最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職

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第26話 神がちょっと贔屓してます

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 ――カタカタカタカタカタ


「あ、おはようございます」

「おはよう宮下君」

「お、おはようございます」


 一ノ瀬さんが店の一員になった翌日の早朝。

 

 景さんと一ノ瀬さんは休憩室でノートパソコンを覗き込みながら何か作業をしていた。


 美人さん2人で朝からこの画はちょっとテンション上がるな。


「それ何してるんですか?」

「素材やお肉の在庫管理をパソコンのソフトに打ち込んで、それと焼肉森本の素材と肉の販売販促用HPにデータをリンクさせてる……みたい」


 元々動画の投稿とか機械やネットに興味があったのか、景さんは食い入るようにパソコンの画面を見てて、それでも俺に説明をしてくれた。


 新しく買ったゲームを遊び始めた時の子供位真剣で、でも楽しそうな表情がちょっと可愛い。


「まだHPは公開してないんですけど、明日には何とかなるかなって感じです。ただ、ネット注文用に素材を梱包したり、配達業者さんに依頼したり、そういった人とかがいないと、企業に直接素材の販売に行けないので、公開はもうちょっと先にしようかなって……」


 そうだよな。

 一ノ瀬さんの言う通り、何から何まで1人じゃ絶対無理で人手が足りない。

 景さんも店の営業があって……そもそも場所を作っても、そこをまわせるだけの人がまだまだ……。


「素材の販売が軌道に乗るまでは、人をこれ以上雇う余裕はないから、もうちょっと我慢。せめて動画の収益が上がれば、もう1人か2人雇えて地下の客席も使えるかもしれないんだけど」


 景さんは困り顔で考えるように俯いた。


 動画の収益か……そもそもあの肉を捌く動画以降、チャンネルで投稿もまともに出来てないみたいなんだよなあ。

 忙しいから仕方ないとはいえ、そのままにするのは勿体ないな。

 動画で素材販売の宣伝とか出来たら効果もありそうだし――


「それなら素材を調達する様子とか投稿したらどうですか?」

「あ、おはよう細江君」


 細江君はたまたま俺達の話を聞いていたみたいで、すっと話に混ざってきた。


 今日は小鳥遊君が非番で細江君が丸1日勤務になっているみたい。


「俺が前に勤めてたところじゃドラゴンの討伐動画とか、ダンジョンに侵入している様子とか企業チャンネル流しててそれなりに再生数稼げてましたし、神の戦っている様子が動画に乗ればきっとバズりますって」

「でも俺、そんなに目立つのは――」

「今日も神と握手したっていう投稿いくつか見ましたよ! もうすっかり有名人なんだから気にする必要ありませんって」


 細江君の言う通り、最近はやたらと話しかけられる。


 あんまりにも声を掛けられるから、あんまり貧相な服装はヤバいと思って新しい服とかズボンも買っちゃたんだよね。


「でもなぁ……」

「こんなに小さい店で大量の素材販売は養殖場の事を疑われる可能性もあって、ここに立ち入ろうとする輩が増えてくるかもしれません。ちゃんとダンジョンで狩ってますよっていうアピールは私的にもありだと思いますよ」

「うーん……それはそうかもですけど」

「私、宮下君が戦ってるところって見た事ない。それを見て……編集してみたい、かも。強い宮下君って今まで想像も出来なかったから余計に」


 ……。


 まぁ景さんがそこまで言うなら俺の雄姿をカメラに収めるのは吝かじゃないですけど。


「分かりました。でも俺、撮影しながらなんて、そんな器用な事出来ないですよ」

「大丈夫、ちょっと待ってて」


 そう言って景さんは休憩室から飛び出していった。

 最近の景さんは本当に楽しそうだな。


 そういえば最近はこうして景さんと話すけど、前まではそんな機会も少なくって……俺がそういう一面を知らなかっただけなのかな。


「……神って景さんに対してちょっと甘いですよね」

「それ私も思った」


 細江君と一ノ瀬さんがぼそぼそと俺の方を見ながら呟いた。


 それ、聞こえてますよ。


「甘やかして欲しければ、2人も仕事頑張っ――」

「お待たせ! これ、ちょっと頭下げて」

「え? あ、はい」


 一ノ瀬さんと細江君に小言を掛けようとすると、息を切らして戻ってきた景さんが俺の頭に何か付けてくれた。


 これはカメラか?


「おお! 探索者視点の動画ってのも新鮮でいいですね!」

「うんうん! 自分がモンスター倒してるみたいな動画ってあんまり見かけないから目立つんじゃないですか?」

「私もそう思って……。出来れば出勤から討伐まで、一日のルーティーン見たくしたいから、ちょっと店に入る前撮影してもらってもいい?」

「別にいいですけど……ってこれ、ダンジョンに向かう時も付けてないとなんて事は……」

「駄目、かな?」

「……分かりました」


 はっずぅ。

 でも、景さんのあの悪意のない純粋な目……男宮下、どうしても断れませんでした。


「神、やっぱ甘いです」

「……。あ! そういえば景さん、パソコンの部屋とそれ用のデスクトップPC欲しいと思いませんか? その方が仕事の効率も上がりますし、お店で作業出来るのは絶対楽だと思うんですけど」

「PC……なんで解放前のアイテムが水晶に追加されてるのを一ノ瀬さんが知ってるんですか?」

「はは、ちょぉっと昨日覗きしまして……。ねっ! 景さんもそう思いますよね。しかも出来れば今日中に」

「……宮下君。ダンジョンの踏破ってどれくらい時間かかる?」


 一ノ瀬さん変態の癖に仕事は出来るし、頭が回るから本当に天敵だわ。


「……【NO1】なら今日中、夜の営業時間中には踏破出来ると思います」

「本当? 無理言ってごめん。でも楽しみに待ってる」


 ああ。

 こりゃあ今日は全力探索で、明日筋肉痛確定だよ。


 ……。

 細江君と一ノ瀬さんは顔を見合わせて笑うの止めてくんないかな……。
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