最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職

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第59話 ……私が言っても?

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 卵、グラニュー糖、薄力粉、ベーキングパウダー、牛乳。

 卵は卵白と卵黄で分け、卵白はグラニュー糖と混ぜ合わせてメレンゲを作る。

 他の材料を混ぜ合わせた生地とこれを合わせて混ぜ合わせると今度はホットプレートの上で蒸気焼き。

 じっくりと焼き上げフワフワなパンケーキが出来る。

 肉の処理が楽になったからとはいえ、これだけ手間が掛かるとお客さんに提供は難しいかもしれないな。

 もっと簡単なホットケーキミックスを使ったレシピの方がいいかもしれない。

 とはいえ……これはこれで旨そうだ。


「宮下君、アイスもあるからトッピングに使おう! 濃厚な牛乳の味が強い商品とテツカミバチの蜜は絶対相性いい」


 目を輝かせながらアイスを取り出す景さん。


 パンケーキが作ろうと話をした瞬間、景さんは目の色を変えて買い出しに、その間に俺はシャワーで汚れを落としてとってきた巣から蜜を搾取。


 創作料理の少ない焼肉屋といってもやっぱり料理屋。

 俺も景さんも、料理となればどうしても力が入ってしまう。

 まぁそれがどうしようもなく楽しいんだけど。


「――これ、見た目も満点ですね」

「うん。でも問題は味」


 通常フロアの1席につく俺景さん。

 テーブルの上には真っ白な皿に盛られた4つのパンケーキ。

 その上に粘りけの強いアイスとたっぷりの蜜ををかけ、ちょこんと彩りでミントを添える。


 こじゃれたパンケーキ屋にも負けないそれに俺と景さんはごくりと喉を鳴らすと、きっちり切り分けて自分の皿に。


 最初から分けて盛り付けても良かったけど、景さん的には1つの皿に大量にのせた方が映えるらしい。

 ここのところ景さん個人のSNSも数万人のフォロワーが出来たらしくて、俺じゃなくて景さんに声を掛ける人も多いくらいだ。


 俺の場合は礼儀知らずの冷やかしみたいな人も多いけど、景さんのところにはきちんとしてシャレオツなお姉さん方が多く集まるから正直羨ましい。


「――写真はもう大丈夫ですか?」

「うん」

「じゃあいただきます」

「いただきます」


 景さんが投稿を済ませたのを確認して、俺はパンケーキにナイフを入れて一口サイズにするとそれを口にした。


 ほんのり甘いフワフワな生地、見た目は大きいけど噛むとくしゃっと気持ち良い歯応えであっという間に喉を通りすぎていく。

 パサパサ感もないし軽くて食べやすい。

 ただ少し物足りなさがあるなと思う頃には濃厚なバニラアイスがそれを補ってくれる。

 テツカミバチの蜜は主張しすぎず、そのバニラのアクセントとなり、さっぱりとした味で清涼感をプラスする。

 これのお陰で後味にくどさも感じないし、組み合わせは最高だ。


 でもやっぱり手間が掛かるから店には出せそうもないなぁ。焼肉の後にしてこのデザートは最高なのに。


「美味しい。これ焼肉の後なら絶対頼む」

「ですね。でも提供はちょっと大変ですね」

「毎回これを作るのは確かにしんどいけど……数を制限して期間限定で提供するのはいいかもしれない。他の焼肉屋さんだとなんたらフェアとかあったりするから」

「なるほどそれなら提供出来るかもですね! 明日店長に相談してみましょう!」

「うん。……また宮下君の探索のお陰でメニュー増えちゃったね」

「もしかして俺店を発展させようとして負担掛けちゃってます?」

「それは、そんな事ない。むしろ嬉しい。でも、あんまり頑張り過ぎて怪我しないか不安。今日は一ノ瀬さん達が付き添いだったから安心だったけど」


 むしろその2人がいるお陰で大変だった気もしないでも今日はないけど……。


「あの宮下君、探索は程々にしてスタッフ、調理メインで私と一緒に店の運営に力を注いでくれないかな?」

「……俺、探索者なんでやっぱり外でモンスターを狩らないと――」

「本当はっ!本当はここに誘ったのも宮下君が痛い思いしなくていい様に……だったら、探索者諦めてただ一緒にお店で働いて欲しかったって、私が言っても?」

「……。それは――」


 ドンドンドンドン!


 景さんの思いがけない言葉に動揺していると、店を扉を誰かが叩いた。


 今日は定休日なのにそれも知らずに来ちゃったのかな?


「俺が出ます」

「……うん」


 席を立ってガラリと扉を開ける。

 するとそこには見覚えのあるあの顔が……。


 今はこの人に構ってやれる程テンション高くないんだけどなぁ。


「いやぁ外の窓からチラッと姿が見えてさ。休みなのに今日はいるんだねおじさん」

「今日はあんたに構ってやる程暇じゃないんだ。悪いけど別の日にしてくれるか?」

「えーっ! 折角会えたのにそりゃあないってぇ。差し入れのドラゴンの肉も食ったんだろ? 少しくらいいいじゃん」

「……はぁ、それはありがたく頂きましたけど――」

「宮下君、私は構わないから中に入ってもらって」

「でも――」

「有難うございます!いやぁ優しいお姉さんですね!そんじゃ遠慮なく座らせてもらってっと……。早速だけどおっさん、やっぱりうちに来ない?」
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