最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職

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第32話 マグマスライム焼肉プレート

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「いいか、コボルト【RR】以上は大事な肉だから無暗に殺すんじゃなくて生かして育てる必要がある。マグは装置から生み出されるゴブリンの何匹かの脚を溶かして、育成中のコボルト、ゴブリンに振り分ける。ゴブリンの素材は今のところどこにどの量を流巣のか明確じゃないから優先するのはコボルトの育だ。いいか、順調に成長している個体は絶対に殺すなよ」

「きゅうっ!」

「マグは確かに神の正式な眷属かもしれんないけど、ここでは俺が先輩だからな。もし、仕事を失敗して、予定通り肉や素材が提供出来ないなんて事になれば……。尻100叩きだっ!」

「きゅきゅっ!?」

「……スライム、馴染んでる」

「あれが噂の……」


 テーブルに顔を突っ伏しながらコボの後輩指導を眺めていると、景さんと一ノ瀬さんがこっちにやって来た。


 いつの間にかランチタイムが終わる、そんな長い時間休んでたのか。


 それでもまだ身体だるいな。

 【ファイアボール】の使い過ぎには気を付けないと。


「お疲れ様です。って一ノ瀬さん、噂のってなんですか?」

「『神が公共の場でスライムを抱えてるんだけど』っていう投稿画像がバズってたんですよ。生きてるモンスターを意図的にダンジョンから連れ出す、連れ出せた人は今までいなかったから結構な話題に。別に法的な縛りもないし、画像から悪意は感じ取れないって事から楽観的に見る人もいるんですけど、一部の層がちょっと……」

「やっぱり批判する人達はいますよね、そりゃあモンスターが街に居たら怖がるのも当然……頑張ってぬいぐるみで白を切っとけば良かった」


 幸運な事に炎上とまではいかなかったようだけど、店的にこれはまずい。

 営業に影響が出たら間違いなく店長にどやされる。


「きゅっ!」

「……可愛い」

「景さん……。そうなんですよ、マグちゃんは可愛いんですよ。テイム状態で俺の言う事は絶対聞いてくれるんですよ?」

「そうなんだ」

「テイムされたところだってカメラにしっかり映って――。あっ、そうだこれ返さないと」


 俺はずっとつけっぱなしだった頭の小型カメラを取り外し、景さんに手渡した。


 景さんは、カメラで撮った映像をチェックしながらほくほく顔だ。


「お疲れ様。うん。ここに来るまで大人しくしてる映像もテイム?されて名前を付けてる映像もあるから大丈夫だと思う。むしろ再生数を稼ぐネタに……ふふふ」


 出た動画に関してだけ貪欲な姿勢の景さん。


 不気味だけど、いつになく頼りになるな。

 今日会った探索者みたいなのが、これきっかけで何か吹っ掛けてくる可能性もあるかなって思ったからちょっと安心。


「そうだ、スライム、マグちゃんが意外な特技を持っていて、これ見てくださいよ一ノ瀬さん」

「これはゴブリンの目? 血痕も傷もなくて在庫より綺麗ですね。ちょっと手に取ってみてもいいですか?」

「どうぞ」

「はぁはぁ、これは……丁寧な処理がされてますね。変に人の手が加わって加工品っぽさが残る見た目とは違って、この生感が……。じゅるっ……あ、ごめんなさいちょっと涎が」

「それを抜き取ってくれたのはマグちゃんなんですよ。だからこれから素材の解体係は全部マグちゃんに任せようと思ってます。今まではコボルトの毛皮とか牙とゴブリンの目位しか素材としてうまく抜きとれなかったんですけど、マグちゃんがいればもっと使える、売れる素材をモンスター達からくり抜けるはずなので、これからは一ノ瀬さんとマグちゃんで連携を――」


 あれ? 一ノ瀬さんがいつの間にかいなくなってる。

 一体どこに――


「おおぉぉ偉いねえ、こんな事が出来るなんてねえ、よしよしよし。これからはコボルトとゴブリンの生殖器とか、歯、ゴブリンの全身を骨だけにするなんて事もお願いするかも。よろしくお願いね。……それはそれとして、あのね、ちょっとお願いなんだけど……。お姉にその身体、舐めさせてもらってもいいかなぁ、はぁはぁはぁ」


 一ノ瀬さん……。

 相手はスライムだけどやってる事は完全にセクハラですよ……。


「きゅっ!」

「え?」


 一ノ瀬さんの変態圧に耐え切れなくなったのか、マグちゃんは身体をいくつかに分裂させると、テーブルのコンロ、というより網の下に隠れてしまった。


 身体を小さく分裂させられるマグちゃんからしたらそこはちょうどいい隠れ家なのか。


 網の舌からちらっと眼が光るのが怖いような可愛いような。


「それも可愛い。……これ、もしかして。ちょっとマグちゃんそのままでお願い。宮下君、コボルトのお肉がアイテム欄にあったら出してもらいたいんだけど」


 その姿のマグちゃんをニコニコしていた景さんは何かを思いついたのか、俺にコボルトの肉を取り出す様にお願いしてきた。


 別にそれは全然構わないけど……マグちゃんに餌でもあげたいのかな?


「非常用なので少ないんですけど、えっとお皿も出して……これで大丈夫ですか?」

「うんありがとう。マグちゃん、もしかして今の温度ってちょっとだけ上げて……。こんな感じで板状になる事って出来る?」

「きゅっ!」


 マグちゃんにスマホの画面を見せて、温度の調節のお願いも。

 景さんもしかしてその役をマグちゃんに任せるっていうんじゃ……。


「きゅっ!」

「じゃあちょっと乗せるね。零れそうな脂は飲んでもいいから」



 じゅーっ!



 コボルトの肉が焼かれていく。

 これなら網の交換もいらないしその分人手減る。

 それに脂で火が高く上がる事もないし、火加減の調節も簡単。


 見た目も……まぁ可愛い。


「優秀な素材解体係兼……マグマスライム焼肉プレートか」

「うん! 炭火で焼いたのと同じ味。マグちゃん、身体はもっと分裂出来る?」

「「きゅっ!」」


 各テーブルからマグちゃんの声が……。

 

 この優秀さと数。

 あの景さん、コボの額から汗が止まらなくなってるんですけど。


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