最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職

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第34話 ミディアムレアなハンバーグ

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「神、お疲れ様です」

「お疲れ様です、あれ? 今日は1日ダンジョン潜るって言ってませんでしたっけ?」


 本日の閉店時間。

 俺は店長に今日の事を話す前に小鳥遊君と細江君を問いただす為に休憩室で2人を待っていた。


 昼休憩にでも、と思ったけど気にし過ぎて業務に影響が出たら悪いと思ってこの時間になってしまった。


 今日も店は混雑していたみたいで2人の顔からは疲労が見える。


 そんな2人にこんな事を聞くのは気が引けるけど……。


「お疲れ、あのさちょっと2人に聞きたい事があるんだけど……。遠藤良平って知ってる?」

「「えっ!?」」


 2人は男の名前を聞くと、顔色を悪くした。


 これはどういう反応なんだろうか? まさか本当に……?


「神、もしかしてあいつに会ったんですか?」

「小鳥遊君達の上司なんだよね。ダンジョンモールでここ最近話し掛けてきてて、それで今日ちょっと気になる事を遠藤が言っててさ……2人に地下の養殖場の情報を流してもらってるって――」

「そんな事してないですよっ! 僕も細江も今はここで誠心誠意頑張ってるんですから! な、細江――」

「昨日、電話で色々聞かれ――」


 小鳥遊君は目の色を変えて無実を証明しようとする。

 だけどそれとは反対に細江君から出た言葉は情報を漏らしたという事を肯定するような……。


 するといつも温厚な小鳥遊君は細江君の胸元を掴み上げ、細江君の目をじっと見つめた。


「細江、お前あんな奴に加担したのか? お前、向こうにいた時だってあいつにちょっかい掛けられて困ってただろ?」

「加担したつもりはないです! ただ、『今の仕事はどうだ』とか、『肉はどうやって仕入れてるんだ』とか聞かれて……俺、適当にそれとなく答えて、養殖場の事なんて一切喋ってないけど、俺との会話であいつが何かを知るきっかけが出来てしまったのかもしれません」

「あんなでも頭は切れるからな。多分自分の中で生まれた可能性を使って神に吹っ掛けてきた……。細江、とにかくあいつとは縁を切れ。もうお前とあいつは上司と部下って関係じゃない。あんなのに怯えた生活は止めろ」


 小鳥遊君はそう言って細江君から手を離した。


 今のやり取りを見て、前の会社で細江君は相当遠藤にいびられていた、いや、虐められていた事が想像出来た。


 優秀な新人を目の敵にするのは糞上司の十八番って聞くからな。


「神、すみません」

「細江君に落ち度はないって。それより、図星を突かれてくそ真面目に答えてしまった俺に問題があった」


 その場は重い空気に包まれ、沈黙が生まれる。


 折角店が昇り調子だってのに。俺何やってんだよ。


「おーい。まかない出来たぞ! 小鳥遊、細江早く来……宮下帰ってたのか、って何やってんだ男共だけで」

「……店長」

「なんだなんだ情けない声だして。宮下、お前もう32歳だろ。もっとこうどしっと出来ないのか? とにかく話があるなら聞く。勿論飯を食いながらな。さ、早く来い肉は冷めると硬くなる」


 俺達はのっそりと立ち上がると店のフロアに移動するのだった。





「なるほどなぁ。脅されて、提携を強要されてる、か。まぁいいんじゃないかそのくらい。なぁ一ノ瀬ちゃん」

「利益は出そうですし、生産の目途が立たないって分かれば勝手に撤退するかと。向こうからの要望での提携なら、たとえ商品が売れなくてもその負債は『佐藤ジャーキー』が持つのが妥当ですし。契約の際にちゃんとその辺り言質をとれば問題ないかと思います。まぁその時は私も店長も同席するので問題ないですよ」

「でもあんな奴の思う通りに進めるのは悔しいというか、結局弱みを握られてる事には変わりないですし……」

「宮下、向こうさんがやるだけやって満足してくれりゃあそれでいいじゃないか。大人の関係は時にドライじゃないと」

「そうですよ、弱みも今回の件が終われば利用されるものじゃないはずですし、気にすることないですよ。これはただのビジネスチャンス。割り切っていきましょう」


 俺や小鳥遊君、細江君の反応とは打って変わって店長と一ノ瀬さんが割とやる気で……なんかこう、気が抜ける。


「そんな事より、今日はハンバーグですか! 景さんのまかない飯はもうまかないの域を出てますよ!」

「一ノ瀬ちゃん……あんまり褒められるのは、ちょっと照れる」


 俺達の前に置かれたのは半熟の目玉焼きが乗った大判のハンバーグと真っ白なライス。

 デミグラスソースの香りとライスの香りの所為か、さっきまでのシリアスな雰囲気が嘘のように俺、小鳥遊君、細江君の腹の音が店にこだました。


「はっはっはっはっはっはっ!! 働き盛りの男はとにかく食って汗かいてりゃいいんだよっ! 今日は全員ビール1杯だけ驕ってやるぞ!」

「んっく! ぷはぁゴチになります店長!」

「一ノ瀬ちゃん、もう飲んでる。ふふ……」


 豪快な店長と一ノ瀬さん、それを見て微笑む景さん。


 もしかして、俺達ただの杞憂民だったのかもしんない。


「神っ! このハンバーグめちゃくちゃうまいっすよ! 小鳥遊先輩も食ってみてくださいよ!」

「……。うまいっ! コボルトの肉だからこれぐらいにレアにしてもいいって事か! 弾力があってステーキみたいに肉々しいっ!」

「はは、小鳥遊君大袈裟――。うんまあぁっ!!! デミグラスと溢れる肉汁が口の中で混ざって、なんかもうこういう飲み物自販機で売ってくんないかなあ」

「ふふ、宮下君が1番大袈裟」
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