最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職

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12話 100万回再生、だと

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「宮下、お前これ……また見つけてきたのか!?」


 案の定驚いている様子の店長、景さん。


 アルバイトの人はそもそもこんなでかいコボルトを見た事がないのかな?


 だらしなく、あんぐりと口を開けて言葉が出ないみたいだ。


「見つけたのはそうなんですけど……それが見つけただけじゃなくて、コボルトの養殖場を――」

「コボルトの養殖場っ! あっ、ごめんなさい。えっと宮下くんもしかしてだけど、コボルト【RR】を恒常的に狩れる場所が?」


 食い気味に声を荒げた景さん。

 さっきの事はもう過去の事のように流して、俺に質問が飛ぶ。


 本当にコボルト様々です。

 マジで俺、コボルトに生かされてるまであるな。


「はい。この下に。スポーン間隔が結構長めなんですけど、それでも1日で20匹、いや30匹以上は狩れますよ」

「お父さ……店長、これなら夜はお客さんを帰らせなくても――」

「そうだな!昼はコボルト【RR】の肉が足りなくて結構な人数帰らしちまったし……。夜は稼ぐぞ。とその前に飯だな」


 昼の様子は分からなかったけど、店長の額に光る汗と椅子に腰かける音でなんとなく察した。


 ランチタイムは戦場だったんだなって。


「昼は私が作る。みんなは座って待ってて」

「あ、だったら先にこっちから使ってください。不格好ですけど」

「分かった。内臓はちょっとだけ匂いもあるし、下処理に時間がかかるから、こっちのバラ肉で……丼とかでいい?」

「俺、丁度焼肉丼がいいって思ってたんですよ!」

「だと思った。すぐだから待ってて」


 景さんはくすりと笑って調理場に向かった。


 一時はどうなるかと思ったけど……ふぅなんとかなった。


「えっと、初めましてバイトしてます。橋本優夏はしもとゆうかっていいます! 宮下さんの事は聞いてはいたんですけど……うん、似合ってると思います」

「うん、よろしくって何が似合ってるの?」


 元気一杯の優夏さんは多分大学生かな?

 人見知りもしない子みたいだし、良い子だとは思うけど……ごめんちょっと発言の意味が分からない。


「にぶちんだな」

「にぶちんですね」

「良く分かんないけど初対面の人にそれって、肝据わりすぎじゃない?店長の失礼はいつもの事だからいいけど……」


 優夏さんは俺の正面、店長の隣に座ってやれやれといった雰囲気で店長とぼそぼそしゃべる。


 はぁ、早く景さん戻ってこないかな。





「あむ、あ、ぐ、ん、んんっくぁ! うっまっ! 肉の質もいいけどこのタレ! いつもの焼肉ダレと違って、辛みが強い、けどマイルドで良く肉に絡み付いて、胡麻油の風味もいいし……キムチマヨと一緒も旨いっ。景さんの料理は本当に最高ですよ!」

「あ、ありがとう。でも落ち着いて食べて、喉に引っ掛かる」

 そっと俺のコップに水を足してくれる景さん。

 ホント過保護。


 いつもはこの過保護を店長がいじってくるんだけど……。


「やっぱこの肉上手いな!」

「私賄いでこんなに良い肉食べれるなんて思いませんでしたよ!」


 店長も優夏さんも食べる事に夢中でそれどころじゃないらしい。

 その気持ち分かる分かる。


「そういえば向こうでちょっと時間があって……あの動画見ましたよ」

「ど、どうだった?」

「編集も丁寧でよかったです!あれ見たら腹空かせてここに来るのも分かるなぁ。それに再生数が15万回で――」

「え! じゅっ――」


 舌鼓を打ちながら動画の話をすると景さんは言葉を途切れさせて、急いでスマホを取り出した。


 再生数に囚われるのは投稿者の性らしい。


「ほらっ! 15万回越えて――

「100万……」

「ひゃ?」

「100万回越えてる……。さっき来た人達がまた拡散して……。コメントも登録者もどんどん増えてる」

「あっはっはっはっはっ! 良いじゃないか!それで今日終わるまで客が途切れなければさ」


 俺が驚くよりも前に店長が高らかに笑った。


 にしても100万回越えって事は……。


「途切れないどころかランチより忙しくなるかも……。急いで肉の準備をしないと間に合わない。……そういえばこれ、宮下君が処理したんだっけ」

「……はい」

「コボルト【RR】の死体はまだある?」

「……はい」

「だったら申し訳ないんだけど……準備手伝って」

「……はい」


 やっぱりこうなるよねえ。

 俺一応探索者なんだけど。


「でも場所が無くないですか?こんなデカいのをまとめてってなると」

「1匹を3人で捌いて……っていってもやっぱり広い場所はあった方がいいな。狭いところで作業するのはしんどい。しかも男同士なんて暑苦しい」


 店長はじと目でこっちを見てくる。

 俺だってあんたと肌をくっつけて汗を流すのは勘弁なんだけど。


 あっ。

 そういえばあそこ設定で拡張も出きるんだっけ。


「……ちょっと俺に提案がありまして。その、これ食べたらみんなでそこの下、ダンジョンに潜りませんか?」


 俺の提案に3人共驚いた表情を見せる。


 怖いのは勿論、探索者以外の侵入は緊急時を除いてのダンジョン侵入は違法。


 でもこのダンジョン、ダンジョンっていう体を保ってないし、問題ないよね。

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