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18. 隙間 *
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*後半にR18シーン(無理やり表現)があります*
*真緒と宏樹の過去話です*
あの後すぐ帰ってきた三人から帰宅の報告を受けた。俺が小さく「おかえりなさい」と返すと、静かにゆっくりと寝室のドアが開く。
「……真緒くん。色々食材とか買ってきたから確認してもらいたいんだけど、その……きみの匂いがこっちまで来てるんだ。この濃さだと割と強い発情だと思うんだけど、体は大丈夫?」
「あ、す、すみません! みんなを待ってるうちにひどいヒートを起こしちゃったみたいで……多分そのうち落ち着くと思います」
「大丈夫ならいいんだよ。取り敢えず冷蔵ものなんかは冷蔵庫に入れておいてもいいかな」
「お願いします」
顔だけ覗かせた尚樹さんは、初めて嗅いだであろう俺の濃い匂いに動揺しているらしく声が震えている。俺がつとめて明るく答えると、にっこり笑ってドアを閉めて去っていった。ドアの向こうからは宏樹や泰樹くんの声も聞こえる。
泰樹くんは宏樹や尚樹さんと仲のいいイメージがない。仲良しどころか、二人から距離を置いているようにも思えた。
宏樹とは十歳、尚樹さんとは一回りも離れている。彼が留学で日本を発った頃、既に宏樹は俺の実家で働いていたし、尚樹さんも大学で臨床実習や国家試験の受験を抱えていて忙しそうだった。
俺もその頃にはもう宏樹に会うために瀬尾へ通うことをやめていたから、大きなくくりでは「幼なじみ」ではあるものの思春期以降の彼がどんな人物に成長したのかわからない。
(…………でも、昼食後に少し喋った感じでは嫌な気はしなかったなぁ)
あのまだまだ足りないと言って腹をさする彼の不満気な顔を思い出すと、俺は何だか楽しい気持ちになってふふっと笑った。
宏樹とも尚樹さんとも違って、彼とは委員長と話してるような、そんな感じ。
・
・
・
泰樹くんと最後に会ったのは俺が十二歳の冬だった。
「あーっ、あ、あ、やめ、やめて、こわい、やめっ」
「大丈夫だよ真緒、すぐに終わるから」
「いたい! いたいの、いたい、いたいからやめ、やめっ、」
暴れる俺を掻き抱いて、宏樹は俺の項を何度も噛んだ。アルファの犬歯が俺の薄い皮膚を破り、穴が開き、噴き出す血を長い下が舐めとっていく。
俺は自分にかぶりつくアルファに、ただひたすら怯え、竦み、この恐怖の時間が過ぎるのを耐えるしかできない。
「あ、あ、あっ、や、やだ、ひろきくん、やめ、やめて」
「やめるわけないだろ」
俺の懇願をすげなく捨てて、宏樹は首を噛むのをやめた。彼の口は俺の血にまみれ悪夢のような状態なのに、目は爛々と俺を捉えて離さない。
「ぼ、ぼくなんかたべても、お、おいしくないよ……」
俺はまだ第二性がどういうものか知らなかった。
だから俺の首を何度も噛んで番にしようとする宏樹の行為が理解できなくて、宏樹がおかしくなったのだと思っていた。
「首、噛んでんのに何で……」
「や、やだ、もうかまないで」
咄嗟に両手で項をかばう。これ以上噛まれたら、本気で首がちぎれてしまうのではないかと恐怖した。
「………………はぁ、いい匂い」
初めて向けられるアルファの強力な威圧に、俺は腰が抜けて動けない。捕食者の目をした宏樹から目を逸らすこともできず、食べられる恐怖と、胎から湧き上がる熱に自分はこれからどうなるのかと肌が粟立つ。
十二歳の俺は今よりも小柄で、もう既に百七十センチ台後半の背丈の宏樹には力では敵わない。
宏樹の私室の固い床の上に寝転ばされ、俺の太ももに乗り上げた宏樹は、待ち切れないとばかりに制服のベルトを外しスラックスを下げた。青いボクサーパンツの生地がはっきりと盛り上がっていて、濃い染みを作り出していた。
「…………まお、なめて?」
初めて見る宏樹のペニスは、俺の知っているそれとはまったく異なり、凶悪でグロテスクな形と大きさだった。
「や、やだっ!!」
取り出し数回上下に手で扱くと、既に上向きだったペニスはさらに天を向き、鈴口から透明な雫を垂らす。その雫を俺の口に塗りつけて、宏樹は恍惚の表情を浮かべた。
「んーっ! ん、んんっ」
必死に唇を閉じ、顔を左右に振って逃れようとする俺を宏樹は笑いながら見下ろしている。ペニスを支える右手はそのまま、まるで好きな人に触れるように左手で俺の頬を撫でて、次に俺の鼻を摘んだ。
「――――!!?」
我慢したけれど無理だった。息が続かなくて、俺がぷはっと口を開けた瞬間を狙って、宏樹の塊が侵入してくる。
「噛んだらダメだからね?」
「んんーっ! ん、んんっ、やめ、んぷ、ひおきく、ひろきくん、やめへ……っ」
「あーーーそれ。くわえたまま喋んのマジいい」
「うう、ん、んん、んーっ」
「……泣かないでよ真緒」
宏樹は笑いながら俺の口に何度もペニスを突っ込んで喉を犯した。喉の奥にペニスが当たるたびに嘔吐いて、俺はダラダラと涎をこぼして逃れようとする。
「んー。そろそろいっかな」
やっと解放された口で、めいっぱい空気を吸う。肩が上下して、ひっひっとか細い声が出た。
カチャリ、と嫌な音がした。
俺の太ももに乗ったまま、今度は俺のはいているハーフパンツのホックを外し、ファスナーを下げられる。一瞬だけ俺の体から退くと、宏樹は下着ごと俺のハーフパンツを脱がせた。大きく開脚させられる。
「!!」
「真緒のちっこいペニス可愛い。俺が初めてだよね? 俺もオメガは初めてだよ。お互いが初めてっていいよね。俺、初めてを真緒にあげられて嬉しい」
「は? な、何す、何すん、やめ、こわい」
「さっきは挿入してなかったからダメだったのかもしれないよね。今度は挿入して、ちゃんと中出ししてから噛むから」
「何、なにいってるの……? そうにゅうって、何? 宏樹く、もうやめて、僕、だれにもいわないから……っ」
「無理だよ」
俺の脚を抱え込んで、体を折り曲げられるように組み敷かれる。口に突っ込まれたばかりのペニスの切っ先が、俺の排泄にしか使ったことのない穴にピタッとくっついたことに気づいて、俺は、今から何をされるのかわかった。ぐぐ、とありえない質量のものが狭い穴に押し入る。
俺は体を強ばらせたけれど、俺の穴はまさかの、あっさりと宏樹を受け入れた。
「――え。え、え、な、なんで、」
「これだけ濡れてれば安心だね。嬉しいな、真緒、俺を受け入れるためにこんなに濡れてくれたんだね」
声を弾ませながら、宏樹は俺の唇やまぶた、頬、額、耳、ありとあらゆるところに口付けていく。
「う、う、あ、ああっ、あん、ひぃあっ、ん、んっ」
「可愛い、可愛い、俺の真緒、俺のオメガ」
「あ、んっ、ひ、ひろ、ひろきくん、あ、やあっ」
甘い、甘い匂いがする。いい匂い。
目の前のアルファが力強く屹立を打ち込むたびに、花火が散って、体中が痺れるように痙攣する。十二歳の俺は、涙と涎をだらしなく零しながら、――これは僕じゃない、――これは夢だ、――嫌な夢を見てるだけ、と逃避した。
「や、や、だれ、か、だれか、たすけ、たすけて、」
手を伸ばせばすぐそこにはドアがあるのに。
そのドアが開きさえすれば、きっと誰かが僕を助けてくれるのに。
甘い匂いがする。いい匂い。
宏樹の目を見ていられなくて、俺は目を逸らした。その先に。
「――――――あ、あ、た、たい、たいきく、あ、」
俺よりも小さな子供の目が、その時わずかに開いたドアの隙間から、俺を見つけた。
泰樹くんと最後に会ったのは俺が十二歳、彼が五歳の冬。――瀬尾家に宏樹を訪ねていた際に初めてのヒートを起こした時だった。
*真緒と宏樹の過去話です*
あの後すぐ帰ってきた三人から帰宅の報告を受けた。俺が小さく「おかえりなさい」と返すと、静かにゆっくりと寝室のドアが開く。
「……真緒くん。色々食材とか買ってきたから確認してもらいたいんだけど、その……きみの匂いがこっちまで来てるんだ。この濃さだと割と強い発情だと思うんだけど、体は大丈夫?」
「あ、す、すみません! みんなを待ってるうちにひどいヒートを起こしちゃったみたいで……多分そのうち落ち着くと思います」
「大丈夫ならいいんだよ。取り敢えず冷蔵ものなんかは冷蔵庫に入れておいてもいいかな」
「お願いします」
顔だけ覗かせた尚樹さんは、初めて嗅いだであろう俺の濃い匂いに動揺しているらしく声が震えている。俺がつとめて明るく答えると、にっこり笑ってドアを閉めて去っていった。ドアの向こうからは宏樹や泰樹くんの声も聞こえる。
泰樹くんは宏樹や尚樹さんと仲のいいイメージがない。仲良しどころか、二人から距離を置いているようにも思えた。
宏樹とは十歳、尚樹さんとは一回りも離れている。彼が留学で日本を発った頃、既に宏樹は俺の実家で働いていたし、尚樹さんも大学で臨床実習や国家試験の受験を抱えていて忙しそうだった。
俺もその頃にはもう宏樹に会うために瀬尾へ通うことをやめていたから、大きなくくりでは「幼なじみ」ではあるものの思春期以降の彼がどんな人物に成長したのかわからない。
(…………でも、昼食後に少し喋った感じでは嫌な気はしなかったなぁ)
あのまだまだ足りないと言って腹をさする彼の不満気な顔を思い出すと、俺は何だか楽しい気持ちになってふふっと笑った。
宏樹とも尚樹さんとも違って、彼とは委員長と話してるような、そんな感じ。
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泰樹くんと最後に会ったのは俺が十二歳の冬だった。
「あーっ、あ、あ、やめ、やめて、こわい、やめっ」
「大丈夫だよ真緒、すぐに終わるから」
「いたい! いたいの、いたい、いたいからやめ、やめっ、」
暴れる俺を掻き抱いて、宏樹は俺の項を何度も噛んだ。アルファの犬歯が俺の薄い皮膚を破り、穴が開き、噴き出す血を長い下が舐めとっていく。
俺は自分にかぶりつくアルファに、ただひたすら怯え、竦み、この恐怖の時間が過ぎるのを耐えるしかできない。
「あ、あ、あっ、や、やだ、ひろきくん、やめ、やめて」
「やめるわけないだろ」
俺の懇願をすげなく捨てて、宏樹は首を噛むのをやめた。彼の口は俺の血にまみれ悪夢のような状態なのに、目は爛々と俺を捉えて離さない。
「ぼ、ぼくなんかたべても、お、おいしくないよ……」
俺はまだ第二性がどういうものか知らなかった。
だから俺の首を何度も噛んで番にしようとする宏樹の行為が理解できなくて、宏樹がおかしくなったのだと思っていた。
「首、噛んでんのに何で……」
「や、やだ、もうかまないで」
咄嗟に両手で項をかばう。これ以上噛まれたら、本気で首がちぎれてしまうのではないかと恐怖した。
「………………はぁ、いい匂い」
初めて向けられるアルファの強力な威圧に、俺は腰が抜けて動けない。捕食者の目をした宏樹から目を逸らすこともできず、食べられる恐怖と、胎から湧き上がる熱に自分はこれからどうなるのかと肌が粟立つ。
十二歳の俺は今よりも小柄で、もう既に百七十センチ台後半の背丈の宏樹には力では敵わない。
宏樹の私室の固い床の上に寝転ばされ、俺の太ももに乗り上げた宏樹は、待ち切れないとばかりに制服のベルトを外しスラックスを下げた。青いボクサーパンツの生地がはっきりと盛り上がっていて、濃い染みを作り出していた。
「…………まお、なめて?」
初めて見る宏樹のペニスは、俺の知っているそれとはまったく異なり、凶悪でグロテスクな形と大きさだった。
「や、やだっ!!」
取り出し数回上下に手で扱くと、既に上向きだったペニスはさらに天を向き、鈴口から透明な雫を垂らす。その雫を俺の口に塗りつけて、宏樹は恍惚の表情を浮かべた。
「んーっ! ん、んんっ」
必死に唇を閉じ、顔を左右に振って逃れようとする俺を宏樹は笑いながら見下ろしている。ペニスを支える右手はそのまま、まるで好きな人に触れるように左手で俺の頬を撫でて、次に俺の鼻を摘んだ。
「――――!!?」
我慢したけれど無理だった。息が続かなくて、俺がぷはっと口を開けた瞬間を狙って、宏樹の塊が侵入してくる。
「噛んだらダメだからね?」
「んんーっ! ん、んんっ、やめ、んぷ、ひおきく、ひろきくん、やめへ……っ」
「あーーーそれ。くわえたまま喋んのマジいい」
「うう、ん、んん、んーっ」
「……泣かないでよ真緒」
宏樹は笑いながら俺の口に何度もペニスを突っ込んで喉を犯した。喉の奥にペニスが当たるたびに嘔吐いて、俺はダラダラと涎をこぼして逃れようとする。
「んー。そろそろいっかな」
やっと解放された口で、めいっぱい空気を吸う。肩が上下して、ひっひっとか細い声が出た。
カチャリ、と嫌な音がした。
俺の太ももに乗ったまま、今度は俺のはいているハーフパンツのホックを外し、ファスナーを下げられる。一瞬だけ俺の体から退くと、宏樹は下着ごと俺のハーフパンツを脱がせた。大きく開脚させられる。
「!!」
「真緒のちっこいペニス可愛い。俺が初めてだよね? 俺もオメガは初めてだよ。お互いが初めてっていいよね。俺、初めてを真緒にあげられて嬉しい」
「は? な、何す、何すん、やめ、こわい」
「さっきは挿入してなかったからダメだったのかもしれないよね。今度は挿入して、ちゃんと中出ししてから噛むから」
「何、なにいってるの……? そうにゅうって、何? 宏樹く、もうやめて、僕、だれにもいわないから……っ」
「無理だよ」
俺の脚を抱え込んで、体を折り曲げられるように組み敷かれる。口に突っ込まれたばかりのペニスの切っ先が、俺の排泄にしか使ったことのない穴にピタッとくっついたことに気づいて、俺は、今から何をされるのかわかった。ぐぐ、とありえない質量のものが狭い穴に押し入る。
俺は体を強ばらせたけれど、俺の穴はまさかの、あっさりと宏樹を受け入れた。
「――え。え、え、な、なんで、」
「これだけ濡れてれば安心だね。嬉しいな、真緒、俺を受け入れるためにこんなに濡れてくれたんだね」
声を弾ませながら、宏樹は俺の唇やまぶた、頬、額、耳、ありとあらゆるところに口付けていく。
「う、う、あ、ああっ、あん、ひぃあっ、ん、んっ」
「可愛い、可愛い、俺の真緒、俺のオメガ」
「あ、んっ、ひ、ひろ、ひろきくん、あ、やあっ」
甘い、甘い匂いがする。いい匂い。
目の前のアルファが力強く屹立を打ち込むたびに、花火が散って、体中が痺れるように痙攣する。十二歳の俺は、涙と涎をだらしなく零しながら、――これは僕じゃない、――これは夢だ、――嫌な夢を見てるだけ、と逃避した。
「や、や、だれ、か、だれか、たすけ、たすけて、」
手を伸ばせばすぐそこにはドアがあるのに。
そのドアが開きさえすれば、きっと誰かが僕を助けてくれるのに。
甘い匂いがする。いい匂い。
宏樹の目を見ていられなくて、俺は目を逸らした。その先に。
「――――――あ、あ、た、たい、たいきく、あ、」
俺よりも小さな子供の目が、その時わずかに開いたドアの隙間から、俺を見つけた。
泰樹くんと最後に会ったのは俺が十二歳、彼が五歳の冬。――瀬尾家に宏樹を訪ねていた際に初めてのヒートを起こした時だった。
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