為に貨幣という概念が導入されていく事となったのじゃが、その段階になると巨人族と自然との関係は随分おかしなものとなっておった」
 生きていく為に必要な食物だけではなく、それを収穫できる土地まで巨人達はわが物として、他の生き物の事などお構いなくこの世の支配者として横暴な立ち振る舞いをするようになった。
 銀河連合が撤退する前は、多くの命を養う植物が多く生息する温かい肥沃な地域に巨人族が集まって住んでいたのであるが、撤退した後、それまで皆で共有していた自然のあらゆる所有権を主張し奪い合い、持たざる者は自分が所有できるものを求めて、厳しい気候環境の地へ多くの巨人族たちは拡散していく事となったのである。
「その結果、多くを持つ者は持たざる者を働かせることによって遊び暮らしておっても衣食住に困ることなく贅沢三昧し、最初は暇つぶしの余興であったのじゃろうが、生き物たちを殺し、その血や肉を食らって珍味として興じる様になったのじゃよ――それは悪魔崇拝の儀式であり、無残に殺した動物たちの血肉を食らい、獣の様な弱肉強食の欲に忠実な悪魔の僕となっていったのじゃ」
「それがトカゲ頭たちに食べられちゃった人たち?」
「最終的にはそうなったのぅ…トカゲ頭たちの方が巨人族の富豪どもより強かったので、弱肉強食の世界では致し方あるまい」
 因果応報でもあるが…とアオは呟くと問題はそれだけでは済まなかったという。
「環境が厳しい土地へ移住していった巨人たちは食糧不足に陥り、他の動物を殺してそれを食べてでも己の命を繋ぐ必要に迫られ、そうして生きていくうちに食肉が新たな食文化として定着していく事なったんじゃよ」
「それって、巨人族がサタンの入れ知恵を受け入れず、みんなで助け合って生き続けていたら厳しい環境に住む必要もなく、他の動物の肉を食べる様にもならなかったって事だよな?」というエルにアオは頷く。
「そう言う事になるな――巨人族の中でアダムとイブのエデンの園の追放の話の真相はそういう事であった」
 楽園とは自然豊かな温かい肥沃な土地の事で、楽園の住人をそそのかした蛇はサタンの事でアダムとイブは巨人族の象徴、そして彼らが食べた知恵の実は「損得」であり、「欲」の事であったのだという。
「こうしてサタンの思惑通り、原始的な文明しか持たない巨人族であったが、我々に近い高周波を持っていたのに、その波動を低周波数の波動へ坂を転げる様に落とす事となった」
「良い事ではないと思うけど、サタンちゃんってすごいんだね」
 驚いた様子のピリカにエルが「アイツ笑いが止まらなかっただろうな」と複雑な表情を浮かべる。
「笑いが止まらなかったのは巨人族の富裕層の者たちもであろう――悪魔崇拝の結果、サタンから新たな知恵や技術を教えてもらい、それを独占する事によってさらに富を得て、地位や名誉といったものを確固たるものとしていったのであるから――」
 そう言うアオの表情を苦々しいものであった。

 建築や土木をはじめ、医療の知識などの様々な技術を富裕層の巨人達に与える事によって、巨人族全体の科学レベルは飛躍的に向上する事となった。
 星の歴史から考えても短期間の間に巨人族が急速に科学発展する事となったのは、サタンの思惑があったからなのだという。
「科学自体は刃物と同じで便利なものなんじゃが、その使い方次第で神の科学にもなるし魔の科学ともなるのでな…」
 巨人族の富裕層が最も好んだのは魔の科学で武器や兵器であったのだという。
「武器? 兵器? それなあに?」
 初めて聞く単語の意味が解らずピリカは首を傾げる。
「他の生き物を傷付けたり殺すのを目的として作られた道具の事じゃ――信じられないと思うが、食べる為ではなくても巨人族は他の動物や同族を殺す為の様々な道具を作り出して持っておる」
「…は?」
 アオの説明の意味が理解できずピリカとエルは顔を見合わせる。
「食う為ならまだわかるけど、それ以外で他の生き物や同族を傷つけたり殺すってのが全く意味不明…」
 困惑を隠せないようにのエルの言葉にアオは苦笑いする。
「お前たちには戦争という概念が無いので、理解できないのも無理はない――食べ物を確保する為にお前たちも縄張りを主張する事はあるな?」
 その質問にはピリカもエルも頷く。
 生きていく為に食べ物の確保は必要な事であるので、それを奪いに来たものを追い払おうとするのは他の生き物たちでもよくある事ではあるが、(まれに結果的に相手を死なせてしまう事はあっても)故意に殺す事はしない——それに対して巨人族は厳しい環境の場所に移り住む様になった者たちは、温かい肥沃な土地で植物の葉や実などを食べて暮らしていたので牙や鋭い爪が未発達であった為、生き延びる為に牙や鋭い爪の様なものが必要となり、それらの代わりになる道具を作る様になり、その道具を使って食料を確保してそれを守っていたという。
「そこまでは生き物としても生存本能であるので問題はなかったのであるが…」
 問題は巨人族が命を繋いでいくだけの食料だけで満足する事無く、さまざまなものの奪いあいの争いを始め、勝者が所有権を主張するようになった事である。
 その権利の勝者となる為に、効率よく競争相手を傷付けたり、永遠に自分の権利を脅かす事ができないように相手を殺したりする為の道具——武器は進化を遂げる事となったのだという。
 それを聞いたエルは天井を仰ぎ見て「そこでも「欲」かよ」とため息交じりに呟いた。
「欲は恐ろしいぞ――欲の僕となれば己を律する事が出来ない獣となり、永遠に満たされる事がない餓鬼となるのじゃ」
 サタンが巨人族に植え付けた「損得」の種は見事に芽吹いて「欲」の葉を茂らせて、やがて「同族殺し」という呪われた深紅の花を付ける事となった。
「因果なものよ――巨人族も神の流れの者であるというのに」
 複雑な表情を浮かべてアオはそう呟くと、深いため息を吐いた。
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