最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職

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第11話 ラッキースケベは突然に

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「おっす。ただいま」

「……ぐぁ」


  結局あの探索者達が早々に探索を済ましていたから、俺はあの仮設トイレを通って俺だけのダンジョンに戻ってきた。


 あの探索者達が隅々まで確認しても、進入禁止の立て札から入り口を通ってここまで来れなかったみたいだし、あそこは自動的に封鎖されたって事でいいよな。


 いちいち表の入り口からダンジョンに入ってあそこを確認する手間が省けたのはありがたい。


 ありがとう、派遣探索者達。


 そんでコボルト【RR】、お前そんな隅で踞ってても返事を返してくれるなんて……。

 犬畜生は格上に忠実なんだなぁ。


「えーっと時間は……」


 ん、まだまだあるな。

 狩りをするにしても次のスポーンまでまだ間も空くだろうし……折角だから景さんが投稿した動画でも見るか。


「よっと」


 俺は階段を降りると一番下の段に腰かけて持っていたスマホで動画共有サイトをアプリから起動した。


 景さんには直接チャンネル名を聞いてはいないけど、多分焼肉森本で検索すれば……ほら出てきた。


 『森本のタレ紹介』、『美味しいコボルトの焼き方』、『珍味っ!!ゴブリンの耳皮、ゴブミミガーっ!』、『入手困難!ドラゴン肉を越える!?コボルト【RR】を捌いていくっ!』、『コボルト【RR】トリミング編』、『コボルト【RR】実食編』。


 他にも焼肉森本の動画がこれでもかとヒットした。


 画面スクロールしてもまだまだまだまだ……景さん、いつの間にこんなに投稿を。


「どれも気になるけど、やっぱ昨日のやつ……ってこれさっき見せてくれた時より伸びてるじゃん。しかも15万再生って」


 コボルト【RR】を捌くっていうのがそんなに珍しいのか、動画はプチバズり中。


 投稿主の景さんがコメントで今日コボルト【RR】を提供するって書き込んでるけど……店大丈夫かな?


「俺が心配してもしゃあないか。店を手伝った事はあるけど、俺は料理人でも何でもないし……。でもこういう動画見るとちょっと捌きたくなるな。暇潰しに1匹試してみるか」


 俺はコボルト【RR】の死体と何かあったとき様のサバイバルナイフを取り出して、スマホを近くの岩に立て掛けた。


 前に店を手伝うついでで店長に色々教えてもらった事もある。

 それに動画を見ながらなら……何だか上手くいきそうな気がする。


「が、ああ、あ……」

「……怖いなら見なけりゃいいのに」


 俺がサバイバルナイフをコボルト【RR】の死体に刺して皮を剥ぎ始めると、隅で踞っていたコボルト【RR】は身体をびくびくさせながら泣きそうな顔でこちらを見つめるのだった。





「上々……かな」


 捌いて、一応部位ごとに分ける事は出来た。


 血抜きして出た血とか肉片、は放っとけばダンジョンの仕様で消えるはすだから、便利便利。

 失敗して、飛び散ったお粗末な肉片も証拠隠滅。


 ちょいとボロボロな所はあるけど、俺の昼飯には十分。


 時間もなんだかんだで13時を大きく回った頃。

 ランチタイムは13時半まで、焼肉森本でそろそろ賄い飯を作り始める頃合いだ。


 俺もその時間で景さんにコボルト【RR】の焼肉丼を作ってもらお。


「俺は飯タイムだ。……お前は気弱すぎて殺すのに気が引けるから強くなっとけよ」


 俺はどうせ分からないだろうと思いながらもコボルト【RR】に忠告し、階段の出入口設定を『焼肉森本(休憩所)』に直した後、階段を登り始めた。


 さっきも思ったがこの階段は結構長い。

 この歳になってくると20前後の時より遥かに階段がキツイ。

 気持ちは若いつもりなんだけどなぁ。



「――着いた。これは床の板かな?」


 最上段に辿り着き、早速天井を触るとざらざらとした手触りと温もりを感じた。


 多分休憩所の床だとは思うけどこ……これ外した後って勝手に元に戻ってくれるよね?


「戻らなくても説明すれば理解してもらえる、大丈夫……。すぅぅ……」


 俺は無意識の内に深く息を吸い込み、決して音を立てない様に木の板をそおっと持ち上げた。


 木の板は何かに引っ掛かったのか若干重い。


 それになんだかやけに暗い。


「ここ本当に休憩所か?机どころか灯りもない、あるのは三角の白とヒラヒラとピンクのリボ――」

「きゃっ!」


 女の人の可愛らしい声と共に俺の視界は晴れた。


 今のもしかして景さんのスカートのな――


「何でそこに宮下君が! その……み、見た?」

「えーっと、すいません。がっつりと」

「忘れて」

「それは難し――」

「忘れなさい」

「はい――」



 バンッ!



 景さんの言葉の圧力に負けて返事をすると、休憩所の扉が勢い良く開いた。


「ふぃーっ! お疲れ景!まさかあの動画でこんなに人が来てくれるなんて、いやーっこんなに嬉しい悲鳴は久しぶりだ! バイトの橋本さんも店の前にいた人達にコボルト【RR】の肉の提供は次回未定で伝え終わる頃だし、そろそろ俺達も昼飯にし……宮下、お前何やってんだ?」

「お疲れ様です店長、け、景さん」

「うん」


 景さんの素っ気ない返事で場が重くなる。

 う、胸が痛い! 気がする。


「……お前ら、その歳で青春か?」

「「違うっ!!」」

「店長、景さん、まだ待ってたお客さん達帰らして店閉めておいたよっ! ってこれどういう状況ですか?それにあなたは……」

「えーっと、色々説明したいんですけど……まずこれ見てください」


 アルバイトの人まで入ってきて面倒な事になる気配を感じた俺は、この空気を断ち切る為に処理したコボルト【RR】の肉とコボルト【RR】の死体を取り出して3人に見せつけるのだった。
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