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第7話:妖精王からの試練
しおりを挟むセリナが村や森に少しずつ馴染み始めたある夜、家の窓辺に妖精鳥が再び現れた。
「セリナ様、お知らせがあります。妖精王様が、そなたの進歩を確かめる試練をお与えになるとのことです。」
「試練……?」
セリナは小さく眉をひそめた。
妖精鳥は首を傾げながら言った。
「そなたが心の成長を遂げ、真の力を得られるかどうかを試すのだそうです。試練の内容は、明日、そなたが森に向かった際に明らかになります。」
セリナの胸に緊張が走ったが、同時にどこか安堵も感じていた。森での努力やアリスとの絆が少しずつ実を結んでいることを、妖精王も見守ってくれているのだと実感したからだ。
「わかった。私、試練を受けるよ。」
---
翌朝、セリナはアリスとアランに事情を話し、森へ向かった。二人はセリナが試練を受けると聞いて驚きながらも、一緒に行きたいと言ったが、妖精鳥は首を振った。
「試練はセリナ様だけが乗り越えねばなりません。彼女の心と力を問うものなのです。」
セリナは二人に笑顔を向けた。
「大丈夫、私が帰ってきたら話すから。ちょっとだけ待っててね。」
---
森の奥深く、セリナがよく訪れる泉のほとりにたどり着いた時、周囲の空気が一変した。優しい光に包まれた中、妖精王の声が響いた。
「セリナ、そなたの歩みを見守っていた。この世界で多くを学び、心を成長させたことは確かだ。しかし、そなたが真に強くなれるかどうかを確かめる時が来た。」
セリナは静かに頷いた。
「試練を教えてください。私はどんなことでも挑みます。」
妖精王の声は少し柔らかくなりながら告げた。
「試練とは、この森と村に生きる人々の未来を守るために、そなたが選択を迫られるというものだ。」
「選択……?」
妖精王の説明によれば、森にはまだ隠された「闇の源」が残されており、それが完全に取り除かれない限り、森も村も再び危機に陥る可能性があった。その源を封じるためには、セリナが自身の力を完全に解放し、森と一体化する必要がある。
「そなたが力を解放すれば、森は完全に蘇る。しかし、そなた自身は妖精としての姿を取り戻せないまま、人間界での存在を終えることとなる。」
セリナは息を呑んだ。
「私が……消える?」
妖精王は静かに言葉を続けた。
「その代わり、そなたの思いは森に永遠に刻まれる。しかし、そなたがこの選択を拒むならば、森も村も危うい未来を迎える可能性がある。」
セリナの胸に、村での日々やアリス、アランとの思い出がよぎった。自分が消えてしまうことで彼らが悲しむかもしれないという不安が心をよぎる。
「どうすればいいの……?」
---
その時、セリナの目の前に光の粒が舞い降り、アリスとアランの顔が浮かび上がった。彼らの笑顔が彼女の心を支えてくれるように感じられた。
「私が森を守ることで、二人が笑顔でいられるなら……それでいい。」
セリナは拳を握りしめ、静かに前を向いた。
「妖精王様、私、森の力になります。人間界に来た意味を、ここで果たしたいです。」
妖精王の声が穏やかに響いた。
「よくぞ申した。その心が、そなたの真の力だ。」
---
セリナが力を解放すると、森全体が眩しい光に包まれた。枯れていた木々が緑を取り戻し、動物たちが戻ってくる。そして、村にもその影響が広がり、人々の心にも温かい光が差し込むようだった。
その光景を最後に、セリナの姿は森の奥へと溶け込むように消えていった――。
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