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8. 欲情*

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後半、微妙にエロが入っているので*をつけています。背後にご注意ください。









 いつの間にか雨の止んだ夜明け。
 ふと目を覚ました奏多の目に飛び込んできたのは、カーテンの隙間から漏れる外の光に反射してキラキラ光る金色の毛並みだった。

 どうやら抱き合って寝ていたらしい。その豪奢な毛並みに自分の顔が突っ込んでいるせいで一面金色の視界に、奏多はため息をついた。

 昨日、自分が寝ついた時は一人だったから、その後に帰ってきたのだろう。誠吾にしてはずいぶんと長時間の帰省やったな、と慰労の意味も込めて自分より一回りも二回りも大きい背中を撫でてやる。その手に細く長いしっぽが絡みついた。


 誠吾の獣型を初めて見たのは小学生の時だった。

 まだ〝獣人〟というものがこの世にいるということを知らなくて、初めて誠吾の家にお泊まりした日の翌朝、同じベッドで寝たはずの誠吾が金の毛並みの美しい仔ライオンになっていて知ったのだった。あの頃はまだ自分とそう大きさも変わらないし、全身を覆う毛も短かった。

 驚いたけど不思議と怖くなかったのは、自分を見つめるその仔ライオンの目が、幼なじみと同じ色だったからかもしれない。


(今じゃすっかり大人ライオンやもんなぁ……それにしても、重い……)


 誠吾の獣型は動物園で見る雄ライオンより大きい。二百キロは余裕で超えてるんじゃないだろうか。腕……前脚が乗っかっている腹の圧迫感がすごい。身を少し捩ると、ベッドのきしむ音がした。ベッドの耐荷重は大丈夫なんだろうかと不安がよぎる。お値段以上、とCMで謳っていると言っても、さすがに獣人が獣型で寝るのは想定してないだろう。

 ベッドの脚が折れる前にと、さっき撫でたばかりの背中を今度は手のひらで叩きながら、奏多は起きろと声をかける。胸元で喋ったせいか、こそばゆそうに金獅子の体が揺れた。と同時に、ゆっくりと視界を覆っていた金色が薄らいでいって肌色になる。獣化が解けた。

 ここで問題になるのが衣服だ。
 獣化は魔法じゃない。だから、獣化の際に着ている服はそれに合わせてサイズを変えたりしない。

 人型の誠吾は百八十を超える背丈だけれど、獣型だと三メートル近くになる。もちろん獣化の際に着ている服はビリビリのボロボロになるわけで、つまりは獣化が解けて人型に戻った際は、誠吾はもれなく全裸の状態だ。

 そして今は朝。がっしりと向かい合わせで抱きしめられている自分の薄い腹に、何やら固いものが当たっていることに気づいて、奏多は「はぁああぁ~」と嘆息した。獣化が解けた誠吾は、寝ながら、その朝勃ちした立派なものをゆらゆらと腰を揺らして奏多の腹に擦りつけている。


「奏多……」


 名前を呼ばれて顔を上げると、寝ていると思っていた誠吾が目を開けてうっとりと自分を見ていた。


「おはよう、奏多。……今日も可愛い」


 そう言って奏多のつむじに口付けを落とすと、抱きしめる腕の力を強めた。どうやら離してくれる気はないらしいと奏多は悟る。


「したいん?」


 我ながら直球すぎるなと思ったものの、じゃあ他にどんな言い方があるかなと考えてみたところで妙案は浮かばなかった。


「……奏多がしたくないならしない」


 誠吾の手が奏多の股間をまさぐる。自分のと比べて奏多のペニスが大きくなっていないことを言っているらしかった。


「俺がそんな朝勃ちせんこと知っとるやろ」
「そうだけど……」
「誠吾のん触ってたらおっきくなるし、大丈夫。しよ」
「……いいのか?」
「いいよ。ていうかこっち引っ越してきてから一回もしとらんかったし。俺もしたい」
「……奏多……!」


 横を向いていた体が、誠吾の腕に力いっぱい抱きしめられて、あっという間にぐるんと反転して仰向けにされる。奏多可愛い、好きだよ奏多、大好きだよ、と言いながら満面の笑みを浮かべて誠吾が見下ろしてくる。

 その口の中に鋭く尖った犬歯を見つけて、奏多は誠吾の首に腕を回して引き寄せた。嬉しそうに唇を誠吾が重ねてきたので、奏多もそれに負けじと舌を挿し込む。

 さっき見た犬歯を、わざと舌でちろりと舐めてあげたら、誠吾の大きな体が頭の先からつま先までぶるりと震えた。



ーーー
次回R-18回です
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