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第一章 フローレット村 リリィの日常
第17話: 新たな試練の兆し
しおりを挟むフローレット村の穏やかな日常に、新たな風が吹き込まれた。その日、ゼノフィア帝国からやってきた研究者シエラが、リオンとともにリリィを訪れた。
彼らの目的は、先日リリィが解読した地図が指し示す場所のさらなる調査だった。
「リリィさん、再びお力をお借りできませんか?」
リオンが頭を下げると、リリィはにっこりと微笑みながら応えた。
「もちろんいいよ。さて、今日はどんなことがあるのかねぇ。」
リリィの家に入ると、シエラは興味津々で周囲を見渡した。
「これがリリィさんの作業場……想像以上に素晴らしい!」
彼女の目は輝き、修理途中の魔道具に手を伸ばそうとする。
「こらこら、勝手に触るんじゃないよ。怪我でもしたら大変だからねぇ。」
リリィが穏やかに注意すると、シエラは恥ずかしそうに手を引っ込めた。
「すみません。でも、こんな精巧な修理をどうやって……本当に信じられない!」
リリィはその様子に苦笑しながら、再び作業台に向かった。
「信じる信じないは自由だけどねぇ、私はただ好きなことをやっているだけさ。」
シエラが持参した新たな資料には、遺跡の内部構造が簡易的に記されていた。その中には「守護者」「試練」という不穏な言葉が目立つ。
「これ、どういう意味だと思います?」
リオンが尋ねると、リリィは資料をじっと見つめ、ゆっくりと口を開いた。
「守護者……何かを守る存在だろうねぇ。そして試練……簡単にはたどり着けない仕掛けが待っているのかもしれない。」
彼女の言葉に、リオンとシエラは緊張した面持ちで頷いた。
「それに、この地図を見る限り、進むべき道には明確な魔法の罠があるよ。」
リリィは資料を指し示しながら言った。
「この部分、魔力が溜まるポイントになっている。うかつに踏み込むと、ただでは済まないねぇ。」
シエラは興奮と恐怖が入り混じった表情でリリィを見た。
「リリィさん、あなたは……なぜこんなに冷静でいられるんですか?」
リリィは手を止め、少し考え込むように笑った。
「私はねぇ、急いで何かを成し遂げるより、自分のペースで見て回るのが好きなんだよ。そうすれば、見逃すものも少なくなる。」
その言葉に、シエラは目を見開き、リオンも静かに頷いた。
「ありがとうございます。その言葉、しっかり心に留めておきます。」
リリィの解読が進むと、新たな地図の一部が明らかになった。それは、これまでの遺跡とは異なる場所を示していた。
「ここが次に行くべき場所だろうねぇ。でも気をつけるんだよ。地図が導く場所ほど、危険なことが待っている。」
リオンは地図を手に取り、深く頭を下げた。
「リリィさん、本当にありがとうございます。この地図が必ず帝国の未来につながると信じています。」
リオンとシエラが村を後にした後、リリィは作業場を片付けながら独り言を呟いた。
「若い子たちは大変だねぇ。まぁ、これが楽しいのかもしれないけど。」
小さな作業場に残った静けさの中、リリィは再び日常の穏やかな生活に戻った。だが、彼女の心には、どこかで新たな冒険が始まっている予感があった。
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