最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職

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第71話 最終階層

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「テイム済みってわけじゃないけど各階のモンスターの数はこれで増やせたよね? あ、やっぱり出来る。減らすのは……1年経過後かぁ。あれ? パスワードとか欲しかったんだっけ」

「それ邪魔させてもらうぞ」

 水晶を触りながら首を傾げる『橘フーズ』の副社長。 俺は空気を読まずにそれに話しかけた。


「……必死だなあ。あんな店の為なんかで。もっと利口になろうよおじさん。こんな事までして。周りを巻き込んで。無理して、大声出して、がむしゃらになって、そんなのは学生のうちに卒業しないと」

「あいにくそういう学生生活を送ってこれなかったからな。特に大学生活は」

「もしかして陰キャってやつ? 別に仕事をしてくれて強いならそれでも構わないっていうか、むしろそっちの方が都合がいいんだけど」

「残念だけど、もうそういうのは止めた。そんな俺じゃあ余計にあの人を心配させるからな。俺が馬鹿にされて落ち込んでる時、就活で絶望している時、あの人はいつも過保護で、そんで自分の方が泣きそうな顔して。だから元気な自分を取り繕って。いつの間にかそれが俺の長所にもなってた気がする。まぁお前にとってはそれが短所に見えるって事だろうけど」

「じゃあおじさんの言うあの人っていうのは俺の天敵で、邪魔な奴って事だね。なるほど、じゃあまずはそっちを何とかするところからか」

「……俺はさぁ。おっさんだから話が長いし、太りやすいし、おしぼりで顔も拭く、そんでもって……怒りっぽくて、融通が効かないんだよな。だから店、景さんに、俺の恩人に恩返しするっていう目標を達成する為にはなんでもするし、人生も費やすつもりだ。それなのに最近は迷惑掛けてばっかで……。俺は汚ねえ事ばっかするお前にも、情けねえ自分自身にも怒りが湧き上がって来てしょうがないんだよ!」

「熱いねえ。熱い熱い熱い。その熱にこっちを巻き込むのは止めてくれない? 仕事はもっと楽しく、肩の力を抜かないと。例えばこんな風にね」


 ――パチン。


 指を鳴らす音が中に鳴り響く。

 いつもの水晶が置いてあるこの階層は他のダンジョンの最終階層よりも広い。

 とはいっても道がいくつもある訳じゃない広間タイプ。

 良く言えば見渡しが良い。悪く言えば逃げ場がない。


「「「があああああああああああ!!!」」」


 そう、こんな場所で何十匹もドラゴンを出されたら普通溜まったもんじゃないって事。


「炎、雷、氷、水、風、色んな攻撃が飛んでくる状況でおじさんはどれくらい戦えるのか。パスワードを思い出しながら、見物させてもらうよ。あ、駄目そうなら攻撃は止めてあげるよ。勿論引き抜きの件を受けてくれるっていうのが条件だけどね」


 ――ぼおっ!

 ――ビカッ!

 ――パキンッ!

 ――ぴゅっ!

 ――びゅおっ!


 多方向からそれぞれの攻撃。

 目で追える。でも避けるだけで精一杯な手数。これじゃあ攻撃に移れない。


「でもそれは避けに徹した場合だけ。今日で、本当に今日で終わりにするんで……この無茶は許してください景さん」

「えっ!? なんで避けないの? ちょっ、お前ら殺すのだけは止め――」


 ――パン。


「まずは1匹」


 氷を扱うドラゴンがいるとどうしても一瞬動きを止められる。

 ダメージはないけど、氷の息で凍らせられると氷を壊すのに手間がかかる

 だからまずそれを殺した。

 多分他のドラゴンの攻撃を殺さない為なんだろう。脚と手だけを凍らせるなんていうこざかしい事をしたが……それが仇になったな。


「おじさん、何をしたの? あのドラゴンの鱗はそんなに簡単に貫けない。その辺の石ころは当然、相当お高い剣でも――」

「いや、ちょっと歯を割ったんだよ。自分で。ステータスが上がり過ぎたのか知らないけど、最近は歯ぎしりするとちょっと欠けちゃって……。本気でやったらやっぱり割れて……でもこれ銃弾以上の威力はあるぞ」


 ステータスが上がって強化された肉体。それは自分の歯にも影響は出ていて、しかもそれを思いっきり吐き出すだけで鉄砲みたいになる。

 流石に痛いけど……こんな身を削る戦法もこれが最後だ。


「歯? それだけで俺のドラゴンが? そんな馬鹿な事あるはずないじゃないか! おい! 氷で動きが封じられてる今がチャンスだ! ブレス攻撃の出来ないドラゴンも攻撃に加わって一気にたたみかけろ!」


 今度は直接噛み付こうとするドラゴンも何匹かいるか……これは好都合。


 ――パン!

 ――パン!


「頭突きの範囲内なんだよな。お前ら」

「簡単に2匹も……。くそくそくそくそっ! お前ら! 絶対にあいつを痛めつけろ!」

「自分の思った通りにいかないからって癇癪を起すお前の方が学生、っていうか子供だろ。上の階層みたいにドラゴンに全部任せた方が、厄介だったし、時間稼ぎにもなったぞ。」


 俺は氷による手の拘束を頭突きで無理やり解き、脚の氷も壊すと指示によって距離を縮めて襲ってきたドラゴン達を容赦なく殺していくのだった。
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