上 下
6 / 53

6話 階層主の経験値

しおりを挟む
「防御力無視の一撃。ただモンスターは表示がないだけで、あくまでHP制。素の私だったら弱ってる状態でもあんたを絶命させるのは難しい。だけど解放された私のパッシブスキル『赤の衝動』はその赤い肌、血を見ることで攻撃力を高めてくれるの。つまり、私からするとあんたはびっくりするくらい相性がいいモンスターだったってわけ」
「ぶ、も……」

 ミークがその角を引き抜くと、ミノタウロスは血を噴き出しながらついに地面に落ちた。

 召喚された時の口調から強者感を感じ取れた割に、一方的にやられ過ぎだとは思っていたけど、召喚されたモンスターや亜人は召喚師のレベルに依存するんだな。

 召喚師という職業を与えられた探索者はまだ数が少なくて、その情報はなかなか共有できてない。

 探索者試験に受かった後、ダンジョンに侵入するまで嫌になるほどダンジョンについての情報を頭に詰め込まれたけど、まだまだ俺も職業やスキルについては知らないことが多い。

 料理人についてももっと、先の何かがある……といいな。

『レベルが【9】に上がりました。ノーマルスキル【衝撃掌】を取得しました。初侵入から1階層主討伐までが24時間未満でした。条件を達成しました。ノーマルスキル【レベル鑑定眼】を先行して取得しました。変更後のステータス画面を表示しますか?』
「はい」
――――――――――
名前:栗原陽一
レベル:9
職業:料理人
攻撃力:76(96)
魔法攻撃力:0
防御力:120(220)
魔法防御力:120(220)
魔力量:0
ユニークスキル:料理強化(料理の腕前が上がり、通常毒によって食べられない素材も食用に変えられ、アイテムポケットにしまうことのできる特殊な料理を生み出せる)
ノーマルスキル:衝撃掌(内部ダメージ発生)、レベル鑑定眼(モンスターのレベルが視認できる)
パッシブスキル:香しい誘惑(モンスターを引き寄せやすい体質となる)
魔法:不可
ステータスポイント:8
【バフ効果】
経験値取得量増加(永続)2倍
経験値取得量増加(永続)3倍
攻撃力強化極小(効果時間ランダム)
防御力強化小(効果時間ランダム)
【ステータスポイント割り振り状況】
なし
【テイムモンスター】
なし
【アイテムポケット】
なし
【次回レベルアップまでに必要な経験値】
443
【累計経験値】
1858
――――――――――

やっとノーマルスキル取得できたけど……。
 あんま強そうじゃないなあ。
 確かに料理人が覚える戦闘スキルって素手が基本になる気はするけど。

 剣士とかなら武器に依存したスキルがあって派手な攻撃がスキルを取得できるらしいのに、料理人だと武器依存って……包丁を使った攻撃スキルでもあるのかな?

「ま、いろいろ思うところはあるけど、もうレベル9か。流石階層主、経験値が多いな。ラストは俺が決めたわけじゃないけど、ある程度ダメージを与えるとフルで経験値がもらえるのは良心的なシステムだよ」
「ねえ」
「よしまずは階層主討伐の証としてミノタウロスの角、それに心臓……は無理そうだから眼球ももらっておくか。後は成果として、俺の生活費として皮も剥いでっと……。これ先にやっておかないと、料理スキルで勝手に料理にされかねないからな」
「ねえってば」
「あ、そういえば初めての階層主討伐って祝い金がもらえるんだよな。今月の収集物売却ノルマ額ってかなり低めに設定されてるし……怪我のことも考えて1日休んでもいいかも。いやぁ、普通の会社員と違ってノルマさえ達成できればいくらでも休めるってのも探索者の利点――」
「だから無視しないでくれる!」

ミノタウロスから素材の剥ぎ取りをしていると、ミークがとうとう怒鳴るように話しかけてきた。

正直なところ召喚士っていう制御装置がなくなってしまった亜人と関わるのは怖い。
 だからそれとなく去ってくれればって思ったんだけど……。

「あの、ありがとうございました。最後の一撃助かりました。それじゃあ俺はこの死体の処理がありますので……」
「亜人にお礼、ね……。無視していたのはどうかなって思ったけど、やっぱり変わってるわね、あなた。人間にしては気に入ったわ。それで……助けてくれてありがと――」

 ぎゅぅぅぅうううぅぅ。

 強気な態度から一転恥ずかしそうにお礼を言ってくれた瞬間、それを遮るようにミークの腹から音が鳴った。
 
 俺はまだそんな気分じゃないけど……。
レベル10になったときまたノーマルスキルを覚えられるかどうか気になるから……。

「これは、えっと、丁度召喚されたのが昼食前で――」
「階層主を倒したお祝いってことで、ちょっとした打ち上げでもしましょうか。『料理強化』発動」
『食材ランクC+、ミノタウロスを確認。要望を汲取り、2人前の料理を作るために素材を切り出せるか確認。……。問題なし。ミノタウロスに触れてください』
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

ダンジョンブレイクお爺ちゃんズ★

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
人類がリアルから撤退して40年。 リアルを生きてきた第一世代は定年を迎えてVR世代との共存の道を歩んでいた。 笹井裕次郎(62)も、退職を皮切りに末娘の世話になりながら暮らすお爺ちゃん。 そんな裕次郎が、腐れ縁の寺井欽治(64)と共に向かったパターゴルフ場で、奇妙な縦穴──ダンジョンを発見する。 ダンジョンクリアと同時に世界に響き渡る天からの声。 そこで世界はダンジョンに適応するための肉体を与えられたことを知るのだった。 今までVR世界にこもっていた第二世代以降の若者達は、リアルに資源開拓に、新たに舵を取るのであった。 そんな若者の見えないところで暗躍する第一世代の姿があった。 【破壊? 開拓? 未知との遭遇。従えるは神獣、そして得物は鈍色に輝くゴルフクラブ!? お騒がせお爺ちゃん笹井裕次郎の冒険譚第二部、開幕!】

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜

黒城白爵
ファンタジー
 とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。  死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。  自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。  黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。  使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。 ※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...