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53話 熱戦
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「きっついでしょ、この殺気。お腹の下に意識を集中させて、重心を出きるだけ下に。自分の身体が地面と繋がってるイメージをもって。そうしていればそのうちに基本パッシッブスキルを取得してこれが軽減できるようになる。ま、あくまで軽減だから4階層にいる間はずっとしんどいとは思うけど。取りあえず下りの最中は僕が前に出るよ。そうすればある程度気は楽になるからね」
さっとミークを追い抜いて、階段を下り始める高橋さん。
その言葉通りすくんでいた足が少しはマシになった……。
だが恐怖心が芽生えたのか、その後も俺たちの動きは鈍いままで、まるで泥の中を必死にもがくようにして、ようやく4階層に辿り着いた。
「――はぁはぁはぁ……。別に疲れてるわけじゃないのに、なんでこんな……。あり得ないわ」
「気疲れっていくとこまでいくとそうなるんだよ。ほとんどの人間、生き物がそこまで追い込まれることはないし、それを経験することはないけど、探索者って仕事をしているとそこそこある経験だね。でもよかったよ、ここに来るまでにどうやら全員『死線慣れ』を取得できたみたいで。それじゃあ君たちはまた必死に、今度はちゃんと走って5階層まで逃げるんだよ。じゃないと――」
「上級魔法……『影人形』。中級魔法『炎渦【極】』」
「フェーズ6解放……。あ゛あああああああああああああああああああああああああ!!!」
洞窟状だけど天井が異常に高く、薄暗い4階層。
そんな中一際明るく灯る火の柱数本がぐるぐると回転しながら天井を焦がし始めたのだが……人のものとは思えないような絶叫によって途端にそれはかき消させれた。
鼓膜がビリビリと振動すると同時に熱さからか、それとも恐怖心か緊張感か汗がぽとりと落ちる。
それと同時に、視線を合わせていた荒井さんと男は互いに一歩踏み込んだ。
たった一歩。
それだけのはずなのに、その間合いは簡単に埋まり荒井さんの剣は男の首を掠めた。
そしてそれが効果的に働かなかったためか、男は瞬きさえせずに荒井さんの腹まで伸ばしたその手で魔法陣を展開。
激しい攻撃魔法出てくるわけではないが、荒井さんはしまったという表情を見せ、男はうすら笑った。
「――『マジックライトシールド【極】』!」
「ちっ……。また面倒なのが邪魔して……。いいよ、上等だ」
「遅いすぎだ」
「助けてもらっておいてその言い草はないでしょ」
「途中だったとはいえ、魔法の効果はもう受けちまってるんだよ。だから私をあまり戦力に数えない方がいいかも知れないぞ」
「それは今の状態なら、ということでしょう? さっさとフェーズを解放してそんなの取っ払ってください」
「勿論そうしたいところだが……時間がかかるぞ」
「時間を稼ぐだけなら簡単な仕事ですよ――」
「舐めるなよ。深層攻略を止めて呑気に緩い新人育成ばかりしている奴が、俺を止めるなんて不可能なんだよ。今から発動する魔法はそのちんけな防御魔法も無効化できるほど強力な魔法。まだまだ完成じゃあないが、それでもその身体を飲み込んでやるには十分。さぁ余裕ぶってないで謝るなり、逃げるなりした方がいいんじゃないか?」
いつの間にか俺たちの元を離れていた高橋さんは、新たに魔法を発動。
荒井さんを助けることに成功した高橋さんは、苛立つ男を相手に未だ余裕な表情をで見せてはいるけど……。
「流石にあれはまずいんじゃないのかしら?」
「わ、私たちは早く5階層に向かいましょう!」
高橋さんとは反対に焦り散らかすミークと朝比奈さん。
それもそのはず、あの男の背後に現れた『禍々しい球体』。
そのレベルは300を越えていたのだった。
さっとミークを追い抜いて、階段を下り始める高橋さん。
その言葉通りすくんでいた足が少しはマシになった……。
だが恐怖心が芽生えたのか、その後も俺たちの動きは鈍いままで、まるで泥の中を必死にもがくようにして、ようやく4階層に辿り着いた。
「――はぁはぁはぁ……。別に疲れてるわけじゃないのに、なんでこんな……。あり得ないわ」
「気疲れっていくとこまでいくとそうなるんだよ。ほとんどの人間、生き物がそこまで追い込まれることはないし、それを経験することはないけど、探索者って仕事をしているとそこそこある経験だね。でもよかったよ、ここに来るまでにどうやら全員『死線慣れ』を取得できたみたいで。それじゃあ君たちはまた必死に、今度はちゃんと走って5階層まで逃げるんだよ。じゃないと――」
「上級魔法……『影人形』。中級魔法『炎渦【極】』」
「フェーズ6解放……。あ゛あああああああああああああああああああああああああ!!!」
洞窟状だけど天井が異常に高く、薄暗い4階層。
そんな中一際明るく灯る火の柱数本がぐるぐると回転しながら天井を焦がし始めたのだが……人のものとは思えないような絶叫によって途端にそれはかき消させれた。
鼓膜がビリビリと振動すると同時に熱さからか、それとも恐怖心か緊張感か汗がぽとりと落ちる。
それと同時に、視線を合わせていた荒井さんと男は互いに一歩踏み込んだ。
たった一歩。
それだけのはずなのに、その間合いは簡単に埋まり荒井さんの剣は男の首を掠めた。
そしてそれが効果的に働かなかったためか、男は瞬きさえせずに荒井さんの腹まで伸ばしたその手で魔法陣を展開。
激しい攻撃魔法出てくるわけではないが、荒井さんはしまったという表情を見せ、男はうすら笑った。
「――『マジックライトシールド【極】』!」
「ちっ……。また面倒なのが邪魔して……。いいよ、上等だ」
「遅いすぎだ」
「助けてもらっておいてその言い草はないでしょ」
「途中だったとはいえ、魔法の効果はもう受けちまってるんだよ。だから私をあまり戦力に数えない方がいいかも知れないぞ」
「それは今の状態なら、ということでしょう? さっさとフェーズを解放してそんなの取っ払ってください」
「勿論そうしたいところだが……時間がかかるぞ」
「時間を稼ぐだけなら簡単な仕事ですよ――」
「舐めるなよ。深層攻略を止めて呑気に緩い新人育成ばかりしている奴が、俺を止めるなんて不可能なんだよ。今から発動する魔法はそのちんけな防御魔法も無効化できるほど強力な魔法。まだまだ完成じゃあないが、それでもその身体を飲み込んでやるには十分。さぁ余裕ぶってないで謝るなり、逃げるなりした方がいいんじゃないか?」
いつの間にか俺たちの元を離れていた高橋さんは、新たに魔法を発動。
荒井さんを助けることに成功した高橋さんは、苛立つ男を相手に未だ余裕な表情をで見せてはいるけど……。
「流石にあれはまずいんじゃないのかしら?」
「わ、私たちは早く5階層に向かいましょう!」
高橋さんとは反対に焦り散らかすミークと朝比奈さん。
それもそのはず、あの男の背後に現れた『禍々しい球体』。
そのレベルは300を越えていたのだった。
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