約束のまもり方

かつお

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第5話

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 マンションに着いた頃、心身ともに、と言うよりかは、精神的に僕はかなり疲弊していた。それもそのはず、今日はあまりにも不思議な出来事が多すぎた。色々やらなければいけない気もするが、明日の僕が頑張ってくれることだろう。

 エレベーターに乗り、10階に着いた。

「部屋はどこなの?」

 自分の部屋の前まで辿り着いた僕は、リサに尋ねる。

「お兄ちゃんのお部屋は?」

 逆に聞き返されてしまった。
 僕は自分が住んでいるのは1003号室だよ、と教えてあげると、りさは何故か

「わかった!」

 と少し嬉しそうだった。

 りさは一向に帰る気配を見せない。そういう僕も、未だに部屋に入らずにいた。僕はもう一度彼女に聞いた。

「りさの部屋は?帰らないの?」

「どうしてそんなに知りたいの?」

「ちゃんと家に帰るか心配なだけだよ!」

 りさが可笑しそうに笑うので、たちまち、僕は恥ずかしくなってしまった。

「そんなに笑うならもういいよ!僕帰るからね!」

 彼女はふふっと笑うだけだ。

 いい加減、中に入ればいいのに、僕は未だ動かずにいた。明日になれば、今日あった事を、彼女と過ごした時間を忘れてしまう気がして……

「ねぇ、お兄ちゃん……」

 りさが呼びかけた。

「私、まだ言ってなかったよね……ママを一緒に探してくれて、ありがとう。」

 彼女の笑顔を見ると、暗い気分もパッと明るくなるようだった。

「別に……というか、君が強引に連れてっただけだし……」

 何故だろう。鼻の奥がツンと冷たくなる。

「ふふ……そうだね。」

 やはり彼女は笑うだけだ。

「ほら!早くお家帰ろ?帰って寝ないと!明日も学校だしね。」

 確かに、明日は平日だ。そろそろ寝ないと、寝坊してしまうかもしれない。

 僕はドアノブをゆっくり回しながら、顔だけふりかえってみた。依然としてニコニコ顔の、彼女の名前を呼ぶ。

「りさ、おやすみ。。」

 ぎこちなく微笑む僕を見て、彼女はとても嬉しそうに満面の笑みで答える。

「うん!!」

 中に入り扉を閉める直前まで、彼女は大きく手を振っていた。僕も小さく手を振り返し、扉を閉めて、僕の今日がようやく終わりを迎えた。


 朝7時。目覚まし時計の音で目が覚めた。全く寝足りない。眠すぎる。もう少しだけ、と僕は布団に潜り込んだ。そして、昨日の出来事を思い出していた。工場での出来事や、りさの母親の事。そして、りさ本人の事や彼女と話した事など。もう暫く、布団で暖まっていたかったけれど、昨日の僕が全てを投げやりに、今日の僕に押し付けたので、仕方ないな、とぼやきながら、ようやく僕は体を起こしたのだった。


 放課後、僕は家に帰らず、そのまま部品工場に向かっていた。ずっと考え事をしていたせいで、授業の内容は、あまり頭に入ってこなかった。先生にも、集中しなさい、と叱られたくらいだった。だけど、授業どころではなかったので仕方がない。

 学校からはだいたい30分位で、目的の工場に辿り着いた。時間を見ると16時半と、太陽も傾きかけで、ちょうど夕方と言った感じだ。それなのに、工場内は昨日と変わらず、照明もついていないどころか、人1人いない状態だった。

 調べたとおり、この工場は今は閉鎖されているようだ。と言っても、簡単に侵入出来るくらいなので、そこまで厳重ではないのだろう。ネットの記事によると、ここが閉鎖された理由は、事件に巻き込まれた、というものだった。
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