最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職

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第16話 お前喋れんの!?

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「うーん。バイト2人は流石に調子に乗ったかもしれんなぁ」

「お父さん、店長はそういう判断をするのに一回私を通した方がいい」


 細江君と小鳥遊君が正式にアルバイトとしてこの店で働くようになってから今日で10日になる。


 研修期間という事もあって、優夏さんやパートの方、それに景さんが2人に付きっきりにならないといけなかったが、それも今日でおさらば。


 ようやく研修を終えて、シフトに組み込まれるようになり、俺もダンジョンに行けるようになる。


 ちなみに肉の処理はコボが俺よりも早く、綺麗に捌けるようになったからそれも今日お披露目する予定だ。



 解放。



 俺普通の探索者に戻れるんだ。


「客は来るんだが、席が足らないし……仕方ない単価を上げるか」

「それは反対。お客さんはコスパがいいからって理由で来てくれてるんだから」


 晴れ晴れとした俺の気持ちとは裏腹に朝から景さんと店長がピリピリしながら経営について話をしていた。


 席、か。


 確かにこの店は来客数の割に席があんまりに少ない。


 急に店を広げる事は出来ないし、時間制限を設けるのもなぁ。

 焼肉森本の常連は飲兵衛が多くて、ゆったり長く飲みに来たいって人が多いし。


 ……いいタイミングだし、そろそろ本格的に『拡張』に手を出すか。


「店長、新しいバイト2人も十分働けるようになりましたし、俺はダンジョンに専念していいですか?」

「うーん、宮下は大切な肉を捌く係だからな……」

「それについて話したい事があります。あ、あと、今言ってた席が足らないって話については提案が」

「話したい事?提案?」

「とにかく養殖場に行きましょう。ちょっと凄いもの見せてあげますよ」


 俺は半ば無理やり、店長と景さんを連れて養殖場へと移動を始めたのだった。





「えーっとまず、なんですけどこの場所を『店』の新しいフロアとして利用出来ないかなという提案をさせてください」

「ここを? 何を言い出すかと思えば……。照明が無いどころか、壁や床もこのザ・外、っていう地面。それに、焼肉用の器具もテーブルも椅子もないんだぞ。人件費が増えたばっかりで、ここを改装なんて出来るはずないだろ」


 店長ははぁーっとため息を溢しながら首を横に振った。


 景さんも流石に俺を擁護出来ないのかだんまり。


 最悪の空気ではあるけど、これを見ればきっと二人の顔も晴れるはず。


「拡張から、トイレ、木の壁、木の床を設定と……」


 俺は水晶の画面から残り魔石値数『600』を使ってフロアを木のぬくもり溢れる内装に設定した。


 魔石値は『600』から『100』に。


 内訳はトイレ『100』、木の壁、木の床が共に『200』。


 こういった設定も到底先になるかと思っていたけど、コボの凄まじい育成術で増えたコボルト【RR】達、それにコボルト【RR】よりも遙かにレベルの高いコボルト【SSR】という存在がこれを可能にした。


 このコボルト【SSR】は肉の質としては、【RR】と同じだけど魔石の純度がやたらと高い。


 まだ狩った数は小頭数だけど、魔石値はあっという間に溜まった。


「えっ? ええっ?」

「これは魔法か?」


 2人は目を丸くして辺りを見渡す。


 これこれこれこれ、この反応が見たかったんだよ。


「実はこの水晶から色々設定出来てですね、魔石を使って今見たな事、後机とか設備、部屋の拡張に関しては『条件』を満たせば、可能なんですよ」

「魔石っ! そういえば、魔石の事をすっかり忘れてた。宮下、お前勝手に魔石の使用用途を――」

「まぁまぁまぁまぁ、店の為に使ってるんですから許してくださいよ」

「むぅ……。それで他の設備の『条件』っていうのはなんだ?」

「ダンジョンの踏破、です」


 水晶で各項目を選ぶと、解放されているものとそうでないものがある。

 

 焼肉用の設備や椅子、机は魔石値を利用して設置する前に解放が必要らしい。


 その解放となる条件はものや場所によってことなってくるんだけど、ほとんどがこのダンジョンの踏破。


 今言った3つに限ってはゴブリンのダンジョン、【NO4】の踏破が必須。


 前にダンジョンに潜ったときはこれを狙ったんだけど、あの短時間じゃどう足掻いても無理だったってわけ。


「ダンジョン……。でも宮下に抜けられるのは正直痛い。今からバイトの人達に肉の捌き方を教えるのは、時間も手間も――」

「おーいっ!! コボ、ちょっとこっちに来てくれ」



「――あ、宮下さんおはようございますっ!! コボルト【RR】は今のところ1日10頭、コボルトの育成状況は3日で【SSR】1頭になります! 早速肉をお求めなら【RR】の奴らを整列させて……ってこちらの方々は?」



 意気揚々とコボルトのスポーン、また装置がある部屋からやって来たコボ。


 日が経つにつれ進化、そして知能が上がって、遂には流暢に日本語を操るようになっていた。

 初めて言葉を使った時には盛大に『喋ったあああああっ!?』って叫んだっけ。


 ま、いくら進化してもまだまだ俺の方が強いんだけどね。


「こっちは俺よりも上の立場である店長と景さんだ。この方々に悪態をつけば……分かってるよな」

「宮下さんの上司っ!? これはこれは失礼しました! 私はしがないコボルトロードでコボという名前を与えられている者です。そ、そうかお見知りおきを」


 コボは2人を前にして土下座すると、汗を地面に垂らした。


 これなら反旗を翻すような事はないな。


「み、宮下、こ、ここここここここいつは?」

「俺の……従順な下僕兼肉捌きのプロです。今日からこいつに肉は捌いてもらいましょう。コボ、早速だけど1頭捌いてもらってもいいか?」

「は、はい。うわ、まさかこの神聖な台の上で仕事出来るなんて光栄です」


 俺はコボルト【RR】の死体を取り出すとさっそくコボにそれを手渡した。


 ごつごつとした不格好な手からは想像出来ないような手際の良さ、店長も景さんもいつの間にかプロの目になっている。


「動画の様にはまだまだいきませんが……」

「いや、なかなかだ。これなら問題なく仕事を任せられる」

「動画……。まさかこの子店長や私の捌いている動画を見て……」

「えっ!! っていう事はお二人があの動画の……。あ、あの失礼ですがあ、握手よろしいですか?」


 コボは店長と景さんの2人と順番に握手を交わした。


 店長と景さんには怖がる様子どころか笑顔さえ見れるし、取り敢えずサプライズ成功かな。


「こいつ、コボがこれから俺の代わりに捌いてくれるので、俺はダンジョンに行っても? 因みにこっちに来れるのはなんでかコボだけなんで色々安心してください」

「そうか、なら今後はこいつ、コボ君に任せるとしようか」

「コボ君、もふもふねあなた」


 それでも何があるか分からないし、バイトの探索者2人には護衛役になるよう早めに出勤するよう頼んでおくか。


 ふぅ、なんというかここまで長い道のりだったな。


 さ、小鳥遊君が来たら俺は久々のダンジョン探索に行かしてもらいますか。
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