最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職

文字の大きさ
上 下
51 / 79

第51話 汚っっ!!

しおりを挟む


 ドラゴンの鋭い角は頬を掠り傷を作る。

 突進を受け止めた事で全身に衝撃が走り、指を鳴らした時と同じ音がそこら中から聞こえた。


 ドラゴンの顔面を受け止めた両手は掌の皮が剥けているのかひりつき、火照る様に熱い。


「おおっ! この攻撃素手で受け止めるなんておじさんのレベルはもしかして俺より――」

「……10ですけどなにか?」

「10? ……あははははははっ! どうなってんのそれ!?」


 男性は俺のレベルがツボに入ったのか馬鹿みたいに笑い転げる。


 今まで驚かれはしたけど……この人ツボ浅すぎんか?


「あはは、レベル10でもその強さ……なら本気出しても大丈夫そうだね。おいっ! そのおじさんに特大のやつ喰らわしてやって!」

「ぐあ……」

「――お前、この距離でマジかよ」


 男性に意識をとられていると、今度はドラゴンがその大きな口をパカッと開いた。


 すると俺の【ファイアボール】と同じ様に口の中で光が集まり次第に膨れてゆく。


「ドラゴンといえば炎の息っわけか……。でも、そう易々と喰らってやるわけにはいかないんだよっ!こちとら大事な大事な髪の毛を死なすわけにはいかないから、なっ!」


 俺は地面を思い切り足裏全体で蹴ると跳ね上がった膝をドラゴンの顎にぶつけた。


「痛っ!」

「ぐあっ……!」


 顎に当たった膝は鱗で皮が剥けて血が流れる。

 切り傷になったっていうのも痛みの原因だけど、それ以上にドラゴンの顎が異常に硬いのが効いた。


 痛みでいうと角に小指をぶつけたくらい……間違いなく激痛だ。


「――ぐごおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

「うわっ! あっち!」


 顎に膝をぶつけられてドラゴンはそのまま顔を天井に向かって跳ね上げられ、口から溜めていた火を解き放った。


 火は天井を焦がし、辺りに火の粉を撒き散らす。


 最悪な事にその火の粉が俺の頭に……燃え上がらなかったけどこれ絶対ハゲ出来ちゃったじゃん。


「こいつっ!」


 俺は火を吐き終わったドラゴンをこれでもかってくらい殴ってやった。


 鱗のせいで皮はずる剥け、祭りの大太鼓を叩き終わった後みたいになってしまった。

 しかし、俺以上にドラゴンはダメージを負い、牙は折れ翼はボロボロ、鱗も剥がれてその辺に飛び散っている。HPも残りは僅か。


 どうする? 殺してしまうか?

 テイムモンスターといってもモンスターはモンスター情けは掛けなくてもいい。


 ドラゴンの強さを思い知った今、どんなに時間が経とうとも新しくドラゴンを倒しにいく気は更々ない。

 だったらせめてここでこいつを倒して、生涯最初で最後のドラゴンの肉パーティーを開催しよ――


「本当に強いねおじさん。まさか『幼体のドラゴン』が手も足も出ないなんて」


 弱ったドラゴンを一思いに殺してしまおうと考えていると、いつの間にか背後から声が。


 この声はさっきの男性のもの。


 まさか知らない間に後ろをとられるなんて……この人どんだけ強いんだよ。


「くっ!」

「あっ! そんなに身構えなくていいよ。もうこいつは手に入れたから。テイムして……これで最下層の宝箱にコカトリスの発生装置も追加されたかな。……それでおじさんの話しに乗って上げるのは止めておくよ。協力関係なんて面倒だから。ただ……おじさんの事はまた今度スカウトに行かせてもらうからね」


 そう言うと男性は腰に下げていた剣を思い切り地面に刺した。


 そして切っ先から突風が巻き起こると、その周りの土が高く舞い、大きな穴が作られた。


 男性はそこに気絶したコカトリスを放り込み、アイテム欄から何かを取り出す。


『毒液危険:コカトリスに溶かされたくない人は近づかないでください』


 男性が取り出したのは太めの黒いマジックと白い看板。

 マジックで看板に書くその文字はやけに綺麗だ。


 ……にしてもなんか見たことのある気がする看板と字体だな。


「よし。そんでここに……おーいちょっとこっち来てくれ!」

「があ」


 男性が呼び掛けるとドラゴンは必死にその穴に近づく。


「俺が命令するまでこの穴の上でコカトリスを見張っててくれ。テイムはしたけどコカトリスは毒液を吐くからね。人で言うところの排泄物、つまりは尿や糞みたいなもの。万が一穴の外までそれを飛ばしてきたらお前が身をもって飛び散るのを防いでくれ」

「がぁ」

「あと、勝手に俺のモンスターを持ち去ろうとする人がいたら優しく追い払うように」

「がぁ」


 男性はそれを俺の顔を見ながら命令した。


 大分警戒されてるな。


「俺だってわざわざ怪我するって分かってて無茶はしな――」

「ん? おじさんどうしたのさ?」

「今毒液は尿とか糞って……」

「そうだよ。毒っていう前にあれメチャクチャばっちいから」

「う、う゛ぉ゛ええ゛ぇぇぇ!!」

「え? えっ? ええ? あのえっと、水いる?」

「いどぅうううううっ!!」


 俺は男性からペットボトルを受けとるとしばらく吐いては口をゆすぐ吐いては口をゆすぐを繰り返すのだった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始! 2024/2/21小説本編完結! 旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です ※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。 ※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。 生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。  伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。 勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。  代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。 リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。  ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。  タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。  タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。  そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。  なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。 レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。 いつか彼は血をも超えていくーー。  さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。  一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。 彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。 コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ! ・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持 ・12/28 ハイファンランキング 3位

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

処理中です...