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23話 タコ
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真空波と怒号で遠距離からダメージを与えようと試したり、ミークの赤い衝動を軸に攻撃を仕掛けようと、昨日と同じ作戦で俺が荒井さんの動きを止めにかかったり、ミークに関してはへばってる探索者を盾に使ってみたりもしていたが、どれもことごとく失敗。
その動きを目で追えることができはするけれど、捉える術も追い付くこともできないからだ。
破れかぶれのカウンターも荒井さんの強烈なジャブを喰らった後だと情けない威力、速さでしかない。
攻撃を避ける技術、それに敏捷性が俺たちには圧倒的に欠けている。
「どうしたどうした?もしかしてそれで終わり?そんなんじゃ報酬はまだまだ先みたいだね」
「もっと速く……。もっと……。くあああぁぁあぁあ!」
「攻撃が雑。受け流すのも避けるのも簡単簡単。でもいいね。そうやって何度も何度も、何かを意識して行動することがダンジョンにおいては重要なんだ。ほら、ご主人がこんなに頑張ってるんだ、お前もかかってこいよ」
「待ってなさい!今からその腹に特別なのぶちこんであげるから! ……集中、集中」
「すこぶる、いい傾向。となれば次はその意識を持ったままモンスターを倒して倒してレベルアップだな。ちなみにバテバテの瀕死に近い状態の方が『得られる』可能性は高まるから……頑張ってるところ悪いけど、もうちょっと真剣にいくぞ」
受け流されていた攻撃を簡単に掴まれ、そのまま地面に叩きつけられた挙げ句、荒井さんの踵が俺の鳩尾に落ちた。
痛みと気持ち悪さが一気に襲い、起き上がることも難しい。
これ、もう今日は駄目かも――
「きゃあぁあっ!」
「げふっ!」
そんなことを考えていると、俺の真上にミークが。
ミークも相当なダメージを受けているのか、ユニークスキルで痛みは直ぐに消えるはずなのに、なかなか俺の上から降りてくれない。
口に出すのは怖いけど、胸以外はかなり筋肉質で中々に重い。
「えっと、あっちの方にいるな。さ、まだまだ頑張りな2人と、も!」
情けない姿の俺たちの尻を荒井さんは思い切り蹴飛ばして、ぶっ飛ばした。
たかだか人間の蹴りなのに、その飛距離は交通事故でもそこまでは飛ばないだろという飛距離。
もちろんそんな一撃をもらった俺の尻はグロッキー。
血は出てないだろうけど、ずっと火で燃やされてるみたいに熱い。
「ぐ、おおぉ……」
「モ、ンスター……」
「きっもいわね。こいつら」
「ほらほら早く戦闘態勢とらないと、すぐに捕まるぞ!」
うねうねとその脚を俺たちのもとに伸ばすのは、『グラデビーパ』。
聞き覚えがほとんどなくてピンとこない人に説明をするならば……陸で活動するやたらとデカイ『タコ』。
ただその足の本数は20本以上で、再生能力もある。
攻撃力が低くて、あまり危険視されないモンスターらしいが、その足にある吸盤と滑りがただならぬ嫌悪感を与えてくるとか。
「ぐおっ!」
「くっ!」
伸ばされた足を避けられないと判断して、俺はガードを固めた。
しかし、それを察してかグラデビーパは、咄嗟に軌道を変えて上からそれを叩きつけようとする。
その事に気付いてなんとか身体を地面に転がして避けることはできたが……。
こいつ見た目に似合わず頭は回るらしい。
しかも奥に見える他の足が既に俺たちに襲い掛かろうと伸びて……。
「おい! そんな大きく避けてたらいつかは捕まるぞ! 私との戦いで培ったものを試せ!相手の攻撃を受け流しながら、その足で急ぎ距離を詰めろ」
次々に襲い掛かる足。
それを荒井さんのアドバイス通り受け流そうとすると……。
「くっ! まずい! これ……」
いつの間にかミークがその足に捕らえられ、逃げ出せないように何層にも足を重ねられていた。
その動きを目で追えることができはするけれど、捉える術も追い付くこともできないからだ。
破れかぶれのカウンターも荒井さんの強烈なジャブを喰らった後だと情けない威力、速さでしかない。
攻撃を避ける技術、それに敏捷性が俺たちには圧倒的に欠けている。
「どうしたどうした?もしかしてそれで終わり?そんなんじゃ報酬はまだまだ先みたいだね」
「もっと速く……。もっと……。くあああぁぁあぁあ!」
「攻撃が雑。受け流すのも避けるのも簡単簡単。でもいいね。そうやって何度も何度も、何かを意識して行動することがダンジョンにおいては重要なんだ。ほら、ご主人がこんなに頑張ってるんだ、お前もかかってこいよ」
「待ってなさい!今からその腹に特別なのぶちこんであげるから! ……集中、集中」
「すこぶる、いい傾向。となれば次はその意識を持ったままモンスターを倒して倒してレベルアップだな。ちなみにバテバテの瀕死に近い状態の方が『得られる』可能性は高まるから……頑張ってるところ悪いけど、もうちょっと真剣にいくぞ」
受け流されていた攻撃を簡単に掴まれ、そのまま地面に叩きつけられた挙げ句、荒井さんの踵が俺の鳩尾に落ちた。
痛みと気持ち悪さが一気に襲い、起き上がることも難しい。
これ、もう今日は駄目かも――
「きゃあぁあっ!」
「げふっ!」
そんなことを考えていると、俺の真上にミークが。
ミークも相当なダメージを受けているのか、ユニークスキルで痛みは直ぐに消えるはずなのに、なかなか俺の上から降りてくれない。
口に出すのは怖いけど、胸以外はかなり筋肉質で中々に重い。
「えっと、あっちの方にいるな。さ、まだまだ頑張りな2人と、も!」
情けない姿の俺たちの尻を荒井さんは思い切り蹴飛ばして、ぶっ飛ばした。
たかだか人間の蹴りなのに、その飛距離は交通事故でもそこまでは飛ばないだろという飛距離。
もちろんそんな一撃をもらった俺の尻はグロッキー。
血は出てないだろうけど、ずっと火で燃やされてるみたいに熱い。
「ぐ、おおぉ……」
「モ、ンスター……」
「きっもいわね。こいつら」
「ほらほら早く戦闘態勢とらないと、すぐに捕まるぞ!」
うねうねとその脚を俺たちのもとに伸ばすのは、『グラデビーパ』。
聞き覚えがほとんどなくてピンとこない人に説明をするならば……陸で活動するやたらとデカイ『タコ』。
ただその足の本数は20本以上で、再生能力もある。
攻撃力が低くて、あまり危険視されないモンスターらしいが、その足にある吸盤と滑りがただならぬ嫌悪感を与えてくるとか。
「ぐおっ!」
「くっ!」
伸ばされた足を避けられないと判断して、俺はガードを固めた。
しかし、それを察してかグラデビーパは、咄嗟に軌道を変えて上からそれを叩きつけようとする。
その事に気付いてなんとか身体を地面に転がして避けることはできたが……。
こいつ見た目に似合わず頭は回るらしい。
しかも奥に見える他の足が既に俺たちに襲い掛かろうと伸びて……。
「おい! そんな大きく避けてたらいつかは捕まるぞ! 私との戦いで培ったものを試せ!相手の攻撃を受け流しながら、その足で急ぎ距離を詰めろ」
次々に襲い掛かる足。
それを荒井さんのアドバイス通り受け流そうとすると……。
「くっ! まずい! これ……」
いつの間にかミークがその足に捕らえられ、逃げ出せないように何層にも足を重ねられていた。
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