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第一章 フローレット村 リリィの日常
第16話: 地図が示す場所
しおりを挟む数日後、フローレット村に一人の青年が現れた。ゼノフィア帝国の調査隊に所属するリオンだった。
リオンは以前修理してもらった魔道具を携え、リリィの家を訪れる。
「リリィさん、またお力をお借りしたくて戻ってきました。」
リリィは庭で花を手入れしている途中だったが、笑顔で迎え入れた。
「まぁ、また会えて嬉しいよ。それで、今度はどんな話だい?」
リオンは地図を広げ、以前リリィが修復した金属板が鍵となり、遺跡の扉が開いたことを説明した。
「この地図が示す場所を探しているのですが、途中で手がかりを失ってしまいました。」
リリィは地図をじっと見つめ、穏やかに頷いた。
「なるほどねぇ。この地図には、隠された仕掛けがまだ残っているのかもしれない。」
リリィは地図を作業台に置き、慎重に調査を始めた。光に透かしたり、魔法の力を使って文字の隠された部分を浮かび上がらせる。
「やっぱりねぇ。この地図には重なり合った層があるよ。少しずつ解読していこうか。」
リオンはリリィの手際の良さに再び感嘆しながらも、不安そうに尋ねた。
「これが完全に解けたとき、何が見つかるのでしょうか?」
「それは解いてみないと分からないねぇ。でも、注意は必要だよ。この地図が示す場所は、ただの宝の隠し場所じゃない気がする。」
魔法の光が地図の表面を照らし、隠された文字が浮かび上がる。その文字は、新たな場所を指し示していた。
地図の解読が終わった後、リオンは感謝の言葉を述べるとともに、新たな調査に向けての準備を始めた。
「この場所を調べるには、調査隊の仲間と合流する必要があります。」
リリィはその言葉に少し考え込みながら、リオンに助言を与えた。
「地図に描かれているのは、ただの場所じゃないよ。ここには、何かを守るための仕掛けがある気がするねぇ。」
リオンは真剣な表情で頷き、リリィにお礼を言った。
「あなたがいなければ、ここまで来られなかったと思います。本当にありがとうございます。」
リオンはリリィに、小さな金のメダルを手渡した。それはゼノフィア帝国の探検家に与えられる特別な品だった。
「これは調査に貢献した方に贈られるものです。リリィさんにぜひ受け取っていただきたいと思いまして。」
リリィは少し照れくさそうにしながらも、そのメダルを受け取った。
「ありがとうねぇ。でも、これで私の役目も一段落だね。気をつけて調査を進めるんだよ。」
リオンが村を去った後、リリィは金のメダルを手に取り、小さく微笑んだ。
「また新しい冒険が続くんだねぇ。若い子たちが頑張っている姿を見るのはいいものだ。」
フローレット村の穏やかな空気の中、リリィの心には、新たな地図が示す未来への期待が広がっていた。
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