完結 百年の契り

つきほ。

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第6話:森に刻まれる命

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エルの光に包まれたリーナは、身体が不思議な感覚に包まれるのを感じていた。暖かく、そしてどこか懐かしい。光の中で、リーナはエルの声を聞いた。

「リーナ、そなたの心は純粋で強い。我とともに森を守る存在となれば、この地に新たな命を芽吹かせることができるだろう。」

「エル、私は怖くないよ。これが私にできることなら、精一杯やる。」

光が徐々に薄れていくと、リーナの足元には新芽が顔を出し、森全体にわずかな生命の気配が戻り始めた。木々の枯れた枝が少しずつ緑を取り戻し、静寂だった森に優しい風が吹き抜ける。

「これが……森の力……?」

リーナは目を見開き、立ち上がった。だが、エルの姿はいつもより淡く、儚く見えた。

「リーナ、そなたの決意が森に力を与えた。だが、この森が完全に再生するには百年の時が必要だ。」

「百年……私がその百年を見届けることはできないかもしれないけど、エルと一緒なら、私はここにいるよ。」

エルは優しく微笑みながら答えた。

「そなたがいる限り、我は決して孤独ではない。」


---


リーナは村へ戻り、森で見た変化を村人たちに伝えた。だが、村人たちの反応は予想通り冷たかった。

「森が蘇りつつあるだって?それで、また精霊の力を借りる気なのか?」 

「リーナ、そろそろ現実を見ろ。あの森はもう人間にとって役に立たない場所なんだよ。」

リーナは反論しようとしたが、その言葉を飲み込んだ。村人たちにはまだ、エルや森の力を理解できる余地がないのだと悟ったからだ。

「いいの。エルは私が信じてる。それで十分だよ。」

リーナは静かに言い、村人たちに背を向けて森へと戻った。


---


森ではエルがリーナを待っていた。リーナが村で聞いた言葉を伝えると、エルは静かに頷いた。

「人は時に恐れを理解に変えるのに時間がかかるものだ。それでも、そなたがここにいる限り、この森とそなたの思いは消えぬ。」

リーナはエルの隣に座り込み、泉のほとりでそっと手を伸ばした。

「エル、この森がもっともっと元気になるように、私が何でもするよ。」

その言葉に、エルは少しだけ寂しげに微笑んだ。

「そなたの心が我をここまで支えてくれた。我はそれだけで十分だ。」

二人はそのまま森の奥深くで静かに時間を過ごした。リーナが感じたのは、エルとの繋がりが一層深まった感覚だった。

だが、この静寂は長く続かないことをリーナは薄々感じていた。エルの力が弱まり続けていること、そして自分の存在が森に与える影響が大きいこと――それを彼女は少しずつ理解し始めていた。

「エル、私、もっと森のためにできることを探してみるね。」

その言葉を胸に、リーナは森に新たな命をもたらす方法を模索し始めた。



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