上 下
21 / 53

21話 地獄の特訓風景

しおりを挟む
「――なんとかここまで来れた……。はぁ。いくら何でもあれはやりすぎだったよな」
「だ、だからこうして荷物も持ってあげてるしずっと謝ってるでしょ!それに寝てる間もスキルで回復させてあげてたんだから!」
「そういえばそのスキルってどんな感じなんだ?回復スキルはこれから重宝することになるだろうから、ちょっと見ておきた――」
「駄目。絶対駄目」
「……。まぁ今日からは2階層侵入で昨日より高価な素材が集められるだろうから、ポーションをストックさせておけるようにもなりそうだけど……」

 いつの間にか次の日になってしまっていたことに気づいた俺はミークを連れてすぐにダンジョンへ。

 時刻はもう正午を回って、腹具合もそろそろといったところ。

 スライムやアルミラージを倒して、料理でバフを掛けつつ特訓に挑もうとしているところなのだが、昨日のこともあってミークはずっと不機嫌。

 全然俺と目を会 合わせようとしてくれない。

 でもまさかどういったスキルか見せてもくれないなんて……俺、嫌われたか?

 なんかよく分からない視線はここに来るまでにずっと感じてるってのに……。
 危険は感じないけど、この視線のせいで俺が覗きをしていたっていう勘違いを未だに葵から受けている。

「そうよ。ポーションのストックがあれば私がスキルを発動させる必要なんてないんだから。あ、2階層への階段ね。さっさと降りてガンガン素材を集めて……あいつからモンスターの素材をふんだくってやるわ」
「無理矢理はよくないから、あくまで報酬の交渉だけどな。というか俺たちのレベルが上がったとはいえ、まだまだ実力差はあるだろうから無理矢理は不可能なんだけど……」
「そうかしら? 結構いい線いくと思うわ、私。っていうのもあのスキルが発動されたらちょっとどうしようもな――」
「この雰囲気……。使ってるな」
「ええ。でも昨日みたいに吐き気はないわ。行きましょう」

 階段の先から感じるただならぬ殺気。
 それは昨日俺の威圧を完全に塗り替えた時に感じたそれ、いやそれ以上かもしれない。

 勝手に重くなっていく脚を俺もミークもゆっくり、だけど止めることなく進めていく。

 そして……。

「う、ぐ……。助け……」
「もう、無理……」
「全く情けないな!お前らは『つい2時間前』に来たばかりだろ? それに『2段階目』は『1段階目』とあんまり変わらないんだ。それでなんで急に動きが鈍くなる。ほら、まだまだレベルが足りないって思うだろ? なら、この殺気で動きが止まってるモンスターを倒せ。倒してレベルを上げてまた私に挑め。それを繰り返して繰り返して繰り返して……私にこの手を使わせたら3階層に行かせてる」

 2階層に侵入すると、早速荒井さんの声が鳴り響き……同期の探索者たちが地面に倒れもがいている姿が目に映った。

「地獄みたいなことしてるわね……」
「特訓として効果は高いだろうけど……。モンスターを倒す時間が休憩になるインターバル特訓とは想像してなかったな……」

 凄惨な現場に出くわし、一気にテンションの下がる俺とミーク。

 1度体制を整えたいという考えが重なって一緒に来た道を戻ろうとした、その時……。

「おおっ!やっときたかお前たち!あれだけこいって言っておいたのにすっぽかされたらどうしようかと思ったぞ!まったく何時間も待ってたからイライラも積もって積もって……その分他の新人をたっぷり可愛がってたところだったんだ」
「へ、へぇ……。そうだったんですか」
「今の一連の流れは見てただろ?お前たちもこれに『似た』繰り返しで強くなってもらうから覚悟しておけ」
「その、条件は倒れてる人たちと同じで手を使わせたら――」
「そんなわけないだろ!お前たちは私に半分の力、5段階状態の私に確かなダメージを与えることを条件とする!かなり長い特訓期間になるだろうが……光栄だろ?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

ダンジョンブレイクお爺ちゃんズ★

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
人類がリアルから撤退して40年。 リアルを生きてきた第一世代は定年を迎えてVR世代との共存の道を歩んでいた。 笹井裕次郎(62)も、退職を皮切りに末娘の世話になりながら暮らすお爺ちゃん。 そんな裕次郎が、腐れ縁の寺井欽治(64)と共に向かったパターゴルフ場で、奇妙な縦穴──ダンジョンを発見する。 ダンジョンクリアと同時に世界に響き渡る天からの声。 そこで世界はダンジョンに適応するための肉体を与えられたことを知るのだった。 今までVR世界にこもっていた第二世代以降の若者達は、リアルに資源開拓に、新たに舵を取るのであった。 そんな若者の見えないところで暗躍する第一世代の姿があった。 【破壊? 開拓? 未知との遭遇。従えるは神獣、そして得物は鈍色に輝くゴルフクラブ!? お騒がせお爺ちゃん笹井裕次郎の冒険譚第二部、開幕!】

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...