最速レベルアップはダンジョン飯バフで!~ハズレスキル《料理強化》が実は経験値取得量増加のバフが可能な最強スキルでした!~

ある中管理職

文字の大きさ
上 下
31 / 53

31話 吹っ切れた

しおりを挟む
「は、はいどうぞ」
「ありがとうございます。じゃあ早速……」

「――わぎゃあぁぁぁあぁぁああっ!!」

「ひっ!」
「凄いですよ、この『朝比奈さん』の作った剣!まるで豆腐を斬ったみたいな感触でした!」

 朝比奈さんから剣を受けとると、俺はコボルトの腕を斬り落とし、それを朝比奈さんに見せつけた。
 いきなりのことで驚いたのか、情けない声をあげる朝比奈さんだったが、俺はそんなことは無視して次の獲物を狙う。

「わぉ?」
「よし、もう1匹!」
「あ、あの! そんな無闇に殺さなくても……ちょっと可哀想じゃないですか……」
「可哀想ですか……。でもこいつらをこうして――」

「わぎゃあぁぁぁあぁっ!!」

「殺してるのは朝比奈さんの作った剣です。つまり朝比奈さんは間接的にもうモンスターを殺してるんですよ」
「ちょっと、陽一そんな言い方って――」
「だからもうどれだけ正義感を持っていようとも、朝比奈さんは俺たちと同じってことで……厳しい言い方ですけど躊躇うだけ無駄。どれだけいい面していても、朝比奈さんがモンスターを殺したという事実は変えられません」
「……」
「今は罪悪感が大きいと思います。でもダンジョンではそんな情けは無用。弱ければ殺されるだけ。そして今回の結果は朝比奈さんのスキルが、朝比奈さん自体が優れていたという証明となりました。誇って下さい。朝比奈さんはもう立派な探索者です」

 初めてモンスターを殺すという行為を肩代わり。

 無理矢理ではあるけど、これである程度吹っ切れて、都合よく自信も持ってくれるといいんだけど。

「……。私は立派な探索者なんかじゃないです」
「そんなことはないですよ、だってそれはこの剣が証明――」

 剣を握っていた手を緩めると、唐突に朝比奈さんは俺から剣を奪い取った。

「ちょっとどこにいくの!ってあれは……」

 そのまま駆けていった朝比奈さんは、いつの間にか現れていたコボルトの群れの中に突進。

 レベルが上がったとはいえあの反応……まだモンスターを殺すことは不可能なはず。

 このままだと……。

「ミーク! 一気に殺(や)るぞ!」
「ええ! たまには格下を思い切りなぶってあげるのも楽し――」

 俺が朝比奈さんの助けをしようとミークに声を掛けたその時、コボルトの群れで絶叫が木霊し、俺たちにも見えるくらい高く血飛沫が上がった。

「あははははっ! やるじゃないあのこ!」
「嬉しい誤算ではあるけど……。そんなに手応えは感じなかったんだけどな」
「なんでもいいじゃない! 仲間が強くなったんならそれで! それじゃあ私も続けて――」

「私はこんなことまでしてもらわないと、こうやってモンスターを殺せない! その覚悟を決めれない! 私はどうしようもない探索者です! だけど……こんな私でも本当にこうしていれば荒井さんに……みんなに!誉めて認められて……。少しでも憧れに近づけるのなら……。この機会を生かして、偽善者をやめます!」

 俺の少し過激な気遣いは思っていた捉え方をされはしなかったようだけど、朝比奈さんを前向きに変える鍵にはなってくれたみたいだ。

 今の朝比奈さんはどこか逞しくなったようにも見え――

「だから口調も本当の私で! 戦いの場では荒井さんに憧れて、覚えた口調で!……。おらおらおらおらっ! コボルトの雑魚ども!! 小娘1人にビビってんのか! ああっ! ボサッとしてねえでかかっこいよ! その首かっ捌いてやるからよおっ!」

 逞しいどころじゃない。
 吹っ切れて欲しいとは思ったけど……そこまでヤンキー調になっては欲しくなかった、かな。

 なんかもう凄い話掛けにくくなっちゃったじゃん!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

ダンジョンブレイクお爺ちゃんズ★

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
人類がリアルから撤退して40年。 リアルを生きてきた第一世代は定年を迎えてVR世代との共存の道を歩んでいた。 笹井裕次郎(62)も、退職を皮切りに末娘の世話になりながら暮らすお爺ちゃん。 そんな裕次郎が、腐れ縁の寺井欽治(64)と共に向かったパターゴルフ場で、奇妙な縦穴──ダンジョンを発見する。 ダンジョンクリアと同時に世界に響き渡る天からの声。 そこで世界はダンジョンに適応するための肉体を与えられたことを知るのだった。 今までVR世界にこもっていた第二世代以降の若者達は、リアルに資源開拓に、新たに舵を取るのであった。 そんな若者の見えないところで暗躍する第一世代の姿があった。 【破壊? 開拓? 未知との遭遇。従えるは神獣、そして得物は鈍色に輝くゴルフクラブ!? お騒がせお爺ちゃん笹井裕次郎の冒険譚第二部、開幕!】

Red Assassin(完結)

まさきち
ファンタジー
自分の目的の為、アサシンとなった主人公。 活動を進めていく中で、少しずつ真実に近付いていく。 村に伝わる秘密の力を使い時を遡り、最後に辿り着く答えとは... ごく普通の剣と魔法の物語。 平日:毎日18:30公開。 日曜日:10:30、18:30の1日2話公開。 ※12/27の日曜日のみ18:30の1話だけ公開です。 年末年始 12/30~1/3:10:30、18:30の1日2話公開。 ※2/11 18:30完結しました。

スナイパー令嬢戦記〜お母様からもらった"ボルトアクションライフル"が普通のマスケットの倍以上の射程があるんですけど〜

シャチ
ファンタジー
タリム復興期を読んでいただくと、なんでミリアのお母さんがぶっ飛んでいるのかがわかります。 アルミナ王国とディクトシス帝国の間では、たびたび戦争が起こる。 前回の戦争ではオリーブオイルの栽培地を欲した帝国がアルミナ王国へと戦争を仕掛けた。 一時はアルミナ王国の一部地域を掌握した帝国であったが、王国側のなりふり構わぬ反撃により戦線は膠着し、一部国境線未確定地域を残して停戦した。 そして20年あまりの時が過ぎた今、皇帝マーダ・マトモアの崩御による帝国の皇位継承権争いから、手柄を欲した時の第二皇子イビリ・ターオス・ディクトシスは軍勢を率いてアルミナ王国への宣戦布告を行った。 砂糖戦争と後に呼ばれるこの戦争において、両国に恐怖を植え付けた一人の令嬢がいる。 彼女の名はミリア・タリム 子爵令嬢である彼女に戦後ついた異名は「狙撃令嬢」 542人の帝国将兵を死傷させた狙撃の天才 そして戦中は、帝国からは死神と恐れられた存在。 このお話は、ミリア・タリムとそのお付きのメイド、ルーナの戦いの記録である。 他サイトに掲載したものと同じ内容となります。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

最強のコミュ障探索者、Sランクモンスターから美少女配信者を助けてバズりたおす~でも人前で喋るとか無理なのでコラボ配信は断固お断りします!~

尾藤みそぎ
ファンタジー
陰キャのコミュ障女子高生、灰戸亜紀は人見知りが過ぎるあまりソロでのダンジョン探索をライフワークにしている変わり者。そんな彼女は、ダンジョンの出現に呼応して「プライムアビリティ」に覚醒した希少な特級探索者の1人でもあった。 ある日、亜紀はダンジョンの中層に突如現れたSランクモンスターのサラマンドラに襲われている探索者と遭遇する。 亜紀は人助けと思って、サラマンドラを一撃で撃破し探索者を救出。 ところが、襲われていたのは探索者兼インフルエンサーとして知られる水無瀬しずくで。しかも、救出の様子はすべて生配信されてしまっていた!? そして配信された動画がバズりまくる中、偶然にも同じ学校の生徒だった水無瀬しずくがお礼に現れたことで、亜紀は瞬く間に身バレしてしまう。 さらには、ダンジョン管理局に目をつけられて依頼が舞い込んだり、水無瀬しずくからコラボ配信を持ちかけられたり。 コミュ障を極めてひっそりと生活していた亜紀の日常はガラリと様相を変えて行く! はたして表舞台に立たされてしまった亜紀は安らぎのぼっちライフを守り抜くことができるのか!?

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

寝て起きたら世界がおかしくなっていた

兎屋亀吉
ファンタジー
引きこもり気味で不健康な中年システムエンジニアの山田善次郎38歳独身はある日、寝て起きたら半年経っているという意味不明な状況に直面する。乙姫とヤった記憶も無ければ玉手箱も開けてもいないのに。すぐさまネットで情報収集を始める善次郎。するととんでもないことがわかった。なんと世界中にダンジョンが出現し、モンスターが溢れ出したというのだ。そして人類にはスキルという力が備わったと。変わってしまった世界で、強スキルを手に入れたおっさんが生きていく話。※この作品はカクヨムにも投稿しています。

処理中です...