49 / 79
第49話 リアル毒を食らわば皿まで。毒うまうま。
しおりを挟む「はぁはぁはぁ……なんかもう疲れた」
1階層の人だかり程ではないにしろそれ以降の階層も他とは比べ物にならない程探索者が多くて、しかも結構な数が俺に話し掛けてきて……間違いなく気疲れだ。
ただ、流石に10階層ともなる数は減ってるみたいだな。
【NO2】の1階層位の探索者の数だから、気持ちが落ち着く。
これならコカトリス探しが捗るかも。
「さぁて、コカトリスはどこにいるかなぁ……ってなんだこれ?」
早速10階層の探索を始めると、足にべちょっと何かが張り付く感覚が。
ガムでも踏んだのかと思って足を上げると、どろっと溶けたモンスターらしき物体が引っ付いてきた。
よーく見ると目のようなものとか、ベロみたいなものとか、尻尾みたいなもの、臓器みたいなもの、いろんな部位が殆ど姿を残さず地面にへばりついていた。
焼肉屋勤務の俺ですら嗚咽が出そうになるくらいグロい。
なんか紫色に色づいているのがもうヤバい。
「ぎゃああああああああああああああああああああっ!!!」
「染みない限り毒の効果はない! 直ぐに洗い流せっ!! その服もさっさと捨てろっ!」
フロア内に木霊す男の悲鳴。
俺はその声に体をピクリとさせると、視線を移した。
視線の先には必死にパートナーに水をかける男と紫色の粘液のようなものが付着した服を破り捨てる男の姿があった。
これはこの溶けたモンスターと同じ……。
なるほどねえこれがコカトリスの毒液かぁ、うーん……景さん、卵はちょっとまた今度って事に出来ないですかね?
「コカッ!!」
探索者2人が毒液に悪戦苦闘していると、岩陰から顔を出していた蛇のモンスターからとは思えない鶏の鳴き声が。
そういえば細江君がコカトリスの尻尾は蛇の顔をしてるって言ってたっけ。
じゃああの奥に本体がいるんだな。
流石に人の多いこの場所で【ファイアボール】を使うのは危険だし、ひっそり近づいて一気に殺すしかない。
リスク高いからあんまり近づきたくないっていうのは勿論あるけど、探索者達のあの慌てよう……誰かが助けてやらないとちょっとヤバいよな。
「――コカッ!」
俺がひっそりとコカトリスに近づくとコカトリスは唐突に鳴き声を漏らした。
一瞬ヒヤっとしたけど、コカトリスの顔は俺を向いていない。
意識はあくまで探索者2人のままみたいだ。
にしても、ヘビの顔の尻尾が無ければただのデカい鶏だな。
鳥、せせり、鶏むね肉、ささみ、もも肉……鳥刺しは調理も洗浄殺菌処理が面倒そうだから提供は難しいかな。
でも食いてぇ。
ワンチャン『佐藤ジャーキー』で洗浄殺菌処理とか出来ないかな。
それか、他の企業と協力して……ってやば涎出てきた。
まぁそれは置いといてまずはコカトリスを殺す事からだよな。
「バレないようにバレないように、抜き足差し足忍び足、抜き足差し足忍びあ――」
「おいっ! 見ろよ! あれ、焼肉森本の神だぞっ! 神が探索者2人を助けに向かってるんだ!」
え? お前なにしてくれてんの?
折角気付かれないようにここまで近づいたんだけど。
悪気はないんだろうけど……。
――ちっ。
いやぁどうしよ、自然と舌打ちしちゃった。
「コカァアアアアアッ!!」
あーもうやっぱりこっち向いちゃったじゃん……。
蛇の顔の尻尾も俺の方に向いてるし、毒液吐き出す満々でしょこいつ。
「今のうちだっ! お前ら早くっ!! 神が体を張ってくれている隙に上の階まで逃げろ!」
「「はいっ! ありがとうございます!」」
大声で俺の存在をばらしてくれた探索者が襲われていた探索者2人に声を掛けた。
なんかお前がお礼を言われてるみたいなのすっごい気になるんですけど。
「頑張れ神っ! そいつは蛇の頭が弱点! それを潰せば倒せるぞ!!」
「神頑張れーっ!!」
「毒液に気を付けろっ!!」
応援してくれるのもアドバイスしてくれるのは嬉しいんだけどさ、ゆっくり後退していくのはなんなの?
そんだけ応援してくれるんなら一緒に戦ってくれよ!
「コカトリスの尻尾の蛇の頭には可燃性の体液を貯めている小袋がある! 火の魔法は危ないぞ! ……特に俺達が!!」
空気読めないけど、すっげえアドバイスしてくれるからいい奴だと信じてたんだけどなあぁ……。
そうだよね、保身が一番――
――ビシュッ!!
周りの探索者達に気を取られている隙にコカトリスは尻尾の蛇の頭から勢いよく毒を吐き出した。
咄嗟だった事と意外なスピードで避けるのに失敗。
毒液は俺の顔にもろに掛かり口の中にまで入ってしまった。
ヤバい、俺もさっき見たモンスターみたいに溶かされ……って、ん? この毒液ってこんなに甘いの? 正直かなり美味いぞ。
もう手遅れだし、いっその事全部舐めとっちゃお。
はぁ、うんめえ。
えーっとステータスは……うん、だんだん減ってるな。
元のHPが多いって言ってもこれ回復間に合うか?
毒の効果がいつ表面に出てくるのかも怖……ってHPの減少終わったんだけど――
『猛毒を一度に大量摂取、猛毒状態で一定の時間が経過。スキル猛毒耐性が発現しました』
22
お気に入りに追加
1,288
あなたにおすすめの小説
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。
千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。
気付いたら、異世界に転生していた。
なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!?
物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です!
※この話は小説家になろう様へも掲載しています
えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始!
2024/2/21小説本編完結!
旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です
※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。
※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。
生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。
伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。
勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。
代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。
リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。
ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。
タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。
タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。
そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。
なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。
レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。
いつか彼は血をも超えていくーー。
さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。
一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。
彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。
コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ!
・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持
・12/28 ハイファンランキング 3位

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!
IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。
無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。
一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。
甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。
しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--
これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話
複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる