最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職

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第22話 コボルトの要素無くなっちゃわない?大丈夫?

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「ふぁ、ねっむ」

「あれ? 宮下君、今日は出勤遅い」

「あ、景さんおはようございます! いや、ここに来るまでに色んな人に声を掛けられまして……」

「ネットで話題だから、宮下君。それに、昨日は新メニューも好評だった」

「いやぁ意外と注文多かったですよね。景さんがお客さんの好みを把握していたのと、これは売れるっていう女の感がこう、ビシッとハマった感じでちょっとしてやったりっていうか、気持ち良かったですね」

「うん。クッパは作り方も簡単で、もう優夏ちゃんと小鳥遊君、それと夜から来た細江君は作れるから、今日はダンジョン行っても大丈夫だって店長が」

「そうですか! あれ、そういえば店長は?」

「客席の方で売り上げとにらめっこしてる。昨日宮下君が素材の話をして使えるお金がまた増えそうって分かったから、きっと人を増やしたり、養殖場に客席を設けた場合の計算をしてるんだと思う」

「そうですか。集中してるとこ邪魔したら悪そうだし、俺は先に養殖場に行きますね」

「ダンジョンは行かないの?」

「昨日1つ踏破したばっかりなんで、そんなに焦らなくてもいいかなって……。カスタム以外にも養殖場でやりたい事もありますし」

「そ、そう。だったら、今日もお昼はこっちだよね?」

「そうですね」

「今日は私が作るから、他で食べちゃ……駄目。いい?」

「は、はい。楽しみにしてます。それじゃあまた後で、ランチタイム頑張ってください」

「うん。宮下君も」


 ダンジョンを踏破した日から一夜明けた今日。


 昨日の夜の営業がしんど過ぎて全然疲れが抜けてない。

 

 『写真撮って欲しい』とか、『俺もレベル低いんですけど勇気もらいました』とか、『ランク上がるの楽しみにしてます』とか、嬉しいんだけど10年間最底辺で探索者してたからこうむず痒いし、滅多にない事で気疲れも……。


 景さんにはああ言ったけどダンジョンに行く最中にも声を掛けられると思うと億劫で、正直今日はのんびり行きたいところ。


 店の売り上げに直接貢献出来たのかもしれないけど、あれもこれも雅さんが勝手に投稿しちゃったから。

 今度会ったら愚痴でも聞いてもらうか。



 ぎぃっ。



 俺は養殖場への階段の上に被さっている木の板を捲った。


 もし、この下に客席を設けるなら階段の位置も考えないとだな。





「神っ! おはようございます!」

「おーう」


 階段を降りるとコボが意気揚々と出迎えてくれた。


 凶悪な顔だけど、ぱたぱたと尻尾を振るのはちょい可愛い。

 でも神呼びは頂けないな。



「その呼び方は……いやまあいいや、コボルトの様子は?」

「肉用のコボルトが取り敢えず4体仕上がってますよ。早速絞めますか?」


 肉用。

 もうなんていうか仲間意識とかそんなのは全くないのね。


 別に今に限った話じゃないけど、よくよく考えたら凄いよなこいつ。


「それは後でやる事にして、今日は一気にカスタムをするぞ」


 俺は水晶を取り出すと早速『拡張』ボタンをタップした。


 するとNEWの文字が付いた拡張可能な設備が表示される。


『木のテーブル、木の椅子、台所テーブル、棚、コンロ、冷蔵庫、洗面台、仕切り壁、冷暖房(消臭機能付き)、コンロ付テーブル』


 冷暖房が魔石値50、コンロ付テーブルが魔石値20、仕切り壁が5、他が一律10。


 今ある魔石値が100だから出来る事は限られてるけど、まずはこれだよな。


「冷暖房をここにセットして……おおっ!」


 冷暖房をタップすると、養殖場のマップが表示され、冷暖房のアイコンを設置出来るようになった。


 部屋に1つっていう制限があるみたいだけど、ここだけでも空調が効かせられるのはでかい。


 養殖場では匂いはここのダンジョン限定の仕様なのか、時間が経てば勝手に消臭されるけど、それでもコボルトの血の匂いが充満した状態を直ぐに解消出来るのならそれに越したことはない。


「リモコンで……スイッチオンっ!」



 ゴォォォォォォォォ。



「何ですかこれっ! 冷たい空気がっ!」

「これで夏場も冬場も快適快適。正直今ちょっと暑かったから、これだけは欲しかったんだよな」


 床に突然現れたリモコンを操作すると思ったよりも静かな音で冷暖房機は動き始めた。


 魔石値50でトイレの半分の値だったからもっとしょうもない冷暖房が設置されるのかなって思ったけど業務用のでっかいやつとは……案外太っ腹じゃん。


 後は残り50でコンロ付テーブルと椅子を2つ、壁もここに、っと。


「おおっ!!」

「木製で出来てるんだな。良い良い、何か段々焼き肉屋っぽくなってきた」


 階段から少し離れた所、冷暖房機の真下からちょっとずれた場所に俺はコンロ付テーブルと椅子が現れた、というかそうなるように設置したんだけど。


 トイレの付近にも仕切り壁を2枚使って奥まった所にある感じを醸し出せている。


 個人的にトイレはあんまり視界に入れないようにしたかったんだよね。


「これ見たら店長テンション上がるだろうなぁ……あ、あとは隣に部屋を作ってと」


 更に俺は今いる場所の隣に新しい部屋を増設した。

 部屋はダンジョンを踏破で1つ無料で増やせるらしい。


 そっちはゴブリンの発生場所にして素材場にするか。


「えーっと確かアイテム欄から設置しないと……いや、こっちにもあるな」


 スポーンのボタンをタッチするとゴブリンの発生装置の文字が。


 どうやら手に入れたスポーン装置は自動で増えていくらしい。


 通常はアイテム欄から、養殖場は特別待遇ってわけか。


「それじゃあゴブリンの方も自動で素材集めさせるか。おいコボ、お前に新しい仕事……ってお前何やってんの?」



 じゅーっ。



「いや、これはその、最近解体したコボルト【RR】の肉をちょっと干して食べてたのがマイブームで……これを焼いて食っても旨いかもって」

「お前、本格的にコボルトっぽさ無くなってきたな。もう見た目だけになっちゃうじゃん、お前のコボルト要素」
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